※この作品はR-18です。

欲しいモノ全てが手に入る地下迷宮を死神は旅をする   作:柊咲

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2章 第24話 うさぎとウサギの戦い方

 

 

 

 一歩、後ろに飛ぶ。

 異形の怪物は全部で四体。

 目が無いから何を見てるのかも、表情もないから感情もわからない。

 ただ動きが遅いから、後ろに飛んだだけで大きく距離を取れる。

 

 

 

「クレスの腕をちぎったみたいなのは、たしか……急に飛び付いてきたはずだから」

 

 

 

 クレスが相手した元はウェルダーだった異形の怪物よりも、目の前にしてる異形の怪物は小さい気がする。

 

 もしかして弱い?

 とか期待したら駄目だ。

 

 仮に弱かったとしても、ボクはクレスやエリザじゃない。魔物と戦った経験の無いボクには、どんな相手だって強敵だ。

 

『魔物との戦闘で大切なのは、まず敵をよく観察することだ。どんな強敵だろうと魔物には隙や弱点、決まった攻撃のパターンがある。だからよく見ろ』

 

 前にクレスがそんなこと言ってたっけ。

 その時はどうせボク戦わないしなーとか思ったけど、ちゃんと聞いてて良かった。

 

 

 

「まずは確実に相手の出方を見る」

 

 

 

 ボクは宝石ぐらいの大きさの爆裂石を異形の怪物へ放り投げる。

 

 ふんわりと投げた爆裂石を見てるのかわからないけど、異形の怪物たちのスライムみたいな体が上を向いた気がした。

 そして──

 

 

 

『ぐぎぎぎぎぃ、ぐぅがあああああッ!』

 

 

 

 一体の異形の怪物が体を裂いて口みたいに開くと、餌に食いつく魚みたいに飛び付き丸のみする。

 それから少しして、体内で爆発すると異形の怪物が飛散した。

 倒した?と思ったけど、すぐに飛散した体の一部みたいなのが集まって合体する。

 

 

 

「うわっ、気持ちわる……でも」

 

 

 

 一瞬だけど見えた。

 飛散した異形の怪物の真ん中ぐらいに人間の心臓みたいにどくんどくん収縮した赤い塊が。

 あれがたぶん核だ。

 もしかしたらあれを……デスマッドみたいに核を壊せば倒せるかも。

 

 

 

「後は、どうやって二回お見舞いするかだけど」

 

 

 

 体内で爆発しても核を破壊できなかったってことは、飛散させた後に核を爆発させないと壊せないってことだよね。

 飛散させることはたぶん、あの異形の怪物は知能が低いから難しくないと思う。

 さっきみたいに爆裂石を投げれば勝手に飛び付いてくれるはずだから。だけどその後、すぐ核を狙って爆裂石を投げないといけない。

 他に使える武器とか古代遺物を持ってこなかったのは失敗だった。

 

 いや、ここで後悔しても仕方ない。とりあえず試してみない──。

 

 

 

『きゅるるん!』

「──っとお!?」

 

 

 

 頭を使って警戒を解いていたら、ラビーの鳴き声が聞こえて勢いよく飛び退く。

 ボクのいた場所を異形の怪物が横切る。

 あと少し気付くのが遅れてたら、ぱっくりいかれてたかも。

 

 そう思うと、汗が……。

 初めて魔物と戦う。こんなに怖かったんだ、魔物と戦うのって。

 

 

 

「……やってみよう」

 

 

 

 数に限りある爆裂石を一つ、放り投げる。

 異形の怪物は予想通り食いつき、爆発と共に体が飛散した。

 その瞬間、体内にある核が見えた。

 

 

 

「喰らえッ!」

 

 

 

 核目掛けて爆裂石を投げつける。

 狙いはいい、このまま真っ直ぐ飛べば──。

 

 

 

『ぐぎぎぎぎぃ!』

 

 

 

 だけど飛散した体の一部が壁を作り防ぐ。

 その瞬間、苛立ちよりも絶望感を強く感じた。

 

 

 

「……爆裂石は残り二十個。無駄遣いできない」

 

 

 

 クレスみたいに大太刀を振るって戦ったり、エリザみたいに魔法を使って戦ったりは、ボクにはできない。

 ボクは今ある持ち物で戦うしかない。

 そして戦いに使えるのは、この爆裂石ぐらいだけ。

 この爆裂石が一つ、また一つと減っていくたびに焦りが増す。

 

 

 

『きゅるん!』

「え……あっ、ちょっと!」

 

 

 

 ラビーは飛び跳ねると、爆裂石を一つボクから奪った。

 そのまま駆け出し、異形の怪物たちの標的がラビーに移動する。

 

 

 

「危ない、ラビー!」

 

 

 

 手を伸ばして止めようとするが、ラビーは飛び付く異形の怪物たちの攻撃をスルスル避ける。

 そしてチラッとボクを見た。

 何かを待っているような、小悪魔な性格のラビーがおねだりするときによくする顔だ。

 

 

 

「もしかして……わかんないけど、お願い!」

 

 

 

 ボクは爆裂石を放り投げる。

 ラビーに注意は向いていたけど、一体だけ爆裂石に食いついた。

 そして飛散する。

 

 

 

「ラビー!」

『きゅる、るーんッ!』

 

 

 

 異形の怪物から逃げるように広く駆け回っていたラビーは、ボクの声に応えて飛散した異形の怪物へと方向転換する。

 飛散した体の一部が立ち塞がっても、ラビーの速度は止められない。

 一瞬にして剥き出しになった核に近付くと、爆裂石を押し当て──。

 

 

 

『きゅるるーん!』

「わわっ!」

 

 

 

 爆風を背にしてラビーがボクのもとに飛んでくる。

 

 

 

「や、やったー、やったよラビー!」

 

 

 

 ラビーを抱きかかえながら異形の怪物を見ると、核が砕け、異形の怪物が三体に減っていた。

 たった一体を倒しただけだけど、ボクたちで倒したんだ。

 

 

 

「ラビー、よくやったよ!」

『きゅるるんきゅーるるん!』

 

 

 

 ボクには戦う力が無い。

 戦闘になったら後ろに隠れて、終わるまで邪魔にならないよう待つだけ。

 だけどこれなら、ラビーと連携すれば、もっともっと戦える。爆裂石だけじゃなく、他にも戦いに使えそうなモノがあれば。

 

 ……みんなの力になれる。

 

 

 

「ボクたちだって、みんなの力になれるんだ。──行くよ、ラビー! こいつら倒して、パパたちを見つけるんだ!」

『きゅーるるるん!』

 

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