※この作品はR-18です。

ホロライブラバーズX ファンタジック・ピースメイカー   作:とも667

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 シミズと戦いに行きます。


強化神人96-A

次の日。るしあは約束通りに、俊也の家に来た。そして、沙花叉にきちんと頭を下げて謝罪した。

 

「だから、あの時は殺そうとしてごめんなさい」

 

「……それを言うためだけに、私に会いに来たの?」

 

「許してくれなくてもいい。けど、謝ることだけはさせて欲しかったから」

 

 ハッキリとそう言うるしあに、沙花叉はため息をついて言う。

 

「はぁ……殺そうとしてきた奴に温かいご飯や寝床を用意して、それを言ったらついさっきのことを昔の話だとか言ったり、アンタに至っては謝ってくるし。罠だって言われた方がまだ信じられる」

 

「罠なんかじゃないよ。るしあは本気で申し訳ないと思ってる」

 

「だろうね」

 

 沙花叉は正直言って、みんなの思考回路が理解できなかった。周囲の環境が異常すぎて、正常な思考で接されるということが、沙花叉にとっては異常なのだ。

 

「それが言いたかっただけ。それじゃ」

 

「……ホント、よくわからないな。あの人たちは」

 

「ふぅ……ちゃんと謝れたかな」

 

 そう言って出てきたるしあに、俊也が言う。

 

「ああ、よくできてたよ」

 

「俊也くん、ありがとう。やっぱり俊也くんは、かっこいいね」

 

「おいおいやめろよ、照れるだろ?」

 

 俊也が照れているのを見て、るしあも笑顔になる。そして、そこに他のみんなが来た。

 

「その様子だと、上手くいったみたいだね」

 

「るーちゃん、落ち着いた?」

 

「うん、ごめんね。もうしないから……」

 

 ぺこらがそう言って、るしあが謝罪する。そこでノエルが本題に入った。

 

「さてと。それじゃあ、問題が解決したところで作戦会議といきますか」

 

「あぁ、そのためにみんなを呼んだんだしな」

 

「確か名前は、『シミズ』……でしたっけ?」

 

 机を囲んで、全員で話す。『邪神連合対策部』と書かれた紙が、机の真ん中に置かれている。マリンが敵の名前を言って、フレアが情報を出す。

 

「調査を行ったけど、結果は当たり。それらしき建物が見つかったってさ」

 

「沙花叉さんの言う通りなら、かなりの狂人らしいけど……」

 

「多分、秋月とは別のタイプだろうね。やってることと言ってることが違うって言ってたし、多分話も通じない」

 

 戦うことになるのは確定。それを悟って、全員が覚悟を決める。

 

「そして……沙花叉自身のことも、あそこに行けば多分わかるよな」

 

「おかしな点が多いもんね。謝られることを珍しそうにしたり、下の名前がないって言ったり」

 

「みんな、決行日は明日でいい?」

 

 ノエルがそう言うと、全員が答える。

 

「「異議なし」」

 

「それじゃリーダー、何か一言」

 

「よし……秋月にも勝てたんだ、今回もきっと勝てるはず!! 自信を持っていこう!!」

 

 そう言って、みんなの士気を高める俊也。それにみんなも、肯定的な反応を返している。

 

「いっちょ暴れてやりますか!!」

 

「るしあが守るから、みんな安心してね」

 

「じゃあ、るしあは船長が守ります!!」

 

 みんながそう言う中、ノエルとフレアだけは……俊也のことを心配していた。

 

「俊也くん。トドメは団長に任せて」

 

「……わかった。悪いな、ノエル」

 

「気にしなくていいよ。俊也に無理はさせたくないし」

 

 フレアとノエルは、全く気にしていない様子だ。そして、次の日……突入する前のこと。

 

「じゃあ、行ってきます。料理は作り置きしてあるから、レンジを使って食べてくれ」

 

「……シミズを殺しに行くの?」

 

「あぁ。もしかして、心配してくれてるのか?」

 

 俊也がそう尋ねると、沙花叉は少し悩んだ後に素直に頷いた。

 

「まぁね。アンタの飯は美味いし……死んだら困るかも」

 

「そりゃ嬉しいな。じゃあ、留守番頼むぜ」

 

「……気をつけなよ」

 

 そう言われて送り出され……俊也はバスで隣町に行き、そこから歩いて……基地の前に到着した。

 

「ここが……こんな山奥に作るとは、何が隠してあるのやら」

 

「とりあえず、まともな奴じゃないのは間違いないね」

 

「フレア、ノエル。もう来てたんだな」

 

 そう言われて、ノエルが胸を張るが……フレアが冷静にツッコミを入れる。

 

「騎士団長がこんな大事な時に、遅刻なんて有り得ないよ!!」

 

「訓練の時は、何回か寝坊して遅刻してるけどね」

 

「そ、それは……はい、ごめんなさい」

 

 フレアに痛い所を突かれたノエルは、何か言い訳しようとしたが、早々に諦めた。そんなことをしていると、残り三人も来る。

 

「お待たせぺこ!!」

 

「ここがシミズの……これは、山に完全に擬態してますねぇ」

 

「見つからなかったのも納得だね……」

 

 三人がそう言っている時、俊也はるしあの髪色に目を惹かれた。

 

「おい、るしあ……その髪は?」

 

「えっ? 髪がどうしたの? ……あれっ?」

 

「髪の末端がピンク色になってる……」

 

 それを見たるしあは、不思議そうにしている。身体に影響がないことを知り、とりあえず俊也は安心した。

 

「とりあえず、体に問題がないならいいよ。何かあったらすぐに言ってくれよ?」

 

「うん、わかった」

 

「それじゃ……開けるよ」

 

 パスワードが分からないので、今回は強行突破だ。ノエルがメイスを振り上げて……光の力を込めて、叩きつけた。

 

「でぇぇぇいっ!!!」

 

 ──ドガッシャアァァン!!!

 

「おぉ、流石はノエルだ……」

 

「どんなもんよ!! ほら、行こう?」

 

 中に入ると、警報が鳴り響いていた。どうやら無理矢理入ったことで、気づかれてしまったようだ。

 

『侵入者発見。侵入者発見。直ちに排除します』

 

「なっ……避けろ!!」

 

「ッ、レーザー兵器……!? 人じゃないの!?」

 

 そこで、俊也は気づく。論文を書いていたり、沙花叉に能力を与えたりしたのだから、この程度作れて当然だと。

 

「なるほど、ロボットを使ってるのか!!」

 

「それなら遠慮はいらんね!! 『トリプルシュート』ッ!!」

 

 ──ズドォン!!

 

 ──ズガガガァァン!!!

 

「新技か……!!」

 

 ノエルはメイスで地面を叩き、瓦礫を浮き上がらせて……その瓦礫を正確にレーザー兵器へと飛ばす。それらは砲頭が潰れて、壊れてしまった。

 

「手荒な歓迎は想定内だったけど、まさか使うのがロボットとはね」

 

「大丈夫でしょ、いつも通りやればいいぺこ!!」

 

「そうだな……おっと、まだ来るみたいだぞ」

 

 そこでノエルが前に出て、不敵な笑みを浮かべた。

 

『排除します』

 

「まとめてぶっ壊す!! そりゃあっ!!!」

 

 ──ドゴォォォン!!

 

「敵がノエルちゃんに引き寄せられてく……!?」

 

 ノエルは地面をメイスで叩き、そこから波動のような物を発生させる。それに巻き込まれた機械達は、為す術なく引き寄せられていく。そして、そこにノエルがメイスを振り上げた。

 

「『サゴーゾインパクト』ォォ!!!」

 

 ──バギャアァァァ!!!

 

「す、すげぇな……あの数を一撃なんて」

 

「このくらいできないと、邪神人間には勝てそうもないからね!!」

 

 そこでスピーカーを通して、何者かの声が聞こえてきた。

 

『客人の皆様、こんにちは。本日はお日柄もよく、お会いできて大変喜ばしい気持ちです』

 

「この声……まさかお前、シミズか!?」

 

『その通り、その察する力……素晴らしい!! 尊敬します!!』

 

 わざとらしい程の褒め言葉と口調に、その場の全員が怒りを煽られる。ぺこらがそれに対して、文句をつけた。

 

「やいやい、シミズ!! ふんぞり返ってないで、出てこいぺこ!!」

 

『ああ、残念です。私もあなた方と遊びたいのですが……私はとても忙しい。あなた方がこちらまで来ていただければ、お相手できます。お待ちしていますよ、ご客人。是非とも来てくださいね』

 

「……あれがシミズか。確かに、沙花叉さんの評価通りの男だね」

 

 フレアがそう言って、廊下の先を見る。ずっと続いていて、果てが見えない。

 

「とりあえず、行ってみようか……罠には気をつけてな」

 

「うん。どこに仕込まれてるかわからないしね」

 

「……おっと。言ってる側から増援らしいね」

 

 ロボットがさっきよりも多く湧いてくる。それを見て、今度はフレアが前に出た。

 

「フレア、やれそう?」

 

「任せてよ!! 『レーザースライサー』!!!」

 

 ──ズギャギャギャギャ!!!

 

「ビームを弾いてる!? どうやって……」

 

 青い刃に弾かれていく光線。それに俊也が驚く中、ノエルはそれを冷静に分析する。

 

「あれは魔法で斥力場を発生させて、それで斬り裂いてる。だから、あれを高速回転させて突撃すると……斥力で敵の攻撃を弾きながら接敵して、叩き切れるって寸法」

 

「なるほど……流石だな、フレア」

 

「トドメだ!! 『五指爆炎弾(フィンガー・フレア・ボムズ)』!!!」

 

 ──ズドドドドォォッ!!!

 

 五本の指から放たれた大きな火球が、迫ってくる機械達に襲いかかり……一瞬で火だるまにして、焼き尽くしてしまった。

 

「ふぅ、こんなもんかな」

 

「流石だな。負けてられないぜ」

 

「とりあえず、先に進もうか」

 

 更に先に進んで行くと……俊也は壁に液晶があるのを見つけた。

 

「あ、電気がついた」

 

『報告書01 どうやら私は『邪神人間』になれたようです。ボスは『神の復活』や、『アポトプス様』など、今日も素晴らしい演説をしていて、とても賑やかでした。しかし、私は研究で忙しいので……聞くのはまたの機会にさせていただきます』

 

「……さっき聞いた口調と随分違うね。それに、『アポトプス』って……?」

 

「神の名前かもしれないな。メモしとこう」

 

 その先にも液晶が貼ってある。今度は02番だ。

 

『報告書02 ボスから命令をいただきました。邪神の復活方法を研究しろと言って、欠片を何個かプレゼントしてくれました……なんとタイミングのいい、素晴らしいプレゼントでしょう!! これで私の研究も一層進むというもの!!』

 

「……なるほど、ボスからの信頼も厚いようだな」

 

「結構大物みたいだね」

 

 しばらく、変わり映えしない内容が続いていた頃。内容が変わったのは、25番からだ。

 

『報告書25 楽しいことを考えつきました。我々は触手などの見た目のせいで、街を歩くと注目の的となってしまいます。『神の声』も、毎日とても賑やかです。それらのない邪神人間を作れないでしょうか? 人間に完全に擬態した、邪神人間を……とても楽しくなってきました』

 

「もしかして、これが沙花叉さん……?」

 

『報告書26 許可をいただけました。プロジェクト名は、『強化神人』。何十個かの欠片の生成も行っておきましたし、あとは客人をご招待するだけですね』

 

 サラッと悍ましいことを言っていて、その場の全員が顔を顰める。ご招待、つまり誘拐だろう。

 

『報告書27 とりあえず、同胞達に五人ほど民間人をご招待してもらいました。お客人は喜んでくれるでしょうか? 結果は次の報告書に書きます』

 

「成功したなら、沙花叉さん以外にもいるはずだよね? いないってことは……」

 

『報告書28 結論から言って、失敗でした。全員がプレゼントを受け取らないまま、消えてしまいました。何が不満だったのでしょう、反省点を考えて再挑戦してみます』

 

 やはり失敗した。無駄な犠牲を出したというのに、申し訳ないとすら思わない姿勢。

 

「酷い……人の命を奪っても、自分の探究心の方が大事なの?」

 

『報告書29 もう一度数人招待してプレゼントを渡しましたが、上手くいきません。何故だろうか? 私のプレゼントが気に入らないのですか? そんなことがあるはずない、絶対にご客人に喜ばれる物のはずです!!』

 

「間違ってるのはお前の倫理観だろうに……」

 

 そう言いながら、俊也は歩いていく。報告書には『失敗』の文字と、シミズの文句だけが綴られている。しかし、しばらくして……

 

『報告書57 私の同胞達が、女の子の客人を連れてきてくれました。神への生贄だと言っていたので、少し落ち着いていただきましたが……プレゼントを少し渡すと、彼女はそれを受け取ってくれました。とても嬉しいです、これからも受け取ってくれるでしょうか?』

 

「……まさか、これが沙花叉さん?」

 

「そんなことされてたの……!?」

 

 次の報告書を読むと、またその『子供』について書かれていた。

 

『報告書58 客人の体の傷が来る度に増えているので、同胞達に尋ねると……どうやら同胞は、邪神連合に反抗的な客人が気に入らないとのことです。そんな理由で、プレゼントをもらってくれる客人が死ぬのは困る……せめてご飯は食べさせてあげるように、神様と共にお願いしておきました』

 

「ご飯も食べられてなかったんだ……」

 

「だから、まともな飯を見せられたら怪しんでたんだな……こいつらが与えてたのも、結局はその『神様』のためなわけだし」

 

 打算の色が見えず、自分に親切に接してくる男。警戒して当然だなと、俊也は思った。そして報告書の番号はどんどん増えて……

 

『報告書67 招待するのにも限界が出てきました。同胞の子供や、同胞にもプレゼントを渡してみましょう。同胞の代わりに、ロボットを用意しなくては……ロボットが新しい同胞になってくれれば、同胞が消えてしまっても寂しくありません』

 

「酷い……こんなこと思ってるの?」

 

『報告書68 神様と一緒にお願いすると、同胞達は喜んで、自分の子供や自分を差し出してくれました。私は、そんな素直な同胞達が大好きです。プレゼントを喜んでくれるでしょうか?』

 

 その後、その実験は案の定失敗に終わっていた。全く学習しない様子に、俊也が呆れる。

 

「こいつ……学習するってことを知らんのか?」

 

「してるつもりなんだと思うよ。失敗に終わるとしても、いつかは成功するって思ってるんだよ」

 

「そのために人がどんどん死んでいく、たまったもんじゃないな」

 

 悍ましい報告書を、俊也達はそう言いながらも読んでいく。そして……報告書の95番目にて。

 

『報告書95 最早、プレゼントを受け取ってくれる同胞や客人は、ほとんどいなくなってしまいました。あとプレゼントを受け取ってくれそうなのは、女の子の客人と招待した数人だけ……どうか、私のプレゼントを受け取って欲しいです』

 

「これって……もしかして」

 

『報告書96 96-Aさんが、私のプレゼントを受け取ってくれました。溶ける様子も、邪神人間になる様子もない。他の同胞は残念ながら、消えてしまいましたが……それは仕方がありません。それより今は、受け取ってもらえた事実が嬉しいです!!! やはり、私のプレゼントは間違ってなどいなかった!!!』

 

 歓喜が、報告書の文面からでも伝わってくる。これが沙花叉であることは、誰が言わずとも理解できた。

 

『報告書97 96-Aさんの能力を測定している途中で、あの人は能力を使用して出ていってしまいました。連れ戻しに行かせた同胞は全滅。流石は私の最高傑作、素晴らしい力です』

 

「追っ手……そうか、だから『命がかかってる』と言ってたのか」

 

『報告書98 ロボットと織り交ぜて、人間の同胞も迎えに行かせましたが……やはり全滅。奴の地面の液体化及びその中での活動能力は、素晴らしいようです。そんなところも私は好きですよ、96-Aさん』

 

 そして、次の報告書には……三回目の追っ手のことが書いてあった。

 

『報告書99 三回目の迎えも、拒否されました。相当な量を送りましたが、これでもダメですか……同胞になんとかしてもらうのは無理そうですね。しばらくは、彼女の様子を見ましょう』

 

「……あれっ? これってもしかして……」

 

『報告書100 興味深い報告が来ました。可愛く吠える子犬のような秋月さんとはいえ、邪神の力を振り払った人が現れた、とのこと。名前は『碇俊也』……覚えておきましょう、客人になってくれるかもしれません』

 

 自分の名前が出てきたことに、俊也も驚いた。

 

「俺のことも知ってるのか……」

 

「相当有名になってるみたいだね」

 

『報告書101 プレゼントは相変わらず、やはり誰にも受け取ってもらえませんが、碇俊也さんに関しては興味深い。解除のメカニズムも気になるし、どうして人間が怪物になるのかも気になります。少し考えてみます』

 

 そう言って……二つ先の報告書にて、その結果が書いてあった。

 

『報告書103 わかったぞ、本人の体の強さが鍵だ。96-Aさんが受け取ってくれたのもそうです、生まれつきの体の強さ……それがある状態で、適性のある程度ある者に邪神の力を与えると、怪物化したり、プレゼントを受け取ってくれるようです。これは秋月さんにも送っておきましょう』

 

「そういうことか……じゃあ、俺も怪物になり得るのか?」

 

「有り得るね……そうなったら、手が付けられなくなっちゃいそうだ」

 

 そう言いながら、更に進む。報告書のパネルにも終わりが見えてきた。

 

『報告書114 秋月さんが死んでしまいました。殺害したのは、碇俊也と怪物化を解除した五人……素晴らしい。私もまさか、彼らがここまで強いとは思っていませんでした。上層部からも、彼らを何とかしろと命令が来ています。さて、どうするか……』

 

「……そういうことか!!」

 

『報告書115 いいことを考えつきました。彼らを殺すように、96-Aさんに依頼しましょう。噂によれば、96-Aさんは、私に反逆しようとしているらしい。彼女には、『彼らを殺せば解放して差し上げます』と同胞に伝言を頼みました。どちらが勝っても負けても面白い……そうだ、死体を持ってくるようお願いしておこう。死体でもいいから、彼の顔を一目見てみたい!!』

 

 その異常性に、俊也達はドン引きしていた。負けていれば、自分の死体はこの者の人形だったと思うと、俊也は心の底からゾッとする。

 

「死んでもこんなヤツの実験台だなんて、嫌すぎるだろ……!!」

 

「見て、これ!!」

 

『報告書116 96-Aさんは、彼らに勝てば解放します。私は同胞に嘘など言いませんよ。証拠品は彼女がいない間に、同胞達に地面から掘り出してもらいます。人骨の一本でも出れば、彼女は騎士団に捕まるでしょう。さようなら、最高の同胞……あなたのことは忘れません!!』

 

 その邪悪極まりない精神性に、全員が吐き気を催した。解放してやると言いながら、やることは殺害と何も変わらない。自分達が殺そうとしたのに、それを無視して死刑になるように仕向ける……面の皮が厚いにも程がある行為だ。フレアが嫌悪を顔に出しながら、言う。

 

「最悪だね、コイツ」

 

「こんな奴のせいで、沙花叉さんは……」

 

「るしあ、事情も知らないで……帰ったらもう一回謝らないと」

 

 みんながそう言う中、目の前に大きな扉がある。『研究室』と、大きく書かれていた。そこの前に立った瞬間、ドアの間から蒸気が出て……自動で扉が開く。それを見たノエルが、俊也に尋ねる。

 

「……どうする、俊也くん? 入る?」

 

「もちろん。いくぞ、みんな……準備はいいな?」

 

「あたぼうよ!!」

 

 ぺこらがそう言って、構える。みんなもやる気満々だ。

 

「シミズッ!! 出てこい、お望み通り来てやったぞ!?」

 

「……ようこそ、客人の皆様。ここまで来ていただいて、誠にありがとうございます。私は今……すごく、すっごく気分がいいですよォ……!!」

 

「なっ……その顔は!?」

 

 シミズの表情は口調や声色とは異なり、激怒に満ち溢れていた。口調と顔が違いすぎて、とても不気味だ。

 

「研究途中で来て頂いたおかげで、私はとても有意義な時間が過ごせそうです。何故なら、今の私は……とってもとっても、あなた達と遊びたい気分なんですからね!!!」

 

「何こいつ、すっごい不気味……今、怒ってるの? それとも笑ってるの……?」

 

「えぇ、『笑って』いますとも。私はどんな時であろうとも、人に丁寧に接することしかできないもので……しかし、こんなに『楽しい』のは久しぶりです」

 

 それで俊也は、この者の性質を察した。どうしてこいつが、こんな矛盾した顔をしているのか。

 

「こいつ……『人に敬語が使えない』の真逆で、『敬語以外使えない』んだな!?」

 

「だからこんな変な喋り方を……!!」

 

「『変な喋り方』!? 潤羽さん、ユニークな感想をありがとうございます!! 私はとっても『嬉しい』です!!! さぁ、楽しい会話はそろそろ終わりにして……遊び始めましょうかァ!!!」

 

 そう言って、敬語と柔和な口調……そして憎悪をたっぷり込めた顔で歯軋りしながら、触手を14本出現させるシミズ。それと同時に、頭の上にヘイローがハッキリと浮かぶ。シミズのヘイローは黒色のヘイローで、黒い円の中には、スパナとドライバーが重なり合ったマークがある。

 

 しかしそれは、スパナの先端に曲がったドライバーがついていて、ドライバーの先端に曲がったスパナがついた、異常な形状をしている。シミズの精神性をよく表した、悍ましいヘイローだ。

 

「お前だけはぶっ倒す!! 行くぞぉぉぉ!!!」

 

「バラバラになるまで遊びましょうねぇぇぇ!!! ウヒヒヒヒヒヒッ!!!」

 

「死ぬのはお前だぁぁぁぁ!!!」

 

 こうして、邪神連合ぶっちぎりの狂人『シミズ』との戦いの火蓋は切って落とされた。




次回、VSシミズ。
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