※この作品はR-18です。

ホロライブラバーズX ファンタジック・ピースメイカー   作:とも667

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 二人はどうなってしまったのでしょうか。


邪神VS邪神

一方その頃、置いていかれてしまった俊也達は……当然だが、ノエルとフレアのことを心配していた。時間は、まだ15分も経っていないが、凄まじい物音が俊也達に聞こえてくる。それを聞きつけたみんなが、ザワつき始める。

 

 ──ドゴォォォォン!!

 

「うぉっ、なんだなんだ?」

 

「……やっぱり戦ってるんだ、それも並の技じゃない。相手は強いな」

 

「ってことは、やっぱり邪神本体……!?」

 

 俊也達は二人がやられた現場を想像して、ゾッとする。耐えられなくなり、俊也はノエルとフレアのことをアキロゼに報告した。

 

「あの、先生。お話があるんですが」

 

「ん? なに、俊也くん? それに、みんな集まってきてるけど……」

 

「実は……というわけなんです」

 

 俊也達にそれを伝えられたアキロゼが、顔を顰めた。それと同時に、緩かった空気が緊迫する。

 

「なるほどね、彼女達の考えそうなことだけど……そうだとしたら、まずいね。わかった、アキロゼはみんなを避難させるよ」

 

「はい、邪神は僕らに任せてください!!」

 

「怪我のないようにしてね? アキロゼにも監督責任というものがあるから……」

 

 俊也と三人はそれに頷いて、ノエルとフレアが向かった方向に走っていく。走っていると、音がどんどん近くなってきた。

 

 ──ズガガガガァァッ!!!

 

「ノエルにフレア、無事だといいが……」

 

「邪神が相手じゃ、万が一ってこともあるよね……もう殺されてるかも……」

 

「とりあえず急ごう。手遅れになる前に!!」

 

 全員がマリンの言葉に頷いて、必死に走る。そして、俊也達は漸く現場を見つけた。しかし……現実は非情である。ノエルは既に倒れ、フレアも触手を突き刺されて倒れるその瞬間を、目撃してしまった。

 

「がっ、はっ……」

 

「あ、あぁぁ……そんな!!」

 

「触手など幾らでも生やせる……何をしようと、勝てばいいんだ!! 勝ったものこそ神に相応しい!!」

 

 狂気を込めた声でそう叫ぶ、白い触手を生やした男。俊也達はその嗤いに、その声に……聞き覚えがあった。

 

「やっぱり、こいつが邪神の本体だね……!!」

 

「安心しろ。貴様らの心はたっぷり利用してやる……私の『勝利』のためにな!! ハッハッハッハッハッハ!!!」

 

「許さねぇぞ、頭パッパラパーのクソッタレが!! 今すぐぶっ殺して……!!」

 

 激怒して襲いかかろうとするるしあを、俊也が制止した。それに対して、三人が不満を表す。

 

「ちょっと待った」

 

「俊也くん、どうして止めるの!? あいつが目の前にいるのに……!!」

 

「そうだよ!! 今やらないと、あいつ逃げちゃうよ!?」

 

 しかし俊也には、きちんと考えがあった。あの者を、確実に仕留めるための考えが。

 

「碇俊也とそのお仲間め、覚悟しろ……この山を貴様らの墓場にしてやる!!!」

 

「俺に考えがあるんだ。みんな、四方向に分かれよう……囲いこんで、確実に潰す」

 

「なるほど、絶対に逃がさないために……ってことだね」

 

「協力してくれ。その前に、油断して情報を喋るかもしれないからな。俺が飛びかかったら、みんなも技の準備をしてくれ。いいか?」

 

 全員が頷いて、四方向に散った。それぞれがいつでも攻撃できる体勢にある。

 

「この秋月に勝てるはずがないんだ、身の程を知れ!! もうすぐこいつらは私の器になる、そうすれば奴らといえども……さて、そろそろ基地に戻るとするか」

 

「お前の行き先は墓の中だ、神気取りィィィ!!!」

 

「なっ、碇俊也!? いつの間に……」

 

 俊也はそこから飛び出して、覚えたばかりの奮迅脚で一気に接近する。秋月はそれに対し、触手で応戦しようとしたが……気づくのが遅かった。俊也はその場で踏み込み、左足を軸にして一回転。クルーエルディザスターだ。それは油断した秋月の胸部に、思い切り突き刺さる。

 

「クルーエルディザスター!!!」

 

 ──ズダァァァァン!!!

 

「ぐっはぁぁぁっ!?!?」

 

「まだだ!! サイクロンディザスター!!!」

 

 俊也は吹っ飛ばした秋月に、跳んで追いつく。そのまま縦回転して、両足で三回蹴りを浴びせた。秋月はそれに対応できずに、地面に叩きつけられる。

 

 ──ズガガガァァッ!!!

 

 ──ドゴォォッ!!!

 

「ぐげぇぇっ、がぁぁ……!!!」

 

「今だ、みんな!! トドメを刺せ!!!」

 

「うぐっ、がふ……!?」

 

 俊也は秋月の腹部を蹴りつけて離脱し、そこに三人が攻撃の準備をする。るしあは巨大な骸骨を、マリンは巨大な海賊船を呼び、ぺこらは野うさぎ達を呼び出していた。

 

「ぶっ潰れろ、クソ野郎がぁぁぁぁ!!!」

 

「君たちー、全弾発射!!!」

 

「みんな、噛みちぎってやれー!!!」

 

 ──ズゴァァァァッ!!!

 

 ──ドゴゴゴォォォォン!!!

 

 大砲の弾と骸骨の巨大な拳が、次々に秋月を襲う。しかも野うさぎ達に纏わりつかれているせいで、全く動けない。更にそこに、一次関数のグラフが現れる。それは秋月を挟み込んで拘束した。

 

「ギャアァァァァーッ!!! こ、この……」

 

「喰らえ、ボルテックフィニッシュ!!!」

 

「なっ……!! うがぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 秋月は大きく吹っ飛び、木々を突き破って飛んでいく。普通なら追うところだが……如何せん、タイミングが悪かった。

 

「とりあえず大ダメージは入ったはずだ。今は二人を、邪神にならないようにしないと……!!」

 

「暴れられたら入るのも一苦労だもんね、賛成!!」

 

「マリンは初めてだったな、まずはノエルからだ!!」

 

 ノエルの体から、白いモヤが出てきている。ノエルの体が打ち上げられた魚のように震えて、触手が出てきた。それがどんどん、ノエルを覆い隠していく。

 

「させるか!! ノエル、今助けてやるからな!!」

 

「ちょっとだけ待っててね、フレアちゃん!!」

 

「うわっ、眩しい!?」

 

 覆い隠そうとする触手に触れて、光が溢れ出す。俊也は成功を確信した。光が晴れると、そこには……荒れ果てた街があった。

 

「ここは……街の中か?」

 

「あれ、騎士団本部? ボロボロになってるけど……」

 

「ぺこらパターンか……じゃあ、お宝の在り処は家か?」

 

 俊也が辺りを見回していると、地面から湧いてくる殺気に気づいた。そこから人型で鎧を着た、白いマネキンが現れる。剣や銃など、様々な武器を所持している……

 

「あいつら、ここにもいるんだね……!!」

 

「気をつけろよ、何をしてくるかわからんぞ」

 

「……」

 

 しかし、予想とは裏腹にマネキンは何もせずに、踵を返して去っていった。他のマネキンも、揃ってどこかに行く。

 

「あれっ? 襲ってこないけど……」

 

「妙だな。今までは俺たちを見つけたら、真っ先に殺しに来てたのに」

 

「追いかけてみる? 何かあるのかも」

 

 マリンの提案に、全員で頷いた。マネキン達を追って走っていくと、硬い物がぶつかる音が聞こえてくる。

 

 ──ズガァァァァン!!!

 

 ──ヂュバァァァァッ!!!

 

「みんなはあそこに向かってるみたいだよ!!」

 

「ここは、エルフの森……? これまたどうして、こんなところに?」

 

「とりあえず今はノエル優先だ、行こう!!」

 

 俊也は考える前に走っていく。そして、音の元に辿り着いたが……そこでは、目を疑うような光景が繰り広げられていた。フレアが放った雷の矢を、ノエルがメイスで弾く。ノエルは反撃で地面を叩き、地面から土塊を出して攻撃する。

 

「死ね、白銀ノエル!!」

 

 ──ヂュバァァァァッ!!!

 

「なんでわかってくれないの、フレア!!」

 

 ──ズガガァァァン!!!

 

「ぐっ……このっ!!!」

 

『うぐっ……!!』

 

『ぐはっ!? や、やめろ……!! 言うことを聞け!!!』

 

 そこではノエルとフレアが、一体一で殺し合いをしていた。マネキンが集まってきて、マネキン同士で殺し合いを始めている。異様な光景に、俊也は理解が追いつかない。

 

「な、何が起こってるんだ……?」

 

「どうして二人が殺し合いしてるの? ここはノエルの世界なんじゃ……」

 

「よく分からないが、止めないと……!! おい、やめろ!! 二人とも!!」

 

 しかし、二人は聞く耳を持たない。ただ一心不乱に、殺し合いを続けている。攻撃がどちらかに命中する度に、邪神は苦痛の声を上げた。そして、ノエルやフレアの『心の悲鳴』も聞こえてくる。

 

「『イフリート』ォ!!」

 

 ──ゴォォォォォッ!!!

 

『うぁぁぁっ!!』

 

『ぐぁっ、がっ……やめろと言っているのがわからんか!!』

 

「熱いじゃん、何すんの!!」

 

 ──ズドドォォォォッ!!!

 

 メイスで地面が砕かれてしまい、土塊をノエルがフレアに投げつける。それが命中すると、またしてもノエルの精神の声が聞こえてきた。これまでにない状況に、俊也は混乱しながらも、必死に考える。

 

『がぁぁっ!!』

 

『うぐぅわぁぁっ!!』

 

「このぉぉぉ!!」

 

 そして、俊也は一つの可能性に辿り着いた。もしも、これが事実なら……今回は従来のやり方が、一切通用しない。

 

「そ、そういうことか……!!」

 

「何か分かったの、俊也くん?」

 

「多分二人にとっての『宝物』は、ノエルとフレアなんだ!! 二人はお互いの宝物を攻撃し合ってる!!!」

 

 それを聞いた三人が、驚愕する。邪神がやるならわかるが、当の邪神は制御できている様子はない。つまり、完全に二人の意思だ。

 

「つまり、どういうこと!?」

 

「フレアが死んだらノエルの精神が死ぬ、ノエルが死んだらフレアの精神が死ぬ!!!」

 

「えぇぇぇっ!?」

 

 目の前で戦い続ける二人を見つめながら、俊也は冷や汗を流している。

 

『き、貴様らっ……ぐっ!! さっきはよくも!!』

 

「それはこっちのセリフだ、どういう状況なんだ!?」

 

『体の自由が、効かない!! こいつら、がはっ、勝手に暴れおって!!!』

 

 どうやら邪神すら、ノエルとフレアを制御できないようだ。二人は埒が明かないと判断したのか、お互いに距離を取って体に力を込めている……

 

「これで、絶対に殺す!!!」

 

「それは、こっちの台詞だ!!!」

 

『や、やめろ!! 勝手に俺の力をっ……うぉぉぉぉ!?』

 

 マネキン達が二人の体にくっついて、体の形状が変化していく。ノエルの手には巨大なメイスが、フレアの手には巨大な双剣が出現した。

 

 二人の下半身には、大量のマネキンが纏わりついて、それが蜘蛛のような脚を作り出している。顔と上半身の部分は、二人の服と髪をつけたのっぺらぼうになっていた。腕には人の手のような形をした枷が、二対ついている。

 

 そこで邪神が、乗っ取る好機かと思って自分の権能を解放し、いつもの口上を言おうとする。

 

『我は神、願いの……!!』

 

「「うるさい!! 黙ってろッ!!!」」

 

『ぎゃあぁぁぁぁ!?』

 

 無理矢理意志を押し潰されて、邪神が悲鳴を上げる。二人は、邪神も俊也達も無視して口論を続けていた。

 

「フレア、どうしてわかってくれないの!? 私はこんなに好きなのにっ!!!」

 

「ノエル、どうしてわかってくれないの!? 私は他の友達が欲しいのにっ!!!」

 

「「わかってくれないなら、ぶっ殺す!!!」」

 

 そう叫んで、二人がまた武器を構えた。あんなに仲のいい二人が、どうして。そう考える俊也はふと、今日の二人の様子を思い返した。

 

『本当!? ありがとう、ノエルも行こう?』

 

『……うん、行こう行こう!!』

 

『もちろん、良いこともあるけどね。そうじゃなきゃ、フレアには会えてないし。ね、フレア?』

 

『……ん、あぁ。そうだね、ノエルに会えたのはいいことかな』

 

 俊也はずっとお互いに、別の感情を抱えていたことに気づいた。当然だ、二人は仲良しでも別の人間。考えが違って当たり前だろう……それが邪神に増幅されたら、邪神を飲み込むまでになるのは想定外だった。

 

「二人はずっと、お互いに不満を抱えてたんだな……」

 

「そうだったの!? でも、このままじゃ……!!」

 

「あぁ、どちらかが死ぬまで戦いは止まらない!!」

 

 もしも、どちらかが死んでしまったら。どちらが生き残ったとしても、後悔だけが残るだろう……

 

「一緒にいてくれないなら、殺してでも!!」

 

「友達がノエル一人だけなのが辛いの!! 邪魔しないで!!」

 

 ──ガギャアァァァン!!!

 

「やめろ、二人とも!! 殺し合いなんてするんじゃない!!!」

 

 俊也の呼びかけは届かない。しかし、どちらかを倒すこともできない……かといって、二人を無視して何とかする方法を探していれば、どちらかが死ぬのは時間の問題だ。ノエルがメイスを振り上げ、フレアもそれに合わせて炎と雷を纏った腕を振り上げた。

 

「喰らえ、『ベールの炎雷』!!!」

 

「喰らえ、『地鳴り』!!!」

 

 ──ヂヂヂュオォォォンッ!!!

 

 ──ドゴゴガァァァァンッ!!!

 

「あぁ、また……!! どうやったら止められるの?」

 

 二人の攻撃が、またぶつかる。お互いに大きく吹っ飛ばされたのに、全く怯まずにまた向かってゆく……二人が次の攻撃を構えた。

 

「『神の怒り』!!!」

 

「『雷の杭』!!!」

 

「やめろぉぉぉぉッ!!!」

 

 悲痛な叫びは、届かない。光と雷がぶつかって、衝撃波が辺りを吹き飛ばしていく。

 

「うぐっ……!!」

 

「るしあ!? クソッ、何かないか……!!」

 

「俊也、焦っちゃダメ。しっかり考えて」

 

 ぺこらがそう言って、焦る俊也を落ち着かせた。俊也は必死に頭を回して……そこで思いつく。

 

「よし!! 三人とも、聞いてくれ!! みんなで協力して二人を止める!!」

 

「了解、どうしたらいい?」

 

「作戦はこうだ……!!」

 

 幸い二人もマネキン達も、俊也達には見向きもせずに戦い続けている。作戦を全て説明し終わると、満場一致でその案は肯定された。

 

「なるほどね。まぁ、それしかないか」

 

「ぺこらとるーちゃんはここに残るんだね?」

 

「あぁ、こっちに来ないようにしておいて欲しい。頼めるか?」

 

 ぺこらとるしあが頷いた。それを見て、俊也が笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、行きますか!!」

 

「作戦開始だ、みんなっ!!」

 

「よっしゃ!! 任せとけ!!」

 

 俊也と三人は二人ずつのグループに分かれて、ノエルとフレアに近づいていく。まずはフレアの注意を引くために、マリンと俊也が攻撃する。俊也が跳躍し、踵落としの体勢に入ったところで、マリンが新技を放つ。

 

 ──ジャララララッ!!

 

「喰らえ、『チェーンアンカー』!!」

 

「ッ!? また邪魔が入ったか!!」

 

「マンチェスター、スマッシュ!!」

 

 マリンの手に先端に鋏のついた鎖が出現し、マリンがそれを投げつける。それはフレアを挟み込んで、マリンが引っ張ることで、フレアをその場に押さえつけた。そこに俊也が、全力の一撃を叩き込んだ。

 

 ──ドギャオォッ!!!

 

「グァァッ!? くっ、くそっ……さっきから喧嘩の邪魔ばかりして、何がしたいの!?」

 

「これは喧嘩じゃない!! どこからどう見ても殺し合いだ!!!」

 

「フレア、余所見しちゃ……うぐっ!?」

 

 後ろからぺこらが現れて、ハンマーを後頭部に叩きつけた。それに思わず怯んだノエルを、るしあのアンデッドが無理やり引き戻す。

 

「お前の相手はるしあとぺこらだよ!!」

 

「行きたいならぺこらを倒していけ、ファファファ!!」

 

「こなくそぉぉ、邪魔するなぁぁぁぁ!!!」

 

 ──ズガガァァァン!!!

 

 ノエルがそう叫んで、メイスを目の前に叩きつけた。そこから暴力的な光が溢れて、炸裂する。しかし、二人には当たらない。聖なる力で消されたアンデッド達も、るしあがいれば幾らでも湧いて出てくる。

 

「ふーたん、こっちですよ!!」

 

「私の邪魔をして、そんなに死にたいの!?」

 

「殺せるもんなら殺してみろよ!!」

 

 俊也がそう言うと、フレアは激怒して俊也達に剣先を向ける。これで陽動作戦は成功だ、俊也はノエルを引き付けている二人とアイコンタクトを交わし、フレアの攻撃に備えた。フレアは浮き上がってから、凄まじい雷と炎を辺り一帯に撒き散らした。俊也は『我慢』をかけながら、ノエルと反対方向に走り出す。

 

「じゃあ、そのまま死ねよ!! 『ベールの暴虐』!!!」

 

 ──ゴォォォォォッ!!!

 

 ──バヂバヂィィィィッ!!!

 

「ぐっ、ヤケになってるな……でも、それでいい!!」

 

「鬼さんこちら、ってね!!」

 

 俊也はマリンと協力して、ある程度の攻撃を加えながら誘導していく。フレアは怒りを向けた相手以外が見えておらず、目の前の二人を追いかけてゆく。フレアは走りながら二人に光の槍を投げつけているが、ほとんど避けられている。無論ノエルも黙ってはいない、フレアを追いかけようと走り出す。

 

「待って、フレア……ぐっ!?」

 

「よそ見してちゃ、ダメぺこだよ!!」

 

「逃がすな、お前ら!! 囲い込めッ!!」

 

 アンデッドがノエルを取り囲み、ぺこらはすばしっこく動き回りながら、ノエルに攻撃を与える。ダメージは少ないが、彼女達の役割は足止め。これで必要十分だ。

 

「二人とも頑張ってるな、俺も頑張らねぇと!! 頼むぜ、マリン!!」

 

「船長に任せなさい!! 喰らえ、『ガルルトマホーク』!!」

 

「そんなものが……効くかぁぁ!!!」

 

 マリンは大砲からミサイルを発射し、フレアの脚部に命中。炸裂した部分が凍りついたが、フレアは炎魔法ですぐに溶かしてしまい、そのまま豪炎を二人に放つ。

 

 ──ゴォォォアァァッ!!!

 

「……そろそろいいか?」

 

「大分離れられたと思うよ」

 

「よし。フレア!! そろそろ決着つけようぜ!!」

 

 俊也はそう言って、握り拳を握り……好戦的な笑みを浮かべて、右足を前に出した。右腕も前に出し、左腕はその後ろに。マリンもその横で大砲を構えて、準備万端だ。

 

「うるさい、早く死ね!! 『ベールの炎雷』!!!」

 

 ──グォヂヂヂィィィッ!!!

 

「甘いな!!」

 

「なに!?」

 

 俊也は叩きつけられた炎雷を、奮迅脚でフレアの懐に潜り込んで躱す。そこから、そのまま左回転をかけながら跳躍して……回し蹴りを放つ。

 

「セントルイススマッシュ!!」

 

『がぁぁっ!!』

 

『ぐわっ!? お、おい!! こいつと白銀ノエルを殺す気か!?』

 

「がっ!? このっ、舐めるな!! 『イフリート』!!!」

 

 邪神がなにか喚いているが、俊也は無視する。フレアもそのまま黙ってはいない、目の前にいる俊也に対して極大の炎を放つ。しかし、俊也はそれにも怯まない。回転の勢いを維持したまま、さらに回転する。

 

「竜巻旋風脚ッ!!」

 

「これも抜けられるの!? ぐっ!!」

 

『うぅぐっ!!』

 

『貴様、何をやっている!? こいつらがどうなってもいいとでも!?』

 

 邪神の叫びを無視して、俊也が怯んだフレアを蹴って飛び退く。そこに、マリンがすかさず大砲を撃った。

 

「『EARSHOT(耳鳴り砲)』、発射!!」

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

『ギャアァァァァァッ!!!』

 

『うぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』

 

 耳鳴りがしそうな程の爆音と、凄まじい爆発がフレアを飲み込む。フレアと邪神とノエルの心の悲鳴が響き、俊也が着地した。

 

「ナイス連携、マリン!!」

 

「俊也くんこそ、いい蹴りだね!!」

 

『貴様ら……何を考えているんだ!? こいつらを守るのでは、なかったのか……!?』

 

 邪神は心の底から困惑しながら、俊也に尋ねる。しかし俊也は、飽くまでも二人を救おうとしている。

 

「お前のせいで従来のやり方が通用しない。だからさ、俺も頭を絞って考えたんだよ……もちろん、手加減はしてるさ」

 

『このまま蹴り続ければ、二人とも死ぬぞ!?』

 

「知ってるさ。でも、説得して頭を冷やしてくれそうにはなかったからな。苦肉の策さ」

 

 つまり俊也は、物理的にどちらかを止めることで、争いをやめさせようという魂胆なのだ。目の前にいなければ、素直な気持ちになれるかもしれないから。

 

「くっそぉぉぉっ、邪魔しないでよ……!! 私は、私は!! ノエル以外の友達が欲しいの!!!」

 

「でも、ノエルちゃんを殺すことないでしょ!?」

 

「ノエルは何もわかってくれない!! ずっとあの調子!! もう嫌なの!!」

 

 フレアは悲痛な叫びを上げながら、俊也達を全身で睨みつけた。しかし俊也は、それでも説得を続ける。

 

「ノエルだって大事な友達だろ? 話し合う場も設けずに殺したら、一生後悔するぞ!! 思い出せよ、初めて出会った時のことを!!」

 

「うるさいうるさいッ!! 私は自由になりたいの!!! 邪魔するなァァァァァァァ!!!」

 

「俊也くん、また大技が来るよ!!」

 

 フレアは半狂乱で、近づいてくる俊也から逃げるように浮き上がる。絶叫しながら、周囲に獄炎と落雷を呼び寄せた。それに対して俊也は……腰を深く落とし、その場で一瞬制止する。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁッ!!! 『ベールの暴虐』!!!」

 

「えっ、俊也くん!? 何して……」

 

「……見切った」

 

 俊也は一言そう言うと、次の瞬間凄まじいスピードで動き出した。即死しかねない炎と雷の中を抜けていき、フレアに急速に接近する。

 

『あれを全て避けたのか!? 有り得ん!!!』

 

「『ソニックブーム・アヴォイド』」

 

「ッ、しまっ……」

 

 それを抜けられてしまえば、フレアは無防備。そこに俊也は、自分の最大火力を叩き込む。空中で一回転し、フレアに踵を向ける。

 

「マンチェスター、スマッシュ!!!」

 

 ──ズギャアァァ!!!

 

「ぐぁぁぁぁっ!!!」

 

『うぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 二人の悲鳴に耐えながら、俊也が次の攻撃を構える。そこから更に縦回転して、落ちていくフレアに更に蹴りを叩き込む。

 

「サイクロンディザスター!!!」

 

 ──ズギャギャギャアァァッ!!!

 

『ウギャアァァァァァ!!!』

 

「ガァァァァァァァッ!!!」

 

『あがぁぁぁぁぁぁっ!!!』

 

 三人分の悲鳴と共に、フレアが地面に倒れ伏す。勝者は誰が見ても明らかだ。

 

『おい、不知火フレア!! 動け、目の前に敵はいるぞ!! 早く殺してしまえッ!!!』

 

「フレア。もうやめよう、好きな人同士で傷つけ合うなんて……悲しいよ」

 

「……わかってる。でも、止められなかった」

 

 フレアが一気に冷静になる。俊也に倒されたことで、頭が冷えたようだ。

 

『お、おいどうした!? 体への干渉が……!!』

 

「お前はお役御免だ。引っ込んでろ」

 

『やっ、やめろ!! 私はまだ……』

 

 邪神の声が途切れて、フレアの姿が元に戻る。申し訳なさそうに、フレアが二人を見た。

 

「ごめんね。迷惑ばっかりかけて」

 

「いいよ。それより今は、ノエルを助けてあげよう」

 

「二人のことも心配だし、早く行ってあげようよ」

 

 三人で頷いて、ノエルの方に歩いていこうとする。その時、疲れたフレアがバランスを崩した。

 

「うわっ……!!」

 

「フレア、大丈夫か? 肩貸すよ」

 

「あ、ありがとう……」

 

 フレアが転びそうになったのを、俊也が支えて歩いていく。そこでフレアは見た、俊也の脚があちこち焦げているのを。しかし、俊也はそれを全く態度に出していない。

 

「どうした、フレア? なにか気になるか?」

 

「……ううん。早く行こう」

 

「あぁ、ノエルを助けようぜ!!」

 

 そう言ってまた、俊也達は二人の方へと歩いていく。フレアの頬は、少し赤くなっていた。

 

 

 

 一方、その頃。二人は少しずつだが、ノエルに押され始めていた。いくらるしあが物量に優れていて、ぺこらが素早いとはいえ、ノエルも聖騎士団の団長。いつまでも持たせることはできない。ノエルが向かってくるぺこらとアンデッドを見ながら、メイスを地面に叩きつけて叫ぶ。

 

「オラァ!! くたばれぇぇ!!」

 

「そんなもの!! 『我慢溶岩』!!!」

 

「うぐぅっ……!!」

 

 ──ボゴォォォォン!!!

 

 メイスを叩きつけた部分から、溶岩爆発が発生する。溶岩がアンデッドを飲み込み、次々に溶解させてゆく。ぺこらも爆発を少し食らってしまい、体を焼かれて地面を転がった。

 

「ぺこちゃん!!」

 

「大丈夫、このくらいなら……っ!!」

 

「死ね!! 『白亜の』……!!」

 

 その隙を狙って、ノエルが最大の一撃を構えた。眩しい破壊の光が、ノエルのメイスを包み込む。これを喰らえば、確実に無事では済まない。それを見たるしあが、巨大な骸骨を呼び出す。

 

「させるかァァァ!!!」

 

「『鉄槌』ッ!!!」

 

「ッ、るーちゃん……!!」

 

 ──ズゴォォォォォッ!!!

 

 骸骨が両手を伸ばして、メイスを食い止める。しかしノエルのメイスには、アンデッドへの特攻を持つ祝福の力がある。それは無慈悲に、るしあの骸骨の腕を崩してゆく……

 

「うぐぅぅ……っ!!」

 

 ──パラパラパラ……

 

「潰れろぉぉぉぉ!!!」

 

「させるか!!!」

 

 絶体絶命のピンチ。そんな時、俊也がノエルの後ろから飛び出す。もちろん、マリンとフレアも一緒だ。

 

「俊也くん!! 来てくれたんだ!!」

 

「竜巻旋風脚ッ!!!」

 

 ──ガギィンッ!!!

 

「ッ、また私の邪魔を……!!!」

 

 俊也は回転して、メイスに右回し蹴りを叩き込んだ。回転の勢いを利用して、更にもう一撃。

 

「セントルイススマッシュ、エアフォース!!!」

 

 ──ズゴォォォン!!!

 

 ──ガシャアァァァッ!!!

 

「ッ、逸らされた……!!!」

 

「二人とも怪我してるな……フレア、治療頼めるか?」

 

 元の姿に戻ったフレアが頷いて、二人のもとに来た。二人はとても驚いている。

 

「えっ、なんで元に……!?」

 

「元に戻してもらったの。ちょっと荒療治だけどね……『太陽の光の癒し』」

 

「あ、傷が……ありがとう!!」

 

 フレアがそう言って『奇跡』を使うと、その場にいる全員の傷が塞がる。ぺこらがお礼を言ったが、フレアは首を横に振った。

 

「そんなのいいよ。それより今は、ノエルが大事だ」

 

「そうだな。ノエルを止めてやらないと」

 

『貴様ら、さっきはよくも……!!!』

 

 邪神を無視して、フレアがノエルに呼びかける。

 

「ノエル!!」

 

「フレア、戻ってきてくれたの!? よかった、やっぱりフレアには私しかいない!!」

 

「言いたいことがあって来たの。聞いてくれる?」

 

 フレアがそう言うと、ノエルは大きく頷いて邪神化を解除する。

 

「もちろん、幾らだって聞くよ!!」

 

『お、おい!! またこうなるのか!?』

 

「ノエル。私があなたと出会ったのは、あの日……私が落ち込んでた時だったよね」

 

「うん、なんだか放っておけなくて……」

 

 二人が落ち着いて、昔の話をし始める。俊也達はそれを黙って見守っていた。

 

「肌が黒いせいで、あの日は散々に言われてさ。ダークエルフ扱いされて……色んな場所で酷いこと言われて、どうしてこんな目に遭うんだって思ってた」

 

「団長はそれを聞いて、理不尽だって思った。だから、フレアに言ったの。騎士団に来ないかって」

 

「私はただ、友達とか仲間とかが欲しかった。だから、藁にも縋る思いでそれに飛びついた……」

 

 二人とも友達がいなかった。そこでできたのが、フレアにとってのノエルであり、ノエルにとってはフレアだ。

 

「私も同じだった。ずっと聖騎士団長として扱われて、尊敬はされても友情はなかった。そこにフレアが友達になってくれて、嬉しかったの」

 

「私はどんどん出世して、差別は全然されなくなった。騎士団長補佐ってことで、尊敬までされた。本当にいい気分だったよ……最初はね」

 

「……友達が欲しくなったのか」

 

 つまり、ノエルと同じ。周囲から尊敬しかされないことに、嫌気が差したのだ。

 

「だけど、私にはフレアがいた。もう、それだけで幸せだったの。なのにどうして、私から離れていくの? 嫌だよ、また一人ぼっちになるのは……!!」

 

「私は我儘だった。一人だけじゃ満足できなかった……だから、他のみんなとも仲良くしようとした。だけど、それがノエルには離れていくように見えたんだね。ごめん」

 

「それじゃ、やっぱり私がフレアの唯一無二の……」

 

 ノエルがそう言おうとして、フレアが首を横に振る。

 

「ううん。私はやっぱり、たくさんの友達が欲しい」

 

「どうして……なんで、理解してくれないの……」

 

「ノエル、本当はあなたも……他の友達が欲しいんじゃない?」

 

 そう言われて、ノエルが必死に首を横に振る。

 

「そんなことない!! 私は、フレアさえいればっ……」

 

「本当に、全く欲しくないの?」

 

「それは……」

 

 そう言われて、反論しようとしたノエルが黙り込む。

 

「……無理だよ。今までずっと、無理だったのに」

 

「私以外もいた方が、世界は広くなる。ノエル以外がいれば、世界はどんどん広がっていく……それに、友達はあそこにいるでしょ? なってくれようとした人が」

 

「フレア以外の、友達……」

 

 フレアが笑って、ノエルの手を取る。

 

「ノエル。私はもっと広い世界に行きたい……ノエルと一緒に。たくさんの友達と一緒に!!」

 

「……もう、二人ぼっちじゃないんだね」

 

「うん。誰かさんが教えてくれたから、わかったの」

 

 フレアが俊也の方を向く。それを聞いて、俊也も笑い返す。しかし、邪神にとっては死刑宣告に等しかった。当然だ、もう次はないのだから。

 

『お、おい待て!!! 願いはどうしたァ!?』

 

「どいてよ。私はフレアと一緒に、友達と一緒に行くんだから!!」

 

『ぐぁぁぁぁぁぁっ!!!』

 

 断末魔を上げて、邪神の気配とマネキン達が消滅する。

 

「ノエル。私たちの友情は無くなったりしない、絶対にね」

 

「うん……!! こんなにたくさんの友達ができて、団長は幸せ者だ!!」

 

「ハッピーエンド、だな」

 

 俊也がそう言って、上を見る。暗かった空は、すっかり明るくなっていた。

 

「流石、相変わらずのイケメンムーブですね!!」

 

「いやぁ、それほどでも……」

 

「ありがとね、俊也くん。また助けられちゃった」

 

 フレアがそう言うと、俊也が振り向いて言った。

 

「何言ってんだよ、俺たちもう友達だろ? 友達が間違ったことしようとしてたら、止めるのは当然の義務だ!!」

 

「そうか……もう友達だったか!! じゃあ、改めてよろしくね」

 

「もちろん!! な、みんな?」

 

 三人も頷いている。ノエルとフレアの新しい一歩は、幸先のいいスタートになったようだ。

 

「俊也くんがいいなら、いいよ!!」

 

「これからよろしくね!!」

 

「……うん!!」

 

 ノエルは、笑ってそう言った。目の前が白くなり、心の世界が消えてゆく……俊也達が目を開けると、そこはもう現実だった。

 

「みんな、大丈夫か?」

 

「うん、ちょっと疲れたけど……平気だよ」

 

「ノエちゃんとふーたんは……大丈夫そうだね」

 

 二人はまるでいい夢でも見たかのように、清々しい顔で目覚めた。

 

「あ、ここは……おぉ、現実だ!!」

 

「本当にありがとう、助かったよ」

 

「礼なんていいって、友達だろ?」

 

 俊也が笑ってそう言うと、二人も笑う。そこでノエルが、思い出したように叫んだ。

 

「あー!! そうだ、邪神!!」

 

「やっべぇ、そういえば吹っ飛ばしてそのままだ……!! もう逃げてるか!?」

 

「まだ逃げてないかもよ、追いかけよう!!!」

 

 そうして六人は、みんなで慌ただしく秋月を追いかけていった。




次回、アキヅキ戦開始。

走者のコメント
「あ、俊也くんレベルアップした……お、奥義技だ!!」
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