因習村でまたハブられたので、もう一回美少女全員嫁にする 作:るっぴぃ
だいぶ話が飛んで委員長の話ですが、まあいろいろあったものだと思ってください。
あとえっちシーンはないです。すまん。
夜も深くなっているというのに、委員長の自宅の鍵は開いていた。
あの委員長がこんな初歩的な見落としをするとは思えないので、きっと今晩あたりに来ると予想して開けておいてくれたのだろう。
ご家族を起こさないように静かに移動する。隅々まで清掃の手が行き届いているのは、きっと委員長の几帳面さがよく表れているのだろう。
階段をそろりそろりと上がり、委員長の部屋を確認する。以前一度来たことがあるので場所は知っている。念のため沈魚の秘薬を焚いておく。委員長がそのあたりの差配を誤るとは思えないが、ヤってる途中で親とバッタリなんてのは流石にごめんこうむりたい。
あまり音を立てないように、ただ中にいる委員長には確実に聞こえるくらいには強く扉をノックすれば、意外にも答えはすぐに帰ってきた。
「花との逢瀬は終わったの?」
「ああ、眠そうだったからな。布団に寝かせてきたよ」
「ふふ、やっぱりまだ夜遅くまで起きていられないのね」
笑いながら委員長は扉を開けた。
やや大きめのサイズのスウェットにねずみ色のカーディガンを羽織っている。眼鏡はかけているがいつもの三つ編みはほどいているからか、普段より雰囲気が柔らかく感じる。
肩越しに見える部屋はきっちりと整頓されていて委員長らしさを感じる。家具の色合いも落ち着いていて、さっきまで世話になっていた藤見の部屋と居心地が全然違う。俺の部屋もあまりものを置かないから、可愛らしい色合いのものがたくさんある藤見の部屋、どことなく落ち着かないんだよな。
「遅くなってごめん」
「花がぐずったんでしょ、仕方ないわ」
俺の謝罪を何でもないように笑って、委員長は俺を部屋の中に誘った。めっきり冷え込む外気に慣れた体に、やや過剰に暖められた室温が心地いい。俺を迎え入れたと同時にカーディガンを椅子に掛けたあたり、今晩あたり俺がやってくると踏んでわざわざ暖めておいてくれたのかもしれない。
無言で促されて着ていたコートを渡す。委員長は手早くハンガーに掛けるとクロゼットにしまい込んだ。ついでとばかりに委員長には大きすぎるサイズのスウェットを投げ渡されたので、さっさと着替えることにする。
委員長はそれを見ながら邪魔にならないように移動して、ベッドに腰掛けた。
「手慣れてるんだな、委員長」
「……花と比べないで」
「あー、それもあるが」
この手の「普段の自分の動き」が出る動作、高校生できれいにできるのは割と珍しいんだよな。呉服屋の掛川は別格として、委員長と同じくらい慣れてるのは接客やってる瀬戸や三枝、躾が厳しかったであろうやえのくらいだろう。
ちなみに知り合いの中で一番できないのは丸山先輩だ。あんな管理をしたら生地がすぐ傷むと思うんだが、気にしないんだよな。
着替え終わった俺が座るための座布団でも探そうとしたら、委員長は控えめに隣に促した。断る理由も特にないので素直に腰掛ける。
委員長の隣に座るや否や、委員長は俺の唇を奪って押し倒してきた。
「――んむ!?」
「んっ……」
暖房で心地よく暖められた布団と、鉄面皮だなんて言われながら触れれば折れてしまいそうなくらい柔らかい委員長の体にサンドイッチにされている。押し倒されたはずみに触れ方が雑になった唇から、とろりと甘い唾液を流し込まれている。
委員長の怜悧な印象を与える瞳は、これだけ目の前にあってもその印象を変えることはない。けれど貪るようなキスだけでどれだけ不安に思っていたかが分かってしまう。本当に不器用だ。誰の前でも“こう”なのだから、俺の前でくらいもっと甘えてくれてもいいと思うんだが。
……まあ、これは俺が悪かったな。委員長が抱え込んでしまうことくらい散々理解していただろうに。何か手があっただろうと思ってしまう。
――本当に、悪かった。
――大丈夫よ。こうして今ここにいて、謝ってくれるんだから。
――本当はもっと早く来てやりたかったんだがね。
――あれだけの人数だもの。春は恵まれていた私の番が遅くなるのは仕方ないわ。
――そう、それだ。聞きたかったんだけど、どうして今夜だって分かったんだ?
――ああ、それ。わかるわよ。クラスみんな浮かない顔してる中で、真っ先に笑顔を取り戻したのが瀬戸さんだもの。
――瀬戸が?
――誰かさんが喫茶店で活動してた頃の彼女、すごく落ち込んでたのよ。山田君が心配で声をかけるくらいにはね。
――えっ。
――あら、そこまでは聞いてなかったの? まあ今の様子を見ていれば問題なかったとわかるけど。
――その節はご迷惑を……。あ゛ーーーー。
――何、自己嫌悪?
――あの頃は全然余裕なかったからな。……すまん、今はお前との時間だった。
――ふふ、変わらないわね。
口元をべとべとにしながら俺たちは会話している。窮理の法を存分に生かしたこの会話も、この半年でずいぶん慣れたものだ。流石に委員長ほど使いこなしているのは嫁たちの中にもほとんどいないが……。
近況報告を終えたところで唇を離し、お互いに脱がし合う。お互いスウェットだから上半身を脱ぐためには一度キスをやめないといけない。お互いに湿ったパンツまで脱がし合って、一糸まとわぬ姿で抱きしめ合った。
――不安にさせて悪かった、杏。二度とそんな気持ちにならなくて済むぐらい、愛させてくれ。
――そう言ってくれて嬉しいわ。私の旦那様。
冬至が近い冬の夜は長く、まだまだ朝の気配は遠かった。