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「まさかヘルガ様が直々に教鞭を執られる事になるなんて。ハイン様は知っておられたのですか?」
サリオンメスが言う。
俺は首を振った。
実際、朝初めて知った。
内緒にされていたとおもうと少し寂しい。
しかし敵を騙すにはまず味方からとも言う。
帝国掌握の謀り事とあらば、例え家族であっても軽々とは漏らせないだろう。
だがいきなり何を話しかけているのだ?
まだ婚約関係にあるとはいえ馴れ馴れしすぎではないだろうか。
それに、母上が教鞭を執る事がコイツにとって一体なんだと言うのだろう。
もし文句でもあろうものなら、魔術とは何たるかをこのメスの肉体と精神に致命的な形で叩き込んでやる。
「ヘルガ様の生家、エルデンブルーム伯爵家の始祖、サルバトリはエルフェン種だったと聞きます。そしてエルフェン種は生来、我々人間種より魔術と親和性があります。ヘルガ様が教鞭を執るとあらば、恐らくその繊細な魔術操作の粋が見られるのでしょうね。授業が楽しみです」
サリオンメス──いや、エスメラルダ嬢は中々見る目があるようだ。
サリオン公爵家はアステール公爵家と同様、帝都の守りの要となる大家。
エスメラルダ嬢はそのサリオン公爵家の才子とされている──らしい。
まあ思う所はあるが、それなりに見どころはあるということなのだろう……。
「……母上は決して魔力の総量に優れた
俺はらしくもなく饒舌に話してしまう。
母上を褒められてしまったからには仕方があるまい。
ああ、それにしても母上の事を話したら、なんだか恋しくなってしまった……。
寂しい……母上、俺は寂しいです。
最近は寝るときも別々だ。
俺が一体何をしたというのだ?
ただ人里離れた静かな所で、ただただ母上に甘えて過ごしたい。
俺は猟をしてその日の糧を得る。
そして二人で料理などをしたりして……夜は、よ、夜は一緒に寝る。
母上に抱き着いて一緒に寝るッ……!
朝までッ……!
そんな妄想をしていると、エスメラルダ嬢が口を開く。
「……それは、本当に楽しみです」
なにやら目を丸くしているな。
やはり驚いたか。
まあ魔力総量に優れてはいないといっても、ここ最近の母上に関して言えば当てはまらないかもしれない。
俺の目から見ても日に日に成長をしているのだ。
通常、この総量というものは成人してからはそこまで伸びないのだが──
俺はああ、とエスメラルダ嬢の言葉を反芻した。
母上の血に流れるエルフェン種の血は、いまではすっかり薄まってしまっているとの事だが、稀に隔世遺伝的に子孫に特性が発現する事もあるのだとか。
◆◆◆
無論、エスメラルダはヘルガがかつてハバキリの師事を受けていた事など知っている。
エスメラルダが驚いたのは、彼女が知る限り初めてハインの視界に自身が映ったからだ。
いつもは他者の存在など眼中にないかのように振る舞う少年が、今は確かに彼女を「見て」いる。
──ハイン様の瞳は……
エスメラルダはハインの瞳の、その奥に渦巻く何かを見た。
果てしない闇の深淵に、無数の光が散りばめられている。
それは決して温かな輝きではない──氷のように冷たく、そして鋭利な光だ。
見る者の魂を切り裂くような光が、闇の向こうで脈打っている。
──あの時の光(ママとすやすや参照)は、やはりハイン様の魔術ッ……!
サリオン公爵家に連なる自身から見ても、恐るべき大魔術だった──そうエスメラルダは戦慄する。
なるほど、それほどの力があれば周囲と馴染むはずもないとも。
ハインは孤独なのだ、そうエスメラルダは思った。
余りにも強く生まれてしまったがゆえの絶対強者の孤独。
──先ほどのハイン様の目。ヘルガ様の事を話す時、少し寂しそうでした
それはつまり、親ですら庇護の対象に過ぎないということだ。
隔絶した力の差から、理解者となることができない。
そんな考えに至ると、エスメラルダは己の体の中心に熱を感じた。
いや、体の中心よりはやや下──下腹部といったほうが良いだろうか。
この男の孤独を、少しでも和らげてあげたい──そんな想いが熱を孕む。
──ハイン様に並び立ちたい。いえ、それだけではありません。支えて差し上げたい。でも、そうするにはわたくしの体、心がそれに足るものでなければ……
この熱の出所はどこなのだろうか?
サリオン公爵家の者という立場から、アステール公爵家と
いや、違うとエスメラルダは否定した。
──この熱は、この熱はきっと
エスメラルダは自身の女の部分が、じゅくりと疼くのを感じた。
□□□
寝室でエスメラルダとハインが向かい合っていた。
互いの瞳には相手の姿しか映っていない。
沈黙が続くが、二人はそれを苦には感じなかった。
目で、気配で、相手が自身を強く求めている事を理解しているからだ。
ややあって、ハインが口を開く。
「エスメラルダ、お前が欲しい。俺のモノとなれ」
孤高の王子が初めて抱く、人としての欲望の告白だ。
途端、エスメラルダの呼吸が乱れる。
普段の気丈さは消え失せ、今や彼女は一人の女──いや、雌になり果てた。
「わたくしを、あなたのモノにしてくださいませ」
エスメラルダは掠れた声で答え、一枚、また一枚と服を脱いでいく。
生まれたままの姿となったエスメラルダを見たハインの目が変わる。
瞳に欲望の光がギラ付き、気配ときたらまるで飢えた猛獣のようだ。
ハインはエスメラルダに近づき、乱暴に乳房を揉みしだいた。
痛みすら感じる乱暴な愛撫だったが、少しも嫌悪感はなかった。
むしろもっと激しくして欲しいと言わんばかりに、自然と胸を押し付けてしまう。
期待に応えるように、ハインも自らの衣服を脱ぎ捨てた。
鍛え上げられた肉体美に、思わず見惚れてしまうエスメラルダ。
そんな視線に気づいたのか、ハインは言う。
『お前を抱くぞ』
その言葉だけで、もう駄目だった。
もう我慢できなかった。
一刻も早く抱いて欲しかった。
だから、エスメラルダは自らベッドに横たわる。
『そんなに俺が欲しいか』
ハインの言葉に、エスメラルダは頷く。
「聞こえないな、言葉にして懇願しろ」
「……は、ハイン様……。どうか、わたくしを抱いてくださいませ……」
消え入りそうな声で懇願するエスメラルダに、ハインは嗜虐的な笑みを浮かべるのだった。
──残酷な笑み、でも
エスメラルダはハインの笑みに、隠しきれない温かみの様なものに気付く。
──ハイン様、わたくしは、わたくしはもう
エスメラルダの膣はまるで泣いている様に濡れそぼり、ハインを求めてやまない。
やがて、我慢がもう限界に近付いた時──
「あっ」
エスメラルダは短い悲鳴をあげた。
ハインが素早く、そして荒々しくエスメラルダを組み敷いたのだ。
そして乱暴に唇を重ねる。
「んっ……ん、う……」
舌と舌が絡み合い、唾液が混ざり合う濃厚なキスに、エスメラルダは脳髄まで蕩けそうになる。
だがそれも一瞬の事であった。
すぐに唇を離すと、ハインは男根をエスメラルダの膣にあてがって「いいな?」と尋ねた。
エスメラルダが小さく頷くと──
「あ゙、ぁ……ッ」
破られた純潔。
下半身に走る痛みの鋭さに、エスメラルダは全身にじわりと汗を滲ませる。
「痛いか?」
そんな問いに頷くと、ハインは冷たい笑みを浮かべてさらに男根を奥深く突き入れてきた。
「もっと痛くしてやる。エスメラルダ、お前をこんな目に遭わせていいのは俺だけだ。お前の中に、俺の証を刻み込んでやる。永遠に消える事のない証を」
それはつまり、永遠の愛の告白ではないだろうか?
そう思ったエスメラルダは、激痛に苛まされながらも──
「は、い……ッ! もっと、もっとわたくしを痛くしてくださいませ……」
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「エスメラルダ嬢、随分と顔が赤いようだが。体調でも良くないなら医務室へ行くと良い」
俺はエスメラルダに言った。
恐らく熱でも出しているのだろう。
息遣いも荒くなっている。
だがそれを口に出さないのは、弱みを見せまいという高位貴族のプライドというやつか。
これが他の劣等なら、好きなだけ無理していっそくたばってしまえとでも思うのだが、エスメラルダ嬢は母上についての正確な理解が出来ている
多少は気遣ってやっても良いだろう。
「え、ええ、大変申し訳ありません……少し、その……体調がすぐれないようで……はい、医務室へ行こうかと……」
「大丈夫ですか? エスメラルダ様。私もご一緒します、もし歩くのが辛ければ……」
ファフニルメスがエスメラルダ嬢に手を貸し、二人は教室を出て行った。
まあ結構な事だ。
せいぜい休んで、来週の母上の授業までには体調を整えてほしい。