【貞操逆転世界】で逆レ〇プされたい! してくれなきゃ嫌だ! 作:BIBI
第9話
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
本郷ミサエは慎重であり敏腕な元護衛だ。情報収集にも余念がなく、状況を俯瞰して行動する事に長けていた。
だからこそ、テンリが自分を狙っている事実に震えあがった。何が理由なのか、さっぱり分からない。
いきなり世界最強の軍人が、自分達を狙っていると気づいたのだ。もう時間がない、早く行動を起こさねばと、彼女が思うのも当然。
しかし、ここまでがテンリの思惑。掌の上。
時間がないのは、呪いを受けているテンリの方だ。それを知らない本郷ミサエは、悪手を打ってしまった。
優れた情報網の構築。土壇場での迅速な対応が可能にする柔軟性。それが逆に今回は仇となり、まんまとテンリに利用された。
もっと冷静であれば、テンリの小細工に気づけただろう。しかし世界最強の軍人という肩書の恐ろしさ、それを知る熟練された元護衛だからこそ、冷静さを欠いてしまった。
〈アラネア〉はあえてセツナに動向を少し掴ませようとしていた。それはカナタとチグサを分断させる為である。
当然、合流する可能性が高い。しかし膠着状態を続ける訳にもいかないなら、何か一手を打ち、隙が生まれたら奇襲する。
奥の手としてフミカを餌に釣っても良いのだ。
これは戦術としては定石。
何にせよ、〈アラネア〉に都合の悪い展開にはならないと、ミサエは考えていた。
しかしテンリが先手を打つ。〈アラネア〉が情報より先に、彼女がセツナに情報を掴ませた。予定する時刻より、僅かにセツナの動きがズレる。
この少しのズレが、アラネアに致命打を加える。それは小さな可能性ではあるが掴み取れたら王手だと、彼女は軽く考えていた。
何の因果か偶然か、テンリの動きは後にカナタを助ける要因となった。この事はまだ、誰も知らない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
念の気配を遮断する特殊コンクリートで作られた拠点。天井にチカチカと点滅を繰り返す電球は薄暗く、周囲を照らしていた。
「…………」
茶髪を腰まで伸ばした少女――フミカは、裸に剥かれ椅子に固定されていた。念を封じられ、力ずくでは逃げられない。
涙の枯れた虚ろな目で彼女は、爪が剥がされた指を見つめる。
排泄物は垂れ流され、周囲は悪臭が漂い衛生面は最悪。財閥令嬢として恵まれた生活をしていた彼女は、この一ヵ月間で精神的にも追い詰められていた。
「――――ッ!」
扉が開く音に反応し、彼女は心臓が張り裂けそうなほど恐怖を覚え、体が軋むほど震えてしまう。布を巻かれて声は出ない。
「やはり口を割らないか……。困った物だな。今度は何をすればいい?」
ゆっくりと歩き近づく金髪を腰まで伸ばした女――カンデラは、薄気味悪い笑みを浮かべていた。
「~~~~ッ‼」
フミカは膝をナイフで刺される。骨まで達し、激痛で全身から汗が噴き出した。
「妄想なんかじゃない。この日本の何処かに〈アーティファクト〉が隠されている。超能力とは異なる力が、この国にはあるのよ」
カンデラはナイフを引き抜き、そのままフミカの首筋まで持っていく。
「…………ッ」
喉は枯れ、声は出ない。恐怖で上手く動かない体で、フミカは震える事しかできない。何故なら彼女は、本当に何も知らないから。
自分が〈巫女〉と言われる存在だなんて、一切知らないのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ルカは左肩を負傷し、それをチグサが手当てしていた。母親を撃ってしまった事で、逆に冷静さを取り戻した彼女は、とりあえず二人の話を聞こうと考えている。
「……何とか、掠り傷で済んだけど、もうやめてくれよ、チグサ」
包帯を巻かれたルカの肩と腕を見て、コウヤが呑気に珈琲を飲んでいる。まるで銃弾を気にしていないのか、呆れた様に笑ってチグサと話す。
単純に彼はルカを抱いた幸福で、今は多少の事なら何でも気にしない、上の空というだけではある。だが、それを二人が察する事ができる訳もない。
「兄さんは嫌じゃなかったの? エッチなこと」
テーブルに置かれた救急セット。それに包帯など詰めながら、チグサはキッチンに居るコウヤを見た。
「…………ッ」
ルカは傷を気にしていない。戦闘訓練で銃弾を受けるなんて日常茶飯事であり、一々気にするほどの傷でもなかった。
それより単純に気まずくて、チグサと目を合わせられないでいた。
「だから前も言ったけど、エッチな事は興味ないし、嫌いだって……」
珈琲をゴクゴクと音を立てながら飲み、本当に気にした様子がなく軽く答える。
「で、でもさっきは、自分で動いてたよね……?」
チグサは思う、コウヤがルカを押し倒している姿は嫌がっている様に見えなかったと。
「…………まぁ、どうせやるんなら、自分で動きたい派なんだよ。自分の体を好きにされるよりはいいかなぁって」
照れた様に笑い、コウヤは頬を掻く。
チグサは「…………ッ」と悔しい気持ちと、膨れ上がる嫉妬を自覚する。自分も襲ってしまえば良かったと、激しく後悔する。
「……母さんも楽しんでたよね、ホントは力尽くで押さえ付ける事もできたはずなのに」
何気ない愚痴をチグサが零す。すると――――。
「あ」
間抜けな声をルカが出し、チグサの顔を見て、「あの時、コウヤ君に私の能力が通用しなかったのよ」と続けた。
一瞬、呆気に取られ「…………え」とチグサは戸惑う。コウヤは回す様にお湯を珈琲の粉末に注ぎながら、「能力?」首を傾げて二人を見る。
「私の超能力は、触れた相手の念を使用停止にするの。それがコウヤ君には効果なかったのよね……」
ルカはコウヤの顔を見て、「もしかして〈超能力の無効化〉が、コウヤ君の超能力かも知れないわ」と真剣な声で言う。
この発言にチグサは困惑しながらも、少し可能性があると判断していた。
念の強さは、超能力の強さ。
コウヤのポテンシャルを考えた場合、〈超能力の無効化〉も有り得るかも知れない。だとしたら、コウヤはテンリにとって天敵と成り得る逸材という事。
その可能性をチグサは考え、固唾を呑むのであった。