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「──あの女狐、ついに気でも狂ったか」
卓上に広げられた宰相府からの書状を見下ろし、北方エーデルヴァイス公爵家の当主ヘルミーネ・イラ・エーデルヴァイスは低く吐き捨てた。
ザンデルホルム平原での会戦から数日後のことである。バゼンフェルド軍を一刻で壊滅させた三公の連合軍は、北辺と中央の境に位置する前線城砦へと主力を進め、次なる一手を見据えて軍議の席を設けていた。
石造りの殺風景な作戦室には、三人の男女が顔を揃えている。
一人は北の女傑ヘルミーネ。もう一人は東のシュヴァルツ公爵家より父の名代として陣中に詰めている嫡男ディートリヒ・セラ・シュヴァルツ。そして最後の一人は、南西より遥々足を運んできたグラオス公爵家の老当主クラウス・セラ・グラオスであった。
いずれも帝国十二公家に名を連ねる叛乱の首魁たちである。その三人が三人とも、帝都より馳せてきた先触れの書状を前にして奇妙な沈黙を強いられていた。
無理もない。蝋印も鮮やかな公式文書に記されていたのは『無益な流血を避けるため和平の席を設けたい』という申し入れと、その正使として第二皇子ヴィクトル本人がこちらへ赴くという信じがたい通達だったからだ。
「……正気の沙汰とは思えませぬな」
最初に重苦しい口を開いたのは、痩身の青年ディートリヒであった。寒気のせいか赤くなった鼻先を指で押さえつつ、据わった目で書状の文面を睨みつける。
「我々が反旗の大義名分に掲げているのはヴィクトル殿下の御名です。宰相府が今日まで我らを『逆賊』と呼び得たのは、当の殿下の御身柄を帝都に囲い込んでいたからこそでしょう。その最大の切り札をあのジギタリスが自ら敵陣へ送り届けてよこすなどあり得ません」
「ふむ……。確かに自ら首を差し出すような悪手ですなあ」
腰の曲がった好々爺然とした風貌のクラウスが、湯気の立つ白湯の器を両手で包みながらゆっくりと相槌を打った。
「だが現に書状はここにある。宰相府の正式な印も押されているな」
ヘルミーネが指先で羊皮紙を弾いた。
「バゼンフェルドが討たれた衝撃で血迷ったか。あるいは帝都の貴族どもが浮足立ち、あの女の統制が利かなくなったか──」
「これは罠以外の何物でもないでしょう」
ディートリヒが鋭い声で遮った。暇さえあれば陰謀を、暇が無ければ暗殺をしてきたろくでなしのシュヴァルツの血が、額面通りの解釈を頑なに拒絶しているのだ。
「あの毒婦が殊勝に講和など望むはずがないでしょう!」
ディートリヒは卓上の地図を強く叩いた。
「白旗を掲げて懐へ潜り込みこの城砦で我らの首を一挙に刈り取る斬首の策! あるいは我らの陣中でヴィクトル殿下を謀殺し、主君殺しの汚名を我々に着せて大義を粉砕する毒餌かもしれません! このような見え透いた使節団など領境で追い返すべきです!」
「まあまあ、ディートリヒ殿。そう結論を急がれるな」
息巻く青年を宥めたのは老獪なクラウスであった。
「追い返すのは簡単ですがな、それをやれば我らの負けが確定してしまいますぞ」
「確かに公の仰る通りだろうな」
眉を顰めるヘルミーネへ、クラウスはゆっくりと首を振ってみせた。
「でしょう。我らは『ヴィクトル殿下こそ正統なる次期皇帝』と天下に触れ回って兵を挙げたのですぞ? その殿下ご本人が和平を唱えてわざわざ足を運んでこられたというのに、門前払いを食らわせたら諸侯はどう見ますかな。『三公にとって皇子など都合の良い看板にすぎなかった』と自ら白状するようなものですわい」
グラオス家の家訓は『勝つよりも負けないこと』である。それは多くの貴族家が金科玉条にしているが、グラオス家はそれをとことんまで突き詰めている。大義名分という戦の土台が崩れれば、今この瞬間も日和見を決め込んでいる中立の貴族たちは一斉に宰相府側へ傾くだろう事は明らかだ。そしてクラウスの鼻はの心理の濃い薄いを極めて精度高く読み取っていた。今は非常にセンシティブな情勢だと言って差し支えがない。
「それに儂は、ディートリヒ殿とは少しばかり違う見立てをしておりましてな」
「違う見立て、と申されますと?」
「厄介払いですよ。ジギタリス殿の足元も我らが思うほど盤石ではないのでしょうな」
クラウスは白湯を一口啜り、淡々と言葉を継いだ。
「帝都では強硬派の第一皇子ルドヴィーク殿下が軍権を握ろうと鼻息を荒くしておられるし、新興貴族や周辺小国からは戦費や徴発への不満が噴き出しておる。そこへきて人種序列法の緩和で勢いづいたアステールやサリオンの親亜人派が第二皇子と接近し始めた──とのことです。……これはあの女宰相からすれば、手元に置くには危険すぎる火薬樽が二つも三つも転がっておるようなものですわい」
「……なるほど。それで目障りな皇子と親亜人派をひとまとめにして、私たちの前へ放り出したと?」
「ええ。もしここで我らとアステール・サリオンの両家が衝突して共倒れにでもなればジギタリス殿は懐を痛めずに政敵を一掃できる。仮に講和が成らなくとも時間稼ぎにはなりますからなあ。……まあ、それでも神輿を手放すのは正気を失った悪手に見えますが、皿を回しすぎて手元が狂うというのは権力者にはままあることですて」
三人はしばし口を閉ざし、卓上の書状を見下ろした。
斬首を狙う決死の罠だと疑うディートリヒ。宮廷内部の軋轢が生んだ苦肉の厄介払いだと読むクラウス。そしてそもそもジギタリスの頭がおかしくなったのではないかと呆れるヘルミーネ。
三者三様に見立ては食い違い、宰相の真意についてはまるで意見が噛み合わない。
だが、奇妙なことに『ならばどう動くべきか』という一点においては、三人の視線が自然と一つの結論へ収束しつつあった。
「……罠であれ厄介払いであれ、あるいは本当にあの女が狂ったのだとしてもだ」
ヘルミーネが腕を組み、氷のように冷ややかな声で断を下す。
「使節団を拒む選択肢は我々にはない。ここは我が北辺の庭だぞ。大軍を率いているわけでもない一握りの護衛団ごとき、どれほど手練れが混じっていようと万全の包囲網を敷いて迎えれば恐れるには足らぬ」
「……受け入れる、と仰るのですね」
ディートリヒが念を押すと、ヘルミーネは口の端を僅かに吊り上げた。
「無論だ。丁重にな。なにせ我らが推戴する『次代の皇帝陛下』が、自ら御成りあそばすというのだからな」
その皮肉げな響きに、クラウスもほっほっと低く喉を鳴らして笑った。
「左様ですなあ。せっかく飛んで火に入ってくれるのですから。話し合いの席は礼を尽くして設けましょうとも。……ただ北辺の道は険しく帝都には殿下の御命を狙う不届き者も多いようですからな。一度こちらへお越しいただいたからには殿下の御身柄は我ら三公が責任をもって『保護』し、二度と危険な帝都へお返しせぬのが忠義というものでしょう」
要するに体裁を整えただけの軟禁であり、事実上の身柄拘束である。
元々ヴィクトルという皇子には何の才覚も覇気もない腑抜けだという評価が宮廷では定着している。一度この城砦の奥へ招き入れて護衛と引き離し周囲を三公の兵で固めてしまえば、気弱な皇子などどうにでも操れるはずだ。
「……アステールとサリオンの護衛はどうなさいますか?」
なおも慎重に問うディートリヒに対し、ヘルミーネは双眸を鋭く細めた。
「以前にも言ったはずだ、ディートリヒ。本来ならあの二家とは事を構えるつもりはなかった。──だが、向こうから私たちの邪魔をしに乗り込んでくるなら話は別よ」
北の女傑は腰の細身剣の柄に手を添え、冷然と言い放った。
「大人しく神輿を置いて帰るなら良し。もし刃向かうようなら、だ」
クラウスにもディートリヒにも異論はない。
かくして三公の方針は決まった。
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同じ頃、帝都を発った和平使節団の車列は北へと続く街道を着実に進んでいた。街道の両脇には背の高い針葉樹の暗い森が迫り、軍馬の鼻先から噴き出す白い蒸気は瞬く間に冷たい風へと溶けていく。
車列の警備は当然ながら厳重極まるものだった。
遥か前方および左右の森林地帯にはファルブルーム子爵家が送り出した亜人の精鋭狩人衆が先行斥候として展開している。風系統の魔術と鋭敏な五感で伏兵の有無を絶えず探り、すぐ後ろの前衛と側面には悪路でも機動力を一切落とさぬケロリパン伯爵家の屈強な蛙人戦士団が槍を揃えて脇を固めていた。
また、先頭集団に位置するのは、護衛筆頭たるハインを擁するアステール公爵家の面々である。ガッデムを中心とした屈強な半鬼の戦団は、いざ接敵した際は即座に敵を粉砕するだろう。
そして最も手厚く守られた車列の中央を走るのが、鉄板で補強された第二皇子ヴィクトル座乗の重装馬車である。周囲をサリオン公爵家お抱えの熟練結界衛士たちが隙間なく取り囲み、その後方をサルカイ商会が整えた防寒兵站の荷馬車群と後衛の騎士団が追随する陣容であった。
さらに皇子の馬車の内部には、先代サリオン公爵ギザ・セラ・サリオンその人が同乗している。
結界術というものは術者と対象との距離が近ければ近いほど展開速度も強度も跳ね上がる。奇襲の矢や呪詛、あるいは三公が得意とする広域魔術が飛んでくる万一の事態を考えれば、最高峰の結界術師であるギザが皇子と膝を突き合わせる距離に陣取るのが最も合理的かつ現実的な選択であった。
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──それにしても、なんだか妙に狭苦しいのう……。
揺れる馬車の座席で白髭を撫でながら、ギザは向かいに座る第二皇子の姿をちらりと盗み見て内心で首を捻った。
四人掛けの広々とした特注馬車であるはずなのに向かいの席がやけに窮屈そうに見える。無理もない。厚手の外套の下からでも分かるほど異常に盛り上がったヴィクトルの肩幅と胸板が、座席の大半をみっちりと埋め尽くしているのだ。
「……冷えて参りましたな、ヴィクトル殿下。火鉢の炭を足させましょうかな」
「ああ、お気遣いなくギザ公。僕はご覧の通りすこぶる血の巡りが良いものでしてね。むしろギザ公こそ、長旅でお体に障ってはおりませんか?」
穏やかに微笑んで身を乗り出すヴィクトルに、ギザは鷹揚に頷いて返した。
こうして言葉を交わす分には、噂通りの温和で礼儀正しい青年に見える。だが、この機会にギザにはどうしても探りを入れておきたい事柄があった。他ならぬハイン・セラ・アステールとこの皇子との繋がりについてである。
ギザはハインの力量は誰よりも高く買っている。しかしそれと同時に、老獪な先代公の腹の底には拭いがたい警戒心も燻り続けていた。
なにせギザはハインの父親である先代ダミアン・セラ・アステールが引き起こした暗黒期を知る世代である。あの残虐で下劣で狂気に塗れた男の血が、半分とはいえハインにも確実に流れていることを忘れてはならない。
婚約者である孫娘のエスメラルダを通じてハインの人柄を探ろうとしたこともあったのだが──それはどうにも駄目だった。
普段は聡明で気位の高い自慢の孫娘がハインの話題になった途端に頬を染めて遠い目をし、『ハイン様はこの星の未来そのものを背負っておられる孤高にして高潔なるお方ですわ』『わたくしに大金を無心なされたのも、わたくしを成長させるための深遠なる試練だったのですわ』などと熱に浮かされたような妄言ばかりをまくし立てるのだ。
自分の可愛い孫娘をあそこまで惹きつける何かがハインにあるのは間違いないとはギザも思っているのだが、その『何か』が良いものである保証はどこにもなく、恋に盲いた孫娘の証言からは毒か薬かさっぱり判別がつかなかったのである。
その点において白鷺館でハインと静かに詩を詠み合っていたというヴィクトル殿下ならば、もう少し客観的で落ち着いた人物評が聞けるはずだ──ギザはそう踏んでさりげなく水を向けた。
「いやはや、それにしても今回はハイン殿が随分と頼もしい限りでございますな。殿下は白鷺館にてハイン殿と親しく歓談を重ねておられたと伺っておりますが……殿下の御目からご覧になって、かの嫡男は普段どのようなお人柄でございましょうかな?」
「ハインのことですか? そうですねえ──」
瞬間、ヴィクトルの澄み渡った瞳にぱっと歓喜の光が宿った。
「そうですね……一言で申すなら、彼は『導き手』です」
「……導き手、でございますか」
詩作の師という意味であろうか。ギザが片眉を上げると、ヴィクトルはうっとりと胸の前で太い両手を組み、まるで天上の聖画でも仰ぎ見るような顔つきで語り始めた。
「ええ。以前の僕は愚かにも傷つくことを恐れ、暗い殻の中に閉じこもってばかりいたのです。ですがハインはそんな僕に『痛みとは友なのだ』と教えてくれました」
「……はぁ、なるほど」
「鍛錬の場で僕の腕がへし折れて胸の骨が砕け、腹が破れて内臓が宙を舞った時もハインは決して僕を見捨てませんでした。血溜まりの中で泣き叫ぶ僕を見下ろし『痛みなくしては強くなれませぬ』『人の本質とは光なのです』と、真っ直ぐ天を指さして説いてくれたのですよ」
馬車の中に、車輪が雪混じりの土を噛む音だけが虚しく響いた。
ギザは湯呑みを持ったままピシリと固まっている。
──腕が折れ……内臓が宙を舞った、じゃと?
いや待て、落ち着けとギザは自身に言い聞かせる。目の前の皇子はプュイに名を連ねる詩人だと聞く。芸術家肌の人種というのは得てして大仰な比喩を好むものだ。そうに違いない。まさか一国の皇子の腹を蹴り破って内臓をぶちまけるような真似をするわけがない。
「は、はあ……なるほど。詩を嗜まれる殿下らしい鮮烈な比喩表現でございますな。つまり言葉の刃で精神の甘えを打ち砕いてくれた、というような……」
「いいえ、物理的な話ですが」
ヴィクトルはあっさりと訂正し、うふふと無邪気に笑った。
「ともあれハインに何度も頭を握り潰していただいたおかげで僕はついに氣づいたのですよ! 乱世の闇がどれほど深くとも僕自身が壊れれば壊れるほどより強く組み直され、帝国臣民を照らす大きな『光』になれるのだと! ハインが僕の頭蓋を砕いてくれたあの瞬間に迷いも恐怖もすべて消え去り、世界がこんなにも眩しく輝いて見えるようになりました」
丸太のような首と岩盤のような胸板を揺らしながら、ヴィクトルは爛々と輝く無垢な瞳で老貴族を覗き込んだ。
「ギザ公も、もし道に迷われることがありましたら一度ハインにすべてを壊していただくと良いですよ。きっとご自身の裡にある『光』に出会えますから」
「……左様でございますか。はは、心に留めておきましょう……」
引きつった愛想笑いを浮かべながら、ギザはそっと視線を馬車の小窓の外へと逃がした。
──案外殿下は優れた詩人の資質とやらがあるのかもしれぬな。
そんな事を考えながら、ギザは内心で大きなため息をつくばかりだ。
ただ、思うこともある。
アステールの嫡男は、ダミアンとはまた別種の毒なのではないかという疑念が消えないのだ。
──
そう、魔である。
ダミアンが悪であるなら、ハインは魔ではないかと。
善でも悪でもない、魔だ。
ギザはふと、若かりし頃に読んだとある書の内容を思い出した。
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◆◆◆
どこの誰が著したのかも定かではない、ひどく古い書物に載っていた短い寓話である。
むかし、荒れ果てた世を正す理を求めて人里離れた岩山に籠もった一人の賢者がいた。
男のもとには、その志を挫くような数多の『悪』が押し寄せた。僅かな食糧を狙って刃を向ける野盗もいれば、高名を妬んで無実の罪を着せようとする領主もいたという。だが賢者の心は少しも揺らがなかった。奪うことも陥れることも、すべては人が己の欲や弱さゆえに為す業にすぎない。どれほど醜くとも正体が『人』である限り、備えることも退けることもできたからである。
ところがある静かな夜、閉ざしたはずの庵へ外からふらりと『それ』が入り込んできた。
『それ』は扉を壊さず、刃も持たず、賢者を傷つけることすらしない。ただ炉の向かいに腰を下ろして凍えた両手を温め、険しい暮らしで軋む身体を癒やし、賢者が誰よりも欲していた眩い『光』を惜しみなく胸へ注ぎ込んで去っていった。
翌朝、山を降りた賢者の顔からは迷いも恐れも綺麗に消え失せていたそうだ。
賢者は授かった光を掲げて村々を巡り、嘆く者からは悲しみを、争う者からは怒りを次々と取り除いて回った。光に触れた人々はたちまち苦しみを忘れ、賢者と同じ無垢な笑みを浮かべてその後ろへ付き従うようになる。そうして最後は国中の人間が一点の曇りもなく微笑みながら、誰一人として還らぬ荒野の果てへと歩いていった──そういう話である。
その書物の末尾は、こんな一節で結ばれていた。
悪とは人が為すものなり。ゆえに悪には血と欲の匂いがあり、人はこれを憎み、抗う術を知る。
されど魔とは、外より入り込むものなり。善悪の埒外より来たるがゆえに害意すらなく、ただ人の器へ滑り込んでは魂の向きを僅かに狂わせる。ゆえに入り込まれた者は己が道を外れたことにさえ気づかず、満ち足りた笑みのまま何処かへと歩み去ってしまうのだ──と。
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ガタリ、と車輪が大きく石を噛んで馬車が揺れた。
ギザが瞬きをして意識を戻すと、向かいの席ではヴィクトルが小窓から差し込む淡い冬の日差しに目を細め、実に穏やかな笑みを浮かべていた。
「……雲が切れて参りましたね、ギザ公。きっと良き旅になりますよ」
「……左様でございますな」
白髭の奥で短く応じながら、老結界術師はすっかり今日何度目かになる大きな溜息をついた。