※この作品はR-18です。

欲しいモノ全てが手に入る地下迷宮を死神は旅をする   作:柊咲

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第35話 古代遺物

 

 金色の髪を後ろに流した髪型。

 背丈は180と大柄で、服の上からでも鍛え抜かれた体付きなのがわかった。

 

 

 

「この迷宮都市には絶対に守らなくちゃいけねえルールがあるんだが……知らないわけねえよな?」

「ルール? へえ、そんなのあったのか。だったら都市の入口にでも張り紙を出しておくんだな」

 

 

 

 そう告げると、さっきまで笑っていた目が鋭く俺を睨む。

 

 

 

「あまり俺を舐めるなよ?」

「別にそういうわけじゃないんだがな。……それより、メアを何処へやった?」

 

 

 

 ここにいる連中は全て探索者だ。

 誘拐されたはずのメアの姿はない。

 

 

 

「メア? ああ、あの女か。あいつならずっと前に逃げていったぜ」

「逃げた? そうか」

 

 

 

 連中の隙を突いて逃げてくれたのか。

 それを良かったととるか、それとも違和感ととるか。

 

 

 

「メアがいないなら俺たちは帰らせてもらう」

 

 

 

 捕らわれた彼女がいないのなら、ここに長居する理由はない。

 引き返そうとしたのだが、

 

 

 

「待てよ」

 

 

 

 顔の横を通って何かが投げられた。

 手の平ほどの大きさの球体のモノは後方の地面に落ちると膨らみ、入口を塞ぐ石壁へと姿を変えた。

 退路を断った、というわけか。

 

 

 

「……古代遺物か」

「便利な道具だろ? この古代遺物は身を守る壁にもできるし、こうやって道を塞ぐこともできる」

「便利な道具だな、古代遺物ってのは。だから人間たちで独占したのか?」

「ああ、そうだ。古代遺物なんて使ってなんぼの代物だ。それなのに他の連中はオークションにかけて高値で売りやがる。馬鹿馬鹿しいと思わねえか?」

「選択肢としてはアリだと思うがな。俺は古代遺物よりも金の方が欲しいからな」

「ここにも馬鹿がいやがったか……。いいか、貴重な古代遺物は有限だ。こんな複製品とは違ってな」

 

 

 

 古代遺物の中には大量に複製されたものもあると聞いたことがある。

 そういう複製された古代遺物は都市内にある店なんかで売られている。値段も安価で、誰だって手に入れられる。

 

 だが、古代遺物には複製不可のモノも存在する。

 そういった古代遺物は貴重で、オークションなんかで高値で取引されているものは全て複製不可の古代遺物だ。

 

 

 

「限りのある古代遺物ってのは外に出すべきじゃねえんだよ。外に出せば二度と手に入らない。そしてその貴重な力は他国や別の迷宮都市に独占される。……そうなればいつになっても、地下迷宮の最下層には到達できねえ」

「お前らの目的は地下迷宮の最下層到達か。だったらクソみたいな差別を行ってないで、協力して目標達成したらどうだ?」

「協力して? はっ、んなのありえねえだろ」

 

 

 

 ウェルダーは鼻で笑う。

 

 

 

「人間は統制の取れる生き物だ。だがそれ以外の種族は違う。エルフは無駄にプライドが高くて従わない。ドワーフは脳筋で頭が悪い。兎人は働かない癖に分け前をよこせとうるせえッ!」

 

 

 

 アリスが「たしかにー」と納得している。

 

 

 

「だからこそ地下迷宮も、そこで手に入る古代遺物も人間だけで独占する。もう二度とオークションなんかに出させねえ! 貴重な古代遺物を手に下層へ、そしてまだ誰も到達したことのない深層へ俺たちは行ってみせる!」

 

 

 

 周りの探索者たちも頷き、ウェルダーの意見を支持する。

 

 

 

「おい新入り、最終勧告だ。今ならこれまでの無礼を許してやる……」

 

 

 

 わざわざ最終勧告するあたり、意外と悪い奴じゃないのかもしれない。

 それにウェルダーたちの話を聞いて、正直なところ理解できる部分はあった。

 より地下深くへ進めば強大な敵を相手にすることになる。そうなったとき、貴重で強力な古代遺物が必要になる。

 それなのに誰かがそれをオークションに出せば、戦う力を失ってしまう。

 迷宮都市内で独占しようにも、性格や考え方が異なる他種族がいればどんなに統制しても必ず綻びは生まれる。

 

 だからこういう結果になってしまったことは、わからなくもない。

 

 だが、

 

 

 

「悪いが俺は、古代遺物に頼らずとも深層に到達するつもりだからな」

「……そんな甘い考えで行けるわけねえだろッ! いいか、下層ですらどんなに頭数を増やしたところで古代遺物無しで辿り着くことなんて不可能なんだよ!」

「かもしれないな。まあ、そこは行ってから考えるさ」

「つまり、俺たちには従えねえってことだな?」

「悪いな。何より」

 

 

 

 俺は大太刀を構える。

 

 

 

「俺の愛した女はダークエルフなもんでな。お前の考えを全員が全員正しいと言っても、他種族を敵対視するお前とは仲良くできないんだよ」

「クレス……」

「そうか。だったら──」

 

 

 

 ウェルダーは手を振り上げる。

 

 

「ここで死ねッ!」

 

 

 

 その瞬間、周りにいた探索者たちが怒号と共に一斉に駆け出してくる。

 

 

 

「……雑魚は任せていいか?」

 

 

 

 エリザたちに問いかけると、各々が頷く。

 俺は大太刀を手にウェルダー目掛けて駆け出した。

 奴は余裕そうな笑みを浮かべながら、俺を視界に捉える。

 構えた武器。だがその武器は剣や槍でも斧でもなく、銃身が細長い銃だった。

 だが通常の銃とは違う。あれは、

 

 

 

「魔銃か?」

「テメェが不要とした古代遺物の威力に震えろッ!」

 

 

 

 向けられた銃口に眩い光が生まれる。

 空気を震わせ、熱を帯び、魔力が銃口に集まる。

 そして次の瞬間、勢いよく放たれた魔弾が真っ直ぐ俺へと向かう。

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