ホロライブラバーズX ファンタジック・ピースメイカー 作:とも667
しばらく悩みましたが、また書くことにしました。またよろしくお願いします。
ここから書き方が変わりますので、ご了承くださいませ。
マリンの邪神が倒されたすぐ後。秋月は、上司から電話で叱責されていた。いや、叱責と言うよりは恫喝やパワハラだが。
『おい、秋月。これで失敗は何度目だ? ん? 自分が何をしているのかわかってるか?』
「さ、三度目です……申し訳ありません」
『そうだ、三度目だ。貴様はなんだ、ただの人間か? 違うだろ? 貴様は神なんだぞ!? わかってるのか!? 貴様は!! ただの人間に!! 三度も敗れたんだ!!!』
上司の恫喝に、秋月が肩を竦める。冷や汗を垂れ流して、顔を恐怖に歪めながら必死に弁明する秋月。とても神を名乗っていたものとは思えない姿だ。
「理解しております、本当に申し訳ありません!! だからどうか、どうか処分だけは……!!」
『だいたいこれだけ失敗しているのに、何故お前自身が行かないんだ? さっさと殺せばいいだろうに。ヤマダの奴は、一瞬で邪魔者を殺していたなぁ。キサラギも、カミキもそうだ。貴様はどうかな?』
「ほ、本当に申し訳ありません……その通りです。しかし、次こそは!! 次こそは仕留めてご覧にいれます!! そのためにも、もう一度……もう一度だけ、私にチャンスをください!!」
秋月はそう言って、最後のチャンスを懇願した。上司はその様を哀れんだのか、ため息をついてから言った。
『いいだろう。あと一度だけチャンスをくれてやるよ、仏の顔も三度までだ……次は無い。もし次やったなら、減給では済まさんぞ』
「は、はい!! もちろんです、ありがとうございます!!」
『精々奴らを殺してみせろ、貴様は人間ではなく神なのだからな』
──プツッ。プー、プー……
電話が切れて、機械音だけが鳴る。秋月はさっきまでの恐怖が嘘のように、歯を強く食いしばって怒り始めた。電話がミシミシと嫌な音を立てて、中のケーブルや機械が露出する。
「くそぉっ、くっそぉぉぉっ!!! この、パワハラ上司がぁぁぁっ!!! オラァァ!!!」
──ベギャアァァ!!!
秋月が電話機を握り潰し、本体に投げつける。邪神人間特有のパワーで、電話機は粉々に壊れてしまった。それでも怒りが収まらず、秋月は怒りのままに物に当たる。壁を触手と拳で何度も叩き、ベコベコに凹ませてゆく。
──ズガガガガガンッ!!!
「俺を馬鹿にするんじゃない!! 俺が本気を出せば!! 本気さえ出せれば、あんな奴らなんて……」
そう言った秋月の壁を殴りつける手が、突然止まる。そんな奴らに、秋月は三度も負けているのだ。それなら『あんな奴ら』に負け続きの自分は? それに気づいて湧き上がってくる感情を誤魔化すために、秋月はさらに激しく暴れる。
「うるさいッ!! 黙れ、黙れ黙れ黙れ!!! おのれぇ、碇俊也ァァァァ!!!」
──ズゴォォォッ!!!
一際大きな音がして、コンクリートの壁が砕け散る。息を切らす秋月は、必死に自分の心の中にある『恐怖』を否定していた。そう、秋月は三度の敗北で……碇俊也達に、恐怖していたのだ。味わったことがないほどの屈辱とそれを上回る恐怖。
「うっ、うぅぅ……」
暴れるのをやめた途端、恐怖は秋月の精神をどんどん蝕んでいく。冷や汗が凄まじい勢いで、秋月の体を流れ落ちる。もう、体の震えに耐える手段は秋月になかった。
「恐怖などしていない、私は神だ、神なんだ……神は、何者にも屈さない……あんな、あんな有象無象など……」
「秋月支部長。奴らに関しての資料をお持ちしまし……」
「うるさい!! 黙っていろォォォ!!!」
自分を鼓舞するための、根拠の無い言葉を邪魔された秋月は、怒り狂いながら部下に白い触手を伸ばした。触手は部下のすぐ横を通り抜けて、後ろの壁を砕く。部下はそれに恐怖して、書類を置いて走り去る。
「ひっ、ひぃぃっ!! 失礼しましたぁぁ!!!」
「俺は……あんな奴らなんかに……負けるはずが、ないんだ……」
そう言いながら、震える手で資料を捲る秋月。しばらく書類をめくっていた秋月は、ひとつ良いことを思いついた。冷や汗がピタリと止まり、その代わりに嫌らしい笑みが浮かぶ。
「そうだ……なにも一人ずつやることはない。二人同時に差し向けてやればいい……!! どうして気づかなかったんだ、これぞ火事場の馬鹿力!!」
秋月は笑ったまま立ち上がり、次のプランを練り始めた。
「そうと決まれば、早速プランを練らなければ……ククク、覚悟しろ碇俊也……!! 貴様も、貴様のお仲間も……この街も!! ここで終わりだ!!! ハッハッハッハ!!!」
そう言って秋月は、心底機嫌が良さそうにプランを紙に描き始めた。それが思わぬ理由で破綻しているとは、夢にも思わずに。
眠っていた俊也が、目を開ける。見知った白い天井に、俊也は安堵を覚えていた。ここにいるということはつまり、死んではいないということだから。それと同時に、自分の頭に『浮かんできた』新技。
「『奮迅脚』と『クルーエルディザスター』か……」
それぞれ、相手との距離を詰める技と、回転して回し蹴りをぶち込む技だ。俊也は最初は不思議に思っていたが、今となっては利用している。別に害があるわけでもないからだ。
「そういえば、三人は大丈夫かな……」
俊也が気にしているのは、自分の恋人二人と……助け出した宝鐘マリンだ。マリンは元気そうにしていたが、二人は大怪我を負わされていた。俊也は、邪神に怒りを覚えると同時に、彼女達を心配する。そんな時、病室のドアがノックされた。
「どうぞ?」
「お邪魔します、碇さん。目覚めましたか」
「お陰様で。三人の容態はどうですか?」
俊也はすぐさま、三人のことについて尋ねた。すると医者は、優しい口調で俊也に言った。
「大丈夫です、彼女達なら命に別状はありません」
「ホントですか!? よかった……!!」
「元気すぎて、早くあなたのところへ行かせてくれってずっと言っていますよ」
困ったように苦笑いする医者を見て、心配性はお互い様であることに気づき、俊也が苦笑する。
「そうですか、ありがとうございます。彼女達に言っておいてください、俺は元気にやってるってね」
「わかりました。伝えておきます、それでは」
「ありがとうございました」
出ていく医者に向かって一礼し、俊也がベッドにまた寝転がる。これで邪神の襲撃は三度目で、その上何一つとして本体の居場所の手がかりがない。
「本当にどこからやってるんだ? まさか宇宙とか?」
もしそうであれば、お手上げだ。俊也が最悪の可能性を首を振って振り払う。まぁ、実際そんなことはないのだが、俊也にはそう思えて仕方なかった。
「あいつ自身の顔でも分かればなぁ……」
しかし、わからない以上は仕掛けてくるまでどうにもできない。俊也はため息をついて、窓の外を見た。
「被害者がどんどん増えていく、実行犯を潰してもダメだった……どうしろって言うんだ?」
俊也は邪神の言っていたことを省みてみた。『自分が神である』と言って憚らないこと。化け物にして自分の体にすることを『救済』と呼ぶこと。そして、取り憑くためには、よくわからない肉片を埋め込む必要があること。
「……ただの神気取りサイコ野郎にしか思えないけど、肉片に関しては気になるな。奴の体の一部なのかな?」
俊也は必死に頭を絞って考えるも、答えは出ない……当然だ、情報が少なすぎるのだから。
「とりあえず、みんなが元気になってくれるのを待つしかないか」
それから数日。ドアがノックされると同時に、三人が病室に入ってきた。俊也の無事を確認するや否や、俊也に詰め寄ってくる。
「お邪魔しますっ!!」
「俊也くん!! 大丈夫!?」
「心配してたんだよ!!」
三人に詰め寄られて、俊也が少しだけたじろぐ。しかし、すぐに立て直して言った。
「俺なら大丈夫だ、心配するなよ。それよりもみんな、体は?」
「怪我はしてたけど、全然元気だったよ!! でも、先生が行っちゃダメだって……」
「寂しすぎて死にそうだったぺこ……」
俊也はぺこらとるしあの寂しさを理解して、腕を広げてみせた。二人がその中に飛び込んで、俊也に抱きつく。
「よしよし、二人ともよく頑張ったな」
「ありがとう……俊也くん大好き」
「えへへ、こんな彼氏持てて幸せぺこ……」
何日か振りにイチャイチャする三人。そんな中、蚊帳の外にされていたマリンが声を上げた。
「あの、イチャイチャしてるとこ悪いんだけど……」
「あ、ごめんマリン。そのまま話して?」
「うん。とりあえず、ごめんなさい。色々と迷惑ばかりかけちゃったね……」
マリンはとても申し訳なさそうにしているが、それを俊也は否定した。
「マリンが負い目を感じることがどこにある? 悪いのは邪神だろ?」
「そうだけどさ、その前のこともあるし……」
「あれなら気にしてないよ。こっちだって言い過ぎたしな」
そう言って俊也は、マリンのことを軽く許した。二人も俊也に抱きついたまま振り向いて、言う。
「もちろん、るしあも気にしてないよ?」
「ぺこらだって、全然気にしてないよ!!」
「みんな、ありがとう……ホントにみんな、優しいね」
マリンは少し涙を流しながら、それに感動している。俊也はその様子に、笑って言った。
「当たり前だろ、友達だしな!!」
「……友達ってだけ?」
「えっ?」
突然そう言われて、俊也が固まった。それはつまり、もしかして……そう言う前に、マリンが誤魔化した。
「なんてね、ずっと友達ですよ!! 本当にありがとう、それじゃ!!」
「あ、ちょっ、ちょっと!?」
「……あの様子だと、マリンもそうみたいだね」
ぺこらがそう言って、俊也も確信した。マリンが、自分に対して好意を抱いていることに。るしあが、少し頬を膨らませながら言う。
「俊也くんの女たらし……」
「仕方ないじゃん!! 友達は助けたいじゃないか!!」
「それはそうだけどね。それで、どうするの?」
ぺこらに聞かれて、俊也が真顔で即答する。
「そりゃあ、マリンが俺のこと好きなら嬉しいよ」
「じゃあ、決まりだね。るしあはいいよ」
「ぺこらもいい。よし、決定」
本人の知らないうちに、マリンのハーレム入りが決定した。俊也が次に考え始めたのは、デートプランだ。
「それじゃ、マリンはどこ行ったら喜ぶと思う?」
「そうだね……可愛い物好きだし、デステニーランドとかどう? 今はピーク外れてるし、ある程度空いてるんじゃないかな」
「ありがとうるしあ、そうするよ!! よし、やる気出てきた!!」
俊也は次のデートプランが確定して、やる気満々だ。そんな俊也に、二人が不安そうに言う。
「だけど……」
「ん? どうした?」
「マリンが来ても、るしあ達のことずっと愛してね?」
そう言われて、俊也が笑って二人を抱き締めた。
「当然だろ? 愛してるぜ、二人とも!!」
「えへへ……!!」
「当たり前だよね!!」
しばらくイチャイチャした後、二人は病室に戻った。それから時は経ち、退院の日。俊也は病院を出て、家に帰った。
「さてと、チケット予約しとかないとな」
そう言って俊也は、デステニーランドのチケット予約を行った。マリンと俊也で、二人分だ。
「よし。明日行けば学校は休みだし、明日マリンを誘おう」
そう予定を立てた俊也だったが、そこでインターホンが押される。そして、よく知っている声が聞こえてきた。フレアとノエルだ。
「俊也くん、いる? 私だよ」
「団長もいるよ!! いないなら返事してー!!」
「いなかったら返事できないでしょ」
阿吽の呼吸でボケとツッコミを行う二人。その様子を微笑ましく思いながら、俊也がドアを開けた。
「はい、僕ならいますよー」
「あ、俊也くん!! こんにちは、元気そうでなにより!!」
「そっちこそ。それで、今日はどのようなご用件で? 遊びに来たって感じじゃないけど」
俊也が尋ねると、二人の顔が一気に真面目になる。それを見た俊也も、顔を引き締める。
「うん、本題に入ろうか。今回、マリンちゃんが邪神にされた事件……実行犯を片付けたのは、君たちだ。けどまたしても、事件は起こってしまった」
「そうだな。確かに実行役は叩き潰したんだが……」
「その件でわかったことがあってね。今回の一件の犯人は……人間じゃないかもしれない」
人間ではない。それを聞いて、俊也が少し考える……そして、ハッとしたように言った。
「まさか、邪神本人か!?」
「察しがいいね、私達もそうだと思ってる。痺れを切らして、ついに本人が出張ってきたみたいだ」
「その証拠がこれ。鍵穴から採取された、ヌルヌルした液体……ピッキングしたなら、こんな液体は付かない。でも、事実ピッキングの跡はある。その上、人間らしき足跡が、マリンちゃんの家から出てるし……邪神は人型だね」
俊也はそれに対して、強い危機感を覚えた。このままでは、この街が危ない。
「俺になにか出来ないか?」
「今のところは無理かな、私達も場当たり的な対処しかできてないし、邪神にされた人を救えるのは君だけだ」
「とりあえず今はこの街で、引き続き救助活動をして欲しい」
そう言われた俊也は、露骨に悔しそうにする。みんなに降りかかる危険を、事前に叩けないことに。
「くそっ!! 発信機でもつけて、あいつらを泳がせておけばよかったか……」
「実行犯を見つけたんだ、その場で倒すのは当然だよ。私達だってそうする」
「それに裏を返せば、邪神がやっと尻尾を出したんだ。絶対掴んで、引き寄せる!!」
二人も、気合を入れている様子だ。その様子を見て、俊也も落ち込んだ心に気合いを入れ直す。
「わかった。それじゃ、お互いに頑張ろうな」
「うん、頑張る!!」
「あぁ、あと。今度からは跡をつけるなら、言っといてね」
そう言って二人は、家から去っていった。俊也はその言葉に苦笑しながら、二人を見送る。
「……バレてたか」
次の日の昼休み。いつも通りみんなに弁当を渡して、食べてもらっている時。俊也が、チケットを隠してマリンに近づく。
「マリン、ちょっといいか?」
「ん? 俊也くん、なに?」
「じゃん!! これ、福引で当たったんだ!! デステニーランドの、ペアチケット!!」
本当は高いお金を出して買ったのだが、それを言えばマリンは来てくれないだろう。そう思って俊也は、嘘をついた。
「うわぁ、羨ましい……!!」
「今日はマリンと一緒に行きたいんだ!! ダメか?」
「えっ、いいんですか!? もちろん、いいですけど……ホントにマリンでいいの?」
俊也が頷いて、マリンにチケットを差し出す。
「もちろん、今回はマリンと一緒に行きたいんだよ」
そう言って、後ろにいる二人に笑いかける。二人は、何も言わずに笑って頷いた。
「そ、そうなんだ……じゃあ、明日は空けとくね!!」
「楽しみにしててくれ!! きっと楽しくなるぞー!!」
「う……うん!!」
少し顔を赤くしながら、マリンは頷いた。こうして、俊也とマリンのデートが確定した。俊也は帰ってから、デステニーランドの見取り図を見ておく。
「エスコートしないとな。デートで迷子になってたまるか」
しっかり読み込んで、しっかりと寝る。そして次の日、待ち合わせ場所のデステニーランド前。俊也はもう一時間前には来ていた。続いてマリンが、時間10分前に走ってくる。いつもよりしっかり化粧をしており、服装は赤を基調としたゴスロリ衣装だ。
「俊也くーん!! お待たせしました!!」
「奇遇だな、今来たところだよ。今日は二人でたっぷり楽しもうぜ」
「うん!! デステニーランド初めてなんです、俊也くんもですか?」
マリンにそう尋ねられて、俊也は笑って答える。
「俺も初めてなんだ。けど大丈夫、前日にパンフレットしっかり読んだからな。あと、その服似合ってるぜ」
「あ、ありがとうございます……」
「さぁ、早く行こうぜマリン!!」
俊也はそう言って、マリンの前に出て手招きする。マリンはそれについて行き、デステニーランドに入った。中に入って早速、可愛らしいマスコット達に迎えられる。
「デステニーランドにようこそー!!」
「あっ、ネズミくんにネズミちゃんだ!!」
「確か写真撮影できるんだったな。やってみるか?」
マリンはそれに頷いて、俊也がスタッフに声をかけた。四人でカメラの範囲内に入って、満面の笑みを作る俊也。
「笑って笑って!! はい、チーズ!!」
「おぉ、よく撮れてるな……」
「俊也くん!! 次あそこ行きましょう、超すごいって噂のジェットコースター!!」
そう言われて、俊也が一瞬たじろぐ。俊也はホラーが苦手なのに加えて、絶叫マシンも苦手なのである。しかし拒否するわけにもいかず、俊也は頷いた。
「わ、わかった。行こうか」
「決まりですね、早速ゴーゴー!!」
「マリン!? 急いで行くなよ、迷うぞ!?」
早く乗りたいマリンは、ジェットコースターの方へと走っていく。俊也はそれを追いかけて、人混みを掻き分けてゆく……
「あっ、ラッキー!! ちょうど行列短い!!」
「ぜぇっ、ぜぇっ……遊園地って、過酷だな……」
「このくらいでバテないでくださいよ~? まだまだ、楽しいことがいっぱいなんですから!!」
マリンはいつもの性格を忘れて、すっかり世界に入り込んでいる。一方俊也は、これから訪れる地獄に戦々恐々としていた。そして……その時が訪れてしまった。
──カタカタカタカタカタ。
「おぉ、どんどん上がっていく……」
「……あ、あそこから落ちるのか?」
「楽しみだなぁ~!!」
満面の笑みのマリン。その横でバイブレーションする俊也。頂上に辿り着いたジェットコースターが、坂に差し掛かり……急速に落下した。
──ズジャアァァァァァァ!!!
「ま、待て、まだ心の準備があぁぁぁぁぁぁ!?!?」
「ひゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ここで俊也は、一生分のスリルを味わうことになった。終わった後の俊也は、ベンチにもたれかかってげっそりしている。
「だ、大丈夫ですか? 俊也くん……」
「……ごめん。しばらく休ませて」
「ごめんなさい、無理に連れて行っちゃって……」
げっそりした俊也を見て、マリンが謝罪の言葉を述べた。しかし俊也は、それに対して首を横に振る。
「気にしなくて、いいよ……マリンを楽しませたくて、来たし……」
「そ、そうなんですね……そうだ、お昼ご飯食べませんか!? 目の前にご飯屋さんあるし!!」
「……そりゃ、いいな」
俊也が少しだけ元気を取り戻して、ふらつきながらも立ち上がる。やけにメルヘンなご飯屋さんに入り、童話の世界に出てきそうなご飯が出てきた。
「ごゆっくりお召し上がりください」
「これ、あのキャラクターが食べてたやつだ!! 美味しそう……いただきます!!」
「……美味いか?」
俊也も少しずつご飯を口に運びながら、そう尋ねる。マリンは笑顔を浮かべて、大きな声で言う。
「そりゃもう最高に!!」
「それなら、何より……だよ」
「まだまだ行きたいところあるので、着いてきてくださいね!!」
「……絶叫マシンは、勘弁してくれ」
俊也はそれからも、色んな場所にマリンを連れていくことになった。お菓子を買って食べたり……
「このお菓子美味しいっ!! あの子の好物なのもわかるなぁ……」
「次はどこ行く?」
「あ、パレードしてる!! 見に行きましょう!!」
キャラクターのパレードを見に行ったり。
「今こっちに手振ってくれた!! わわっ、人混みが……きゃっ!?」
「手を離すなよ? 押し流されちまうぞ」
「……はい」
手をつないでしばらく見た後、船のアトラクションに乗ったり。
「行くよみんなー!! 出港ー!!」
「おー!! ……うわっ、めっちゃ揺れる!!」
「こういうアトラクションなんだ、乗ってみたかったの!!」
……揺らされまくった俊也が船酔いしたことは、最早言うまでもないだろう。そして最後に、お土産を買う。
「ぺこらには……お菓子嫌いじゃないだろうし、お菓子でいいか」
「ぺこらはアーモンドチョコレート好きだから、これとかどう?」
「いいな、これにしよう。るしあは、アイスクリームが好きらしいけど……持って帰れないよな」
俊也が他の物を探していると、マリンがある物を見つけてきた。
「これなんてどうです? お化けのシルクちゃんのぬいぐるみ!! るしあ、怖い系好きだから知ってると思いますよ」
「流石付き合いが長いだけあって、俺よりよく知ってるな。これにしようか」
「この海賊帽……!! 欲しかったやつ!! 買ってもいい!?」
「いいよ、カゴに入れな」
俊也がそれも買い物カゴに入れ、まとめて精算する。かなり出費を強いられたが、マリンが笑顔になるならば安いものだ。
「あ、もうこんな時間だ……楽しい時間って、すぐに過ぎちゃうな」
「また来ればいいさ、今度はみんなで来ようぜ」
「うん!!」
しばらく歩いて、二人でベンチに座った。遊園地から出ると、一気に疲れが襲ってくる。
「ふぅ……疲れたな」
「だけど、楽しかった!! 本当にありがとう、俊也くん!!」
「マリンが楽しかったなら、何よりだよ」
思い出したように、マリンがスマホを取り出す。そして、俊也にある画面を見せた。
「あっ、そういえば!! コレ、見てください!!」
「これは……船の設計図?」
「船の設計業者さんに頼んで、擦り合わせと見積もりをしてもらったんです。設計図がこうなってて……今は、とても手が届かない値段でした」
マリンはそこから立ち上がって、言ってみせる。その顔には、もう前のような卑屈さはない。
「だけど、買うんだな」
「はい!! 絶対にお金を貯めて、何年ローンにしてでも買います!!」
「頑張れよ、マリン。お前ならきっとできる」
俊也は心の底から、マリンを応援していた。二人も、この場にいれば応援しているだろう。そしてマリンは、ベンチに座って顔を赤くする。
「これも……俊也くんのおかげだね」
「違うよ。マリンが頑張ったんだ、俺達は邪魔者を蹴り飛ばしただけさ」
「……そんな俊也くんだから、好きになったの」
そう言われて、俊也の体が跳ねる。遊園地に集中してすっかり忘れていた。
「マリン、お前は俺のこと……」
「うん、好き」
「そうか。わかってたけど、いざ言われるとドキドキするな」
俊也は照れ笑いしながら、そう言ってマリンに向き直る。
「……マリンのこと、愛してくれますか?」
「もちろん。大歓迎だよ、マリン」
「ホント!?」
マリンの顔がぱぁっと明るくなる。俊也はそれを見て満面の笑みになった。
「俺は嘘はつかないよ。マリンのことは、俺が一生守るさ。船の上でも、ずっとな」
「俊也くん……!! ありがとう!!」
「礼には及ばない。好きな人なんだから、当然だろ?」
そう言われたマリンが、たまらず俊也にキスをする。俊也はそれを嫌がる様子もなく、受け入れていた。
「これでキスは三度目ですかね、俊也くん?」
「お前にとってはファーストキスだろ、マリン?」
「えへへ、そうですね……あれ? なんか冷たい……?」
──ザァァァァァ。
運悪く、このタイミングで雨が降ってきた。俊也は、マリンと一緒に立ち上がって逃げる。
「なんてタイミングだよ⁉ やべぇぞ、このままじゃずぶ濡れだ……!! どこかで雨宿りしないと!!」
「あ、あそこなんてどうですか!?」
「よくやったマリン、行こう!!」
俊也とマリンは、その建物をよく見ずに入っていく。二人はまだ知らない……ここが俗に言う、ラブホテルであることを。
走者のコメント「ラブホ入りましたね、愛情値はどのくらい稼げるかな……?」
次回、えっち回です。