※この作品はR-18です。

ホロライブラバーズX ファンタジック・ピースメイカー   作:とも667

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 幕間です。よろしくお願いします。


幕間
一時の安息


俊也はあの後、吐き気に耐えきれずに完全に気絶してしまった。起きた時にはいつも通り、病院のベッドの上で寝ていた。

 

「あ……みんなが、運んでくれたのか……」

 

 俊也がそう呟いて、起き上がる。自分が何故気絶してしまったのか、それを考えて……強い吐き気がぶり返した。耐えきれずに、俊也は床に胃液をぶちまける。

 

「う゛っ、う゛え゛ぇぇぇっ」

 

 ──ビチャチャチャッ、ビチャ。

 

 街を脅かす憎き敵、秋月。それは俊也の手によって、ついに死んだ。泣き喚きながら、頭蓋を蹴り砕かれて、そのまま頭が潰れて……血溜まりになった。それをしたのは、誰なのか。

 

「げほっげほ、がぁぁ……ッ」

 

 ずっと寝ていたので、吐く物がすぐに無くなってえずく俊也。現代での死刑執行人は、三つのボタンをランダムに押すという。死刑でも、罪悪感などを少しでも軽減するための措置が成されているのだ。しかし俊也にそんな物は用意されていない。殺したのは、確実に俊也だ。

 

「失礼します……碇さん!? 大丈夫ですか!?」

 

「う゛え゛っあ、ごぉっほっ……」

 

「せ、先生!! 碇さんが嘔吐してます!!」

 

 すぐに医者が入ってきて、腕に刺さっている点滴パックに吐き気止めを追加する。俊也はそれで落ち着いて、疲れきったようにぜぇぜぇと息を吐いている。

 

「大丈夫ですか、碇さん?」

 

「えぇ、大丈夫ですよ……まだ、傷が癒えてないみたいです」

 

「おかしいな。今回、傷は浅かったはずなんだが……」

 

 医者がそれを疑問に思って、俊也を見る。精密検査の結果は無問題、目立った病気も見られなかった。しかし俊也は、激しく嘔吐していた。しかし、考えても医者に原因はわからない。

 

「とりあえず、このまま大人しくしていてください。それでは」

 

「ありがとうございました」

 

「お大事に」

 

 そう言って医者が出ていき、俊也がベッドに寝転がり直す。吐き気は薬で抑えることができたが、嫌な気分は消えない。当然だ、人を殺してしまったのだから。直接、蹴り砕く感触を味わったのだから。

 

「……これで、よかったんだよな」

 

 俊也は、自分に言い聞かせるようにそう言う。自分は正しいことをした、この街には平和が戻った。それでいいじゃないかと、言い聞かせる。そこで、またドアがノックされた。

 

「みんなか? 入っていいぞ」

 

「あ、起きたんだ!! 俊也ー!!」

 

「私達やったんだよ、俊也!! これで平和になるね!!」

 

 部屋に入ってすぐに、ぺこらが真っ先に俊也に飛びついて抱きしめる。るしあもマリンも、秋月が死んで街が平和になることを喜んでいた。当然だ、秋月がいるままでは平和など訪れようがない。

 

「……あぁ、そうだな。これで平和になるんだ」

 

「俊也くん、元気ないね……そんな俊也くんのために、はい!!」

 

「これ、リンゴ……? 他の果物もたくさんある」

 

 マリンが鞄から取り出したのは、リンゴをはじめとした様々な果物達だった。そして、果物を剥くための包丁も。

 

「お見舞いの定番は果物でしょ!! はい、剥いて剥いて!!」

 

「そんなことしなくても、自分で……」

 

「病人なんだから大人しくしてなさいっ!!」

 

 ぺこらにそう言われて、俊也が押し黙る。まずはリンゴが切り分けられて、爪楊枝が刺さった。まずはぺこらがそれを俊也に差し出す。

 

「はい俊也、あーん」

 

「あー……むっ」

 

 ──シャクッ。

 

「どう、美味しい?」

 

 俊也はリンゴを食べさせてもらっていると、ほんの少しだけ嫌な気分が消えていくのを感じた。自分にはみんながいると、そう思えるから。

 

「美味しいよ、ありがとう」

 

「ホント!? ほら、どんどん食べて!!」

 

「お、おい? そんなにたくさん剥くなよ……!!」

 

 俊也の静止を他所に、次々に剥いては差し出される果物。俊也はただ、差し出されるそれに齧り付くことしかできない。代わる代わる三人が果物を差し出してきて、俊也は止め時がわからない。

 

「俊也くん、あーんして?」

 

「あーん……って、やりすぎだよ。そんなに食いきれないって」

 

「あっ、ごめん……つい調子に乗っちゃって」

 

 やっとそこで、剥く手が止まる。皮を剥いた果物は、こんもりと山になって皿に盛られていた。俊也はこれを全部食べられるか不安になっている。

 

「とりあえず、ありがとう。気分良くなった」

 

「それならよかった!!」

 

 ──コンコン。

 

「……また誰か来たか。どうぞ」

 

 ドアが開かれて、ノエルとフレアが入ってくる。しかし二人の顔は何故か、あまり明るくない。

 

「こんにちは、俊也くん」

 

「昨日と一昨日はどうも、俊也くん。おかげでこの街は平和になった」

 

「……あぁ」

 

 俊也はそれを聞いて、また少し嫌な気分になる。それを見たフレアが、自分達の考えたことが真実であることを悟った。

 

「君のおかげでこの街は助かったし、団長もフレアも仲良しに戻れた。本当にありがとう」

 

「気にしなくていいよ」

 

「……みんな、ちょっと外に出ててくれない? 三人だけで話がしたいの」

 

 フレアがそう言って、みんなを外に出そうとする。そこで、マリンが目的に気づいたように言う。

 

「もしかして……フレアも俊也くんに惚れちゃいましたか?」

 

「ぺこらはいいよ、加わってくれても!!」

 

「るしあも、二人なら全然……」

 

 三人がそう言っているが、本当の目的は違う。全くその気持ちがないかと言われれば、否ではあるが……フレアは表面上は肯定して返す。

 

「まぁ、そんなとこ。出ててくれる?」

 

「団長からも、お願い!!」

 

「いいよ、見られながらじゃ言えないことあるもんね」

 

「ごゆっくりー!!」

 

 みんなが外に出ていって、いなくなったことを確認して……ノエルとフレアが、俊也に向き直る。

 

「……それで、二人とも。本当は何の用なんだ?」

 

「俊也くんは気づいてたか、流石だね」

 

「じゃあ、結論から言うけど……あの時吐いてたのは、身体的ダメージのせいじゃないよね?」

 

 真実を見透かされてしまい、俊也は苦笑するしかない。それを見た二人も、予測が当たって渋い顔をしている。

 

「気づかれてたか……あぁ、そうだよ」

 

「原因は秋月を殺したから、だよね」

 

「……そうだな」

 

 俊也の精神ダメージの要因は、『殺人の罪悪感』であった。気づくのが遅れたフレアとノエルは、自分達が秋月にトドメを刺さなかったことを後悔している。

 

「ちょっと考えれば、わかる話だよね。簡単に人を殺せる人間なんてほぼいない」

 

「あの時、私かノエルがトドメを刺してれば……ごめん」

 

「二人が悪いんじゃない。悪いのは……あいつだろ」

 

 俊也はそう言って、無理に笑おうとしている。しかしノエルとフレアは、それで納得することはできない。

 

「そうだ!! 俊也くん、今度の休み……一緒にどこか出かけない?」

 

「私もそうしようと思ってた。一緒に出かけてくれる?」

 

「あぁ、いいよ。二人がそうしたいなら」

 

 二人は、俊也に恩を返したかった。それに、個人的な好意もある。だから、俊也に元気になってもらうのを兼ねて……デートに誘うことにしたのだ。俊也は二つ返事で了承した。

 

「じゃあ決まりだね!!」

 

「こっちでプランは考えとくから、楽しみにしててよ」

 

「うん。楽しみにさせてもらうよ」

 

 俊也は、二人のおかげで少しだけ気分が明るくなった。それから、みんなが戻ってきて……しばらく話して、その日は解散となった。

 

「……みんなは一人も死んでない。最高の、結末だ」

 

 そう言いながら眠りについた俊也は、酷い悪夢を見た。時は経ち、退院した次の日。俊也は二人と駅前で待ち合わせをしていた。最初に着いたのは、俊也だった。

 

「切り替えていこう。今日は楽しい日になる」

 

 そう言って、俊也は笑顔を作った。それから三十分程して、ノエルとフレアが来る。二人とも、可愛らしい私服を着てきている。

 

「俊也、ごめんね。待った?」

 

「今来たところだ。どこに行く?」

 

「チケット買ってあるから、行こう!!」

 

 そう言われた後、俊也はノエルに引っ張られて目の前に来たバスに乗った。

 

「どこに行くんだ、これ?」

 

「山に行くの。学校だと……ほら、私達が怪物になっちゃって台無しになったじゃん?」

 

「だから労いとお礼を込めて、もう一回山に行こうってこと!! いい考えでしょ?」

 

 意図を理解した俊也は、それを聞いて笑う。秋月のせいで、台無しになった楽しい遠足のやり直し……俊也はワクワクしてきていた。

 

「ありがとう。それじゃ……お言葉に甘えようか」

 

「今回は山登りしなくても、ちゃんとリフトに乗れるから安心してね」

 

「そりゃありがたいな、あれは大変だった」

 

 俊也の心の荷物は、二人のおかげで軽くなってきていた。バスが目的地に到着して、三人でリフトに乗り込む。

 

「前来た山より高いのか、ここ?」

 

「ここはあそこより高いね、その分景色もいいよ!!」

 

「なるほど……気晴らしには丁度いいな」

 

 リフトにしばらく揺られて、山を昇っていく。頂上に到着して、扉が開かれた。俊也がリフトから下を見てみると、かなり遠い。確かに、前の山より少し高いようだ。

 

「ほら、行こう? きっと景色すごいよ!!」

 

「あぁ、わかった……おぉぉぉ!!」

 

「絶景だね……ここまで来る価値はある」

 

 青い海と空、そして街並みが作る景色。それら全てが一望できる景色に、俊也の気持ちもすっかり明るくなっていた。

 

「ありがとう、連れてきてくれて。かなり楽になったよ」

 

「まだお礼言うには早いよ、色々用意してるんだから!!」

 

「ちょっと待っててね。すぐに準備するから」

 

 二人がそう言って、大きなリュックから大量の物を取り出し始めた。その様子を見て、俊也が手伝いを申し出る。

 

「重そうだな……手伝うよ、貸して」

 

「ダメ、今日は私達がお礼する日なんだから!! 座ってて!!」

 

「そういうこと。悪いけど、しばらく待っててね」

 

 そう言われてはもう、俊也も大人しくしているしかない。しばらく座っていると、机やパイプ椅子が出されてホットプレートが置かれ、野菜や肉に飯盒が出てくる。

 

「はい、できたよ!! こっち来て!!」

 

「これ……バーベキューセット、だよな? こんなのまで用意してくれたのか」

 

「今日は所謂、俊也くんの慰安旅行だしね。ほら、食べよう?」

 

 肉や野菜がホットプレートにの、食欲をそそる匂いが漂う。俊也は思わずヨダレが出てきてしまった。パイプ椅子に座って、ホットプレートの上を見つめる。

 

「めちゃくちゃ美味そう……食べていい?」

 

「まだ食べちゃダメだよ、焼けてないからね」

 

「待ちきれないねー!!」

 

 しばらくすると、野菜にも肉にも火が通り、ますます美味しそうな色を作る。俊也はそれを見て、もう食欲を抑えられなくなっていた。

 

「……もういいだろ、な!?」

 

「うん、よさそうだね。食べてもいいよ」

 

「やったー!! いっただきまーす!!」

 

 ノエルと俊也がすごい勢いで肉をかっさらっていき、ご飯と一緒に掻き込む。噛む度に旨みが口の中に広がり、二人はとても幸福な気分になった。

 

「あ~……美味いなぁ」

 

「まだまだあるから、たくさん食べてね!!」

 

「よく食べるね……気持ちいいくらい」

 

 焼肉も野菜も、次々に俊也の胃へと吸い込まれてゆく。その様子を見て、二人はもっと食べさせたくなったのか……

 

「これ美味い……あ、こっちも美味い!!」

 

「俊也くん、トウモロコシ美味しいよ!! 食べてみて!!」

 

「ありがとうノエル……ホントだ、美味い!!」

 

 左からノエルが差し出したトウモロコシが、一瞬で全て齧り取られた。次にフレアが、右から焼けた肉を差し出す。俊也はそれに反応して、肉に噛み付いた。

 

「はい俊也くん、お肉だよ」

 

「ありがとうフレア!! んー、美味い!!」

 

「こっちも美味しいよ、ほら!!」

 

「お肉どんどん焼けてるから、好きなだけ食べてね?」

 

 俊也は二人によって、次々に差し出される食材の数々を、器用に左右を向きながら食べていく。俊也がお腹いっぱいになる頃には、食材はほぼ無くなっていた。

 

「はぁ……お腹いっぱい。ありがとな、二人とも」

 

「あれだけ差し出して全部食べるなんて、流石は男の子だね!! すごい食欲!!」

 

「喜んでもらえてよかったよ……あ」

 

 ──ぐるるるるるぅ~。

 

 その時、二人のお腹が鳴った。それを聞いて、俊也もそれに気づく。自分に差し出すのに夢中で、二人がほぼ食べていないことに。

 

「お腹すいてるのか……? ごめんな、夢中で食べちゃって」

 

「いいよ、私達がやりたくてやったんだし」

 

「フレア、牛丼屋でも寄って帰ろう?」

 

 しかし俊也は納得しなかった。彼女達だけ、バーベキューを楽しめないことに。立ち上がって、二人に真面目な顔で言う。

 

「ちょっと待っててくれ、すぐに戻ってくるから」

 

「え? どういう意味?」

 

「私達のことならいいよ、気にせず……あぁ、俊也くん!?」

 

 俊也は凄まじい勢いで山を降り、近くのスーパーでできるだけ高い肉や野菜を購入して、山を登り直している。

 

「……あ、戻ってきたかな?」

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「本当に買ってきてる……結局山登りしたんだね」

 

 そう言われながら、俊也が買い物袋を差し出して笑う。そこにはバーベキューの材料が、どっさり入っている。

 

「さぁ、二人も食ってくれ!! たくさん買ってきたからさ!!」

 

「それじゃあ、お言葉に甘えて……わぁ、美味しそう!!」

 

「正直、大分お腹すいたし……食べちゃおうか」

 

 バーベキューがまた始まり、今度は二人が食べる番。お肉も野菜も、二人がどんどん食べていく。たくさん食べさせてもらった俊也は、今度は焼く係だ。

 

「どんどん食べてくれ、二人とも!!」

 

「わっ、このお肉美味しい~!!」

 

「あ、野菜も美味しいよ!!」

 

 二人が楽しそうに食べているのを、嬉しそうに見つめる俊也。食材はすぐに二人の胃へと消えていき、二人はすっかり満腹になった。

 

「ごちそうさま、俊也くん!! すっごく美味しかったよ!!」

 

「それならよかった、買ってきた甲斐があるな!!」

 

「あ、もう夕暮れか……見て、夕陽が綺麗だよ」

 

 俊也達がそちらを見ると、夕陽に照らされたどこまでも赤い美しい空がそこにはあった。それを見て、全員がその光景に見とれる。

 

「この時間……ちょっと早めの晩御飯になったね」

 

「色々あったけど……二人とここに来れてよかった。ありがとう」

 

「うん、私も同じ気持ち」

 

 山の頂上は、もう誰もいない。みんなは下山しているのだ。それを見た二人が、好機を悟る。今しかない、と。先に言葉を発したのは、ノエルだった。

 

「俊也くん。改めて、ありがとう。私達を救ってくれて」

 

「気にしなくていいよ、友達だろ? それに……俺以外に、やれる人はいないし」

 

「それのおかげで、私達だけじゃない。君の彼女になった人達も救われてる。体だけじゃなくて、心まで……すごいことだよ」

 

 二人は俊也のことを、純粋に賞賛して尊敬していた。だからこそ、自分の行いに自信を持って欲しいと思っているのだ。

 

「……ありがとう」

 

「もう気づいてるんじゃない? 私たちが何を言いたいか」

 

「うん。やっぱり二人も、俺のこと……」

 

 二人が頷いて、少しだけ顔を赤くした。それを見て俊也も、完全に確信する。彼女達が自分に好意を向けていることを。

 

「団長は、大好きだよ。君の全部が」

 

「だから、私達とも付き合って欲しい。いいかな?」

 

「もちろんいいよ。二人なら、大歓迎だ」

 

 二人はその言葉を聞いて、とても喜んでいる。その様子を見て、俊也は微笑ましい気持ちになった。

 

「えへへへ、やったぁ!! これからよろしくね!!」

 

「これで俊也くんは、五人の女の子をたらしこんだわけだね。それだけ魅力的なんだから、仕方ないけど」

 

「二人とも付き合えたし、バーベキューは楽しかったし。今日はラッキーな日だな!!」

 

「じゃあ、そろそろ帰ろっか。だいぶ暗くなってきたし」

 

 俊也達が三人で笑う。そろそろ暗くなってきたので、リフトに乗り込んで山を降りた。それからバスに乗って、三人が街に帰ってくる。そこでノエルが、おもむろに俊也の腕に抱きついた。

 

「俊也くん……うち、まだ帰りたくないなぁ」

 

「うん、そう言うと思ってたよ」

 

「私も、まだ一緒にいたい。ダメかな?」

 

 二人は俊也の腕を強く抱きしめて、離そうとしない。その様子を見て、俊也は自分の近い未来を察した。

 

「いいよ。今日は二人で泊まっていけ」

 

「ありがとう俊也くん、大好き!!」

 

「じゃあ早めに行こっか、誰かに見られたらまずいかもだし」

 

「こっちだよ、着いてきてくれ」

 

 こうして俊也は二人に抱きつかれたまま、家に向かうのだった。





 次回えっち回です。
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