「テストの返却するぞ」
朝の朝礼で皆のテストが返却される。
僕の点数は平均90点。
1学期中間テストは小学校の延長のテストなので比較的簡単なのだが、これは中々良いのではないだろうか?
「矢部君どうだった?」
「平均85点でやんす! パワプロ君には負けたでやんすが、クラスの平均は超えたでやんすよ」
「やったね矢部君」
クラスの平均は南條と協力して勉強会をしたかいがあり80点と中々高い位置を取ることができた。
学年掲示板には新聞部の奴が早速クラスの順位を発表し、A組は学年2位でクラス賞の範囲に入ることに成功した。
「「「万歳! 万歳! 万歳!」」」
クラス内は大盛りあがり。
2位なので3万円分の食券が1人1人に識蝕先生から配られた。
残念ながら個人の成績優秀者の中に僕の名前は無かったが、良い成績を残すことが出来たので次は1位を目指そうとクラス全体で盛り上がるのだった。
中間テストが終われば次の行事は学園祭となる。
テストから解放された僕達は学園祭までの間の期間を野球に打ち込んでいた。
「風香キャッチボール上手くなったね」
「うん、少しずつノックも受けられるようになったし、史伽と一緒にキャッチボールやティーバッティングをしたりして練習していたんだ! バッティングの方はパワー不足で上手く振れないんだけどね……身長がもう少し欲しいな」
「そればっかりは難しいですね……まぁしっかり食べればその分だけ僕達は背に来ますよ」
「パワプロはムチムチした女の方が好きー?」
「そうですね。ガリガリよりは肉付きの良いマッチョな女性の方が健康的で好きですかね……でも今の風香も好きですよ」
「えへへ……でもパワプロも上手くなったね。投球練習見てたけど前よりも長く投球できるようになったじゃん」
魔法の練習を始めたからか、テストから解放されたからか、日課としている早朝の走り込みが功を奏したのか、スタミナが増えた気がする。
あと打球の角度みたいなのも上がって打った打球が内野の頭を越して外野の手前に落ちることも多くなってきていた。
ただパワー不足で外野まで持っていくことはできないが。
「僕も風香も足で稼ぐしかないですね」
「足の速さなら男子にも負けないよ! あ、楓姉が足の速くなるコツみたいなのを知っていたハズだよ」
「今度山籠りにも参加してみたいですよね」
「修行って言ってるけど絶対忍者の修行だよね?」
「まぁ拙者とかニンニンとか……語尾はござるだし……」
「分身の術とかできるのかな!」
「できたら凄いですがね……」
そんな事を風香と話しながらキャッチボールを終えてノックを受ける。
ノックには南條が先に受けていた。
「南條どうだ? 野球慣れたか?」
「うん、思ったよりも楽しいね……そう言えば同じクラスだけど他のチームに参加している神座出流君はもうレギュラーを掴んだって聞いたよ」
「うへぇアイツはアドベンチャーズだったっけ……流石だな」
「僕達も負けてられないね」
「そうだね」
南條は高い運動神経と強肩なのでショートやサードのポジションを狙っているらしい。
打撃を課題としている感じだ。
矢部君もそうだが南條と風香も足が速く足でかき回すチームになりそうだ。
僕も足を速くなって機動力野球の一員に食い込みたい。
足が速ければ代走とか守備要員としても使ってもらえる機会が増えそうなので足の速さ重要である。
「お願いします!」
ノックを受ける前にお願いしますと言ってから先輩のノックを受ける。
ノックを打っている先輩はリーグ戦から外れ、今年の戦力として構想外になった先輩や大学生のOBがコーチとして来て打ってくれる。
大学生のOBは大学野球もあるらしいが、麻帆良は大学リーグが特殊らしく、麻帆良内で完結しているのでもしプロ野球や社会人野球を目指すなら麻帆良よりも他の大学を目指した方が良いのだとか……
なので麻帆良の大学生は教育学部で将来部活動に関わりたいと思っている人が中学生や高校生の部活動のコーチをしてくれたりもする。
今ノックを打ってくれているOBもそんな1人だ。
「10本ノック行くぞ」
「おなしゃす!」
僕は外野と投手の2つのポジションのノックを受ける。
外野ノックはフライを捕球したり、芝生を転がってきたボールを捕球して中継役の選手に投げる。
高校生やよほど肩に自信がなければ中継で繋いだ方が中学生の場合早く目的の場所に届けることができる。
ただ肩を強くするトレーニングもしっかり行う。
筋肉をつけるのが一番だが、成長途中の肉体に筋力を過剰につけると背の成長の阻害になってしまうため、自重トレーニングやチューブトレーニング、地面に向かって思いっきり投げて投げる感覚を磨いたり、キャッチボールの延長で遠投をしたりするのが良いとされている。
また球を遠くに速く投げるためには下半身の強化も見逃すことはできない。
走り込みやバービートレーニング、時には体幹トレーニングで強靭な下半身を作ることにより踏ん張りが効くようになれば下半身のエネルギーを上半身に伝えて遠くに速く投げることができるようになる。
あとは怪我にとにかく注意する。
爆弾を抱えればどんな選手でも選手生命を短くなったり、トレーニングができなければどんどん他の選手に追い抜かれていってしまう。
なので体操や柔軟を僕は人の倍近くしていたりする。
僕はトレーニングとして全身運動の自衛隊がやる体操とかも少年野球の時にコーチから良いと教わったので独自に取り入れたりもしていた。
ノックが終わると次は投げ込みだ。
キャッチャー役の人にボールを取ってもらいながら投げ込みを行っていく。
ゲームみたいに同じ練習をするというよりはこの練習に重点を置くみたいなのが現実の練習だ。
全部やったうえで追加で行う練習こそ人より上手くなるコツだと僕は考えていた。
「50球投げ込みいきます」
「よし来い!」
投げるフォームを意識し、投げる瞬間に指先で押し込む。
腕の振りも大切だが、質の良いストレートは最後の指の押し込み……回転のかけ方で決まってくる。
球が遅くても綺麗で高速なスピンがかかったボールは浮き上がってくる様に打者からは思えるので大切だ。
僕もここ最近投げる時のコツみたいなのを覚えて綺麗なストレートを投げることができていた。
スピードはまだまだ遅いが……。
今は握りとか指先の感覚、投球フォームを整えることに重点を置き、コントロールを磨くのが大切だ。
とにかく捕手が構えた所にストレートを投げられるようにしなければ……。
スパイクで掘ってしまった穴をトンボでならしてバケツで水をかけ、ローラーで固めていく。
全体をトンボでならし、ブラシで最後に足跡を消してグランド整備は終了。
野球ボールやバットの手入れ、破けてしまったネットの補修をする班にも分かれ行い、全部終わったら倉庫に鍵をかけてグランド前に整列し、グランドにお礼を言って解散となる。
倉庫の横にはシャワールームや洗濯室があり、体をある程度きれいにしてから私服に着替えて寮に戻る。
野球だとどうしてもユニホームが汚くなるので洗濯室で洗って、脱水し、寮にある乾燥室を借りてユニホームとかを乾燥させていく。
「今日も疲れたでやんす」
「僕も疲れたなー」
「南條も僕達の部屋に今日来る? 飯作るけど」
「パワプロの料理美味しいから本当に助かるよ。買い物はどうする? 荷物を置いてから行く?」
「じゃあオイラが皆の荷物を部屋に持っていくでやんすから南條君とパワプロ君は買い物を頼むでやんす!」
「オッケー、南條行こうぜ」
南條がキューピッズに入ってから一緒に食事をする機会が増えていた。
「南條食べたい物あるか?」
「肉食いたい! 丼に肉乗っけて」
「うーんじゃあステーキ丼にするか」
安売りしていたサーロイン牛を3枚と玉ねぎやタレ用の調味料、付け合せとしてポテトサラダ用のじゃがいもや人参、ハム、きゅうりに1人1パックとなっていた卵南條と協力して2パックゲットする。
寮に戻ると矢部君が先にご飯を研いでおいてくれたのでご飯を炊いている間に料理を作っていく。
矢部君と南條は乾燥室に僕のユニホームを含めて干してもらったり、宿題をやったり、お風呂の掃除をしたりして料理ができるのを待つ。
「へいおまち、サーロインステーキ丼にポテトサラダの付け合せだ。南條後でタッパ持ってこいよ。ポテトサラダ大量に作ったから明日ポテトサラダに卵乗っけてポテトサラダ丼にすれば朝食そっちの部屋の奴と食えると思うから」
「悪いねパワプロ君。本当に助かるよ」
「なに、南條助け合い助け合い。テスト勉強でも助けてもらってるからな」
そこから一緒にステーキ丼を食べた後、宿題を終わらせて、僕はエヴァンジェリンさんとの修行のために出かけるのであった。