※この作品はR-18です。

ホロライブラバーズX ファンタジック・ピースメイカー   作:とも667

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 これはお姫様の童話ではない。潤羽るしあの物語である。


偽典・ひとりぼっちのネクロマンサー

るしあと別れた後、俺は家に帰っていつも通りの鍛錬をして……風呂に入り、ベッドに寝転がった。

 

「ふぅ、今日のところはこんなもんでいいか……」

 

 腕と足が痛くなってきたので、そろそろ切り上げることにした。風呂に入って、歯を磨いて……枕元に宝物を置いて、ベッドに潜り込む。

 

「遊びの誘い、軽い気持ちでOKしちゃったけど……これデートだよな。だとすると……るしあも俺のこと、好きなのか?」

 

 ぺこらの時はそうだったしな。とりあえず、心の準備はしておくか……杞憂ならそれでいいが。

 

「……もうぺこらがいるけど、付き合ってもいいのかな?」

 

 明日、ぺこらに聞いてみるか。そう思いながら、俺は眠りに落ちた。そして、次の日……いつも通りに揚げ物弁当を四人分作ってから、学校に向かう。

 

「おはようぺこ、俊也!!」

 

「おはよう、ぺこら。そういえば昨日、結局なんの話をしてたんだ?」

 

「あぁ、るーちゃんが俊也のこと好きみたいだからさ、ぺこらは共有してもいいよって言ったぺこ」

 

 それを聞いて驚いた。まさか、ぺこらの方からOKが出るとは……

 

「何だって!? じゃあやっぱり、あれはデートの誘いか!!」

 

「そうだけど、他になんだと思ってたぺこ?」

 

「いや、考えすぎかと思ってたが……そうなんだな」

 

 考えすぎではなかったらしい、俺はそんなに好かれてるのか……!!

 

「もしかして、嫌ぺこか?」

 

「いや? すごく嬉しいよ!! そんなに好かれてるなんてな。ぺこらにダメだって言われると思ってたんだけど、OKしてくれて嬉しい」

 

「じゃあ、俊也もるーちゃんに気があるって言っとく!! るーちゃん喜ぶよ!!」

 

 友達思いなんだな、自分のことのように喜んでいる。そういうところも好きだ。

 

「優しいな。そういうところも好きだぜ」

 

「も、もう……照れるからやめてよ……でも、ありがと」

 

「ぺこらくらいかわいい女の子が、二人になるんだな……すごく嬉しい!!」

 

 ダメだと言われたら、諦めるつもりでいたが……もう許可が出ていたなら、好都合だ。

 

「あっ、でも一つだけ……」

 

「ん?」

 

「るーちゃんと付き合っても、ぺこらのこと飽きないでね?」

 

 もちろん、飽きるはずがない。こんなに可愛い子に、飽きてたまるものか。

 

「絶対飽きない、約束する!!」

 

「そうだよね、安心した!!」

 

「よし、学校行こう!!」

 

 それから学園に歩いていき……しばらくして。

 

「あれ? るーちゃんは?」

 

「来ないな……どうしたんだろう」

 

「るしあが遅れるなんて珍しいね……」

 

 それからしばらくしても、るしあは来なかった。この状況……すごく、すごく嫌な予感がする。みんなには、まだ言っていない。今は昼休みだ……みんな心配し始めている。

 

「るーちゃん、来ないね……」

 

「ぺこら、見に行ってみる?」

 

「うん、見に行ってみよう!! 俊也も来るぺこ?」

 

 二人とも見に行くらしい。なら、見に行くか……

 

「あぁ。見に行かせてもらうよ」

 

「決まりぺこだね、行こう!!」

 

「るしあの家はこっちだよ!!」

 

 マリンとぺこらに案内されながら、るしあの家に向かう。

 

「……鍵がかかってるね」

 

「おーい、るーちゃん!! いるなら返事して!!」

 

「応答無し、か……窓も閉まってるな」

 

 強烈に嫌な予感がする。こじ開けてでも入ろうかと、そう思った時……

 

「……通知? ッ、これは!?」

 

「え、どうしたぺこ? 何が……」

 

『速報 街に骸骨の怪物が出現』

 

 そう書かれただけの、シンプルな記事。それだけで、俺とぺこらが事を理解するには十分だった。

 

「……るしあ!!」

 

「そんな、るーちゃん……!!」

 

「え、何があったの? どういうこと?」

 

 話はあとだ。マリンを巻き込むわけにはいかない。

 

「話はあと!! 避難しとけ!!」

 

「えっ!? ちょっ、どこに行くの!? 帰らないと時間が……」

 

「病欠するって言っといて!!」

 

 二人で街に走る。こんなことをできるのは、人をそんな怪物に変えられるのは……ひとつしかない。

 

「神気取りめ……懲りずに出てきやがったな!!」

 

「あの時の化け物だよね、神気取りって……るーちゃんもやられたの!?」

 

「そうらしい、くそぉっ!! 阻止できなかった……!!」

 

 悔しいが、それを飲み込んでそれでも走る。街に行くと、情報通りに骸骨が暴れていた。しかし、ただの骸骨ではない。

 

「なんだ、ピンクの髪が生えてる……?」

 

「あれ、ゴスロリ……? お洒落な服……それにあれは、王冠?」

 

「あの服と髪、やっぱりるしあだ!!」

 

 るしあが見せてくれた、童話のお姫様。それにそっくりの背格好をしている……それを証明するかのように、周りにはアンデッド達が湧いてきている。

 

「これ、るーちゃんのネクロマンス……!?」

 

「おい!! 神気取り、懲りずにまた出てきやがったのか!? 俺だぞ、喋りやがれ!!」

 

『……また会ったな、忌々しい愚か者め』

 

 神気取りの声がして、空っぽだった骸骨の目に赤くて丸い光が灯る。それがこちらを睨みつけてくる……

 

「喋った!? お前、心の中以外でも喋れるの!?」

 

『貴様は……あの時救いを受け入れなかった、愚かな女か。また会ったな』

 

「愚かなのはテメェだ、神気取りが!! 今度はるしあに手を出しやがったか!?」

 

 俺がそう言うと、神気取りはため息を吐いて続ける。

 

『違うな、この者が怪物になることを選んだのだ。いい加減に理解しろ』

 

「ふざけないで!! るーちゃんも私も、こんなこと望むもんか!!」

 

『獣如きが、うるさく吠えおって……その声帯を潰してやる。覚悟しろ、今度はそう上手くはいかんぞ』

 

 アンデッドが動き出す。俺たちを殺すつもりか……!! 奴の体に触れられれば、あの時のように入れるかもしれない。まずはそれを目指さなければ……!!

 

「来るぞ、ぺこら!!」

 

「わかってる!!」

 

「ウォォォォォ!!」

 

 向かってくるアンデッド達に対して、構えをとる。数は多いが、一人一人は弱い……!! 跳躍して、足を伸ばして……回転しながらアンデッドの群れに突っ込む。

 

「竜巻旋風脚ッ!!」

 

「グォォォッ!!」

 

「俊也に手ぇ出すなぁぁぁ!!」

 

 ぺこらも人参型のハンドハンマーを振り回し、次々アンデッドを粉砕していく。頭を砕かれたアンデッドが、次々倒れて消滅してゆく……やるなぁ。

 

「俺も負けていられないな!!」

 

「ウォォォォォ!!」

 

「セントルイススマッシュ!! からの……!!」

 

 蹴り飛ばしたアンデッド達が、建物にぶつかって砕け散ってゆく。さらにその蹴りの勢いを利用して、その場で縦回転しながら、アンデッド達に足裏を繰り出す!!

 

「喰らえ、サイクロンディザスター!!」

 

「ギャアァァ!?」

 

「うぉらっ、どりゃあぁ!!」

 

 三回縦回転した後に、地面に着地し……更にその場で右足軸で回転。右足裏を中段に叩き込む……!!

 

「ソニックサイスッ!!」

 

「グォォォォォ!!」

 

「おらおら、どけどけぇ!!」

 

 アンデッド達は、ぺこらのハンマーに為す術なく吹き飛ばされていっている。しかし……

 

「まだ湧いてくるのか……!!」

 

『この者の力だけなら打ち止めだが、我は神だ。これが神と凡人の違いよ』

 

「何言ってんの、ぺこらの時は俊也に負けたくせに!!」

 

 それを聞いた神気取りは、機嫌を損ねたのか不機嫌そうに言う。

 

『あれはまぐれだ。負けはもう有り得ない』

 

「どうかな、こっちだって強くなってるぜ!?」

 

『図に乗るなよ……やれることは、アンデッド召喚だけではない!! 『黒蛇』ッ!!』

 

 地面に五本の黒い炎が走る。それは俺とぺこらめがけて、蛇のように走ってきた。

 

「くっ、そうか……呪術も得意なんだったな、るしあは……!!」

 

『跳んで躱したつもりか?』

 

「が、骸骨の塊……!?」

 

 まるでドッジボールでもするかのように、骸骨の塊……骸骨ボールが投げつけられる。まずい、これは……避けられない!!

 

「させるかぁぁ!!」

 

『チッ、兎田ぺこらめ……無駄なことを!!』

 

「ありがとう、ぺこら!!」

 

 骸骨ボールはハンマーで叩かれ、見当違いの方向へと飛んでいった。しかし、着地点にはアンデッド達が待ち構えている……

 

『油断したな!! 今度こそ……』

 

「甘いぞ!! マンチェスタースマッシュ!!」

 

「グギャッ!?」

 

 まだ残っている……これで一掃だ!!

 

「喰らえ、サイクロンディザスター!!」

 

「グェェェェ!!」

 

『お、おのれ……!! 喰らえ、『苗床の残滓』!!』

 

 飛んでくる火球は躱したが……キリがないな。削り切られては元も子もない……一気に接近しよう。

 

「……ぺこら。一気に突破する、手伝ってくれ!!」

 

「オッケー、ぺこちゃんに任せなさい!!」

 

『図に乗るなよ、愚か者共が!! 『苗床の残滓』ィ!!』

 

 投げつけられた大きな火を躱しながら、アンデッドの群れに突っ込む。そこで、ぺこらが後ろからハンマーを投げて叫ぶ。

 

「みんな!! 出番だよ!!」

 

『……忌々しい獣共!? また出てきおったか!!』

 

「アンデッド共は頼むぜ、野うさぎ!!」

 

 野うさぎはアンデッドに噛み付いて動きを止めてくれている、突破するなら今だ!!

 

「あ、また道が塞がって……」

 

「問題ない!! 喰らえ、龍尾烈脚!!」

 

「ギャッ!?」

 

 炎を纏った右脚でアンデッド達を蹴り上げて、足裏を二回ぶち込む。そして……足を伸ばし、そのまま蹴り進む!!

 

「うおりゃあぁぁぁ!!」

 

「グギャアァァ!?」

 

『近寄るな、汚らわしい!! 『黒火球』ッ!!』

 

 また大きな炎の塊が、奴の手の中に出現する。投げつけてくるつもりだろうが……

 

「甘い!! 竜巻旋風脚ッ!!」

 

『なに、すり抜けただと!?』

 

「セントルイススマッシュ、エアフォース!!」

 

 奴の頭蓋骨に、一撃入れてやった。大きな音を立てて、頭蓋骨にヒビが入る……

 

『グゥッ!! おのれ……!!』

 

「ぺこら、俺の手を掴め!!」

 

「わ、分かった!!」

 

 宝物が光る。その状態で奴に触れて……名前を呼ぶ。

 

「るしあっ!!」

 

「るーちゃん!! 起きて!!」

 

『ぬぅっ、またこの光か……!!』

 

 目の前が光に包まれて、見えなくなる……

 

「俊也、何も見えない……どうなってるの!?」

 

「大丈夫だ、これでいい……!!」

 

「あれ、光が収まった……?」

 

 成功だな、どうやら入れたようだ!!

 

「……流石に荒れてるな、街じゃないようだが」

 

「ここは……もしかして、るーちゃんの心の中?」

 

「あぁ、間違いない。ぺこらの時と同じならな……この景色、ぺこらはわかるか?」

 

 さて……ここの地理は、俺には分からない。どういう場所なのかが知りたいが……

 

「多分、魔界だと思う。荒れてるけど……お城の形とか違うし」

 

「お城の形……なるほどな、るしあは多分あそこにいるぞ!!」

 

「……そっか、骸骨はお姫様の服着てたもんね!!」

 

 ここが心の世界で、お城が『ネクロマンサーのお姫様』が住む場所なら……るしあはあそこのはずだ。そう思って、歩き出す。

 

『……むかしむかし、あるところに。ネクロマンサーの女の子が、ひとりぼっちで住んでいました』

 

「この声……るーちゃん!? どこにいるの!?」

 

「るしあの心の声だ……これ、あの童話?」

 

 あれを読んでるのか? とにかく進まないと……!!

 

『女の子が友達を作ろうとしても、その力を怖がって、誰も友達になってくれませんでした。女の子は寂しがり屋で、毎日泣いてばかりいました』

 

「俊也、あれ……!!」

 

「やっぱりアンデッドか、ぺこらの世界だと野うさぎモドキだったが……!!」

 

 童話の朗読を聴きながら、前に進むためにアンデッド達を薙ぎ倒す。竜巻旋風脚とサイクロンディザスターで一掃しながら、どんどん先に進む。間に合わなくなる前に、何とかしないと。

 

『ある時、そんな女の子を可哀想に思った神様は、女の子に友達ができるように取り計らってくれました。兎の女の子や、海賊になるのが夢でオッドアイの女の子です』

 

「なっ……話の内容が変わってる!? ぺこらとマリンになってるぞ!?」

 

「つまり、これは童話の朗読じゃなくて、るーちゃんのお話ってこと……?」

 

 あの後、気になって読んでみたからわかる。これが指している人物は、ぺこらとマリンだ。

 

『女の子はとても喜び、みんなと仲良く学校に通ったり遊んだりしはじめました。そんなある日、女の子は思い立ちます』

 

「くそっ……数が多くなってるぞ!?」

 

「邪神の力が強くなってる……急がないと!!」

 

 どうにかアンデッドを吹き飛ばして、前進する。その間にも、るしあの朗読は続いてゆく……

 

『『この力をみんなの役に立てれば、みんなともっと仲良くなれるかも!』そう思った女の子は、みんなの役に立てるために、自分のネクロマンスを使い始めました』

 

「この野郎、どけっての!!」

 

「どんどん空気が重くなってるような……」

 

 確かにそうだ……だが、これはハッピーエンドの童話のはずだぞ。

 

『……しかし、現実はそう甘くありませんでした』

 

「えぇっ!?」

 

「し、失敗したの!?」

 

 一番重要なところで失敗してしまった。るしあはそのまま、『ひとりぼっちのネクロマンサー』を読み続けている。

 

『女の子のネクロマンスはとても不気味で、誰一人受け入れてはくれませんでした。挙句の果てに石を投げられたり、攻撃されたり……アンデッドのいるお墓を壊されたりもしました』

 

「お、おいおい……!!」

 

「俊也、後ろ!!」

 

 後ろから、奴が投げていた骸骨の塊が転がってくる。どうにか躱したが……普通のアンデッド達も、健在だ。骸骨ボールに轢かれたのに、何事もなかったかのように立ち上がっている。

 

『女の子は怒って、人間達をアンデッドで追い払いました。女の子はその後、誰とも仲良くなれなかったことに泣き出してしまいました。ですが、そこに友達の二人がやってきました』

 

「まさか、絶交だとか言うんじゃねぇだろうな……!?」

 

「るーちゃん、ぺこらもマリンもそんなことしないよ!!」

 

 ぺこらがそう言っても、空気は重くなってゆく一方だ。アンデッド達も次々湧いてくる……

 

『二人だけはそれでも、女の子の友達でいてくれました。女の子は喜んで、二人とまた遊びはじめました……二人だけが、女の子の友達だったのです。しかし』

 

「もうめでたしめでたしでいいだろ、何が……まさか!?」

 

「なにか心当たりがあるの?」

 

 ある。嫌な予感がする……!!

 

『海賊になるのが夢だった子は、寿命で死んでしまいました。女の子と仲良くしていたせいで、お金をそこまで稼げず……夢は結局、叶いませんでした』

 

「や、やっぱりか……!! くそっ、神気取り野郎め!! セントルイススマッシュ!! サイクロンディザスター!!」

 

「寿命!? そっか、魔族と人間じゃ寿命が……それは、ぺこらもだよね……」

 

 アンデッドの数は増えていく一方だ。いくら進もうとしても、まともに進めない。

 

『次に、兎の女の子も死にました。寿命でした』

 

「どけっ!! この……!!」

 

「お城まで、もうすぐなのに……!!」

 

 るしあの声が、震え始めた。それに呼応するかのように、アンデッド達が湧き出す。

 

『女の子は全てを失いました……自分のせいで』

 

「違う、るしあのせいじゃない!! ぐっ……!!」

 

「俊也!! こんのぉぉ!!」

 

 ゾンビに噛み付かれる。そのままゾンビにならなくて良かったが……毒でも打たれたのか、右腕が動かせない。

 

『王子様は、女の子を迎えに来ませんでした。無能で、性格が悪くて嫌われ者の女の子を、迎えに来る理由などないからです』

 

「ぬぅあぁぁっ!! 龍尾烈脚!!!」

 

「るーちゃん、ダメ!! 自分を責めないで!!」

 

 神気取りが……るしあを傷つけて、何が楽しい!?

 

『そんな女の子が買い物のために街に出た時、王子様に偶然出会いました。王子様は、女の子を見て言いました。『なんて不細工な女だろう』と……』

 

「なんてこと言わせてんだ、神気取り!!」

 

「ふざけないで!! るーちゃんは可愛い子だよ!!」

 

 そう言っても、るしあにも神気取りにも届くことはない。るしあは、バッドエンドの物語を続ける。

 

『女の子は、大粒の涙を流しながら、家に帰りました。神様すら女の子に失望し、女の子を見放しました。そんな女の子は、ついに死を決意し……』

 

「やめろぉぉぉぉッ!!!」

 

「もうやめて、こんな話聞きたくないよ……!!!」

 

 怒りの声を上げながら、アンデッドを薙ぎ倒す。漸く入口が見えた。

 

『みんなどうせ死んじゃう。王子様だって来やしない。るしあが救われる権利なんて、あるはずない』

 

『その通り。だからこそ、私が貴様を救いに来たのだ。感謝しろ』

 

「ふざけんじゃねぇ、神気取り!! 結局殺すんだろうが!!」

 

 るしあをいいように使いやがって……絶対に許さん。扉を開けて……中に侵入する。

 

「るーちゃん!! 返事して!!」

 

『すぐに死んでしまうこと、友達になってくれないこと、酷いことを言われないこと……三つとも、解決する方法があったんだ……!!』

 

「な、なんだ……? 神気取り、何をさせる気だ!?」

 

 るしあの声から、狂気が滲む。

 

『みんな、ふぁんでっどさんになればいい。そうだよ、るしあのネクロマンスで、みんなをふぁんでっどさんにしちゃえば……誰も死なない。ずっと一緒にいられる』

 

「な、なんだって!?」

 

『悪口なんて言ってこない、ふぁんでっどさんならみんな友達……王子様だって、るしあの傍に来てくれる!! なんだ、簡単なことじゃない!! あははははは!!!』

 

 全人類が、アンデッドになればいい……? あまりにもめちゃくちゃな理論だぞ。それはつまり、一度全人類を殺し尽くして……るしあの傀儡として、甦らせるということ……!!

 

『そうだ、それでいい。さぁ、真なる願いを我に願え』

 

「ふざけるな、神気取り!!!」

 

「うぉらぁぁぁぁぁ!!!」

 

 二人でドアを突き破って、玉座の間に着いた。るしあの体を乗っ取った神気取りが、こちらを向く。

 

「遅かったな。ここまで辿り着いたことは、一応褒めてやる」

 

「黙れ!! るしあを返せ!!」

 

「やれやれ、せっかく夢が叶う方法を提示してやったのに……恩知らずな奴らだな」

 

 ふざけるな。あれのどこに恩を感じるんだ、どこからどう見ても暴論だろうに。

 

「暴論提示して恩着せがましいんだよ、神気取りが!!」

 

「フン、やはり神の心は愚者には理解できんか」

 

「あんな方法、るーちゃんが望むはずない!! 早くるーちゃんを返せ!!」

 

 それを聞いた神気取りが、大きく息をついて言う。

 

「全く話を理解していない……二人揃って、途方もない頭の悪さだ……!!」

 

「黙りやがれ!! とっととあの形態になりやがれ、神気取り!!」

 

「そんなに死にたいか? よかろう、望み通りにしてやる!! はぁぁぁぁぁ……!!」

 

 奴の体にアンデッド達が吸い込まれて、骨の体と服が構成されてゆく。空っぽの眼孔に、赤い光が灯った。

 

『我こそ神、願いの化身なり!! 真なる願いに立ち塞がる者は、尽く滅ぶべし!!!』

 

「えっ……なんか大きくない!?」

 

「この状態じゃ倒せない、『宝物』を見つけて呼びかけないと!! ぺこらが探しに行ってくれ!! 俺が、時間を稼ぐ!!」

 

 奴の前に立ちはだかる。どれくらいやれるかわからないが、やれるだけやるしかない。

 

『おっと、そう上手くはいかんぞ』

 

「えっ……アンデッド!? なんて量……!!」

 

『取りに行ける状況にしてやるとでも? 残念ながら、そこまで詰めは甘くない』

 

 くそっ……どうする。どうにかできないか!?

 

『中枢はアンデッド共に探させている。何せいくらでも出せるからな、便利だよ』

 

「くっ……!!」

 

「諦めてたまるかよ!! マンチェスタースマッシュ!!」

 

 奴の拳を避けて、腕に踵落としを叩き込む。そこに、横から火球を持った手が飛んでくる。

 

『『黒火球』!!』

 

「サイクロンディザスター!!」

 

「このぉ!! どけっ、どけぇぇ!!」

 

 ダメだ、アンデッドの数が減る様子がない。あのままじゃ、中枢をアンデッドに見つけられるのは時間の問題だ!! 早く勝負を決めねば……!!

 

『無駄だと言うのが……む?』

 

「うぉぉぉぉ!! 龍尾烈脚ッ!!!」

 

「あ、腕が……!!」

 

 奴の腕を、へし折った。やったぞ……!!

 

『中々やるな、神の腕をへし折るとは……しかし、忘れたか? この体もアンデッドであることを』

 

「なっ、なに!?」

 

『死ね!! 『黒炎』!!』

 

 プラモデルが組まれるかのように、修復された腕から黒い炎が放たれて……我慢をかけたが、モロに食らってしまった。体が焼け焦げて、落下する。

 

「ぐっ、う……!!」

 

『終わりだ!!』

 

「っ、くそぉ……!!」

 

 拳を何とか避けた。ぺこらに加勢したいところだが、こいつが大人しく逃がしてくれるとも思えない。

 

『喰らえ、『苗床の残滓』!!』

 

「竜巻旋風脚!! サイクロンディザスター!!」

 

『何度へし折っても無駄だ、いくらでも治せる!!』

 

 これでもダメなのか。くそっ、埒が明かないぞ……!!

 

「……みんな!! もう一回お願い!!」

 

『無駄な抵抗を……頭数も質も、こちらの方が上だ!!』

 

「……賭けるしかないか!!」

 

 ぺこらの元に走る。無論、奴が簡単に俺達を逃がすわけがない。

 

『好都合だ、まとめて死ね!! 『苗床の残滓』!!』

 

「っ、しまっ……」

 

「……ゴハァッ!!」

 

 『我慢』をかけて、まともに食らう。避けてしまえばぺこらに当たってしまうから……

 

「しゅ、俊也!! 何やって……」

 

『なるほどな。広範囲攻撃で自分達を一掃しようとするのはわかっている……まさか、終わるまで庇い続けるつもりか?』

 

「そうだって言ったら、どうする……!?」

 

 俺が一緒に攻撃してしまえば、その最中に撃ち落とされたり、アンデッドの攻撃に当たったりするのがオチだ。だからって、あいつの元にずっといてもボコボコにされるだけ。なら、もうこれしかない。

 

「無茶だよ俊也、やめて!!」

 

「無茶でもやるんだ!! ぺこら、お前を信じる!! だからお前も、俺を信じろ!!」

 

「ッ……もう、わかったよ!! けど、絶対死なないで!! 死んだら別れるからね!!」

 

 それは御免こうむるな……と思っていると、次の攻撃が飛んできた。それに体を焼かれて、倒れ込みそうになるが……

 

『自分で自分を殴って耐えたか……フン、愚かな。何も変わらんというのに』

 

「変わるさ、ぺこらは……やってくれる!!」

 

「みんな、頑張って!! ぺこらは……やらなきゃいけないんだ!!」

 

 ぺこらが頑張っているのに、俺が頑張らないわけにはいかない。絶対に、死んでやるものか。

 

『喰らえ、『黒火球』!! 『黒蛇』!!』

 

「がっ、ぐぎっ……うがっ……!!」

 

『これでも死なんか。本当に、愚かな奴だ……もう体は限界だろうに……よかろう、そろそろ楽にしてやる』

 

 奴が拳を構えた。俺を叩き潰すつもりか? あれは、喰らえない。避けなければ……!!

 

『死ね』

 

「死んでたまる……か……?」

 

『フン!!』

 

 奴の掌が、降ってきた。地面に埋まりながら、血反吐を吐き散らす。虫でも潰すかのように、体を潰された。

 

「ぐ、ごぶっ、う……」

 

『……まだ死んでいないのか。本当にしぶといな』

 

「うぉぉぉーっ!! 『ボルテックフィニッシュ』!!!」

 

 ぺこらが、アンデッドの群れを貫いてゆく。やってくれたんだ。

 

「俊也、道ができた……って!?」

 

「文句なら、後で聞く……今は、るしあだ……!!」

 

『しつこい。死ね、『苗床の残滓』』

 

 しまった!! 避けられない……後ろにはぺこらがいるから、竜巻旋風脚も使えないし……終わるのか。こんな奴に殺されて……

 

「……ぐぅぅっ!!」

 

「なっ……ぺこら!?」

 

『ほう、恋人を庇ったか……しかし、貴様もアンデッド共とやり合って無傷ではあるまい?』

 

 酷い怪我だ、その上焼かれてしまっている……

 

「どうして、どうして庇った!?」

 

「こっちの、セリフだよ……なんで、避けないの……死んじゃうでしょ、俊也!! 死なないって約束でしょ!?」

 

「俺が避けたら、ぺこらに当たるだろうが!!」

 

 ぺこらは立ち上がって、歯を食いしばっている。

 

「それくらい、なんてことない。傷つく覚悟はとっくにできてる!! ぺこらにも俊也を守らせてよ!!」

 

『全く美しい恋愛だな。そのまま死ぬがいい、『混沌の苗床』!!』

 

「……竜巻旋風脚ッ!!」

 

 二人で躱して、奴の頭を狙う。頭を狙えば……少しは効くはずだ!!

 

「セントルイススマッシュ、エアフォース!!」

 

「喰らえぇぇぇ!!」

 

『ぐぅっ!? くそっ、無駄だと何度言ったらわかる!?』

 

 まだだ、もう一撃……!! 奴を踏みつけて……!! 右脚で、踵落とし!!

 

「マンチェスタースマッシュ!!」

 

『ぐぅぅぅ……!! くそぉ!!』

 

「サイクロン、ディザスター!!!」

 

 回転しながら、三回頭蓋骨に足裏を叩き込む。ぺこらもそれに合わせて、ハンマーを叩き込んでいる……すると。

 

『なっ……神の頭蓋骨が、割れて……!!』

 

「流石に頭蓋骨は、簡単に治らないだろ!! あっちでも頭蓋骨割ったら、少し動けなくなってたしな……!!」

 

「今のうちだよ、俊也!!」

 

 道を塞いでいるアンデッド共を薙ぎ倒して、進む。

 

「龍尾烈脚!!」

 

「ボルテックフィニッシュ!!」

 

「グギャアァ!?」

 

 ……あった。多分、この部屋だ!!

 

「ひとつだけシンプルな扉……多分、これだ!!」

 

「あれ、ここって……るーちゃんの部屋?」

 

『うぐっ、あ……!!』

 

 アンデッドがいる、あれは『中枢』を持っているのか!? やらせるか!!

 

「竜巻旋風脚!!」

 

「グギャァ!!」

 

「サイクロンディザスター!!」

 

 アンデッド共を弾き飛ばして、着地する。とりあえずこれでよし……

 

「俊也、アンデッドは任せて!!」

 

「よし……任せたぜ!!」

 

「ぺこらが相手だよ!!」

 

 今のうちに確認しよう……これは、『ひとりぼっちのネクロマンサー』だ。でも、表紙が違う……

 

「まさか、朗読してたやつか……!?」

 

 中を読んでみると……やっぱりそうだ、改変されている。だからぺこらの時の写真みたいに、輝いていないのか。けど、どうすれば……

 

『おのれ……碇俊也、兎田ぺこら……!!』

 

「まずい、奴が来る……!! 何かないか……!?」

 

「やらせないっての!!」

 

 ぺこらが頑張ってくれているが、あいつが来たら終わりだろう。早急に何とかしなければ……!!

 

「チラシと、マジックペン……これだ!!」

 

『何をしようと無駄だ、この者の心は既に壊滅している!!』

 

「それはどうかな、やってみなきゃわからんぞ!!」

 

 一心不乱に、書く。一枚目、二枚目、三枚目。そして四枚目!!

 

「できた!! あとはこれを、この本にテープで貼り付ける……!!」

 

『えっ、これ……なに?』

 

「物語の続きさ。読んでみな!!」

 

 俺がそう言うと、朗読がまた始まる。

 

『死のうとしていた女の子の元に、突然王子様がやってきて言いました。『奴は偽物だ、傷つけてしまって申し訳ない。君は美しいよ』と……』

 

『なに!? 貴様、何をした!?』

 

「簡単なことさ。続きを書いてやったんだよ!!」

 

 まだ『おしまい』とは言われてない。ここからハッピーエンドだ!!

 

『女の子は嘘だと言って疑いましたが、王子は諦めずに言います。『私は君と一緒にいたいんだ、私の友達をたくさん紹介するよ』と、真摯な目で言いました……』

 

『そんな都合のいい話があるか!! 騙されているぞ!!』

 

「これは創作だ!! ご都合主義の何が悪い!!」

 

 そう叫んで、三ページ目。

 

『女の子はそれを信じて、王子様について行きました。その結果、長命のお友達がたくさんできた上、ネクロマンスを人の役に立てることもでき、色んな人から感謝されました……』

 

『勝手に続きを作るんじゃない!! 物語はここで終わりだ!!』

 

「るしあの人生はこれからも続く!! お前こそ、勝手にピリオド打ってんじゃねぇ!! 引っ込んでろ、神気取り野郎!!」

 

 次で最後のページ。頑張って絵を描いた……下手だけど。

 

『女の子は、子供の頃に夢見た童話と同じように、髪が桃色に変わり、力もとても強くなりました。神様も女の子を見直し……女の子は、それから死ぬまでずっと……とてもとても、幸せに暮らしました。めでたし、めでたし』

 

『潤羽るしあッ!! いい加減に気づけ、王子などどこにいる!? そんな物はどこにもいないんだぞ!!』

 

「いるぜ、ここにな!!」

 

 堂々と叫ぶ。俺はるしあの王子様だ、るしあがそれを望むなら。

 

『俊也くんが……るしあの?』

 

「俺じゃ、ダメかな?」

 

『……よろこんで!!』

 

 震える声で、嬉しそうにるしあが言う。そこで奴が、ようやく来た。

 

「待てぇっ!!」

 

「っ、しまっ……」

 

「一足遅かったな、神気取り!!」

 

 童話の絵本が、輝く。るしあが力を取り戻したんだ……!!

 

『な、なんだ!? アンデッド共、何故こっちを向く!?』

 

『みんな!! そいつを殺っちまえ!!』

 

「グォォォォォ!!」

 

 奴が、現実と同じサイズにまで縮んでゆく……さらにアンデッドの攻撃を受けている。

 

『ぐぁぁぁぁぁっ!!! お、おのれ、アンデッド如きが私の邪魔をするなぁぁ!!!』

 

「今だよ、俊也!!」

 

「わかってる!!」

 

 足に炎を纏って……一発、奴の胸を蹴る。服が焼け焦げて、中の心臓部が見えた。あそこからるしあの気配がする!!

 

「龍尾……!!」

 

『ぐっ、がは……!?』

 

「烈脚ッ!!!」

 

 二発の蹴りで肋骨を砕き……最後に蹴り進んで、心臓部を破壊する。出てきたるしあを抱き止めて……体内を蹴りつけて、脱出した。

 

『ギャアァァァァッ!!!』

 

「回収完了、ってな……!! さて!!」

 

「俊也、トドメだ!!」

 

 奴はアンデッドに捕まって動けない。やるなら、今だ!!

 

「これで終わりだ!!」

 

「うぉぉぉぉーっ!!」

 

『は、放せ!! 放さんか!! やめろぉぉぉぉ!!!』

 

 これが、俺たちの合体技……!! マンチェスタースマッシュと、ボルテックフィニッシュの合わせ技。名付けて!!

 

「ボルテック!!!」

 

「スマァァァッシュ!!!」

 

『グァァァァァァ!!!』

 

 奴の体が、砕けてゆく。俺達の勝ちだ。

 

「やったな、ぺこら」

 

「うん、俊也!!」

 

『認、めん、認めん、ぞ……こんなことが、ある、はずが……』

 

 奴が消えてゆく。俺達の勝ちだ……そこでるしあが、目を開ける。

 

「あ……」

 

「るしあ、待たせたな」

 

「るーちゃん、大丈夫? 痛くない?」

 

 るしあが涙を流しながら、笑う。

 

「うん……!! 二人とも、迎えに来てくれて……ありがとう!!」

 

「当たり前でしょ? 友達だし!!」

 

「当たり前だろ? 王子様だし!!」

 

 目的を終えたこの空間が、消えてゆく。るしあの満面の笑みを最後に、目の前が光に包まれた。

 

「うっ……ここは?」

 

「現実だ……俺達、勝ったんだよ」

 

「……邪神が、消えた……」

 

 落ちてくるるしあを、受け止める。るしあはすぐ目を開けて、俺を見た。

 

「あ、王子様……」

 

「うん?」

 

「……こんなるしあでも、一緒にいてくれますか?」

 

 そう言われて、頷く。

 

「もちろん、お姫様!!」

 

「ありがとう、俊也くん……大好き!!」

 

「思ってた形と、だいぶ違う告白になっちゃったね……まぁいいか!!」

 

 そんな時。後ろから、野暮な声がした。

 

「貴様ら、感動の再会はそこまでだ」

 

「ッ……邪神連合!?」

 

「秋月支部長からのご指示を頂いた。今の貴様らなら、私たちでも仕留められるはずだとな」

 

 それは……間違っていない。もう、戦う力は残っていないからだ。三人相手では、分が悪すぎる。

 

「くっ……」

 

「ぺこらは、まだ……うぐっ!!」

 

「やはり無理なようだな。死んでもらおうか」

 

 奴らが武器を抜いた。くそっ、こんなところで……!! せっかく、ハッピーエンドなのに……!!

 

「これで終わりだ、背教者共!! 地獄で永遠に懺悔し……」

 

「地獄に行くのはテメェらだ、ドブカスがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「えっ?」

 

 素っ頓狂な声が出た。いつの間にか、アンデッドが奴らを取り囲んでいる。るしあがそこに走っていって、呪術で攻撃を開始した。

 

「なっ……ぐはっ!?」

 

「ごふっ、ぐはっ、やめ……ぎゃあぁぁぁ!!」

 

「死ね、このゴミ連合が!! その腐肉より腐ってる頭を直してやんよぉぉぉぉぉぉ!!! オラ、『黒炎』!! 『黒炎』!!! 『黒炎』ッ!!!」

 

 ……さっきまでのるしあとは思えないキレ方だ。

 

「なぁぺこら、るしあってああいう感じなのか?」

 

「本気でブチ切れると、ああいう感じになるんだよね……マリンがチンピラに絡まれた時も、ああなったらしいし」

 

「そうなんだ……るしあは怒らせないようにしよう」

 

 というかめっちゃ痛めつけてるな、そろそろ死んでしまいそうだ。

 

「腐れ狂信者風情が調子こきやがって。これに懲りたらもう二度とるしあと俊也くんに近寄んじゃねえぞ、このボケカスどもが!! ペッ!!!」

 

「るしあ……その辺に、しといてやれ……」

 

「あっ! ごめんね、俊也くん!! 怖かった? るしあ、ついカッとなっちゃってさ……!! 嫌いにならないでね……?」

 

 あぁ、普通のるしあに戻ってる……一安心して、そのまま倒れた。

 

「あ!! そうだ、二人とも大怪我して……本当にごめんね、救急車呼ばないと……!!」

 

 るしあの気遣いに感謝しながら、俺はそのまま意識を失った。




めでたし、めでたし。
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