「アトレア……」
「最初は、違う、好きになってなんかないって、わたしはお母様の為にヴァイズさんたちと一緒にいるんだって、そう思うようにしてました。だけど、初めてあなたとキスをして、初めて……身体を求め合って。無理矢理に自分の気持ちを否定することができなくなってしまいました」
はあ、と大きくため息をつく。
「そのことを、お母様はすぐに気付きました。わたしに『ヴァイズさんを殺しなさい』と命令しました……冷静に考えれば、お母様がそんなこと言うわけないのに」
「カマかけたのか?」
「はい。動揺するわたしを見て、お母様自身も、それにわたし自身にも確信させたかったんだと思います。わたしがヴァイズさんを好きだということを。そして、わたしがヴァイズさんを好きになったこと知って、お母様はヴァイズさんたちと争うのを辞める決断を下しました」
アトレアを俺から引き離せば済むかもしれない。だけどもし、アトレアが俺の側を離れなかったら、ヘレッサはアトレアと争うことになる。
そんなことできないだろう。
話を聞くだけでも心優しいヘレッサが、身を案じ、危険に晒さないよう遠ざけたアトレアと争うなんて。
「そしてわたしに、ヴァイズさんとの仲介役を任せて同盟関係を結ぼうとしました。ヴァイズさんとわたしとお母様、三人が仲良くいられる未来を守るために」
「それがあの光景か?」
「はい。その後は……見た通りです。なのでわたしは最初お母様側でした。スパイを勝手に引き受け、勝手にヴァイズさんと関係を持ち──必然的に恋をした、というわけです。そして、あなたの年齢を奪ったのと同時に、お母様はわたしの年齢を奪いました」
「頼んだとかじゃなく、ヘレッサが奪ったのか?」
「はい。その理由はすぐにお母様がちゃんと話すこともできなくなってしまったので聞けませんでした。だけどたぶん……あなたと同じように成長して、またどこかで再会してほしいという願いだったのかもしれません」
もちろん、これはわたしの想像ですが。
アトレアはそう言って笑った。
悲しそうに、願いが叶ったというのに何かが抜けているような。
きっとヘレッサがこの場にいないから、彼女は素直に喜べないのだろう。
もしも彼女が俺に接触しなければヘレッサはまだ生きていた。
もしも彼女が俺に恋をしていなければヘレッサはまだ生きていた。
もしも自分が、自分が、恋心を断ち切れれば、ヘレッサはまだ──。
けれどどれも無理だ。
もしも生まれ変わっても同じ道を進む。過去を変えない。
変えるとしたら、あの過去の映像だけ。
なにせ俺も同じだから。
もしも過去に戻っても、きっと俺はアトレアに当時と同じ言葉で声をかける。
「一目惚れだ、お前を抱きたい」
記憶が無くなっても、こうして彼女を欲しいと思っているのだから。
俺は彼女を抱き寄せ伝えた。彼女は拒むことなく受け止め、くすっと笑う。
「……あの頃と同じセリフ。でも、噓つき。本当に一目惚れだったら、受付で会ったときに言ってくれたはずですもん」
「当時よりも少しだけ大人になったのかもな」
「ヴァイズさんは大人になったら駄目です。あなたらしくない」
「失礼だな」
「ふふ。でも、無理に過去を想起させようとしなくていいですから。あなたはあなた、今のままのあなたもわたしは……」
顔を上げ、見つめられる。
それ以上の言葉は不要だ。
俺はアトレアの柔らかくて白い頬に手を触れ、唇を重ねる。
「ん、ちゅ……はあむ、ちゅ……ヴァイズ、さんっ……ヴァイズさんっ♡」
どんどん激しさが増していき、自然と舌を絡め合っていた。
アトレアとの初めてのキス。
それなのに癒蘭としたときと同じで懐かしさを感じる。
月明かりに照らされたアトレアの顔は少しずる赤くなり、水色の瞳が潤んで揺れる。
最初に会ったときは見ていて癒される、そんな明るい笑顔が特徴的な女性だったのに、今ではすっかり大人の色気を纏った女性になっている。
「ちゅ、はあ……っ♡ 懐かしい、ヴァイズさんとのキス」
「記憶は無いけど、俺も懐かしい感じがした」
「何度もしましたからね……ヴァイズさん、キス大好きですから」
「俺だけか?」
「……さあ」
見つめ合い、もう一度キスをする。
手を伸ばしてアトレアの衣服を脱がそうとすると、彼女は受け入れ、脱ぎやすいように手伝ってくれる。
そのまま上の服を脱がすと、純白の下着に包まれた豊満な乳房が姿を見せる。
「寒くないか?」
「大丈夫です。今日の風は肌寒くないですから」
「そうか」
「それに、すぐ温かくなりますよね?」
「ああ」
後ろから抱きしめようとすると、アトレアは「ヴァイズさんも上脱いでください、その方が肌が触れ合って温かいですから」と言われた。
お互いに上を脱いで肌を触れ合わせると、彼女はネコのように俺の腕に頬擦りする。
「温かい……」
お腹に手を触れると小さな唇が開き「んっ♡」と可愛い声を漏らす。
その両手を少しずつ上へ滑らせていくと、彼女の喘ぎ声は大きく、大人しい顔もどんどんエロく変わっていく。
「そういえば癒蘭が漏らしていたな。普段は大人しいけど、ベッドの上だと大胆になるって」
「あんっ、は、ああっ……そんなの、彼女のウソですから……信じないで、くださいっ♡」