その日、東京は混乱に陥っていた。
カレンは、大学からの帰り道。
夕方になりそうな時刻にて、何も用事のなかった彼女は、その日は家で過ごそうと考えていた。
大学のお祝いという事で、知り合いから頂いた車に乗りながら、聞こえた音。
「なにっ」
聞こえた音。
それと共に見つめると、東京の市街地の一部が燃えていた。
それもかなりの勢いであり、それを行っていると思われる影が数体、見えた。
「あれって、KMFっ」
KMFが、街で暴走している。
その見た目は、カレンでもあまり見た事のないタイプの機体。
装甲車のボディを被せたような上半身が特徴的なKMFは、周囲の被害を考えずに攻撃を行っていた。
「っ」
カレンは、その光景に驚きを隠せずにいた。
この東京では、過去にエリア21と呼ばれていた場所。
だが、黒の騎士団とブリタニアとの戦いにおいて、数々のテロに巻き込まれた影響もあり、その警備は、他の国に比べても高い。
だが、東京で、そのテロが行われていた。
「どうなっているの」
東京にいる黒の騎士団。
だが、その警備が間に合っていない。
カレンもまた、すぐにそのテロに対抗する為にも、基地にある紅蓮の元へと向かおうとした。
だけど。
「姉さんっ」
突然、ナオトの声が聞こえる。
それに合わせるように、カレンは一体、何か。
疑問に思った。
だけど、そんなナオトの声と共に、本能なのか、車は既にブレーキを踏んでいた。
同時に、先程まで走っていた道の先には弾丸で撃ち抜かれていた後がある。
すぐに、後ろにバックしていくと、次々と襲い掛かる銃弾。
同時に近くに隠れられる建物を確認すると、そのまま飛び込む。
「ぐっ」
それと共に、車は弾丸に貫かれ、爆散する。
カレンは、すぐに弾丸を撃った先を見つめる。
「あれって、KMFっなんで、気づけなかった」
気づけば、そこには確かに存在はあった。
すると、KMFの持つ銃は、こちらに向けていた。
同時に、周囲の建物を盾にしながら、走り出したカレン。
その向かった先には、ナオトがあり、彼の手を引く。
「姉さんっ、これは」
「分からないっでも今は逃げるよっ」
この場で、人間がKMFに対抗出来る手段はない。
KMFに対抗するには、それに相当する武力が必要である。
皮肉にも、カレンは、それを持っていた。
「こっちっ」「ここって」
それは、カレンの家にあるガレージ。
そして、普段は隠されている通路に案内する。
「母さんは」
「もぅ避難している。俺は他に避難していない人がいないか確認していたから」
「そう、ならば、安心して戦えるわね」
そう、カレンは、地下へと向かう。
過去、彼女が黒の騎士団として、ジルクスタン王国での戦いの功績もあり、特別に設置された整備場。
そこには一体のKMFが立っていた。
「これは?」
「……あんたを守る為に、渡された力よ」
その外見は、カレンが未だに愛機として使っている紅蓮シリーズの特徴である頭部。
身体の各部は、紅蓮弐式をベースに作成されていた。
だが、紅蓮の特徴的な巨大な右腕は存在しない。
両肩には、グレネードランチャーが内蔵されており、剣と盾というシンプルな武装。
その真っ白な機体は、そこに佇んでおり、カレンはそれに近づく。
「とにかく、外にいる奴をなんとかしないとっ、痛っ」
「姉さんっ」
すぐに、その機体に乗り込もうとしたカレン。
だが、先程の爆発によって負傷したのか、腕を怪我をしている。
だが。
「大丈夫っ、今は、こいつを起動させてっ」
そう、カレンはそんな怪我を気にしないように、すぐにでも起動させようとする。
それは、彼女が、この東京を、謎の脅威から守る為の行動。
それを見たナオトの覚悟は、自然と決まった。
ナオトは、カレンの手の中にある機体のキーを奪う。
「あっちょっと!」
カレンの呼ぶ声。
それを無視して、ナオトは機体に乗り込む。
初めて乗るKMF。初めての戦い。
恐怖があるはずだった。
だけど。
「分かる、なぜだが、分からないけど、俺は、この機体を動かせられる」
ナオトの言葉。
それを紡ぐと共に、彼の右目が光輝く。
それは、不死鳥を思わせるマーク。
かつて、ギアスと呼ばれた力であり、彼は、それを無自覚に発動させていた。
同時に察知した気配。
既に、こちらに迫っている事を理解出来た。
ナオトは、そのまま操縦桿を握り絞めながら、ランドスピナーで走り出す。
「はぁぁぁぁ!」
既に入り口前までに迫っていたKMF。
その気配は極限まで消されていた。
「ここにいたか」
その操縦者の目にも、ナオトと同じく不死鳥のマークが刻まれていた。
それは、まさしく、気配を完全に消した力であり、カレンを極限までにその気配を悟らせなかったのは、その力の影響だった。
だが。
「なっ!?」
突然、地下から出てきた通路。
同時に、地下から飛び出た白いKMF。
次々と起きる出来事に、頭が追いつけない間にも、KMFは既に動いていた。
片手にある剣で一閃。
瞬く間に、斬り裂かれた事によって、認識する前に、倒される。
「なに、今の」
歴戦の戦士であるカレンの目から見て、ナオトの操縦テクニックは、普通ではない。
初めて乗るはずのKMFをまるで自分の手足のように操り、瞬く間に葬った。
それは、かつて、初めてランスロットと相対した時のような印象であった。
違うのは、一つだけ。
それが、今度は、敵ではなく味方である事。
「これが、ナオトの力なの、それとも、あのKMFの」
そうゆっくりとカレンは呟く。
「ドットフェイサーの力なの」
それと同時だった。
他に散っていただろう敵戦力のKMFが近づいていた。
先程のKMFの報告を受けたのか、既にこの辺にいた戦力が集まっていた。
その数は5体。
5体のKMFは、そのままドットフェイサーに向かって、マシンガンを放ち始める。
同時にドットフェイサーは、その手にある盾を構えながら、既に剣から銃へと持ち替えていた。
再び走り出すドットフェイサー。
牽制するように銃弾を放っていきながら、KMF達に接近する。
KMFは、それらに対して、無防備に近づいていく。
無策とも思える行為。
だけど、それは。
「なっ」
ドットフェイサーの完璧と言える斬撃を避けた。
同時に左右からすぐに攻撃を行う。
「どういう事、あの攻撃を避けるって」
どんなにナオトが素人でも、それを避ける事が出来ない斬撃を放っていた。
だけど、それをまるで見えていたように、相手のKMFは避けた。
それはあり得るのだろうか。
だが、カレンは、知っていた。
そんなあり得ない事を起こせる力を。
「ギアス、まさかあいつら、ギアスに関係している奴らなの」
カレンの呟きを余所に、KMF達は連携を行う。
性能では、おそらくはドットフェイサーの方が上だろう。
だが、まるで、1秒先の未来を見ているように、それらの攻撃を避けていた。
「確か、聞いた話だと、あのナイトオブラウンズが持っていた奴と同じ、未来を読めるギアスなの」
数秒後の未来を視覚情報的に見ることができる。
そう、聞いた事のあるギアス。
故に、それに対抗出来るのかどうか。
不安に思える。
だが。
「っ」
ドットフェイサーは、そのまま後ろに下がる。
その手に持っていたのは剣と銃。
二つは宙を浮かびながら、一つとなる。
それと同時だった。
一体化した二つの武器は、まるでハンマーのようになっていた。
同時に近くにいたKMFに向かって、振った。
それに、対応する事は、出来なかった。
「もしかして、インターバルがある」
本当に未来を読めるギアスなのか。
それはカレンも分からない。
それでも、まるで諦める気のなかったドットフェイサーは、その状況を打開するように動いた。
それによって、ナオトは、状況を逆転させる。
ハンマーとなった武器はそのまま変形。
形はライフルとなり、そのままKMFを貫いた。
「あれが、マルチギミックサック」
ドットフェイサーの専用武器として作られた武器、ゼットシリーズ。
その特徴は複数の武器を組み合わせる事で、状況に応じた武器へと変形させる事が出来る。
数武器種の単機運用を可能としており、ライフルやハンマーのような強力な武器にも、小回りの効く剣と銃にも。
そして、新たに現れた巨大な槍。
その槍で、真っ直ぐと突っ込む。
倒れているKMFは、すぐに立ち上がる事が出来ずにいた。
そんなKMFごと、貫く槍。
だが、それでも止まる事はなかった。
「ナオト」
同時に、貫いたKMFごと、他のKMF達に向かって行く。
貫かれた全てのKMFを踏み台に、その場から離れるドットフェイサー。
それと同時に爆発を起こす。
それは、まさしく戦いの終わりでもあった。