※この作品はR-18です。

ホロライブラバーズX ファンタジック・ピースメイカー   作:とも667

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 ぺこらの精神に、巣食うモノ。


ぺこらの『邪神』

目の前が強い光に包まれて、目の前が真っ白になる……しばらくすると、光が少しづつ消えてきた。ゆっくりと目を開けると……

 

「くそっ、一体何が……ッ!?」

 

 火の粉の散る音がする。建物も軒並み崩されている、あいつがやったのか? あの一瞬で? くそっ、よくも!!

 

「おい!! 神気取り!! どこに行った!! ぺこらを返しやがれぇぇ!!」

 

 叫んでも、奴の声は聞こえない。どこに消えたんだ、あいつは?

 

「くそっ、自分を見つけてみろってか……!? 上等だ!!」

 

 そう思って、探しに行こうしたその時……壊れた建物から、液体が出てきているのを見つけた。あの色は血ではない。

 

「あれは、なんだ……?」

 

「……ギッ」

 

「なっ、声を出した!?」

 

 液体が形を持ち始める。大きな眼球が一つだけついた、丸い体と他の触手が頭と横から十本……この姿と、触手には見覚えがある。これはあの時、ぺこらが『野うさぎ』って呼んでた生物に似てる。恐ろしい姿になっているが……

 

「神気取りが、こいつで足止めするつもりか!!」

 

「ギギャ、ギャギャ……」

 

「一匹じゃない……囲まれてるってわけか……」

 

 用意周到だな。そうまでして、俺を殺したいのか……だが、つまり俺を厄介だと思っているということだ。

 

「辿りつければ、多分殺せる……!! 待ってろぺこら!! 今助けに行くからな!!」

 

「ギギィィィッ!!」

 

「竜巻旋風脚!!」

 

 飛びかかってきた奴らに、竜巻旋風脚を当てて吹っ飛ばす。そこに触手が何本も飛んできたが……甘い。

 

「ギャギィィッ!!」

 

「セントルイススマッシュ、エアフォース!!」

 

「ギッ!?」

 

 触手を弾き飛ばして、急接近し……思いっきり、踏みつける。そこからの……!!

 

「ブレイズキック!!」

 

「キヒィィィ!!」

 

「一匹ずつは強くないな……所詮は出来合いの怪物か!!」

 

 このまま一掃してやる。そう思いながら……後ろ側にスマッシュパンチを繰り出した。不意打ちしようとしていた奴が、潰れて消える。

 

「ギャヒッ!!」

 

「不意打ちにしちゃ、雑すぎるんじゃないか!?」

 

「ギギィィィッ!!」

 

 苛立っている様子で、こちらに大量の触手を伸ばしてくる怪物達……跳躍して、迎撃の技を打つ。

 

「セントルイススマッシュ!! からの……!!」

 

「ギギッギィィ!?」

 

「竜巻旋風脚!!」

 

 触手を伸ばしてきていた奴らが、一斉に潰れる。不利を察したか、逃げようとしている奴らがいるが……逃がすものか。

 

「逃がさん!! ブレイズキック!!」

 

「キヒィィィッ!!」

 

「お前らで最後だぁ!!」

 

 触手を躱して接近すると、奴らが飛びかかってきた。俺の上を取ったつもりのようだが……甘い。

 

「俺はもっと高く跳べるぜ!!」

 

「ギギッ……!?」

 

「マンチェスター……スマッシュ!!」

 

 右足の踵落としで、残った奴らを地面に叩き落とす。奴らも潰れて、黒い液体になってから消えた。

 

「……これでとりあえず、全員か」

 

 こいつらで時間を稼ぐつもりだろうが……この程度はすぐに片付けられる。早く進まなければ、大変なことになってしまうだろう。

 

「神気取り……あいつの体はデカいし、いるならわかるはずなんだけど……どこにいやがる!?」

 

『……来ないでよ』

 

「ッ、この声は……ぺこら!? どこだ、どこにいる!? 返事をしてくれ!!」

 

 ぺこらの居場所がわかれば、奴の居場所もわかるはず。どこに行ったんだ!?

 

『誰とも関わらなくても、生きていける世界になる……神様はそれをしてくれるんだ……』

 

「違う!! あいつは神なんかじゃない、ただの神気取りのクソ野郎だ!!」

 

『ぺこらは……もう、誰にも会いたくない。来ないでよ!!』

 

 声が途切れた……どうしてだ、どうしてそこまで拒絶する? あの時、二人と楽しそうに話していたのは全て嘘だとでも? そんなわけがない、信じるものか。

 

「帰ろう、ぺこら!! そんな奴の言うことを、聞いちゃいけない!!」

 

『真実を見ない愚者よ……人の心に土足で踏み込むとは、いよいよ愚かさも極まったか』

 

「その声は神気取り野郎か!! とっととぺこらを返せ!! 滅茶苦茶なこと言わせやがって!!」

 

 それを聞いた神気取りが、大きくため息をつく。

 

『真なる願いこそ叶うべきだろう。上面の願いなどに、意味は無い』

 

「自分の都合のいいことを勝手に真実にして、人を殺すとは……いくらなんでも、自己弁護が下手すぎるんじゃないか!?」

 

『やはり、どこまでも愚かだ……話す価値もないな』

 

 奴はそう吐き捨てて、また声が聞こえなくなった……ふざけやがって!!

 

「今すぐ黙らせてやる!! 待ってろぺこら!!」

 

 そう叫んで、走り出す。目指すはぺこらのところだ。見つからないなら、見つかるまで探すだけ……!!

 

「邪魔だ、どいてろ!!」

 

「キヒギィッ!?」

 

「セントルイス、スマッシュッ!!」

 

 邪魔な怪物共を蹴散らしながら、先を急ぐ。すると、また声が聞こえてくる……

 

『来ないでって言ってるのに、なんで来るの……? 怖いのに、どうしてやらなきゃいけないの?』

 

「ぺこら!! 目を覚ませ、お前は騙されてるんだよ!!」

 

『嫌だよ……現実になんて、戻りたくない!! お願い神様、助けてぇ!!』

 

 ぺこらの悲痛な声を聞きながら、それでも前に進む。止めないといけない、止められなければ……みんなも、ぺこらも俺も、幸せになれない!!

 

「うぉぉぉぉっ!! 邪魔だぁぁぁぁ!!」

 

『それは、この世界の持ち主の拒絶そのものだ。もしも倒されようとも、持ち主が貴様を拒絶するなら何度でも蘇る……』

 

「やってみなけりゃ……わかんねぇだろうが!!」

 

 奴のところに辿り着くためには、倒さねばならない。何度蘇るとしても、倒し続ければ先には進める!!

 

『マリン、るしあ……一緒にいると楽しい。二人と遊ぶ時間が楽しい……なのに、どうして後から辛くなるの?』

 

『大事な友達がいるのに、新しい友達ができたのに……どうしてぺこらは辛くなってるの?』

 

『意味わかんない、嫌い……!! 大嫌い!! ぺこらみたいなヤツに……友達といる資格なんてないっ!!』

 

 強烈な自己嫌悪が伝わってくる。それに応じるかのように、周りの怪物共も唸り声を上げて大きくなる。

 

「ギィギギァァァァ!!」

 

『ぺこらなんて……私なんて……!! 消えちゃえぇぇ!!!』

 

「くっ、そぉぉっ……ぺこらぁぁ!!」

 

 違う。そんなわけない、認めてたまるか。ぺこらが、消えるべきだと? 本当に消えるべきなのは……!!

 

『これこそが真実。この者の願いであり、これから変化する世界の姿である』

 

「消えるべきなのはテメェだ、神気取りィィィィ!!!」

 

「グギャギギギッ!!」

 

 後ろから触手を食らって、地面に叩き伏せられた。そこに触手の打撃を浴びせられて……骨がまたへし折れる。しかし……その触手を、逆に掴んで引き寄せる。

 

「邪魔すんじゃ、ねぇぇぇぇッ!!」

 

「ギギャアァァ!?」

 

「うぉぉぉぉぉッ!!」

 

 触手を掴んで振り回し、奴らを一掃して……そいつも投げ飛ばして進む。踏みつけて、蹴り飛ばして……一心不乱に、直感に任せてとにかく走った。最後に辿り着いた場所は……

 

「ぺこらの、家か……あれは!?」

 

「ギャギキヒヒッ!!」

 

「やめろぉぉっ!!」

 

 奴らが群がって、ぺこらの家に齧り付いている。壁が削られている……入るつもりなんだ。無論、させるわけにはいかない。跳躍して……セントルイススマッシュをぶち込んだ。

 

「ギャギィッ!?」

 

「ブレイズキック!! スマッシュパンチ!!」

 

「……無駄なことを」

 

 この声は……神気取りの声だ。俺が後ろを振り向くと……そこには、ぺこらが立っていた。だが、目の色が黒くなっている。こいつはぺこらではない……!!

 

「神気取り!! ここまで来たぞ、ぺこらを返せっ!!」

 

「ここまで来たことは賞賛しよう。しかし、もうすぐ『壁』は落ちる。そうすれば、我は真の力を取り戻し、この者の願いは叶う……!!」

 

「壁……なんのことだ!?」

 

 ぺこらの声と神気取りの声が混ざった声で、神気取り野郎は喋り続ける。

 

「教えておいてやろう。ここはこの者の心の中心部……精神を構成する上で、最重要な部分だ」

 

「この世界は、精神世界……? そうか、だからこんなに荒れ果ててるのか!! この野郎、ぺこらの精神をよくも!!」

 

「否。この者の精神は、前からこのようになっていた。我はそこに降り立ったに過ぎぬ」

 

 ここは精神の具現化……神気取り野郎の言葉を信じるなら、ぺこらの心はもうボロボロだったのか……

 

「どうして心を壊そうとする!? そうなったら、ここに住んでるお前も死ぬだろ!!」

 

「そうはならん。これはこの者の心の大部分ではあるが、暗い部分は我が降り立った時に取り込んだ……即ちこれを壊せば、この体は完全に我の物となる」

 

「なんだと!? ぺこらを殺すつもりか!!」

 

 つまり……ぺこらの精神は二度と戻らない。死ぬってことと同義だ……!!

 

「違う。我は真なる望みの神、それに邪魔な心を消すに過ぎない……そうして、この者の望みが最大まで高まる時、我はそれを喰らい……真なる望みを叶えるために、この世に顕現するのだ!!」

 

「結局、闇の心も殺すのか!? 味方なんじゃなかったのかよ!?」

 

「味方だ。だからこそ、喰らうことで我が復活の糧とし……その者の、真なる望みの礎にしようと言うのだ。素晴らしい死であろう、夢に殉じて死ぬというのは……何もせず無意味に死ぬ人間より、余程有意義だ」

 

 言ってることが滅茶苦茶すぎる、言ってること全てが暴論だ。人の命も、自分で夢を叶える権利も、最後にはその人の心まで喰うなんて……!!

 

「テメェだけは……許さねぇ!! あの姿になれ、絶対にぶっ殺してやる!!」

 

「……いいだろう。貴様に身の程という物を思い知らせてくれようぞ」

 

「ギギィ……ギギヒギッ!!」

 

 あの怪物達が、次々黒い液体に戻って、ぺこらの姿をした神気取りに群がってゆく。気持ち悪くなるような、粘ついた音を立てながら、奴の姿が変わってゆく……

 

「ギィルルルルゥッ!!!」

 

「なっ、デカい……!?」

 

『我こそ神、願いの化身なり!! 真なる願いの前に立ち塞がる者は、尽く滅ぶべし!!!』

 

 こいつの大きさは、ぺこらの闇の深さ……それを利用されているんだ。このド外道が……!! 『我慢』をかけて跳躍し……右足に力を込める。

 

「死ね、神気取り!! セントルイス……スマッシュ!!」

 

『……何かしたか?』

 

「効かない!? それなら……!!」

 

 奴の体を蹴り上げて跳躍、今度は踵落としの体勢だ。

 

「マンチェスタースマッシュ!!」

 

「……」

 

「ブレイズキックッ!!」

 

 最後にブレイズキックで蹴りつけて、離脱する。これなら、少しは応えたはずだ……!!

 

『蚊に刺された程にも感じないな……』

 

「な、なんだと……!? どうなってる、現実世界じゃ効き目はあったはずなのに……」

 

『言ったはず、ここはこの者の精神世界。この者の深い闇そのものを、誰かが小突いた程度で消せるとでも?』

 

 まさか……無敵だってのか? いや、信じてたまるか!!

 

「もう一発……マンチェスター!!」

 

『邪魔だ』

 

「なっ……ごぶぁっ!!」

 

 触手で地面に叩き落とされた。なんて威力だ、パワーまで上がってるのか……!!

 

『お前がこの世界で死ねば、現実の貴様の体も死ぬ……ここで滅びるがいい』

 

「死んで……たまるかぁ!!」

 

『滑稽なことだ』

 

 奴はこちらに爪を振り……さっきまでいた場所を衝撃波が爪型に引き裂く。あれに当たるわけにはいかない、早く倒さねば!! 伸びてきた触手を、竜巻旋風脚で弾き飛ばして……

 

「セントルイススマッシュ、エアフォース!!」

 

『遅い……止まって見えるぞ』

 

「ッ、ブレイズキック!!」

 

 襲いかかってきた触手に、ブレイズキックで応戦したが……為す術なく、吹っ飛ばされた。

 

「がぁ……ぐはっ!!」

 

『身の程を弁えよ。神の前にひれ伏せ』

 

「誰が、ひれ伏すかよ……お前にひれ伏すくらいなら、地獄の閻魔様に土下座する方が、100倍マシだ!!」

 

 それを聞いた奴は、また大きく息をつき……俺を無視して、家に標的を向けた。

 

『もういい、お前の相手をする時間が惜しい……』

 

「いつまでその余裕が続くかなっ!!」

 

『さて、心の中枢はどこだ……? ふんっ』

 

『がぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 何度蹴りつけても、焼け石に水だ……マンチェスタースマッシュも、セントルイススマッシュも通用しない。本当に神様だってのか? こんなクソ野郎に屈しなきゃいけないのか!? 家が破壊されて、ぺこらが苦しむ声が聞こえる。

 

「マンチェスタースマッシュ!!」

 

『……そこか?』

 

『がっ……あぁぁぁぁっ!!!』

 

 どんな搦手も、こいつには通用しない。一切の攻撃が効かないのだから……何をしようが、こいつは無視して来るだろう。

 

『ここも違う……まだ抵抗するか、兎田ぺこら。希望などないぞ、纏わりつく蝿が一匹いるだけだ……ふん』

 

『あぐぁぁぁうぅっ!!!』

 

「うぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 殴るのをやめたら、それこそおしまいだ。少しでも、少しでもダメージが入れば……!!

 

『……そこか!!』

 

「させるかぁぁっ!!!」

 

『鬱陶しいな……もういい、消してやる』

 

 また部屋を引き裂こうとしていた爪を、マンチェスタースマッシュで叩き落とす。奴の苛立ちが最高に達し、俺に矛先が向いた。奴が全力で触手を振るってくる……

 

「セントルイススマッシュ……エアフォース!!」

 

『甘いな……消えろ』

 

「なっ……グガッ、ガハァ!!」

 

 爪の衝撃波を食らって、地面を転がった。そこで奴が跳躍し、足がこちらを捉えた。血が俺の口と体から垂れている。だが、体が動かない……必死に手を伸ばして、『携帯型パルスアーマー』を起動した。体に水色の丸いアーマーが出たが……それも、容易く砕かれた。

 

『死ぬがいい!!』

 

「が……ごっ、ぶぁ……がげっ……」

 

『……フン、呆気ないな。兎田ぺこらお前の希望は潰えたぞ。さぁ……受け入れるのだ、神を』

 

 体が潰されてしまった。地面が凹んで、俺の体も同じような感じだ。間一髪、体中を潰されるのは避けて……パルスアーマーと、『我慢』もかけたお陰で、生きてはいるようだが……口から言葉が出ない。

 

『うああぁぁぁっあぁ!!!』

 

『これか……!! 漸く見つけたぞ、この写真が貴様の『心』だな? 今すぐ解放してやろう……待っていろ』

 

『うあっ、あがっ……』

 

 ダメだ。このまま、二人仲良く殺されるのか? それだけは避けなければ……しかし、どうすればいいんだ。奴に勝つ方法なんて、もう……

 

『お前はいつもそうだ』

 

「……!?」

 

『お前が諦めたせいで死ぬんだ。お前のせいでまた死ぬぞ?』

 

 頭が割れるように痛い。なんだ? この言葉は……

 

「……」

 

『誰も理解せずに死ね、殺人鬼』

 

「ち、がう……」

 

 体に力が入った。残っていないはずの力が、血を撒き散らしながら湧き出す。地面を、蹴り飛ばす……奴の元へと、走る。

 

『さぁ、願いの成就の時だ!! 喜べ!!』

 

「ガァァァァァァッ!!!」

 

『な……なに!?』

 

 何かを掴んでいた手を、マンチェスタースマッシュで叩き落とす。それが俺の元に落ちてきた……写真だ。宝鐘さんと、るしあとぺこら……みんな笑顔でいる。

 

「ぺこら、みんなのこと……好き、なんだな……」

 

『何故動ける……? いや、動けたとして何故逃げない!? 死の淵で、奇跡的に助かったというのに!!』

 

「友達見捨てて、帰れるか……!!」

 

 勝たなきゃいけない。こいつだけは仕留めないと……一生、後悔する。足に力を込め直す……最終ラウンドだ。

 

『無駄なことを……二人仲良く、死ぬがいい!!』

 

「ぺこら、本当にそうなのか……お前の望みは、それか!? それなら、この笑顔も嘘なのかよ!!」

 

『……違う!! 私は、みんなが大好き!! 辛い気持ちになるとしても、それもみんなが上書きしてくれるから!! みんなともっと、一緒にいたい!!』

 

 奴の攻撃を躱しながら、聞こえてくるぺこらの声を聞く。奴は明らかに焦っている……!!

 

「なら、力を貸してくれ……こいつを、追い出すぞ!!」

 

『神に向かって、その口の利き方……万死に値するッ!! 二人仲良く、滅びるがいい!!』

 

『そうは……いくかぁ!!』

 

 ぺこらの声がして……奴の体が、光り始めた。優しい光だ……

 

『こ、これはなんだ!? どうなって……グァァァァ!!!』

 

「そうか……お前の体を強くしてる怪物、ぺこらの拒絶そのものだとか、言ってたよな……それが、消えてるんだ……!!」

 

『馬鹿な、今になって……何故……!?』

 

 違う、今になったからだ。

 

「無くしそうになって、はじめて気づくこともあるってことさ……人間には、よくあることだよ!!」

 

『グゥアァァァッ……くっ……!!』

 

『今だよ!!』

 

 現実にいた時と同じくらいのサイズになっている……今なら、攻撃が通るはずだ!! 跳躍して、今度こそ!!

 

「マンチェスタースマッシュ!!!」

 

『グガァァァァッ!!!』

 

「ようやく、効いたようだな……ブレイズキック!!!」

 

 ブレイズキックで蹴り飛ばしながら、離脱する。奴の毛皮が焦げながら、吹っ飛んでゆく……

 

『お、おのれ……救いを受け入れぬ、愚かな獣が……!! 身の程を知れッ!!!』

 

「余裕がなくなってきたな……神様がそんなのでいいのかよ!?」

 

『黙れぇぇぇぇっ!!!』

 

 こちらに飛び込んで、爪を振るってきたが……さっきの攻撃の後だと、止まって見える。跳躍しながら避けて、右足を構えた。

 

「止まって見えるぜ……セントルイス、スマッシュ!!」

 

『グワァァァッ!!』

 

「逃がすかぁ!! 竜巻旋風脚ッ!!」

 

 畳み掛ける。それも奴の胴体に命中して……もう一発だ!!

 

『今だよ、もう一回!!』

 

「セントルイススマッシュ……エアフォースゥ!!!」

 

『ギィアァァァァーッ!!!』

 

 大きく吹っ飛んで、奴が外の壁にぶつかった。そこに飛び込んで……!! 右足の一撃!!

 

「ブレイズ、キックッ!!」

 

『ごぶっ、げっ……ごばぁっ……』

 

「やっと吐いたか、ぺこらの体を……!!」

 

 これで、奴はもう体を保てない。あとは、神気取りの化け物を殺すだけだ!!!

 

『有り得ん、認めんぞ……神は、負けはせん!!』

 

「神だ神だって、うるせぇな……今すぐ消えろ、寄生虫が!!」

 

『うるさいッ!! 死ね、今すぐに死ね!!!』

 

 奴が跳躍して、足を揃えた。また俺を踏み潰す気か、それなら……!!

 

『みんな!! 俊也くんを助けてあげて!!』

 

「サンキュー、ぺこら……!!」

 

『死ねぇぇぇぇぇ!!!』

 

 奴の全力が込められた両足蹴りに、跳躍して飛び込む。野うさぎ達が飛んできて、俺の足場になってくれる……!!

 

「うぉぉぉぉぉっ!!!」

 

『逃がすかぁ!! 触手を喰らえ!!』

 

「セントルイス……スマッシュ!!」

 

 弾き飛ばして、更に上昇する……そのまま、奴の上から蹴り込む!! 野うさぎ達が、動きを止めてくれている……やるなら、今しかない!!

 

『は、離せっ!! 私は神だぞ!!! 下等生物めぇぇ!!!』

 

「さっきやられた分……全部まとめて、返してやる!!」

 

『いっけぇぇぇぇ!!!』

 

 片足を伸ばして、突撃する。これで……終わりだ!!

 

「マンチェスター!! スマッシュッ!!!」

 

『グギィアァァァァァッ!!!!』

 

「……ぺこらの勝ちだ、神気取り」

 

 奴の体が、みるみる崩壊していく……俺とぺこらは、なんとか邪神に勝利を収めた。

 

『我は……我は、滅びぬぞ……また、いつか、必ず……』

 

「はぁ、はぁ……ぺこら、起きろ……」

 

「あ……俊也、くん……」

 

 生きている。助かったんだ……本当に、よかった。

 

「いい、何も気にするな……助かって、よかった……」

 

「……うん。ああいう気持ちも、ホントはある。けど……そういうところも、私なんだよね」

 

「俺は……そういうところ含めて、ぺこらの友達だぜ……きっと、二人だって……」

 

 ぺこらは笑ってくれている。俺は……ぺこらを、助けられたんだ。目の前が、明るくなってゆく……この世界から出るんだな。

 

「うん、うん……!!」

 

「じゃあ……また、あっちで会おうぜ? バイバイ……」

 

「……ありがとう」

 

 目の前が一際明るくなって、それが晴れると……俺はあそこで負ったのと同じ傷を負って、ここに立っていた。目の前の怪物が、苦しみながら消えてゆく。

 

「グガッ、アガァァァッ……!!!」

 

「……ぺこら!!」

 

「……」

 

 生きてる。息してる……よかった。どっと力が抜けて倒れてしまう……このまま死ぬのは嫌だな。だが、119を押す気力もない。その時……聞き覚えのある声がした。

 

「俊也くん、やっぱりここにいた……!! やっぱり大丈夫じゃないし!!」

 

「碇くん、死にかけじゃん……え、なんでぺこらが!?」

 

「ぺこらを……病院に……」

 

 宝鐘さんとるしあに、声を絞り出した。もう、意識を保てない……

 

「いやいや、それより俊也くんが重体でしょ!?」

 

「とりあえず、救急車呼ばないと……!!」

 

「……くっ」

 

 俺はそのまま、意識を失った。

 

 

 

 その日の深夜、『邪神連合』新支部にて。そこの管理者である男が、話を聞いて目を丸くしている。

 

「なんだと!? 邪神の加護が解除された……!?」

 

「は、はい……原理はわかりませんが、その男が触れた瞬間に、光とともに解除されまして……」

 

「何がどうなっている……? 邪神の化身になったなら、逃れる術はないはずでは……」

 

 前代未聞の状況。神の力が破られることは、宗教団体に一番あってはならないことだ。

 

「秋月支部長、どのように対処されますか?」

 

「……研究と対策を急がせろ。そいつの名前は?」

 

「えー……碇俊也、だそうです」

 

 それを聞いた秋月が、怒りを込めた口調で言う。

 

「碇俊也を……警戒レベルSに指定しておけ!!」

 

「はっ、了解しました」

 

「このことは、ボスにも報告しておかねばな……」

 

 秋月はそう言って、立ち上がり……電話をし始めた。

 

『はい、こちら番号74ですが……』

 

「……こちら、番号67。ボスにこう伝えておいてくれ……碇俊也という男が、未曽有の危険因子だとな!!」

 

『畏まりました。それでは、失礼します』

 

 電話が切られて、スマホをポケットにしまい込み……秋月が歯を食いしばりながら、机を強く叩いた。

 

「おのれ、碇俊也……神に対しての狼藉、許されんぞ!! 絶対に殺してくれる!!!」

 

 そう叫んだ後、秋月は憤怒の形相のまま……次の書類仕事をこなし始めた。




なんとか勝利できました。
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