パトロールが終わり、午後の自由時間。
僕は前々から行ってみたかった図書館島の探索をすることにした。
麻帆良祭の間は図書館探検部の皆さんがガイドとして島の案内をしてくれるらしい。
「ようこそ図書館島へ! 今日ガイドをさせていただく星野です! 今日は皆さんに素敵な経験をしていただけるようガイドさせていただきます!」
図書館島の本は表層だけでも珍しい本や価値の高い本があるらしいが、下層に行けば行くほど価値の高い本がゴロゴロ見つかるらしい。
しかし、トラップが張り巡らされており、たまにやってくる珍しい本目当ての盗難者は険しいトラップの数々に撃退されてしまうらしい。
「中には魔法の本もあると言われています。ロマンですよね」
順路に従って歩いているが、どこもかしこも本だらけ。
しかも下に行くと本棚から水が湧き出し、巨大な滝ができている場所もある。
いくら麻帆良は常識がおかしいとはいえ、水の中に本があるのは異常だ。
魔法が関連しているに違いない。
「右手に見えますのが北壁の大滝でございます。巨大な滝から流れる水により年間を通して涼しいスポットになっています」
ガイドさんも言っているが、底の見えない巨大な滝の場所に出た。
壮観であるが、凄いという言葉しか出てこない。
1時間ほどの順路を巡り、図書館島ツアーを満喫するのだった。
まだ時間があるのでクラスメイトや知り合いのやっている出し物を見に向かう。
散歩部は学園のガイドで忙しいので行かないが、矢部君のプラモデル同好会の展示を観に行ったり、キューピッズの先輩達のクラスの出し物を遊びに行き、楽しい時間を過ごした。
矢部君が今日は別の友達と食事をして帰ると言われたので、僕はエヴァンジェリンさんの家に直行した。
エヴァンジェリンさんの家は学園内ながら森の中のログハウス風の建物で、電気も通っており、長寿な人特有の機械音痴というわけでもなく、普通に家電やパソコンがあったりする。
どうやら超やハカセがエヴァンジェリンさんの裏の顔をある程度知っているらしく、色々融通してくれているらしい。
「毎年毎年馬鹿騒ぎ、この時期はうるさくてしょうがない」
『結構楽しんでませんかマスター』
「うるさいぞ茶々丸」
茶々丸もだいぶ人間味が増えてきていた。
茶々丸は純粋なロボットではなく、魔力を原動力で動き、動力を注入する時は魔力のこもったゼンマイを回すことでチャージされる。
魔力の影響なのか、環境によるものなのか、機械に感情が宿っているようにも感じる。
『ケケケ、相変ワラズ妹トマスターノコントハ面白イゼ』
そう喋るのはエヴァンジェリンさんが一番長く相棒をしているチャチャゼロという緑髪の西洋人形で、エヴァンジェリンさんの魔力が封じられている影響で魔法球の別荘の中以外では喋ることしかできない。
本人曰く殺戮人形と言っているが、事実、修行の一環で戦う事があるが、チャチャゼロにまだ有効打を与えた試しがなかった。
「エヴァンジェリンさん、今日何食べたいとか要望はありますか?」
「レアのステーキが食べたい。にんにくは入れるなよ」
「了解です」
早くエヴァンジェリンさんの所に行けた日等は茶々丸の代わりに料理を作ったりもする。
「相変わらず歳の割には料理が美味いな」
「ありがとうございます」
「これでスポーツ選手になりたいとは変わっているな。料理人ならすぐにでも大成できると思うが」
「それが僕の夢なので……」
「ふむ」
「あ、エヴァンジェリンさん、今日他の魔法使いの人達と魔法使いの常識について話したのですが」
「なんだ、自称正義の魔法使い達に何か吹き込まれたか?」
「いえ、ただ僕の魔力量だと狙われるから、好きな人とかを人質にされないように一緒に修行をさせた方が良いと言われまして……」
「なんだパワプロ、お前さん好きな女でも居るのか?」
「付き合っている双子の姉妹が居まして……」
「ふむ……あぁ鳴滝姉妹か」
「しっているので?」
「クラスメイトだ。私は呪いで中学生をループしてしまっているが、今回のクラスメイトと言った方が正しいか。元気なちびっ子達だな」
「ええ、その二人ですが」
「魔法を教えるのは別に構わんが、魔法使いになるということは裏社会に通じることとなる。まぁ裏社会だと一夫多妻は当たり前だがな。力ある男に女が群がるのは普通だが、表だと煩いから気をつけろよ」
「はい」
「せっかくだ。野点にその二人も連れてこい。少し話しをしてやる」
「ありがとうございます」
食事をした後は別荘を使って魔法の修行である。
肉体強化もしているが、高畑先生が言うには近接戦闘よりも砲台としての役割の方が適任らしいので、攻撃魔法を教わる。
「魔法の射手、闇の1矢!」
バシュンと矢の様な魔法の攻撃が放たれる。
「これが魔法の矢だ。パワプロ、お前の属性は炎だから魔法の矢も炎の矢と念じると良い。大切なのはイメージだ」
魔力を言葉に込めて念じていく。
「魔法の射手、炎の1矢!」
バシュンと放たれたと思ったが、炎は少し飛ぶと離散してしまった。
「魔力の込め方が甘い。良いか」
エヴァンジェリンさんの魔法の勉強は理論的だ。
魔法の矢を例にするが、魔法の矢の威力は基本同じ、射程、速度、付属効果が魔力を込めた威力で変わってくる。
今回離散してしまったのは矢が魔力で形成する器、外殻の魔力量が足りていなかったからだ。
外殻の強度が上がれば射程が伸びる。
外殻を調整すれば対空砲みたいな時限信管みたいに一定の距離で爆破させることも出来るらしい。
外殻の強度が足りてなかったので次に撃つ時はそれを補い、そうすると発射時の初速が足りていないので射程を伸ばすために射速を上げる。
射速が上がれば狙いがブレるので着弾点を設定する。
こうやって1つ1つ魔法のやり方を教えていくのがエヴァンジェリン流。
できるようになれば応用をどんどんしていく。
僕は魔力総量が多いのでとにかく数をこなすのが良いらしい。
魔法の矢がある程度できたら、次は魔法障壁を覚える。
魔法障壁は魔法にも物理攻撃にも効くバリアで、込めた魔力量により強度や範囲が変わってくる。
僕の場合は魔法障壁を置いて、そこに魔法の矢を連射する特訓をすると良いと言われた。
どれぐらいの魔力を込めれば攻撃に耐えられるか、逆にどれくらい攻撃すれば相手の防御を崩せるかがわかると言われた。
「実践において殺れる殺れないの感覚は重要だ。魔力総量でゴリ押すスタイルでも良いが、それだとパワプロよりも魔力総量な多い相手には敗北してしまう。それを覆すのが技術と手数の多さと効率化だ……まぁまずは魔法の矢と魔法障壁を実践レベルまで持っていくぞ」
「はい!」
魔法球の別荘の中で、今日も修行を行うのだった。