※この作品はR-18です。

悪役令息はママが好き   作:埴輪庭

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ワイルズのオメガ・プラネテスと戦ってたので遅くなりました


冒険者になろう!⑥

 ◆

 

 フェリに次に狩るべき獲物について尋ねる必要があるな。

 

「フェリ」

 

 俺が短く名を呼ぶと、フェリは即座に答えた。

 

「はい、若様」

 

「次の獲物だが何か目星はついたか」

 

 俺の問いにフェリは抱えていた資料の中から一枚の羊皮紙を取り出した。

 

「はい。帝都周辺の賞金首はあらかた片付きましたので、少し遠出をする必要がございます」

 

「構わん。どこだ」

 

「北方、ノルン王国の大氷原に生息するという『フロスト・ワイアーム』がよろしいかと」

 

 フェリは淡々と説明を始めた。

 

「ノルン王国は極寒の地。そこに巣くう巨大な長虫で、その体液は万病に効く霊薬の材料になると言われております。討伐報酬は金貨千枚」

 

 まあ悪くはない。

 

「同じ大氷原には『凍てつく災厄』フロスト・ワイバーンもおりますが、こちらは休眠期に入っており、どこの山をねぐらにしているか不明です。賞金額は遥かに高いのですが、探す手間を考えると効率的ではございません」

 

 なるほど、実に的確な判断だ。

 

 俺は頷いた。

 

「よし、それにしよう。準備を──」

 

 俺が言いかけた、その時だった。

 

「よう、そこの兄ちゃんたち! 一杯どうだい!」

 

 路地の先にある酒場の店員が、馴れ馴れしく声をかけてきた。

 

 手には安酒のジョッキが握られている。

 

 俺は舌打ちをして無視しようとした。

 

 劣等に構っている暇はない。

 

 だがその店員はさらに挑発的な言葉を続けた。

 

「ん? なんだい、もしかしてまだ若いから酒なんぞ飲めねえのか? ガキはミルクでも飲んでな!」

 

 瞬間、俺の頭に血が上った。

 

 ──なんだと、この劣等が

 

 俺を誰だと思っている。この俺が、酒の一杯も飲めぬと?

 

 俺は踵を返し、その劣等店員を睨みつけた。

 

「ほう、随分と自信があるようだな」

 

「貴様、そのような無礼──」

 

 フェリが俺の前に出て店員を睨みつけるが、俺はそれを手で制した。

 

 まんまと挑発に乗ってしまった自覚はある。だが引くわけにはいかない。

 

「良いだろう。そこまで言うのなら、貴様の店で最高級のものを出してみろ。この俺が直々にその程度をみてやる」

 

「ははあ……?」

 

 店員は突然の俺の剣幕に戸惑っている。

 

 俺はそのまま酒場へと足を踏み入れようとした。

 

 その時だ。

 

「若様」

 

 フェリが俺のローブの袖を引いた。

 

「おやめください。そのような輩に構う必要はございません」

 

「黙れ。これは俺の沽券に関わる問題だ」

 

「ですが……」

 

 フェリは少し言い淀んだ後、小さな声で囁いた。

 

「……大奥様が、悲しまれるかもしれません」

 

 ──母上が、悲しむ? 

 

 その一言が、俺の燃え盛る怒りに冷水を浴びせた。

 

「うっ……」

 

 俺は狼狽えた。

 

 そうだ。母上は俺がこのような下賤な場所で、劣等と諍いを起こすことを望まれないだろう。

 

 俺の軽率な行動が、母上の御心を痛めることになりかねない。

 

 なんという失態。

 

 俺は己の未熟さに歯噛みした。

 

「……フェリ」

 

 俺は小声で命じる。

 

「あの劣等を殺すリストに入れておけ」

 

 殺すリスト。

 

 それは最近俺が作成を始めた、極秘のリストだ。

 

 母上がいずれ治めるこの星にとって、不要な汚点共を記したものである。

 

 何匹かの悪徳貴族、そして旧魔王軍の残党などが既に名を連ねている。

 

 母上の野望を知るまでは旧魔王軍など視界にも入っていなかったが、これからは積極的に狩る必要があるだろう。

 

 俺は踵を返し、その場を立ち去る。

 

 背後で店員が何か言っているが、もはやどうでもいい。

 

 しばらく歩いた後、俺はフェリに言った。

 

「……助かった。止めてくれて感謝する」

 

「いいえ、私は何も」

 

「今夜、俺の部屋に来い」

 

 俺はそれだけ告げると、足早に歩き出した。

 

◆◆◆

 

 フェリはどきりとした。

 

 ──今夜、若様の部屋に

 

 その言葉の意味を、彼女は様々に解釈しようと試みる。

 

 だがどう思考を巡らせても、行き着く先は一つだった。

 

 ──ついにこの時が

 

 彼女は自分の頬が熱くなるのを感じた。

 

 屋敷に戻り、夜が更けるのを待つ時間は永遠のようにも感じられた。

 

 そして、約束の時刻。

 

 フェリは深呼吸を一つして、ハインの私室の扉を叩いた。

 

「入れ」

 

 中からいつもと変わらぬ静かな声が聞こえる。

 

 フェリは扉を開け、一礼して部屋に入った。

 

 ハインは書斎机に向かい、書物を読んでいた。

 

 その姿は普段と何も変わらない。

 

 だがフェリの心臓は早鐘を打っていた。

 

「若様、お呼びにより参上いたしました」

 

「うむ」

 

 ハインは書物から目を離さずに頷くと、静かに命じた。

 

「床に横になれ」

 

 ──え? 

 

 フェリは一瞬、自分の耳を疑った。

 

 床に? 

 

 ベッドではなく? 

 

 一瞬ぽかんとして、しかし彼女はすぐに主の命令に従った。

 

 床に敷かれた分厚い絨毯の上に静かに身を横たえる。

 

 ハインが椅子から立ち上がり、こちらへ近づいてくる。

 

 フェリはぎゅっと目を閉じた。

 

 そして、ハインの次の言葉を待つ。

 

「どこを踏んでほしい?」

 

「えっ」

 

 思わず声が漏れた。

 

 フェリは目を開け、自分を見下ろすハインを見上げる。

 

 その表情は真剣そのものだ。

 

 ──踏む……? 

 

 フェリは混乱した。

 

 自分が期待していた展開とは少し、いや、かなり違う。

 

 だが主の命令は絶対だ。

 

 それにこれはこれで……悪くないかもしれない。

 

「……ではまずは胸を」

 

 フェリは意を決して答えた。

 

 ハインは無言で頷くと、ゆっくりと片足を上げた。

 

 そして、その足がフェリの豊かな胸の上に静かに置かれる。

 

 ──ああ、若様の足が……

 

 最初は期待していた展開と違うことに内心で落ち込んでいたフェリ。

 

 だがハインの足が胸、腹、そして太腿へと移動していくうちに体の奥底からじんわりと熱が込み上げてくるのを感じていた。

 

 主に見下ろされ、踏みつけられているという状況。

 

 それが彼女にとって、抗いがたい興奮を呼び起こしていた。

 

 そして、ハインの足が下腹部に置かれた、その瞬間。

 

「んんっ……!」

 

 フェリは我慢できずに甘い喘ぎ声を漏らした。

 

 ハインは一瞬、フェリの様子を窺うように動きを止め、やれやれといった様子で溜息を吐く。

 

「俺は寛大な男だ。お前の特殊性癖に文句をつけるつもりはないが、他の者にこんな事を頼んだりするなよ。アステール公爵家の沽券にかかわる」

 

 喘ぎながらも、フェリは答える。

 

「はい……若様以外にはこのような事、してもらうつもりはございません……」

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