【貞操逆転世界】で逆レ〇プされたい! してくれなきゃ嫌だ! 作:BIBI
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「――――お母さん」
真剣な声音。チグサは飲み掛けの珈琲を放置して立ち上がる。
「分かってる」
ルカもリビングに備えてある武器を取り出し、「コウヤ君は一人で逃げなさい」と靴を履いた後、窓を開けてバルコニーに出た。
すると数秒後に発砲音が鳴り響き、外で戦いが繰り広げられる。
「大丈夫。軽く始末してくるから、連絡するまで外で遊んでて」
準備を終えたチグサがルカを追い、玄関から出て行った。以前とは違い、今のコウヤは念が強い。だから庇って戦おうにも、触れる事すら躊躇してしまう。
一人で逃げて貰う事が最善だった。
何か緊迫した様子はなく、買い物くらい気軽に出て行ったとチグサを見送った後、コウヤはカップをテーブルに置き、さっそく身支度を整える。
部屋に行き服を取り出し、夏場ではあるが長袖の上着を重ね着する。どうやら価値観が以前とは異なり、男が半袖なのはエロいらしい。
無防備と思われるのは良いが、あざといとか変態だとか思われるのは趣味じゃない。コウヤは普通に社会の価値観に合わせようと気を配る。
「…………?」
玄関から出ると、もう辺りは暗い。チグサとルカが遠くで戦っている気配を感じ取りながら、コウヤは十五階から飛び降り、何事もなく着地する。
念とは便利な物で、物理的なダメージは無効化し、傷つくことはない。
「はぁ……」
少し眠いと欠伸した。暇だしゲーセンにでも行くかと、中心街に向かおうとした時、横から念の気配が近づてくるので目を向ける。
「お兄さん。こんな日に不用心だね」
ナンパ女かと思ったら様子が違う。敵の仲間だろう。それを察しながらも溜息を吐き、「これが見えない?」と金のバッジを見せてあげた。
そのバッジは〈上級国民証〉という、社会的な地位が高い事を示す物だ。これを持つ事が許された者は、様々な恩恵を国から得られる。
「見た目通り可愛い事を言うのね。ごめんなさい。国のルールに従う気がないの。貴女が上級国民だろうと関係ないの。でも安心して、殺しはしないから。エッチな要求はしちゃうだろうけど――」
と拳銃を取り出した時、女の額に風穴が空く。
「こわー」
コウヤが撃ったのだ。傍に転がる死体を蹴り、「やっぱり何も感じないなぁ……」と伸びをして、過去を少し振り返る。
昔からそうなのだ。彼は逆レイプされること以外、大して興味が湧かない。ただ性欲を満たす事ばかり考え生きていた。
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コウヤが逆レイプに目覚めた切っ掛けは、一つの小説だった。
別に官能小説という訳ではなく、硬派な極道系である。
最初は強い男主人公が、人をばったばったと薙ぎ倒し無双していた。
恐ろしい主人公。強い男。それに憧れ、五巻まで読んだ時には自らの肉体を鍛え、格闘技も始めた。
その二年後、待望の最新刊が発売される。
久しぶりの新刊。嬉々として購入し、読んでみると作風が少し変わっていた。今まで硬派に組同士の抗争が描かれ、無双していた主人公が敵と相討ち。
痛み分けという結果に終わったのだ。
それに激しい悔しさが込み上げていると、終盤で何とお嬢が弱った主人公を襲い始めてしまったのだ。
強い男が弱っている時、いつも穏やかだったお嬢が肉食系に変貌する。これに脳を焼かれてしまい、コウヤは逆レイプじゃないと抜けない体になってしまった。
それ以降の彼は来る日に備え、肉体と精神を鍛え、格闘技に没頭するのだ。弱い自分が襲われても意味がない。
ストイックに鍛えてきた自分が、性欲塗れな女に無理やり犯される。こういうシチュじゃないと興奮できない。
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さっきの女を遠目で見ていた者が居たのだろう。コウヤは十人の構成員と戦っていた。
本来、格闘技を嗜んでいたとはいえ、念の戦闘技術を叩き込まれた者を大勢相手にするのは難しいだろう。
しかしコウヤは卓越した念の才能を持っていた。無意識だった。彼は体感時間を引き伸ばす技術を会得した。
発射された弾丸、人を包み込むほど大きな炎が、ゆっくりと自分に迫っていた。どれだけ速かろうと、近距離ではない。
数十メートル離れた弾丸が、ゆっくりと近づくだけ。銃を相手に戦った経験の無いコウヤでも、容易に避けられる。
だが問題は炎だ。迫る速度は弾丸程ではないが、攻撃範囲が広すぎる。
当然、直撃するが――――。
「…………?」
コウヤは無傷だった。寧ろ、触れた瞬間に炎は跡形もなく霧散する。読み通り、超能力は無効化できる。
チグサやルカに触れても、念は消せなかった。だから弾丸は避ける事に徹していたが、念で作られた炎なら話は別らしい。
狼狽える周囲の構成員。即座にコウヤは拳銃を手に駆け出した。
「先ず、一人」
見事なヘッドショットで、一人殺したコウヤは次の標的を見る。「ひ……!」と女が怯えた様子だが、彼は容赦しない。
それから数分程度。逃げ惑う構成を全員殺し、コウヤは人気のない場所まで移動していた事に気づいた。
「…………」
来た道を戻ろうと、踵を返した時――「…………?」コウヤは立ち止まる、異質な気配を薄らと感じて。
念ではない。意識すればするほど、異質な気配。
数キロ先だろうか。ヤバい何かが居ると、怖気が走った。