※この作品はR-18です。

【貞操逆転世界】で逆レ〇プされたい! してくれなきゃ嫌だ!   作:BIBI

23 / 26
第21話

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 呪いの治療は、〈アーティファクト〉によって可能。

 

 いやテンリが、〈フミカ〉に触れるだけでも成立してしまうかも知れない。

 

 これを知られたら、テンリが完全復活してしまう。だからセツナは焦っていた、早く仕留めなければと。

 

 テンリの力はあまりに強すぎるのだ。彼女が強すぎるあまり、実質的にイギリス一強の時代が再来する。

 

 その上、テンリは性格的に冷めている。かつて『力が有れば何処の国でも、威圧して優位に立ち回るでしょ?』と、彼女はイギリスの暴走を止めなかった。

 

 確かに正しい意見で、文句を言える筋合いもない。

 

 ただテンリは流石に卑怯な部類で強すぎるのだ。

 

 全人類が勝てないと思わせるほど強いなんて、イギリスがやりたい放題しても誰も逆らえなくなる。

 

 これは日本としても容認できる話ではなかった。

 

「コウヤさんはただ、テンリに近づいてナイフで刺す。できれば刺した後、テンリに触れ続けてください。貴方が触れている間で、テンリは超能力を使用できません。その瞬間を狙い私が止めを刺します」

 

 真夜中の神社に続く参道。セツナは隣を歩くコウヤにザックリと説明した。

 

「そう簡単に近づけますかね? 念の防御で触れる事すらできないかも……」

 

 助手席でコウヤは溜息交じりに自信なさげだ。キサラと戦った時、念の鎧を握り潰せず普通に負けた。

 

 だから彼は今、自分の能力がそこまで強いと思えずにいる。

 

「キサラの時は腕を掴んだだけでしょう? ナイフを持って一突きすれば、念の防御程度簡単に突破できます。まぁ念を研ぎ澄ましてナイフに纏わせる感覚を掴むのは、少々難しいんですけど……。そこは今から私の自宅で練習しましょう」

 

 セツナが想像する戦いの流れは、初っ端からの激闘。恐らくテンリは雷撃でコウヤを遠距離から攻撃するだろうと推測。

 

 その時点で超能力無効化は勘づかれ、警戒されてしまう。これだけでも詰みに近い。

 

 だから如何に先手を打つか、テンリに近づくかが勝負の決め手だと、セツナは合理的に考えていた。

 

「テンリの住むマンションは警戒しています。彼女が移動すれば、直ちに連絡が来る手筈となっていますから、コウヤさんは安心して練習できますよ」

 

 セツナはイギリスに味方が潜り込んでいる。流石に内部は無理だが、マンションを外から監視させている。

 

 だから彼女がマンションを出て、部下を引き連れ空港に迎うなら、事前に連絡が来る手筈は整っている。

 

「そういえば、テンリには妹が居ましたよね? その子も強いんですか? 確か銀髪なんですよね。銀髪は天才の証って聞きましたよ」

 

 コウヤはセツナの綺麗な銀髪を見ながら言う。

 

「あー。あの子は超能力自体は強いですよ? 別に脅威と言えるほどではありません。単純にテンリの補助でしかないので……」

 

 セツナは本音として、ツムギは眼中になかった。

 

「補助?」

 

 当然コウヤは首を傾げ、尋ねた。

 

「ツムギの能力が十メートル先の瞬間移動です。電流を飛ばした後、着弾した場所に瞬間移動。強いと言えば強い能力です。でも格下狩りですね。テンリと比べたら細やかな能力なので、気にしなくて問題ありません。何ら脅威には成り得ませんよ」

 

 全くセツナはツムギを相手にしていない様子で断言した。

 

「其処だけ聞くと、結構強そうですけどね……。雷の速度で接近されたら、正直対処できる自信ありませんよ、僕……」

 

 弾丸並みなら目で追えるが雷は無理だと、コウヤは視線を落ちて自信なさ気な表情。

 

「早く動けるとしても、撃って移動するまでに必ず予備動作が必要です。ゲームでいう、リキャストタイムみたいな物だと考えて下さい。そこを叩けば問題ありません。案外タイミングを合わせて攻撃するのは、難しくありませんよ」

 

 セツナとしては速いだけの相手は、さほど脅威ではなかった。

 

 雷の速度を目で追えないのは、ツムギもまた同じ。接近する方、される方の違いでしかない。たとえばナイフを前に突き出すだけでも、十分に牽制になる。

 

 そんな相手よりテンリの方が対処が難しい。というかセツナとしては、コウヤしか頼みの綱がない状態だ。

 

「やっと来た」

 

 賽銭箱の前に、短い茶髪の長身女――モーヴが立っていた。見るからに育ちは悪そう。ピアスだらけ。指輪だらけ。短パンにシャツで拘りはなさそうな格好だ。

 

 ガムをくちゃくちゃと嚙みながら、セツナとコウヤに向き合う。

 

「こんな深夜に男を連れ回すなんて羨ましいねぇ」

 

 不敵な笑みを浮かべ、顔の刺青が醜く歪む。

 

「久しぶりですね。二年振りですか。こんな夜更けに何の用事ですか?」

 

 セツナは警戒している。目の前にいるのは昔、殺し損ねた犯罪者。わざわざ来たという事は、何が対抗策があるはずだと、セツナはモーヴと五メートル距離を取って立ち止まる。

 

「一条テンリの要求を伝える」

 

 携帯を耳に当て、モーヴは「二週間以内に七尾フミカを引き渡せ――と」そう言って、テンリの代わりに喋った。

 

「急ですね。でも丁度良かった」

 

 セツナが意味ありげに、呆れな様子で肩を竦めた。

 

「…………?」

 

 その様子にモーヴは、ガムを膨らましながら続きの言葉を待つ。

 

「キサラと話し合って決めたばかりの話です。要求に全て応えるつもりはありませんが、フミカに合わせる事自体。構いませんよ。というか一々会う必要もありません。テンリが欲しい情報は教えるつもりなので……、条件次第ですが……」

 

 平気でつらつらと嘘を吐くセツナ。鵜呑みにする訳じゃないが、モーヴは一応「条件とは?」と尋ねる。

 

「私が隠し事が多くて警戒心が強い事は知っているでしょう? それ含め、二週間後、直接話し合いましょう」

 

 二週間。いや一週間あればテンリを殺せると、セツナは考えながら喋る。

 

「テンリが知りたい情報ねぇ。アンタは見当はついているの?」

 

 くちゃくちゃと音を立てながら、モーヴは目を細めた。疑っている、口からの出まかせで釣って逃げる魂胆なのではないかと。

 

「どうせ妹の命を助けたいだけでしょう? 助けられますよ、私なら」

 

 テンリが妹を大切にしている事は、当然セツナも知っている。

 

「それが聞ければ十分。貴女を信用する――だってさ」

 

 モーヴは通話を切らず、耳に当てたままニヤリと笑う。「私如きが割って話すのも何だけどさ、どうせ教えるなら、二週間後とは言わず、もっと近い内で問題ないんじゃない?」彼女は何か時間稼ぎしているのではないかと睨んでいる。

 

 実際、その予想は正しい。だが、セツナは「…………」の余裕の笑みは崩れない。

 

「私も警察なので、一個人で全てを決定するにしても、予め説明する義務があります。今後に重要となる話ゆえ、禍根を出来る限り残したくありません。まぁ二週間ですよ。待っていてください」

 

 彼女は呆れた様子で、「こちらも要求を呑む以上、テンリにも協力して欲しい事があります。単なる口約束でも、守ってくれると信じていますよ」と付け足した。

 

 見返りもなく情報を渡すなんて、警戒されてしまう。だからセツナはテンリを利用したい何かがあると嘘を吐いた。

 

 その嘘に少なくともモーヴは納得した。

 

「二週間あれば私を無力化できると言われている気分だ。そう言って、電話を切ったな。でも安心しろ。怒っている様子はなかった。寧ろ楽しそうな声だったよ」

 

 彼女は携帯を畳み衣嚢に入れる。そして体に雷を纏ってセツナを見て笑う。

 

「「――――ッ」」

 

 明確な敵意を感じ、コウヤとセツナがナイフを構えてた時――――雷が落ちる。

 

 砂煙が晴れ、其処にいたのは――テンリとツムギだった。

 

「一条……、テンリ……!」

 

 セツナの表情から余裕が消える。テンリ相手に五メートルまで接近を許してしまい、全身に緊張が走り、一瞬息が止まった。

 

「ごきげんよう。二年ぶりね。話し合いをしに来たわ」

 

 優雅な佇まい。キサラと違ってテンリに強者特有の圧はない。目つきが悪いが、儚げな少女という印象。身長も小型で、彼女が世界最強だと言われても信じられない。

 

 それほど彼女は衰弱し、弱々しい印象だった。

 

「まさか、姉妹だけで来るなんて……」

 

 弱体化した現在、テンリは部下を引き連れて来るものだと、セツナは思い込んでいた。

 

「十分でしょう? 私達が居ればそれだけで。たかが国一つ攻め滅ぼすなんて、訳ないもの……」

 

 声に力がない。目は虚ろで力なく、言葉に説得力がなかった。それほどテンリは脆弱な念でしか体を強化できていない。

 

「随分と腕を上げたものですね……。こんな移動手段を編み出すなんて……」

 

 セツナの視線はツムギに移る。呪いを受けて、寧ろ超能力はテンリ同様、ツムギも弱体化しているはずだ。

 

 それなのに急激な成長など、予想できる訳が無かった。

 

「分かるでしょう、この銀髪を見れば。天才の証。私の所為で影が薄いだけで、ツムギも十分に天才の部類なの」

 

 今にも倒れそうな状態で、テンリは苦しそうに笑う。自慢の妹なのだろう。声に力がなくとも、喜びが込められているのが良く伝わる。

 

「少し前まで近距離の移動が限界だったけど、これからは遠距離の移動も可能。雷と同じ速度で移動できるなんて凄い能力よね。海を渡る事すら、楽勝だったわ」

 

 素直に妹の成長が嬉しいらしい。テンリはツムギの頭を優しく撫でた。少しくすぐったがりながら、照れたようにツムギは俯く。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 ツムギの超能力は移動特化。二年前までは微細な電流の矢を飛ばし、着弾した場所に移動させるのが精一杯で、飛び抜けて強い訳ではなかった。

 

 しかし、それは決して超能力のポテンシャルが低いという訳ではない。

 

 あくまで微細な雷の矢を飛ばす技量が低かっただけ。逆に言えば雷を更に遠くまで飛ばす手段を考え付けば、簡単に数キロ、数千キロまで移動は可能だという話。

 

 とはいえ、ツムギにとって雷の射程は少し引き伸ばすだけでも苦難の道のり。数キロなんて現実的ではないと、本人も諦めていた。

 

 だが地道に研鑽する内に気づいてしまう、自分の念を他人に運ばせればいいと。他人の体に念を刻み、運ばせるだけで瞬間移動が可能なのだ。

 

 セツナは誤解しているが、ツムギの超能力は単純な移動ではない。

 

 天才の証たる銀髪。その上、世界最強である一条テンリの妹だ。ただ飛ばした雷に追随する程度のチャチな能力であるはずがない。

 

 ツムギの超能力は、作り出した雷を辿る力。

 

 故に、自分が生み出した雷と、運んだ雷が引かれ合い繋がる。その上で、雷の速度で移動が可能である。

 

 凄まじいポテンシャルを持つ超能力だ。

 

 しかし通常ならツムギの才能は、開花しないまま枯れるはずだった。何故なら他人に念を刻み込むなんて、通常の鍛錬で身に付く道理はない――神業だ。

 

 その枯れるはずだったツムギの才能を開花させたのは、体を呪いに刻み込まれるという非常に稀有な体験である。

 

 つまりツムギの劇的な成長を齎したのは、皮肉にもセツナ本人。アーティファクトを用いて、脅威を排除するどころか、ツムギを急激に強化してしまった。

 

 他人に念を刻み込む極意を会得したのは、歴史上ツムギが初めて。

 

 セツナの悪意が、彼女を歴史に名を刻む天才に至らせたのだ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。