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お友達と仲良くしなさい──
幼い頃から、母上は事あるごとに俺へそう仰る。
お友達──俺の辞書にその語はない。俺という存在は母上と、母上に仕える者と、それ以外の有象無象の劣等で出来上がっている。友という生温い間柄が入り込む隙間など、どこを探しても見当たらぬ。
だが母上が仲良くしろと仰る以上、この畜生どもを母上の言う所のお友達という枠へ無理にでも押し込むより他あるまい。
厳密には友ではない。強いて名付けるならば眷属──いや、下僕だろうか。
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講義の後の休み時間、カエラ・イラ・ファルブルームがやってきた。先日、母上の御施策に礼を述べに来た雌だ。母上に対する感謝を忘れぬ見上げた雌畜生である。
「ハイン様。わたくしたちの父や叔父が、最近ようやく帝都の大通りを堂々と歩けるようになりました。人種序列法の運用が緩んだのはヘルガ様のお力添えがあったからだと、皆が申しております」
「そうか。だが礼は先日受け取ったはずだが」
俺は周りを見渡した。畜生共が雁首をそろえている。耳がぱたぱたと揺れ、尻尾がぴこぴこと跳ね、これが貴族なのだから笑ってしまう。一体全体このケダモノどものどこが高貴なる者なのだ。この
「それでも我々はアステール公爵家のお力になりたいのです。しかし具体的に何をどうすればよいか──公爵家からは何も要求がないのです」
ことごとく火の中へ飛び込んで丸焼きになって我が家の食卓に並べ──と言おうとしたが、そんな畜生肉など母上のお口には入れられないし、もちろん俺だって食べたくない。オーマの奴は趣味が悪いのでそういった肉を好むらしいが……。アステール公爵家に仕える者として、もう少し高尚な食習慣を持つべきではないだろうか。まあいい。
「アステール公爵家は今、お前たちの力を必要としている。我が母であるヘルガ・イラ・アステールはお前たちの献身に応えてくださるだろう」
結局そんな無難な言葉に落ち着いた。
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北の内乱の報せは、人間の貴族よりも先に亜人たちの耳へ届いていた。
彼らには彼らの網がある。北部辺境の亜人集落から帝都の下級貴族の厨房まで、血縁と恩義で編まれた根が大陸の地下を這い回っている。宰相府の暗号伝書より遅いが、途中で検閲されぬ。カエラたちが囁き合っていたのは、この根を伝って届いた生の声であった。
離反した三公は兵の頭数が足りぬ。当然、領地内の亜人にも召集の声がかかる。
本来の歴史において、帝国の多くの亜人系貴族家はその声に応じた。応じるのが自然であった。宰相府の人種序列法は年ごとに苛烈の度を増し、帝都に留まった所で暮らしは悪くなる一方だったからだ。三公の下で戦えば少なくとも居場所がある。戦のあとには安寧があると信じて亜人たちは戦った──が。
激戦・烈戦・死戦が続いた。
十二公爵家が割れ、天変地異の様な魔術合戦が行われ──最終的には三公の側が勝利を収めたものの、尖兵として扱われた亜人たちはその数を大きく減らす事となった。それがまた次世代への憎悪の種となり──と、この辺はまた異なる歴史となるため、ここでは語らないでおこう。
しかし、である。
そして亜人系貴族家の相当数が、自身が集うべき旗を見出す事になった。