※この作品はR-18です。

ホロライブラバーズX ファンタジック・ピースメイカー   作:とも667

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 ついに第一章、最終決戦です。


最終決戦開始

地面を踏みつけながら、俊也達が疾走する。全ての元凶たる邪神を、逃がさないために。しばらく走っていると、根元からへし折れて血の付着した大木を見つけた。

 

「これに当たったみたいだが……邪神世界にいる時は、現実では動けないはずだ。そう遠くへは行ってないはず」

 

「手分けして探そう。俊也くんはあっちをお願い」

 

「わかった、みんなも頼むぞ」

 

 全員で六方向に分かれて、秋月を探す。しかし、どこにも秋月の姿はない。俊也は一人で、歯軋りしながら辺りを見回している。

 

「例の触手を上手いこと使ったのか……? くそっ、せめて手がかりでも落ちてれば……ん?」

 

 俊也がそう言っていると、足元に妙な物を見つけた。それを拾い上げると、そこには……

 

「手帳……? もしかして、秋月の持ち物か!?」

 

 俊也はそれに気づいて、集合場所に戻る。もうみんな戻ってきて、話をしている最中のようだ。

 

「あ、俊也!!」

 

「こっちはハズレ。何も無かったよ、俊也くんは?」

 

「こんなのが落ちてた。相当慌てて逃げてたんだろうな」

 

 俊也の差し出したそれはシンプルな手帳だが、血液が付着している。その上、ここに落ちていたということは……真っ先に気づいたのは、ノエルだった。

 

「秋月の持ち物か……!! なんて書いてある?」

 

「読んでみるよ」

 

『5月 2日 やった、私も邪神人間になれた!! これで私も、新世界に行ける!! 記念に手帳を買った、今日からは出来事をこれに記録していこう』

 

 それを読んだ瞬間、全員が秋月の物で間違いないことを確信した。同時に、『邪神人間』が秋月の正体であることも知る。

 

「どこかに基地の場所とか書いてない?」

 

「待って、探してみるから……」

 

『1月 12日 私に特別任務が言い渡された。ホロシティに赴き、ホロライブ学園を破壊するようにとの指示だ。これを達成すれば、クソ上司も私の評価を改めるだろう。基地の場所は闇市から東に進んだ、『宝窟山』の麓だ。この辺りは魔物も多いし、警察も近づいてこないだろう』

 

 やはり書いてあった。それを聞いて、その場の全員が笑みを浮かべる。

 

「これで基地の場所は割れたね。あそこには滅多にパトロールが入らないし、犯罪者も余程強くないと近寄れない。あいつらにはベストな場所かもね」

 

「まだ続きがあるな」

 

『扉のパスワードは『86612』だ。どういう意味なのかはわからないが、神に関連することだろう』

 

 パスワードも書いてあった。これでいつでも、基地に向かうことができる。

 

「他に有用な情報はない?」

 

「……これなんてどうだろう、読み上げるぞ」

 

『3月8日 研究所のシミズ主任が、おかしな研究をしているらしい。いや、あいつがおかしいのは元からなのだが。なんでも、『邪神人間にさせず、能力のみを付与する』研究らしい。そんなことをして何がしたいのか、意味がわからない』

 

 そう書かれていたのを見て、ノエルとフレアがすぐに気づいた。苦虫を噛み潰したような顔をして、言う。

 

「……要するに人体実験してるんだね。やっぱり、最悪の組織だよ」

 

「もしかして、私達が邪神にされたのも人体実験の一環なのかな……」

 

「案外間違ってないかもな……ん?」

 

 これも人体実験の一環なのかと思いながら、俊也が手帳を捲っていると……最近の記録に、興味深い物を見つけた。

 

「俊也くん、なにか見つけた?」

 

「あぁ、これなんだけどな」

 

『5月1日 私の破片を埋め込んだ兎田ぺこらが、何故か兎の化け物になった。私の思い通りに動かせるようだ……これを使えば、強くない私でも街を破壊できる。それにしても、溶けるのでも邪神人間になるのでもなく怪物になるとは。どういう仕組みなのだろう?』

 

 そう書いてあったのを見て、俊也は一つのことに気がついた。

 

「つまり邪神人間は沢山いて、なれなかった場合は普通溶けて死ぬ? 増やす方法は、自分の破片を誰かに埋め込むこと……」

 

「そういうことだろうね。けど、ぺこらちゃんが化け物に変わったのは嬉しい誤算だった……ってところかな」

 

「どうしてぺこら達だけ……?」

 

 その次のページ。そこには、敗北した秋月の俊也への恨み節が書かれていた。

 

『5月2日 碇俊也、何なのだあいつは。この私を倒すとは、本当に人間なのか? いや、今はそれよりも次のターゲットを決めねばならないな。次は……潤羽るしあ、こいつにしよう。念には念をだ、今回は周囲に部下を配置しておく』

 

「るしあが骸骨の化け物にされた時だな……」

 

「本当に許さない!! ガチで痛かったし!!」

 

 るしあが怒りを顕にする中、俊也はどんどんページを捲る。すると、るしあを助け出した後の記述に興味深い物があった。

 

『5月18日 クソッ、なんてことだ。また負けた、あの人間に!! ……一旦落ち着いて、気づいたことをここに書く。どうやら、怪物化は破片に一定以上の適性がある場合かつ、強さが人並み外れていることが条件らしい。強さというのは体だけではなく、魔力なども含まれるようだ……これは、シミズの奴が片手間で研究して寄越した論文に書いてあったことだ』

 

「そうなのか……だとすると、みんなはある程度適性があったんだな」

 

「あんな物に適性あって欲しくないけどね」

 

「皮肉なことに、そのお陰で溶けずに済んでるんだけどね」

 

 嫌そうにそう言うフレア。そして、更にしばらく捲り続けていると……

 

「これが最後のページだな、また俺達への恨み節……」

 

『6月10日 これが最後のチャンスだ。成功しなければ俺は、遠くない未来に殺されるだろう。やられてたまるものか、俺は神だ。あの狼藉者共に、誰に挑んだのかを思い知らせてやる!! クソ上司め、今に見ていろ!!』

 

「……そして、結局負けたってわけね」

 

 つまり、秋月は何もせずとも死ぬということだ。しかし、全員の気持ちは変わっていない。

 

「何もせずともあいつは死ぬんだね……」

 

「でも秋月が処分されたら、基地の中にある資料とかもまとめて消される。放っておいてもメリットはゼロだよ」

 

「つまり、俺達のやるべき事はひとつだ」

 

 全員の気持ちは同じだった。街を破壊され、ぺこらをはじめとしたみんなは化け物にされて、散々利用された。それを撃破することができるチャンスが、今目の前にあるのだ。

 

「明日、邪神連合基地を襲撃する。それでいい?」

 

「賛成。俊也、異論はない?」

 

「俺はない。みんなは?」

 

「「異議なし」」

 

 意見は揃った。明日間髪入れずに襲撃をかけて、秋月を殺害する。そして、資料を押収して基地を完全に破壊する。

 

「きっと勝てるよ、攻撃してダメージ入ってたし!!」

 

「絶対にぶっ殺す!! クソ連合の神気取りめ、首洗って待ってろ!!!」

 

「これまでだって勝ってきたし、負けるわけないよ!!」

 

 三人は自信満々だ。それは、俊也と二人も同じ。

 

「俊也くん、うちから騎士団も総動員して協力させる。全力を尽くそうね」

 

「あぁ、神気取りの鼻っ柱をへし折ってやる。みんな、期待しててくれよ」

 

「この街のためにも、絶対に勝とう」

 

 全員で頷いて……一旦、キャンプ場へと戻る。すると先生方が集まって、会議をしていた。

 

「ただいま戻りました」

 

「あ、俊也くん!! みんなも戻ってきたんだね、よかった……」

 

「先生、私から状況報告を致します」

 

 ノエルが丁寧な口調と真面目な声色で、あったことを説明していく。それを聞いた先生は、顔を顰めていた。

 

「……つまり、その『邪神』というのが森の中にいたんだな。二人はそれに敗れて、二ュースにもあった化け物にされ……それを君達が救出した、と」

 

「はい」

 

「にわかには信じ難いが、聖騎士団団長がそう言っている上に、目撃者がこれだけいるとなると……」

 

 どうやら、ノエルとフレアのネームバリューが高じて、信用を得られているようだ。フレアはノエルに続いて話す。

 

「ともかく、ここは危険です。一刻も早く皆さんを家に帰らせ、安全を確保すべきかと」

 

「……君の言う通りだ。全員、リフトを使って下山させよう」

 

「ありがとうございます」

 

 先生が呼び掛けを行って、全員を降ろしていく。俊也達もリフトに乗り込んで、山を降りる。

 

「邪神だってさ、ヤバくね?」

 

「神様ってマジでいるんだなぁ」

 

「はいはい、押さないでくださいね」

 

 俊也はみんながザワつく中、極めて冷静だった。あれが神などではないと、知っているから。それは、俊也の隣に座ったぺこらも同じ。

 

「俊也。いよいよ明日だね」

 

「あぁ、明日で決着がつくんだ」

 

「絶対に勝とうね」

 

 そう言われて、俊也が頷く。学園に到着して、すぐに解散となった。今日はしっかり休み、明日へ備えるために。手帳はノエルに手渡し、証拠品として鑑識に回されることになった。

 

「……ここまで長かったな」

 

 邪神人間の秋月。神を名乗り、人を化け物に変えてきた悪人。もう、秋月に逃げ道はなかった。

 

「覚悟しろよ。お前の命は明日までだ」

 

 

 

 時間は少し遡り、ノエルとフレアへの憑依が失敗した秋月は……必死に逃げていた。邪神人間の身体能力をフルに使って、敵から逃げる。秋月は現実でも精神世界でもやられて、精神も肉体もボロボロだ。

 

「くそっ、何故だ!! 何故だぁぁぁ!!!」

 

 秋月はそう叫びながら、逃げ続ける。自分は神だ、新世界の神となるはずなんだ。それが負けるなど有り得ないと、秋月はこの期に及んで思っていた。

 

「処分など、されてたまるものか……!! 俺は、新世界に行くんだ!! あんな奴らに殺されてやれるかぁぁ!!!」

 

 触手を物に引っ掛けて、できる限り早く逃げる。基地に辿り着いて、パスワードを入力し……基地の中に入る。それを見た部下が、新調された電話機を手渡した。

 

「秋月様、お電話が……」

 

「うるさいッ!!!」

 

「ひっ!?」

 

 秋月は血走った目で、触手を出現させて……新品の電話機を貫いて壊してしまった。

 

「俺の邪魔をするな!! 貴様ら下等生物は、私に従っていればいいんだぁぁぁぁ!!!」

 

「は、はい!! 申し訳ありません!!」

 

「電話を二度と持ってくるな。あとで指示を出す、罠をありったけ設置しろ!!!」

 

 そう吐き捨てて、秋月は自分の部屋に戻った。しかし内心で秋月は、死の恐怖に怯えきっている。あたかも、蛇に睨まれた蛙の如く。

 

「あいつらが来る……負けるはずがない、負けるはずがないんだ……!!」

 

 秋月は自分にそう言い聞かせながら、罠や人員を配置していく。全ては、自分の生存のために。

 

「俺は絶対に、負けるわけには……」

 

 今まで四回も負けている事実が、秋月の精神を蝕む。秋月はもう、根拠もない虚勢を張ることしかできなかった。

 

 

 

 次の日。俊也達は準備万端で、規定の場所に集まっていた。一番早く着いたのは、ノエルとフレアだ。それから、俊也が到着する。

 

「お待たせ。待たせたな」

 

「いや、大丈夫だよ。まだ30分前だし」

 

「他のみんなは……あ、来た」

 

 俊也が振り向くと、みんながやる気に満ちた目で歩いてきていた。

 

「俊也、お待たせ。しっかり準備してきたよ」

 

「るしあも、今なら負ける気しない」

 

「絶対に勝とうね‼」

 

 全員揃ったところで、ノエルが作戦説明を始める。

 

「みんな揃ったことだし、作戦を説明するね。まず騎士団のみんなに魔物を食い止めておいてもらうから、移動に関しては心配しなくていい。調べてみたけど、入口は正面の一つだけだ。まずはパスワードを入力して開かないか試して、開かないなら……」

 

「強行突破だな」

 

「そういうこと。中には間違いなく、罠とか戦闘員とかが大量にいると思う。だから、入ったら即戦うことになると思っておいて」

 

 全員、言われなくともそのつもりであった。

 

「それじゃ、行こうか」

 

「闇市を更に東に行くんだったな」

 

「こっちだよ」

 

 六人が秋月の基地を目指して、どんどん歩いていく。その途中で、騎士団の人に出会った。魔物を殲滅していたのか、武器に血がついている。

 

「お疲れ様です、団長!!」

 

「お疲れ様。それじゃ、行ってくるね」

 

「はい、ご健闘をお祈りします!!」

 

 そう言って、男は深々と礼をした。それを見た俊也が、笑って言う。

 

「尚更負けられないな」

 

「負けるつもりなんか、最初からないでしょ?」

 

「言えてるな」

 

 そう言って、いつもの調子で歩く六人。しばらく歩いていると、基地の前に到着した。鉄の扉が、ぽつんと一個ある。

 

「パスワードは……86612、と」

 

『ロック解除』

 

「……何が出てくるかわからないよ。準備して」

 

 俊也達が開いていく鉄の扉を見て、構えた。そして、すぐに内装が見える。しんと静まり返った、殺風景な道。

 

「あれ、何も来ない……?」

 

「まだ何があるかわからない、油断するなよ」

 

「うん。慎重に進もう」

 

 ──カツン、カツン。

 

 やけに静かな銀色の廊下に、足音が響く。しばらく歩いていると、俊也達は『支部長室』を見つけた。

 

「ここに秋月がいるのか……」

 

「なにか仕掛けてくると思う。覚悟して入ろう」

 

「うん!!」

 

 ──ギギィィィィ……

 

 鉄の重たい扉が開いて、人影が一人分見えた。それは俊也達が来たことを確認すると、踵を返して俊也達に振り向いた。

 

「秋月ッ!!」

 

「やはり来たか、愚か者共め」

 

「何言ってんだよ、私たちに一方的にやられてた癖に!!」

 

 マリンがそう言ったが、秋月はそれを鼻で笑った。

 

「あれはやられてやったのさ。全く本気ではなかったよ」

 

「馬鹿言え、俺達の不意打ちには全く対応できてなかったのに」

 

「フン、神相手によくそこまで言えるものだ。片腹痛いわ」

 

 秋月は飽くまでも余裕そうな態度を崩さず、俊也達を見下し続ける。ノエルが秋月に対して、最後の警告を行う。

 

「今すぐ降伏しなさい。そうすれば、命は助けてあげてもいい」

 

「バカ言え。私は新世界の神になるんだ、貴様らのような下等生物とは生きる場所が……」

 

「死ね!! 『苗床の残滓』!!!」

 

 堪忍袋の緒が切れたるしあが、呪術の炎を秋月に投げつける。しかしそれは、秋月をすり抜けてしまった。

 

「えっ、どうして……!?」

 

「……ホログラム映像か!!」

 

「正解だ、もう作戦は始まっている。死ぬのは貴様らの方だ、じゃあな」

 

 ホログラムが消えて、部屋中から罠が飛び出す。天井から無数の銃が生えてきて、更に扉から連合員達が押しかけてくる。

 

「発砲しろ」

 

「死ね、碇俊也!!!」

 

「……甘いな」

 

 しかし、みんなその程度で死ぬ程ヤワではない。銃が一斉に発砲され、銃弾が四方八方から迫ってきたが……

 

「竜巻旋風脚ッ!!」

 

「ふぁんでっどさん、みんなを守って!!」

 

「なに!? 全弾防がれた!?」

 

 湧いてきたアンデッドに弾が防がれて、俊也が弾をすり抜けて連合員達に接近。回転の勢いのまま、右回し蹴りを叩き込む。

 

「セントルイススマッシュ、エアフォース!!」

 

 ──ズギャアァァッ!!!

 

「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「うぉぉぉぉぉっ!?」

 

 俊也が蹴り飛ばした連合員に巻き込まれて、敵がドミノ倒しのように倒れていく。上から出てきた銃には、残った五人が対処する。

 

「『EARSHOT(耳鳴り砲)』、喰らえ!!」

 

「焼けろ、『苗床の残滓』!!」

 

 ──ズガガァァァァン!!!

 

「くそっ!! これで終わりだと思うなよッ!!!」

 

 そう吐き捨てて、秋月の声が途切れた。二人の技を受けた銃が壊れて、残骸が落ちてくる……俊也もちょうど終わらせたようだ。

 

「とりあえず、ここはこれで全部だな」

 

「まだ何があるかわからないよ、慎重に行こう」

 

「あぁ、わかってる」

 

 フレアがそう警告しながら、慎重に警戒しながら進んでいく。道中にいた連合員は、全員倒しながら進む。連合員が斬りかかってきても、その程度は敵ではない。

 

「死ねっ!!」

 

「『ファランの速剣』!!」

 

 ──ジャシャアァッ!!

 

「ぐぎゃあぁぁぁ!!」

 

 こんな奴らを相手にして、時間をかけてはいられない。そう思ってどんどん進む。しかし、それを許しておくほど秋月も馬鹿ではない。突然、前方から白い無数の触手が伸びてきて、俊也達に襲いかかる。

 

 ──ズヒュヒュヒュヒュッ!!!

 

「ッ!? この触手は……秋月か!!」

 

「死ね、背教者共がァ!!!」

 

「後ろからも来たよ!!」

 

 後ろから連合員達が銃を持って迫ってくる。しかし、俊也達は全く慌てていなかった。あくまで冷静に、自分の役割通りに動く。るしあがアンデッドを召喚して、道を塞ぐと同時に盾を作る。そして秋月の触手には、フレアと俊也が対処した。

 

「またアンデッドか!?」

 

「喰らえ、『ボルテックフィニッシュ』ッ!!!」

 

 ──ズゴォォォォォン!!!

 

「う、うわぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 ぺこらがアンデッドを飛び越えて跳躍し、赤と青の光を足に纏って連合員を蹴りつける。連合員はそれに為す術なく、吹っ飛ばされてゆく。一方二人は触手を捌きつつ、秋月に接近していた。

 

「『ベールの炎雷』!!!」

 

 ──ヴォヂヂュアァァッ!!!

 

「ぐぁぁぁぁ!! くそっ、下等生物が!!!」

 

「甘い!! 『ソニックブーム・アヴォイド』!!!」

 

 俊也は乱暴に振るわれる10本の触手の間を、高速で通り抜けていく。秋月の目の前まで来て、踏み込み……足に炎を纏わせながら、秋月の腹に右脚で蹴りを放つ。

 

「ッ、なんだと!?」

 

「ブレイズキック!!!」

 

 ──ゴバォウッ!!!

 

「ぐぅあぁぁぁっ、おのれぇ……!!!」

 

 秋月は体を焼かれながら、飛び退いて逃げ出す。俊也達はすぐさまそれを追いかけた。それを塞ぐかのように、隔壁が床から現れる。

 

「待てッ!! ……なに!?」

 

「どいて!! 『神の怒り』!!!」

 

 ──ズドドォォォン!!!

 

「流石だな、ノエル!!」

 

 分厚い隔壁が一瞬にして破られ、みんなはどんどん先に進んでいく。

 

「あいつ、一瞬でどこに消えた……!?」

 

「っ、俊也くん!! 危ないっ!!」

 

「なっ!? るしあ!!」

 

 るしあが俊也を突き飛ばす。俊也が踏んでいた床は何故か光っており、代わりにその床を踏んだるしあが消えてしまった。

 

「るしあが消された……追い出されたのか?」

 

「それは無いと思うよ。あいつの目的は明らかに私達を殺すことだし、追い出したら意味ない」

 

「とにかく探すぞ!!」

 

 全員がそれに頷いて、るしあの捜索を始めた。一方、床に仕込まれた転移罠によって転移させられたるしあは、袋小路に追い込まれていた。ワープした先は敵の団体の目の前、逃げ場はどこにもない。銃を向けた連合員の一人が、冷酷に言い放つ。

 

「潤羽るしあだな。ここで死んでもらおう」

 

「……ふふふ、あはははは」

 

「何がおかしい? ピンチになりすぎて気でも触れたか?」

 

 無数の武器を向けられて、まさに絶体絶命。アンデッドを出せる隙間すらない場所で、るしあは笑っている。そして……恐ろしい笑みを浮かべたるしあが、狂気を込めて言った。

 

「……死ぬのはお前らだよ」

 

「なっ……う、撃て!! 早く殺せッ!!!」

 

「う゛ア゛あ゛ア゛あ゛ア゛あ゛ッ!!! があ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ッ!!!」

 

 るしあが頭を抱えて、悍ましい叫び声を上げる。『屍術師の絶叫(アン・クリ・ドゥ・フォリ・エクスプロジフ)』、死者の死ぬ瞬間の断末魔を自分に収束させて、声として辺り一帯に撒き散らすネクロマンサーの禁忌。自分まで精神ダメージを受けてしまう自滅に等しいその技は、今だけは有効な攻撃手段だった。無論、喰らった者達も無事では済まない。

 

「ひ、ひぎぃぃぃぃぃっ!!!」

 

「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!」

 

「うぁぁっ!! あ゛がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 ──ベリベリベリベリッ!!!

 

 ──ズシャアァァァ!!!

 

 ──ビチャビチャビチャ。

 

 死そのものを大量に叩きつけられた狂信者達は、発狂してしまっていた。皮膚を掻きむしる者もいれば、嘔吐している者もいる。恐怖に耐えきれずに、自分の体に武器を向けている者すらいた。吐瀉物や、涎に汗や血液が散る地獄の中で、ゆらゆらと幽霊のようにるしあが立ち上がる。そして、発狂した者達に冷酷に言った。

 

「フゥ、フゥ……じゃあ、さよなら。二度と俊也くんやるしあの友達に近づくな」

 

「いぎっ、いぃぃぃ……」

 

「『炎の嵐』」

 

 ──ギュオォォォォッ!!!

 

 そう言ってるしあが呪術を放つ。すると、敵の下から大量の火柱が立ち昇った。それは敵を飲み込んで、骨一つ残さず焼き尽くしていく。

 

「ギャアァァァァッ!!!」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛、熱い熱い熱いぃぃぃ!!!」

 

「俊也くんの敵はみんなこうなる。地獄で復習しとけ」

 

 そう吐き捨てて、るしあは焼け焦げた人間の残りカスを踏みつけながら、俊也達を探して歩いていった。

 

「さてと、みんなはどこ行ったのかな……」




次回に続きます。

走者のコメント
「るしあ、エグイな……とりあえず、秋月に見つかる前に合流しよう」
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