ホロライブラバーズX ファンタジック・ピースメイカー 作:とも667
バトロワ編、主人公視点です。よろしくお願いします。
……目の前の光が晴れると、俺は学園の校庭に立っていた。どうやらここが俺のスタート地点らしい……周りを見回したが、兎田さんはいなさそうだ。
「とりあえず、兎田さんを探しながら……おっと!!」
「っ、避けられたか!!」
「悪いが……そう簡単には脱落できないんだよ!!」
後ろからナイフで刺そうとしてきたので、跳んで回避した……そのまま足を捻り、敵の上段を狙って……!!
「セントルイススマッシュ!!」
「ぐはっ!!」
「このぉぉ!!」
着地したところを狙って、大剣を叩きつけようとしてきた人には……腰を落として、相手の鳩尾にスマッシュパンチを繰り出す。
「スマッシュパンチ!!」
「ぐふっ!!」
「全員でかかれぇ!!」
剣を持った人と、セスタスをつけている人、後ろから銃で狙っている人……合計三人。俺はそれを見て、踏み込み……跳躍、片足を真っ直ぐ伸ばして体を回す。
「竜巻旋風脚ッ!!」
「ぐぁぁっ!!」
「ごふっ……このぉ!!」
銃の攻撃をすり抜けて、剣を持った人を倒したが……セスタスを持っている人が耐えきり、こちらに拳を振るおうとしている。回避は間に合わない……ならば。
「……ふんっ!!」
「なっ、怯まないだと!?」
「喰らえ、スマッシュパンチ!!」
相手の拳を『我慢』で耐えて、そこに返しの拳。その人も吹っ飛んでリタイアした……あとはあの人だけ!! 射線に入らないよう、動き回りながら近づく。
「このっ……!!」
「はぁぁぁぁ……はっ!!」
「なにぃ!?」
その場でまた跳躍、今度も片足を伸ばして……その人に踵を向けて、落下速度を乗せる。
「マンチェスタースマッシュ!!」
「がっ、ぐふ……」
「……この辺りは片付いたか」
敵の気配はもうしない。さて、次はどっちに行くかだが……
「校舎内に行ってみるか」
そう呟いて、校舎内へ向かうと……誰かが戦っているようだ。派手な爆発音がしている。
「ぎゃあぁぁぁっ!!」
「Ahoy~!!」
「うわぁぁぁぁ!!」
あそこにいるのは……宝鐘さんだ、どうやら近くにスポーンしたらしい。丁度いい、手合わせ願うとしよう。
「おっ? あなたは確か……」
「碇俊也、です!!」
「うわっと!?」
挨拶代わりのスマッシュパンチは躱され、距離を取られた。持っているあれは……大砲か?
「やるなぁ、今のを躱すとは!!」
「るしあと出会うまで負けられませんから!!」
「でも、会ったからには……ここで脱落していただきます!!」
俺が構えると、彼女も大砲を捨てて二丁拳銃を構えた。
「あなたに大砲は当たらなさそうですから、これでいきます!!」
「賢いですね!!」
「喰らえ!!」
二丁拳銃がマズルフラッシュを放ち、こちらに銃弾が襲いかかる……射線に入らないようにしたいが、二丁あるので難しい。こういう時は……
「はっ!!」
「銃弾が効かなくなった!?」
「今だ、喰らえ!!」
その場で跳躍して、セントルイススマッシュを放つ。しかし……それは難なく躱されてしまった。
「流石に躱すか……!!」
「当たったらアウトだって、攻撃に書いてありますから!!」
「まぁ、そりゃそうだ!!」
当たれば、間違いなく大ダメージだ。だが、避けにくい技というわけでもない。あちらも負けじと拳銃を撃ち込んできている。跳躍しているまま、体を捻り……
「竜巻旋風脚ッ!!」
「弾を躱してきた!?」
「スマッシュパンチッ!!」
今度は当たりやすく、出の早い技を打ち込む。今度は命中して、宝鐘さんを吹っ飛ばした。
「ぐぅっ……や、やりますねぇ……」
「鍛えてますから!!」
「かくなる上は……こいつを当てるしかないな!!」
宝鐘さんが大砲を握り直した。どうやら、あれで俺を撃つ気らしい。
「撃たせませんよ!!」
「ファイヤー!!」
「なにっ!? くっ……ぐあっ!!」
斜め上に向けて放たれた大砲の弾が、五つに拡散して襲いかかる。全てを躱しきれず、その内の二発が俺に迫り……咄嗟に『我慢』をかけた。
「どうです、船長の拡散バズーカは!! 効くでしょ!?」
「弾を変えたのか……確かに、こいつは効く……」
「まだまだ、もう一発行きますよ!!」
あれをもう一発は貰えない、何とかしなくては。しかし、どうやって……?
「喰らえっ!!」
「……やってみるか!!」
「跳んだ……また蹴り!? そうはいくか!!」
三発目が来る。このままいけば、俺はあの大砲の餌食になるだろう。しかし……ある作戦を思いついた。これなら、この状況を打開できる!!
「竜巻旋風脚!!」
「躱した!? それなら銃で……!!」
「からの……!!」
竜巻旋風脚で、飛び道具を躱しながら接近し……回る勢いを生かし、足を伸ばしたまま上段蹴りに入る!!
「セントルイススマッシュ……エアフォース!!」
「ぐっ、ふっ……!!」
「……どうだ!!」
大きく吹っ飛んで、彼女は壁に体を打ち付けている。まだ立ってくるだろうか……
「あぁ……ごめん、るしあ……この人、強いや……」
「あなたも強かったですよ。ありがとうございました」
「はははっ……次は、負けないから」
そう言って、宝鐘さんは脱落した。とりあえず、挨拶した人の一人目に勝ったな。
「このまま上に行ってみるか……」
階段を登って、襲いかかってきた人達を倒しながら、三階まで上がった。すると……
「ぐぇぇぇぇっ!!」
「……よし!! これでこの辺にいる人は……あれ?」
「潤羽さん、こんにちは!!」
挨拶しながら、目の前にいたアンデッド達を竜巻旋風脚で一掃する。どうやら、ネクロマンサーのようだ。
「碇さん……!? 下でなんか音がすると思ったら、碇さんだったんだ……誰と戦ってたの?」
「宝鐘さんです、強敵でした……特に、拡散バズーカは厄介でしたよ」
「厄介だったって……それじゃあ、マリンは……!!」
会うって約束をしていたし、合流されていたら流石に危なかったな。一人でも強かったのに……そうなれば、もっと手がつけられなくなる。
「僕が倒してきました。三階まで上がってきたら、あなたがいてね……お手合わせお願いします!!」
「っ……! マリンの仇はるしあが取る!! 絶対に倒してやる!!」
「闘志はお互い十分……!! いざ尋常に勝負ッ!!」
アンデッドが大量に地面から湧いてきた。物量で押し潰すつもりか……!! 一人一人は脆いが、これだけいると一撃では倒しきれない……その上、この狭い校舎の中だ。ここは……
「こっちで勝負だ!!」
「ッ、待て!!」
「よし……ここでいい」
校舎から出て、三階の壁のない廊下に出た。無論、アンデッド達は俺を追い回してくるが……それこそが狙いだ。
「竜巻旋風脚ッ!!」
「ふぁんでっどさん達が……!!」
「一気にたくさん出しすぎましたね?」
竜巻旋風脚で吹っ飛ばし、押し出されたアンデッド達が下へと落ちてゆく。この高さから落下すれば無事では済まない、落ちたアンデッド達は全員動けなくなっている。
「行け!! あいつに一撃喰らわせろ!!」
「おらっ、せいっ、でぃやぁぁ!!」
「負けるな!! どんどん行け!!」
武器を持って襲いかかってくるアンデッド達を、下に落としたり倒したりしながら、潤羽さんへと着実に歩を進めていく。あと少しだ、あと少しで辿り着ける!!
「スマッシュパンチ!!」
「っ……!!」
「もらったァ!!」
飛び上がって、セントルイススマッシュの構え。こいつで終わりだ……!! そう思った、その時。潤羽さんがこちらに手をかざして、叫んだ。
「……『黒炎』ッ!!」
「がぁぁぁっ!? なっ……なに……!?」
「るしあは呪術も得意なんだ!! 今だよ、みんな!!」
手から放たれた黒い炎に撃ち落とされて、地面に倒れてしまった。まずい、早く離脱しなければ。急いで体勢を立て直し、襲いかかってくるアンデッド達から距離を取ろうとしたが……そこで潤羽さんが地面に手を置く。
「逃がさない!! 『黒蛇』!!」
「くっ……!! ぐぅっ……!!」
「いいぞ、そのまま押し潰せ!!」
黒い炎に追いかけ回されて、壁際に追い詰められている。まずいな……このままだと、本当に物量に押し潰されてしまう。潤羽さんに近づいても、呪術の炎で迎撃されるし……どうする? このままではジリ貧だ……
「……賭けるしかない!! 竜巻旋風脚!!」
「無駄だよ!! 喰らえ、『黒火球』ッ!!」
「これ以上……当たってたまるか!!」
投げつけられた黒い炎の塊が、さっき俺のいた場所で爆裂する。このまま向かっていけば、同じように撃ち落とされてしまうだろう。それなら……俺は、アンデッドの群れの中へと突っ込んだ。
「……えっ!?」
「セントルイス……スマッシュ!!」
「なっ……ぐぅっ!?」
俺はアンデッド達を、乱雑に潤羽さんへと蹴り飛ばした。下手な鉄砲数打ちゃ当たる、アンデッドの一部が彼女へと飛んでいき、それが目くらましの役割をしてくれる。
「スマッシュ……パンチ!!」
「がぁぁぁっ!?」
「よし……!! 竜巻旋風脚ッ!!」
やはりだ。スマッシュパンチを一撃当てただけで……かなりのダメージを受けている。呪術やネクロマンスに特化しているが、耐久面はないに等しいようだな。あと一発当てれば……勝てる!!
「ッ、『黒炎』……!!」
「遅いッ!!!」
「ぐっ、は……がはッ!!」
呪術を発動される直前に、俺の竜巻旋風脚での追撃が入った。潤羽さんの腹に回転する足が勢いよく命中し、潤羽さんが吹っ飛ぶ……
「ぐふっ、う……ここまで、か……」
「あなたも強かったですね……はぁ、二人に合流されなくて助かりましたよ」
「次は、絶対に勝つ……!! 今度は、マリンと一緒に!!」
そう言って、潤羽さんも脱落し……光の粒子となって消えた。大分疲弊してしまったが、休んではいられない。
「兎田さん、どこにいるんだ……? もう脱落しちゃったのかな……」
そう呟きながら、歩き回る。もう大分人も減っているな……そう思っていた、その時。
『時間が半分を切りました。アンチ生徒、『百鬼あやめ』を投入します』
「……誰か来たみたいだな」
『アンチ』の人は、とにかく強力だと聞く……戦わない方がよさそうだな。くれぐれも見つからないように、兎田さんを探そう。そう思って、周囲を警戒しながら歩き回っていると……誰かの声が聞こえてきた。
「どうしたの、その程度!?」
「くぅっ……まだぺこ、まだ終わらんぺこだよ!!」
「兎田さんが……誰かと戦ってる?」
劣勢のようだ。助けに入りたいが……真正面から行くと、二人仲良くやられる可能性がある。ならば、ここはこれで……!! 後ろから助走をつけて跳躍し、敵の後ろをとった。そのまま踵落としの体勢に入る……!!
「今だ!! これで……!!」
「喰らえ、マンチェスタースマッシュ!!」
「ぐはぁぁぁ!?」
銀髪で羽の生えた人が、兎田さんにトドメを刺そうとした寸前で、脳天への踵落としが炸裂した。続けて、兎田さんに叫ぶ。
「今だ、兎田さん!!」
「喰らえぇぇっ!!」
「がぁぁぁっ……ボクの出番、これだけ……?」
どうやら、今ので脱落してくれたようだ。助かった、随分強そうな気配がしたからな……
「危ないところでしたね、大丈夫ですか?」
「ありがとう、おかげで助かったぺこ!! 今の人は天音かなた……天使種族で、とんでもないパワー型だけど……とにかく勝ててよかったぺこ!!」
「えぇ、お互い無事で何より……さて、他の参加者は……おっと!!」
兎田さんの腕を引っ張って、近くにあった教室内へと逃げ込む。この殺気は尋常ではない、恐らくは……
「さて、人間様はどこかな~……この辺にはいないか。あっち行ってみよう!!」
「……行ったか。今のが百鬼あやめか、確かに戦わない方がよさそうだ」
「また助けられちゃったぺこだね……ありがとう!!」
兎田さんは少し申し訳なさそうにしている、気にしなくてもいいのにな。
「気にしないでください。僕らは今、仲間でしょう?」
「……うん!! さぁ、次は誰を探すぺこ?」
「白銀さんと不知火さんを見つけたいですね……二人と戦うなら、二体一より二体二の方がフェアです」
俺の提案を、兎田さんは快く受け入れてくれた。襲い来る人達を次々跳ね飛ばしながら、一緒に進んでゆく。
「おらあぁぁぁ!! どきやがれぇぇぇっ!!」
「うぎゃあぁぁぁ!?」
「すごい迫力だ……俺も負けてられないな!!」
そう言いながら、走っていると……最初にいた校庭に戻ってきてしまった。探していた二人が立っている……
「ふぅ……これで全部かな?」
「お疲れ、フレア!! ナイス援護だったよ!!」
「ノエルこそ……ん? そこにいるのは……」
先制攻撃を食らわせるつもりだったが……気づかれてしまったので、姿を見せる。
「流石ですね……こんにちは。あなた方を探していました」
「ぺこらもお前らを探してたぺこだよ!! 覚悟しろ!!」
「なるほど……丁度いい、私もあなたとは戦いたかったしね」
不知火さんが魔法を手に構えた。白銀さんも収めようとしていたメイスを握り直して、構えている。
「多分『アンチ』を除けば、あなた達が最後だ!! 悪いけど、優勝は団長とフレアがもらっていくよ!!」
「すみませんが、渡せませんね!! 兎田さんは白銀さんをお願いします!! 僕は不知火さんを!!」
「了解ぺこ!!」
あちらも、度重なる戦いで疲弊しているはず。状況は平等だ……あとは実力勝負!!
「ノエルより、あたしの方が倒しやすそうだと思った? だったら……人を舐めすぎだね!!」
「舐めちゃいませんよ……だから、全力で行きます!!」
「ふふっ、そうでなくちゃね!!」
そう言って、不知火さんが手の平に魔法陣を展開した。魔法攻撃か……!!
「喰らえ、『イフリート』!!」
「っ……当たったら丸焦げだな!!」
「炎だけじゃないよ!! 喰らえ、『雷の槍』!!」
そう叫んで、不知火さんは雷の槍をこちらに投げつけてきた。それらを躱すだけで精一杯だ……絶え間のない連撃、それがこの人の武器。兎田さんの方は……?
「『ランドストライク』!! でりゃあ!!」
「一発一発の範囲も威力もデタラメ……その上、攻撃を当てても怯まないどころか、お釣りが返ってくる……!! アンタどんなチートキャラぺこだよ!?」
「それが団長の得意技だからね!! まだまだぁ!!」
白銀さんにスタミナ切れの様子は全く見えない。兎田さんは獣人特有の素早さで、何とか躱してはいるが……防戦一方ではジリ貧だ。助けに入りたいが……不知火さんはそれを許してくれない。
「よそ見してちゃいけないよ!! 喰らえ、『雷の矢』!!」
「くっ……!!」
「フレイムゾーン!!」
咄嗟に飛び退くと、俺のいた場所が焦熱地獄に早変わりした。魔法の腕はピカイチか……しかし、負けるわけにはいかない!! 攻勢に転じるため、こちらから走り出した。
「うぉぉぉぉっ!!」
「無謀だね、『イフリート』!!」
「っ……!!」
何とか躱したが、そこに追撃が飛んでくる。
「そこだ、行け!! 『雷の槍』!!」
「……竜巻旋風脚ッ!!」
「槍を躱した!?」
俺の間合いまで接近できた、あとは一撃入れられれば……!!
「喰らえ、スマッシュ……!!」
「やるね……だけど、私が近接戦闘が苦手なんて、いつ言った?」
「なっ……!?」
不知火さんが魔法で青い双剣を作り出し、近づいてきた俺に振り抜いた。出した攻撃は引っ込められない……斬撃をまともに食らってしまった。スマッシュパンチは無論、避けられている。咄嗟に『我慢』をかけたが……今の俺には痛いダメージだ。
「ぐはっ、うぐっ……」
「咄嗟に距離を取ったか……それなら、魔法で攻撃するだけだけどね」
「くそ……これじゃ、分が悪い……!!」
こちらは近接戦闘ばかりで、遠距離攻撃手段はゼロ。対してあちらは、近接も遠距離もこなせるオールラウンダーだ。相性が悪いなんてもんじゃない……!!
「碇くん!! くそっ……!!」
「よそ見しちゃいかんよー!!」
「うぐっ……!!」
いけない、あっちも追い詰められてきている。どうする、どうすればいい!?
「『イフリート』!! からの……これを喰らえっ!!」
「なっ……双剣を投げて……!?」
「今だ、『雷の槍』ッ!!」
逃れられない状況。仕方なく、構えを取って技を出した。
「竜巻旋風脚……!!」
「そう来ると思ってたよ、もらった!!」
「ッ……くっ!!」
まずい、これは避けられない……また『我慢』するしかないか!! なら、肉を切らせて骨を断つ!! 右足に、そのまま力を込めて……!!
「せいやっ!!」
「ぐぅ……セントルイススマッシュ、エアフォース!!」
「うぎっ……やるじゃん……!!」
命中したが……こちらも限界が近い。不知火さんは、まだ動けるようだ……
「はぁっ、はぁ……光栄ですね!!」
「だけど……そろそろ、さよならだ」
「よし、団長も決めるかぁ!!」
二人の力が強まっていく……気配だけでわかる。まともに当たったら、脱落は免れないだろう。不知火さんの大地魔法で、逃げ道を無くされた。彼女は自身の身体に強化をかけて、双剣を投げつけてきている。あれを弾くのは、恐らくは彼女の思うつぼ。どうする!?
「……やるしかないか!!」
「おりゃあ!!」
「うぉぉぉぉぉっ!!」
『我慢』をした後、大地魔法で作り出された壁を蹴りつけて、彼女の懐に飛び込んでゆく。投擲された双剣とすれ違いながら、彼女の上をとった……手には強い炎と雷を纏っている。あれで俺を仕留める気なのだろう。
「そう来るか……でも、終わりだよ!!」
「……それは、どうかな!!」
「なっ……蹴らないの!?」
俺はその勢いのまま、蹴りつける動作をフェイントにして、彼女の後ろに立つ。炎魔法は外れてしまったようだ。そこに雷を纏った手が、俺を掴もうとしてきたが……俺はそれを、『我慢』を利用して強引に拳で叩き落とした。これで飛び上がっても、足を掴まれる心配はない!!
「くっ……!!」
「うぉぉぉぉっ!!」
「しまった、避けられな……」
魔法を構えても、遅い。俺の落下速度と、右足を伸ばす方が……コンマ一秒早い!!
「マンチェスター!! スマッシュッ!!!」
「がっ、あ……!!」
「まだだ……!! こいつも持っていけぇ!!! スマッシュパンチ!!!」
マンチェスタースマッシュを喰らっても、彼女がまだ立っていたので……追撃に、スマッシュパンチを打ち込んだ。彼女は大きく吹っ飛んで、地面を転がっていく。
「ぐはっ、あ……ノエル、ごめん……」
「フレア……!! くっそぉぉ!! 喰らえ、白亜の……!!」
「うっ、ぐ……!!」
まずい。今の兎田さんは、目に見えて疲弊している。あれに当たったら終わりだ。最後の力を振り絞って……飛んでいくメイスめがけて、跳ぶ。
「鉄槌ッ!!!」
「……えっ、碇くん!?」
「セントルイス……スマッシュ!!」
兎田さんめがけて飛んでいくメイスに、最後の力を振り絞った右足で技を放つ。鈍い金属音がして、その場に倒れ込む俺……メイスはどうなった!?
「ぬぁぁぁぁぁっ!!」
「白亜の鉄槌を逸らした!? まさかそんな……!!」
「行くぜみんな!! 一発かますぺこだよ!!」
そう言って、兎田さんが手に持った人参型のハンマーを投げると……丸い兎のような生物が、どこからかたくさん走ってきた。投げられたハンマーを、先頭の二体が咥えている。
「なっ……ぐぁぁぁぁ!!」
「野うさぎ達!! そのままボコして捕まえとけ!!」
「っ……避けられない……!?」
野うさぎと呼ばれた白い動物達は、白銀さんに全員で群がって噛み付いている。兎田さんが跳躍して、同じく跳躍してきた二匹から、咥えさせていたハンマーを受け取った。そのままハンマーを構えて、脳天目掛けて落下してゆく……!!
「これで……決まりだぁぁぁぁ!!!」
「ぐぅっ、がっは……!!」
「……決まった……」
脳天に落下の勢いと、兎田さんの跳躍力を載せたハンマーの一撃。いくら白銀さんが頑丈とはいえ、これには耐えられないだろう。白銀さんも脱落していく……
「……はぁっ、はぁ……!!」
「俺達、勝ったんですね……最高の戦いでした、兎田さん」
「碇くんも、ナイスファイト……!!」
そう言って、二人で笑いながらグータッチする。その瞬間、バトルロワイヤル終了を告げるアナウンスが鳴り響き……目の前が、光に包まれた。
時間は少し遡り、この日の一日前のこと。闇市にて、碇俊也が去ったすぐ後に……フードを被った何者かが、闇市を訪れた。
「……いらっしゃい。何か買いに来たのかい? 今はこんなのしかねぇが……」
「邪神の破片をくれ」
「これのことかい? 不気味だから処分に困ってたんだ、そうだな……5000円でいいぜ」
その者は言われた金額を無言で支払うと、そそくさとそれを持っていってしまった。そして、どこかに電話を始める……
「……こちら、番号67。邪神の破片を回収しました」
『ご苦労。支部に持ち帰れ、神の破片は貴重だからな……くれぐれも警察にはバレるなよ』
「存じております。それでは」
電話を切り、また歩き出す男……そこに、酔っ払いと思わしき男が声をかけた。どうやら、酔いすぎて闇市に迷い込んだようだ。
「お~い、そこの兄ちゃん……なーにガン飛ばしてんだ?」
「すみませんが、急いでいますので」
「あんだってぇ~? 舐めんじゃねぇぞ、こちとら課長様だぞぉ~……」
男はその様子を見て、ため息をついて冷酷に言った。手にはさっきの『破片』を持っている……男が、それを体に一瞬つけて……すぐに離した。
「邪魔だ。消えろ、選ばれぬ者が」
「はぁ? お前、何言って……え? あ、あがが……!!」
「……ハッ、我らの神に選ばれぬ下等生物めが。身の程くらい弁えておけ」
そう言って、人間だったもの……今となってはただの肌色の液体に唾を吐き捨て……男はまた歩いていった。
バトルロワイヤル一回目、優勝。