ラジエルはどちらかというと勘の良い方であり、特に相手の持つ“悪意”や“邪な感情”に気付きやすい。
だからこそ、ラジエルは不審に思っている者が1人いる。
いつも薄ら笑いを浮かべながら、城内を嗅ぎ回るように見ている魔道士らしき男を警戒しながら見ていた。
「こんにちは、魔道士殿」
「えぇ、こんにちは。けへへ!(愚かな使用人ですねぇ、間もなく全てが終わるというのに。)」
「(こいつ、何か怪しいんだよなぁ……。探っておくか。)」
ラジエルは挨拶した男に“マーキング”をし、その動向を探っていると、何やらエルスタイン王国の重要拠点や守護結界の辺りを探って薄ら笑いを浮かべているのが視えた。
その中で、彼の表情を見たラジエルは確信した。
「(あ、こいつは
ラジエルはそれを見たのと同時に、過去に帝国の兵士が家族を笑いながら殺したのを思い出し、不愉快さに目つきを鋭くする。
そして、魔道士の男がエリーゼ王女、アンジェリカ騎士団長を酒場で辱めている光景を見てしまったラジエルは腰に剣を差すと、その酒場に向かい、扉を蹴破った。
「よぉ、邪魔するぞ。」
「っ!?ら、ラジエル……!?」
「ラジエル……!」
「おやおや、誰かと思えば使用人の方ではないですか?あなたも混ざりたいのですか?けへへ!」
嘲笑うようにラジエルを見る魔道士の男と、使用人なら気にするなと笑う酒場の民達。
しかし、次の瞬間。
「寝てろ、馬鹿ども。」
ドンッ!!!
「「「「「!!!!?」」」」」
「え……?」
「なっ……!?」
「こ、これは……!?」
ラジエルが民達を睨んだ瞬間、エリーゼ王女、アンジェリカ、そして魔道士の男以外の酒場にいた全員が白目を剥き、泡を吹きながら気絶していたのだ。
「ふぅ……。やっぱ意識して
「な!?い、一体なにを!?こんな『チャキッ!』っ!?」
状況が飲み込めず、戸惑う魔道士の男。
しかし、その眼前には冷やかな目で自分を見ながら、剣の切っ先の喉に押し付けており、その目に浮かぶ殺意に魔道士は戦慄する。
「さて、どうやって死にたい?帝国の魔道士さん。」
「(この使用人、危険すぎる……!!?)……これはこれは物騒ですね、お互いに誤解を「誤解なんてしてないぜ。」?どういう事、ですかな?」
「お前、この国の守護結界の主要な位置探ってたろ?
それでその鍵がエリーゼ王女だと知って近付き、甘言で拐かした……結界を解かせるために。」
「!!!?」
自分の計画を言い当てられ、魔道士の顔から薄ら笑いが消え、焦りの表情が色濃くなり、剣を押し付けてくるラジエルから逃れるために後ろに下がる。
しかし追い詰められて余裕を無くした魔道士は、ラジエルに説得を行う。
「ま、待ってください…!!あ、あなたは誤解していますよ!?私はエリーゼ様の望みを叶えただけなのです!!」
「エリーゼ様の、望み?」
「そうです!このお方は大変苦しんでおられましてねぇ、民達からどの様に見られているか不安だったのです。」
「……。」
「私はその望みを叶えて差し上げた対価として「おい。」?どうされま『スパッ!』?……〜〜〜っ!!?」
ラジエルが剣を振るうと、魔道士の口から何かが落ち、次の瞬間には魔道士は痛みに悶えてのたうち回る。
床に落ちたもの、それは魔道士の“舌”であり、魔道士の口から鮮血がぼたぼたと滴り落ち、口元を押さえながらもラジエルを睨む。
そんなラジエルは魔道士を見下ろしながら、剣を突きつけながら冷たく言い放つ。
「よく廻る舌だな。ぺらぺらとよく喋るな?その舌には、よほど脂が乗ってるんだろう。」
「〜〜っ!!!」
「1つ、良いことを覚えておけ……姫やアンナ様に手を出したんだ。もし帝国全軍で攻めてくるなら、命懸けで来い。……
ラジエルから放たれた殺気、それは本物であった。
ラジエルから放たれたそれを諸に浴びた魔道士は、顔を青ざめさせて、そそくさと逃げ出していった。
その後、ラジエルは2人を城のエリーゼの部屋にテレポートさせると、彼の通報で酒場に来た衛兵達は、エリーゼ王女とアンジェリカに不貞を働いた者達を不敬罪で捕らえ、地下牢送りにしたのであった……。