「「色欲の、魔女……?」」
宿屋に戻ってくるなり俺は二人に地下迷宮で起きた出来事を話した。
最初こそ、酒と眠気の影響で目を細めていたエリザとアリスだったが、俺の奇妙な話しが進むにつれ目が覚めていった。
「二人は今まで、こんな話を聞いたことはあるか?」
「いや、ないな。エルフの里でもそんな話は聞かなかった」
「ボクもないかなー、さすがに。そんな物語に出て来る登場人物みたいなの」
「そうか」
「それで、クレスはその……色欲の魔女というのの代行者になったけど、色欲とは違う魔女の代行者に狙われて記憶と年齢を奪われたと」
「アスリアが言うにはだが」
「信じ難い話だが……真実なのだろうな」
エリザは俺の失ったはずの左腕に視線を向ける。
「アスリアが言っていたが、俺が眠ったときにまたあの幻の世界とやらで会えるらしい」
「だが、もう一度会ったところで互いに記憶が無いのであればこれ以上の進展は無いんじゃないのか?」
「たぶんな」
「わからないことだらけだな」
「でもさ、もしかしたらメアのあの反応って、クレスのそれと何か関係してたりしない……?」
「メア? そういえば少し変だったな」
「実は──」
今度はエリザとアリスから、俺がいない間のことを聞かされた。
ウェルダーは俺に「メアは逃げた」と言っていたが、メア自身は彼女たちに「最初から連れ去られていなかった」と言った。
どちらかが嘘を付いているのは明白だ。
そして嘘を付いているとしたら、ウェルダーではなくメアの方だろう。ウェルダーがあの場で俺たちに嘘を付く必要は無い。
エリザは難しい顔をする。
「メアがなぜ嘘を付いたのかはわからない。ただ、彼女の様子がおかしいのは事実だ。喋り方や笑顔は変わらないが、どこかいつもと違った感じで……」
「なんかボクたちに嘘付いてることを、隠そうとしてなかったんだよね。わざと自分が怪しいってボクたちに思わせてるみたいな……。ねえ」
「おかしな話だがな。あの時はクレスが殺されてしまったと思って上手く頭が回らなかった。冷静になった今なら、アリスの言ったようにそう仕向けられていたと思えるな」
「エリザ、今にもメアに襲い掛かる勢いだったもんね」
顔を見合わせた二人が笑う。
俺はそこまで話していないが、二人が言うならメアの対応はおかしかったのだろう。
「どちらにしろ、一度メアに会って話してみるべきだな」
「それしかないか。違和感を感じてしまった以上、あまり関わりたくないが……」
俺とエリザが大きくため息をつくと、アリスが食い気味に俺を見つめる。
「それでそれで、その色欲の魔女のアスリアが言ってた、色欲の魔女としての能力って使えるの?」
「ああ、それか」
右手を前に出すと、アリスが「おお!」と何かを期待させ、エリザは身を守るようにビクンと震わせた身体を抱きしめる。
「残念ながら、まだよくわからない」
「はあ、なんだ……」
「ありゃりゃ。これについても、今夜にでも寝たときにその幻の世界? ってのに行ったときにでも魔女さんに聞いてみてよ! どんな力なのか気になるからさ。──でも、色欲の魔女かー」
ベッドに座ったアリスが口に手を当てクスクスと笑う。
「色欲の魔女だって……ぷうっ、クスクス。クレスにぴったりな魔女じゃん!」
「かもな」
「あっ、もしかして性欲が強くなるとか?」
「いや、そういうのでは──」
まただ。
また急に身も心も女を欲している。
喉が渇き、体温が上がり、汗が出る。
「クレス?」
心配そうに見つめるエリザ。
谷間を見せた体勢の彼女が誘っているような、そんな勘違いを起こしてしまいそうなほど興奮している。
溢れ出る唾を飲み、立ち上がる。
「あ……っ♡」
「あらら」
ズボンから突き出そうなほど主張しているペニスを見て、二人が頬を赤らめる。
「色欲の魔女の代行者だと聞かされてからかわからないが、身体がおかしいんだ」
「そ、そうなのか……」
「ほらほらー、エリザ、介抱してあげた方がいいんじゃないのー?」
「なっ!?」
「ボクはこの辺で帰るからさ。後は二人で──」
「──帰るのか?」
ベッドから立ち上がろうとしたアリスを引き止める。
手を掴んだ彼女は驚いたように目を右往左往させる。
「え、えっと、その……」
「こうなったのは、アリスの責任でもあると思わないか?」
「それは、その、ボクたちがあの時に逃げたこと?」
「あの時というのは地下迷宮でのことか? 別にそういうわけじゃなく、お前がそんなエロい身体してるからだろ」
「エロい、えっ、ボクが……?」
「ああ」
長い耳が動揺を表しているように激しくお辞儀をする。
エリザほど露出度は高くない服装だが、男を誘ういい身体付きをしている。
最初から思っていたが、アリスはいい女だ。
「要するに、その……クレスは、ボクに責任を取れって、そう言いたいの?」
「ああ、そうだ。エリザと一緒にな」
さっきからムスッとしたエリザに視線を送る。
「……」
「あのー、エリザすっごく怒ってますけど?」
「エリザは三人でするの嫌か?」
「……イヤ。ではない、かも、しれない。かも」
「どっちなんだ?」
「……クレスが三人でしたいなら、別にいいけど」
「来い、エリザ」
手を伸ばして抱き寄せると、エリザは頬を赤らめ少しだけ機嫌が直った。
彼女は自分では自覚が無いし俺も言わないが、かなりちょろい。
「二人同時に味合わせてくれ」
「でもボク、そういう経験ないんだけど」
「ないなら教えてやる。いいだろ?」
「……エリザがいいなら」
「私は、まあ……恥ずかしいが、クレスが望むなら」
「じゃあ」
ベッドに座った二人を背中から抱き寄せ、キスをする。
その瞬間、俺の中に生まれた何かが悦んでいるのがわかった。