ホロライブラバーズX ファンタジック・ピースメイカー 作:とも667
邪神連合を追い払った翌日。俺はいつも通り、お弁当を持って学園に登校する。その道中で、マリンを見つけた……どうやら、あの後も無事に帰れたようだ。
「おはよう、俊也君!! 昨日はどうも!!」
「あ、マリン!! あの後、何事もなかったか?」
「えぇ、お陰様で何もありませんでした!!」
それならよかった、俺たちの努力は無駄ではなかったようだな。しばらく雑談しながら登校し、学校に着いた。
「ぺこら、るしあ。おはよう、昨日はありがとう」
「おはよう俊也、気にしないでいいよ? 言い出したのはぺこらだし」
「あれだけやってやったし、しばらくは来ないよね!!」
そう考えていいだろう。全く同じ手口を使っているところから見ると、あいつらがずっとやっていたのだろうし、代わりを出すにも時間がかかるはず。
「あぁ。これに懲りて、撤退してくれればいいんだけどな」
「もしまた来たら、今度こそぶっ殺してやる!!」
「……あいつらが賢明なことを祈っとくよ」
るしあの殺すは本気だからな……話している間に時間になり、授業が始まった。時間は過ぎて、昼休憩の時間だ。みんなお弁当を食べ終わって、るしあやぺこらと談笑していると……マリンの話題になった。
「そういえばさ、俊也くんはマリンの夢知ってる?」
「夢? 聞いたことがないな……どんなのだ?」
「確か、自分の船で世界を回って世界中のお宝を集めることぺこね」
自分の船で世界を回る……なるほど、だからマリンは自分のことを『船長』っていうことがあるんだな。あの衣装は明らかに海賊衣装だし……
「なになに? みんな揃って船長の噂ですかー?」
「わっ、バレた!!」
「聞かれたら困ること? もしかして変な妄想してたとか? いやーん、エッチ♡」
……どうやら、俺たちの態度のせいで、あらぬ誤解を招いているようだ。
「そうじゃなくて、マリンの夢の話をしてたんだ」
「いちいち訂正しなくてもいいよ、マリンはこういう人ぺこだから」
「なんだよその言い草ー、まるでマリンがスケベな変態みたいじゃないですか!!」
それを聞いた二人が、一斉に言った。
「「まぁ、スケベなのは事実だしね」」
「なんでだよぉぉ!! 大体マリンだけがド変態みたいに言って、二人だって俊也くんとヤることヤったんですよね!? 人のこと言えないでしょ!!」
「うっ……それは……」
「い、言い返せない……」
二人が一斉に口ごもる。そこを突かれると弱いらしい……話題を変えよう。
「そういえばマリン、夢は自分の船を買って、世界中のお宝を探すことなんだよな? その背格好もその一環?」
「もちろん!! 船長は形から入るタイプなので、とりあえず海賊っぽい格好をしてます!!」
「そうなのか、本格的だな……」
これ全部自力で揃えたと考えると、夢への情熱がすごいな……そう思っていたが、そこでマリンは自虐を始めた。
「そうですか? ありがとうございます、でも船長って本格的なロールプレイとかは、全くやったことないんですよね!! つまり、ただのコスプレ女ってことです!! よく言われます!! 言われるのはいいことじゃない? それはそう」
「そ、そうなのか……将来に向けて、何かやってたりはするのか?」
「よくぞ聞いてくれました、この船長は将来の海賊船のため……ずっと前から貯金を続けているのです!!」
学生なのに、同時に貯金も続けられてるのか。学業の合間に、バイトを頑張っているのかな……ともかく凄いことだ。
「すごいじゃん!! 前からってことは、ずっと続けてるんだろ? 根気あるなぁ……」
「その通り、船を買いたいと思った日からずっと続けてます!!」
「思い立ったが吉日ってわけか……マリン、行動力あるな。リーダー向きの性格だし、きっとなれるよ」
俺はそう言って本心で褒めていたが、マリンはそこでまた自虐を始めた。
「そうですねぇ、でも……お金だけは貯めてますけど、肝心の船のカタログとかは、見たことないんですよね。作ってくれそうな人も探してないし……海賊になりたいとか言いながら、一番大事な船に関しては無計画というね!! これじゃ買った船もすぐ沈んじゃいそうです!! そんな船に乗りたい人はいませんよね!! あっ、他には……」
「マリン、ちょっと待ってくれ。ちょっと自虐が過ぎないか?」
「えっ……どういうことですか?」
そのままの意味だ。自虐ネタもやり過ぎれば、嫌味になるからな。
「そのままの意味だよ。俺はマリンを立派だと思ってるから褒めてるんだ、別に同情でもなんでもない。でも、そんな時に自分の夢を自虐されたら……褒めてる俺まで惨めじゃないか」
「確かに……あんまり良くないと思うぺこ、マリン」
「るしあも」
みんな、俺に同意してくれている……一番言いたいことを言おう。
「そんなこと言ってちゃ、叶うものも叶わないだろ。なりたいならまず、マリン自身が海賊になれるって思わなくちゃ」
「……そうですか。みんなしてマリンを攻めるんですね」
「えっ?」
予想外の言葉が帰ってきて、頭の上に疑問符が浮かぶ。マリンはそのまま続ける……
「あーそうですか、みんなもマリンのことそうやって否定するんですか。そうですね? なれると思ってない人がなろうとしたって無駄ですもんね。お気遣いありがとうございます。前向きに検討させていただきますぅ!!」
「お、おいマリン……俺達は別に、そんなつもりじゃ」
「誤魔化さなくていいですよ、事実ですし。はいはい、ごめんなさい。なれるとすら思えないマリンはどうしようもない人間ですよ、そう思ってるんですよね? 気にしないでください、その通りですから。こんなどうしようもない人間の夢なんか、そう言われて当然ですよ」
まるで人が変わったように、こちらへの皮肉をぶつけてくるマリン。所謂『地雷を踏んだ』ってやつか……? どうすればいいのだろう、そう思っていた時だった。
「ご、ごめん。そんなつもりじゃ……」
「やだな~俊也くん。冗談ですよ、じょ・う・だ・ん♡ お母さんでもあるまいに、お母さんヒス構文を本気で使ってたら船長がヤバい人みたいじゃないですか~!! って、誰がババアじゃコラ!! 誰がババアって言った!? あっ船長だわ、どうもすみませんでした~」
「マ、マリン……怒ってるのか?」
「いやいや全然!! 怒ってなんかいませんよ!! ほら、もう授業始まっちゃいますよ? みんな着席ー!!」
半ば強引に席へと戻され、そのまま授業が始まった。マリンの様子は、さっきのことなどなかったかのように終始明るかった……そして、放課後。
「マリン、さっきのこと……」
「あ、船長はバイトがあるので!! また今度!!」
「……嫌われちゃったかな」
明日マリンが来たら、絶対に謝ろう。そう思っていると、ぺこらとるしあが近づいてきた。
「俊也、大丈夫……? 落ち込んでる?」
「大丈夫だ、心配するな……俺の自業自得だ」
「マリン、昔からあんな感じだよ。でも、今日のは特に酷いね……」
長い付き合いであるであろうるしあですら、違和感を感じるレベルか……何か抱えてるのかな。
「明日きちんと謝ったあと、聞けたら聞いてみるか」
「何かあったなら、言ってくれたらいいのに……」
「俊也、とりあえず今日は帰ろう? ここにいても気が滅入るだけだよ」
俺は頷いて立ち上がり、ぺこらとるしあと一緒に家に帰った。そして、次の日……いつも通り、四人分のお弁当を作って、学園に向かっていると。
「俊也っ!!」
「ぺこらとマリン、そんなに慌ててどうした……まさかマリンも!?」
「いや、そうじゃないの……マリンが、街中で倒れてたって!!」
帰っている途中に倒れてしまったのか? いや、今は考察よりも行動だ。
「マリンは今どこに!?」
「救急車で運ばれてるはずだよ!!」
「よし、病院に先回りして……」
その時、救急車がサイレンを鳴らしながら通り過ぎていった。マリンが乗せられているのはあれだろう。
「あれか!!」
「急がないと!!」
「……あれ、止まっちゃったよ?」
何故だ? 緊急車両なんだし、止まる必要は……その時だった。救急車のドアが開いて……乗っていた人達が、逃げ出してきたのだ。
「ひっ、ひぃぃぃぃ!!」
「退避だ、退避しろぉぉぉ!!」
「ど、どうしたんですか!? マリンに何が……」
──ボグォグォグォ!!
鈍い音がして、救急車が変形する。それにこの気配、まさか……
「か、患者が目を開けて……体が、変形して……!!」
「マリンの体が……? そんなことができるのは……!!」
「嘘、あいつらはボコボコにしたんじゃ……!?」
どうやら、喋っている暇はないようだ。来るぞ……!! 拳を握り、両腕を前に出す。利き足を肩幅分下げ、肩幅と同じ広さに足を開いて、構える。その場でステップして、戦闘態勢を整えた。
──ボグォォォォンッ!!!
「やっぱりか……くそっ!!」
「追い払ったはずなのに、どうして……!?」
『……また一人増えているな。全く、仲間を増やすのが好きな背教者だ』
怪物の姿は……真っ白な体表をしている。顔はのっぺらぼうに大きな口がついている不気味な姿で、右手に大砲を、左手に銃を持っている。それと、体中に煌びやかなアクセサリーを纏っているな。他のところは、マリンの服の見た目と同じだが……とりあえず、これだけは聞いておかなければ。
「答えろ!! どうやってマリンを化け物に変えた!?」
『答えてやる義理はない。ここで仲良く死ぬがいい』
「あ、あぁぁっ、殺さないで……!!」
腰が抜けて動けなくなっている人に、神気取りが大砲を向けた。殺させるものか!!
『断る。死ね』
「させるか!!」
「喰らえ!!」
──ボォォォォン!!
大きな音がして放たれた、大砲の弾を迎撃するために跳躍する。そのまま体を横に捻り、砲弾に横から足裏を叩き込む!!
「セントルイス、スマッシュ!!」
──ドギャアァ!!
「ほ、砲弾を……弾いた!?」
「今のうちに逃げて!! 竜巻旋風脚ッ!!」
横に捻った勢いで更に体に回転をかけ、回転の勢いを乗せて、右足を上げて左足を下げ、神気取りの頭を狙う。奴はそれを腕で防御しているようだ……構わない。このまま突っ込む!!
──ズゴァッ!!
『ぬぅっ……!! 図に乗るなよ!!』
「もう一発……!! ブレイズキック!!」
──ゴバォウッ!!
『ぐぅっ!!』
竜巻旋風脚は神気取りの腕に阻まれたが、そこで足裏に火炎を纏わせて、奴の腕を上足底で蹴り上げた。奴のガードが堪らず崩れ、そこで二人に呼びかける。
「二人とも、今だっ!!」
「よっしゃあ!! 喰らえぇ!!」
「死ね!! 『苗床の残滓』ッ!!」
──ズガッガァッ!!
──轟ッ!!
ぺこらのハンマーの二連撃が奴の腹部に命中、追撃のるしあの呪術は、奴の頭に命中して爆裂した。奴は思わず仰け反っている……
『ぐぁぁぁぁっ!! おのれ……図に乗るな!!』
「そう言って俺たちに二回負けてんだぞ、お前は!!」
『うるさい!! 黙っていろぉぉ!!』
奴の胸部が展開し、大砲が二つ出現する。そこから、白い光線が放たれた。こちらを薙ぎ払うつもりか!! るしあを掴んで跳び、その場から離れた。
──ギュオォォォアァァッ!!!
「チッ、なんて攻撃しやがる……!!」
『もう一発喰らえ!!』
「……あいつ、あの攻撃をするには少し時間が必要らしいな。よし!! みんな、作戦はこうだ……」
精神世界に入れないと、マリンを救うことはできない。全員で接近しなければ……!!
「OK、任せて!!」
『最後の別れは済んだか!? 死ねぇ!!』
「そんなモン、するわけねぇだろ!!」
──ギュアァァァオォォッ!!!
そう叫んで、奴が放ってきた光線をそれぞれ三方向に分かれながら躱す。まず接近するのはぺこら、るしあは後方支援だ。
「『苗床の残滓』!!」
『大人しく喰らってやる義理はない!!』
──ボゴゴォォン!!!
「ぺこら、今だよ!!」
大砲の弾と呪術の炎がぶつかり、相殺されて爆風が広がる。奴は視界が塞がっても、適当に大砲を放っているが……そんな物に当たるほど、俺たちはヤワじゃない!!
「うぉりゃあぁぁっ!!」
『なに!? ぐぁっ!!』
──ズガンッ!!
「るーちゃん、今だよ!!」
「喰らえッ、『
るしあがアンデッドの動きを真似て、模範的な動きで奴の苦し紛れの銃弾をを躱し、奴の懐に潜り込む。アンデッドと一緒に、腰を低くした態勢のまま拳を構えた。
『な、なんだと!?』
「くたばれぇぇぇ!!」
──バギャギャア!!
『ごぉっはぁ!! くっ、少しはやるようだな……しかし!!』
二人の攻撃を食らっても、まだ余裕そうな神気取り。どうやらチャージが完了したようだ。しかし、そうなるのが狙い……!!
「しかし、なんだって!?」
『なっ……なんだと!? いつの間に……』
「俺はお前の後ろに回り込んで、好機を待ってたのさ!! 行くぞ、るしあ、ぺこら!!」
一瞬の隙に、三人でマリンに呼びかける。
「マリン!! 一言謝らせてくれ!!」
「マリン、起きて!!」
「戻ってきて、マリン!!」
ペンダントが輝いて、辺りが光に包まれる。どうやら成功のようだ……!!
「やった、成功だね!!」
「あぁ……!! るしあ、大丈夫だ。そろそろ光が晴れる」
「あっ、本当だ!! ここは……どこだろう?」
見渡してみると……一面緑の山と、ウミネコの鳴き声。そして見渡す限りの砂浜……無人島だろうか?
「見た感じ、無人島のようだが……」
『航海日誌 X月X日』
「あ、マリンの声だ!!」
どうやら……今回は『航海日誌』の形のようだ。聞けばわかるはず、マリンの悩みが。
『今日からマリンは航海に出る、たくさんの一味を引き連れて!! どんなお宝に出会えるのか、今から楽しみで仕方がない。君たち、出港!!』
「……とりあえず、聴きながら探索しよう」
「うん、わかった」
それからも『航海日誌』は続く……しばらくは何事もなかったが、山を歩いている時に変化があった。
『敵の海賊に遭遇した。どうやら、こちらの物資を奪うつもりのようだ。船長として、一味のみんなを守らないとね!! 君たち、行くよ!!』
「……わっ、本当に出てきた!!」
「おぉ、上物の女だ!!」
「なっ!? 喋るのか、こいつら!?」
これまでは全く喋らなかったのに……しかし、今回の敵は設定的に『敵の海賊』だから、喋って当然か。敵は前と後ろから挟み撃ちにしてきているが……これくらいなら、余裕だ。
「来るよ、構えて!!」
「お、おう!!」
「ヒャッハー!! 捕まえて犯せぇ!!」
なんだか……エロ同人に出てきそうな奴らだな。そう思いながら、さっきと同じ構えで敵を迎える。奴らは、サーベルや銃などの武器を持っているが……それだけだ。今の俺たちなら、何の脅威にもならない!! るしあはアンデッド達に対抗させているし、ぺこらはハンマーでいなしている。
「オラァ、どきやがれ変態共ォ!!」
「俺の恋人に何しようとしてんだぁぁ!!」
「ぐぇぇぇぇ!!」
やられボイスまでチンピラだ……とりあえず、これで全部だろうか。さっさと片付いてしまった……
『敵の海賊を軽く倒した船長達は、お宝目指して航海を続けるのでした!! 流石は船長ですね!!』
「やったのは俺たちなんだけどね」
「まぁまぁ、物語上ではそうってことだし」
少し余裕が出てきた。まだ油断はできないが、いつもより余裕を持って戦えている。山を降りて、砂浜を歩いていると、またマリンの嬉しそうな声が聞こえてきた。
『無人島を見つけました!! お宝の匂いがするので、あそこに立ち寄ることにします!! お宝が見つかると嬉しいなぁ……』
「この島のことか?」
「じゃあ、私達も海賊の仲間なの?」
多分そうだろう。それなら、この島のどこかに『お宝』があるのかな? そう思っていた、その時。
『……でも、お宝は見つかりませんでした』
「えっ!?」
「諦めちゃったの……? どうして?」
ここまでご機嫌だったじゃないか。一体何故だ?
『みんなで必死に探しましたが、この島に宝はなかったのです』
「そんな……でも、次があるだろ!?」
「そうだよ、ここで旅が終わりってわけじゃ……」
声は続き、どんどんネガティブな方向へと向かってゆく。
『そんな船長達の前に、敵の海賊がたくさん現れました』
「おぉ、上物の女だ!!」
「これしか言わないのか、こいつら……というか、数が多すぎるぞ!?」
さっきよりもずっと多い……船一つに乗っている人数じゃない、るしあのアンデッドと同じくらいいる。全員が襲いかかってきたので……拳を握り、両腕を前に出す。利き足を肩幅分下げ、肩幅と同じ広さに足を開いて、構えた。
「ヒャッハー!! 捕まえて犯せぇ!!」
「竜巻旋風脚ッ!!」
──ドゴゴゴゴゴッ!!
「うぎゃあぁぁ!?」
右足軸で回転しながら跳躍し、左足を回しながら敵の群れへと突っ込む。伸ばした右足を叩きつけて、十数人倒したが……まだまだいる!!
「死にさらせ!! 『苗床の残滓』!!」
「みんな!! あいつらをやっつけるよ!!」
「ぎゃあぁぁぁぁ!!」
──轟ッ!!
──ドドドドドドッ!!
流石は二人だな。るしあは炎で一掃してるし、ぺこらは野うさぎ達と一緒に撃破していっている。アンデッドと違って無限湧きではないから、まだやりやすいか……
「ヒャッハー!!」
「それ以外も言えるようにしとけ!! ソニックサイス!!」
──ボグォン!!
「ぶげぇ!!」
こちらに向かってきた奴らの横中段を狙い、左足軸で回転し、足裏を叩き込む。何人か吹っ飛ばした……ほぼいなくなったな。るしあが俺の後ろから、アンデッドと共に飛び出して……拳を構えた。
「『共撃の死霊』!!」
──ズガッガンッ!!
「ぐはぁ!?」
「ふぅ、これで全員だね……」
マリン、お前は一体何を抱えているんだ? 俺がそう思っていると……
『その戦いで、一味はほとんど死んでしまいました……他のみんなもそれに恐怖して、仕事をやめてしまいました。マリンはやはり、船長には向いていませんでした……』
「そんなことない、まだやれるさ!! 俺たちだっているぞ!!」
「そうだよ、落ち込まないで!!」
俺達はそう言っているが、聞く耳を持ってくれない。
『マリンの日記 ○月○日』
「航海日誌じゃなくなった!?」
『航海なんてしても、いいことはきっとない。お宝があるかもわからないし、大切な仲間を死なせちゃうことになる』
どんどん彼女の思考がネガティブになっている。止めないとまずい、神気取りを強くしてしまう!!
「諦めるな、マリン!! 海賊になるんだろ!?」
『大体そんなこと、海賊にならなくてもできるじゃないか。船に乗りたいなら、お金を払って船旅行にでも行けばいい。お金を稼ぎたいなら、キツい仕事をやれば自ずと稼げる。お宝はお金を貯めて、ジュエリーショップにでも行けば、いくらでも手に入る』
「そ、そんな……諦めちゃうの?」
そんな現実を見て何になるんだ、叶わないと諦めてしまうのか? その程度で諦められるモノなのか!?
「諦めるなマリン、お前が諦めたら終わりだ!!」
「……俊也くん、あれはなに?」
「船だ!! 多分マリンの……急ぐぞ!!」
三人で先を急ぐ。その間も彼女の声が聞こえてくる。
『お宝もお金も、手に入れる方法なんていくらでもあるよね。こんなマリンについてくる一味なんているはずもない、最初から叶わない夢だったんだ』
「あれがマリンの船だな……!!」
「うん、間違いない!!」
海賊旗を掲げている、大砲のついた大きな木製の船。マリンの服と同じで、赤い色をしている。
「とりあえず、あの船にどうやって行くか……」
「あれ? なんかあの船、様子がおかしくない?」
『そうだよ。こんな船があるから、マリンは惑わされるんだ。こんな物いらない……壊れちゃえ!!』
──バゴォォォォン!!
破砕音と共に、船の先端部分がえぐり取られた。火の手が上がり、海賊旗と船が燃えてゆく。最後には真っ二つに割れてしまい、海の中に沈んでしまった。
「し、沈んじゃった……マリン!!」
『そうだ、それでいい。混沌と危険に満ちた宝探しなどバカバカしい、平和に平凡に生きる方が余程有意義だ』
「海の中から何か出てくる……!!」
マリンの姿をした神気取りが、悠々とこちらに歩いてくる。
「おい、神気取り!! マリンの船をよくも!!」
「この者が望んだことだ。あんな馬鹿な夢を見るより、普通に社会に出て普通に暮らすのが、こいつの身の丈に合っている」
「マリンは叶えるために努力してたの!! それをお前が無駄にするなんて許さない!!」
ぺこらがそう言ったが、奴はそれを鼻で笑って言う。
「フッ……他人の分際で、知ったような口を聞く奴らだな。全く、傲慢な奴らだ」
「うるせぇ、寄生虫!! マリンから離れろこのゴミクズがぁぁ!!」
「口汚い女だな。まぁいいさ、今度こそ貴様らに引導を渡してやる!!」
また、マリンの声が聞こえてくる。完全に諦めきっているようだ。
『マリンの夢は叶わない!! そう思って諦めちゃう方が、ずっと楽に生きられるじゃん!! どうしてここまで追いかけてきたの!?』
『教えてやろう、それはこの者達が愚かだからだ。こいつらは、普通に生きようとする貴様の邪魔をする侵略者だ!! さぁ、どうする? このままこいつらの侵略を、許しておくつもりか!?』
「やめろ、神気取り!! マリンを惑わすな!!」
『そんなの……嫌だ!! そうなるくらいなら……みんな、消えちゃえ!!』
──ズゴォォォォン!!!
マリンがそう叫んだ瞬間、地面を突き破って神気取りの本体が現れた。倒れたマリンは、金色のドクロの形をした盃に入れられ……奴に飲み込まれてしまった。
「そんな……マリン!!」
「くそっ、待ってろマリン!! 絶対に助けてやるからな……!!」
『我こそ神、願いの化身なり!! 真なる願いに立ち塞がる者は、尽く滅ぶべし!!!』
夢を叶えることの最大の敵は、自分自身。