「戦場の二人~lives in the battlefield~」でレインが甲さんの布団に潜り込んだ後のシーンの続きが読みたくて自分で書いてみました。
【2/15追記】アンケートで小説をすべてR18にまとめることにしたので上げ直しました。
●この小説はpixivにも投稿しております
『二人だけの空間』
訓練所周辺に自生するススキが見頃を迎え、黄金色へと山中を染め上げて。辺りへ漂う空気に肌寒さを覚える、そんな秋の一日。寮の自室のベッドの狭い布団の中で、彼女と二人きり。
俺たちはただ、見つめ合い。互いの身体から発する熱が伝わることにより、温かになった布団の中で、ぬくぬくと暖を取っていた。
ARR-another rain route-
『二人だけの空間』
ベッドの上で、互いの着衣に乱れはなく。周りがやっかむような、不健全なことはなに一つなく。ただ、この二人だけの小さな空間に、俺はえも言われぬ居心地のよさを感じていた。
穂が開いた金色のススキが風に吹かれ、さらさらとそよぐように。俺の息が当たり、その呼吸に合わせてかすかに揺らめく、長く美しい髪。透き通ったその群青色の瞳は、俺を真っ直ぐに捉え、見据えている。
レインが先に布団へ入っていたこともあり、辺りに香る彼女の甘い体臭が鼻孔をくすぐり。今日の天気のように、俺の心を晴れやかにしてくれていた。
「なあ、レイン」
「なんでしょう、甲さん」
「さっきレインが言ったとおり、天気がよい日に外へ出かけるのもいいけどさ。そんな日に、あえて部屋で過ごすってのも、乙なもんだと思わないか?」
「それは……」
不満に感じているのだろうか。レインは言葉をつまらせてしまった。それでもめげずに、俺は言葉を続けていく。
「今日は少し冷えるし、布団が温くて気持ちいいだろう」
布団に包まれた身体をもぞもぞと動かすことで、その温もりをより一層味わおうとする俺。はー、やっぱり午前中に入る布団は格別だな。
「……本当は、お出かけするほうがよいと思いますが。甲さんの言うとおり、たまにはこういうのもいいですね」
今日のような日和では、よほど外出したいと考えていたのだろう。本当は、の部分をやたら強調して、俺のルームメイトはそんな返事をする。
ともに入った布団の快適さから来るものなのか、実際にはまんざらでもないらしく。そう言いながらも俺に向けられたその表情は、すぐに不服を現す不愛想なものから、承服を現す柔和で穏やかなものへと変わっていった。
「だろう? それじゃあ、今日は一緒に二度寝でもするかっ」
その表情の変化を
しょうがないだろう。俺にとってレインは、とてもからかいがいのある、可愛いやつなのだから。
「二度寝はちょっと……ええ、でも今日くらいはいいかもしれません」
「……そうか」
一瞬思案した後、仕方がないという顔で困ったように俺に答えつつも、笑いかけてくれるレイン。自分で言っておいて、意外な返事がされて面食らう。
だが俺は、レインにそんな自分の申し出を承諾してもらえたことが嬉しかった。
「…………」
ふと、レインの顔の横に手を伸ばし、その髪を一房すくい上げて自分の胸元近くへと持っていく。つかみきれなかった髪がほどかれ、するりと手からこぼれる。
「んっ……」
髪をつかむついでに頬へわずかに手が触れたせいか、レインは小さく身を震わせくすぐったそうに声を上げた。――その艶っぽい表情と微かに熱を帯びた声から刹那、病院での夜の逢瀬が連想される。
「……っ」
それと連なるように、ゆくりなく先ほど触れたレインの胸の、いつまでも触れていたくなる柔らかな感触。触れられた時の、甘い声。それらが合わさり思い起こされることでふっと、自分の胸に嗜虐心が芽生えそうになるのを堪え、俺はそのまま平静を装った。
「こ、甲さん」
突然、髪を触れられたことに戸惑うレイン。手入れの行き届いた金髪は、なめらかでさらさらとしていて。このままずっと指で弄っていたくなる感触で、かぐわしい香りを発していた。
摩擦係数が少ないために、触れている側から今にも俺の手から逃れようと、指からこぼれ落ちそうになるレインの髪。逃がしてやるかと。それをくるくると指に巻きつけ、絡めることで捕らえる。
指に絡めた髪をなんの気なしに、自分の視界に映るレインの顔の横に移動させていく。するとどういうことか。まるでレインの髪型が――縦ロールに変貌したように見えるではないか。
「……レインって、本当に髪が綺麗だよな」
吹き出しそうになるのを、俺はなんとか耐える。唐突にレインの髪の印象についてつぶやくことで、俺はそれをごまかすことにしたのであった。……危なかった。
さすがにこの至近距離で吹き出したりなんてしたら、レインが可哀そうだ。それにしても縦ロールとか、古典的なお嬢様かよ。でも案外、似合っているかもしれない。実際のところ、レインはお嬢様だしな。
「……ありがとうございます。髪は女の命ですから、常に気を遣っています」
俺のあんな言葉ひとつで照れてしまっているのだろうか。やや遅れて言葉を返し、レインは俺から少し視線を下げ頬を紅潮させていた。
「そっか、レインの好きだった人も、ロングヘアがタイプだったとか?」
「…………」
突然、レインは口を閉じ黙り込んでしまう。まずい。ひょっと口に出してしまったが、これは禁句だった。慌てて俺は、レインの髪から手を放す。
俺の指から解放された金糸のような髪がぱさっ、という音を立てながらシーツへと落ちて広がっていった。
「ごめん、その……」
「たぶん……そうだと、思います」
「たぶん?」
「私はそこまで、彼のことを知らなかったので……」
残念そうな、寂しそうな顔で、俺へと話すレイン。知らなかった、という“過去形”の言葉。――そう、彼女の好きな人はもう、この世にはいないのだ。
「ごめん、レイン……」
「いえ、構いませんよ。どうかお気になさらず。……それよりも、他のお話をしませんか?」
「あ、うん」
「甲さんは、やはり髪の長い女性がタイプなんでしょうか?」
俺に尋ねているだけで、他の話じゃなくて同じ話じゃないか。つい顔をしかめそんな疑問が頭に浮かんだが、さっきの詫びも兼ねて、俺は素直にレインの質問に答えることにした。
「んー、特に考えたことはないけど、どちらかというとそうだったかもしれ……」
思いがけなく――栗色の“長い髪”をハーフツインテールにして束ねていた“
あの日のことが、あの映像が。一瞬の内に、俺の頭を、埋め尽くしていった。
「うっ……」
「甲さんっ!」
俺を心配するレインの声を聞いたような気がするが、瞬く間にそれは俺の意識から消え、遠ざかっていく。片手で口元を押さえ、必死に吐き気を堪えた。
呼吸が乱れて身体はがたがたと震え、心臓は早鐘を打ち始め、冷や汗がどっと流れ出す。落ち着け。あれからどれだけ経ったと思っているんだ。忘れるんだ、と。そんなことを考えかけて訂正する。
いや、あのことを忘れてはいけない。絶対に、忘れてはいけない。――この復讐の灯火は、決して絶やしてはいけないのだ。俺は改めて、そう心へと強く誓った。
「ご、ごめんなさい、私……」
「……っ……いや……いいんだ……」
どうにか喉から絞り出したその声は、発した本人の俺が驚くほどに、かすれしわがれていた。今にも泣きそうな顔で俺へと謝罪するレイン。そんな顔をするなよ。
「ごめんなさい……ごめんなさいっ……!」
謝るレインの目に、みるみるうちに涙が浮かんでいく。泣くなよ、レイン。俺は今、そんなひどい顔をしているのか? そう言ってやりたいのに。
余裕の失った俺の口からは、もうなんの言葉も、出ることはなかった。
「……失礼します、甲さん」
「っ……!」
レインは突然、俺の後頭部に手を回し抱えると、自分のその豊かな胸へと引き寄せて俺の顔を押しつけた。……柔らかい。触れた瞬間から伝わる、レインの体温、匂い、柔らかさ。
俺の身に起きた激しい動揺を上書きするために、それらの情報が頭へと一気に流れ込んでいく。
「…………」
部屋には物音ひとつなく。ただ俺たちの、互いの呼吸音のみが、聞こえていた。それと、俺の耳にはトクンという。レインの心臓の鼓動が、溶けるように響いていく。
俺は自然と目を閉じて、ゆっくりと、深呼吸をし始めた。頭を空にして、その音と溶け合うように、レインに導かれるように。体の力を緩め、深く息を吸い、少しずつ吐き出す。
寄せた波が引いていくかの如く。そんなことを何十回も繰り返していると、先ほど千々に乱れた俺の心は、徐々にその平穏を取り戻していった。
「……やっぱり二度寝、しませんか?」
抱擁を解かぬまま、俺を包み込むような、気遣いに満ちたレインの温かな声がかけられる。
「……ああ、そうしようか」
俺はその提案を受け入れ、先ほどからずれてしまっていた布団を、レインの肩の上までしっかりとかけ直してやった。華奢な背中へ手を回し想いに応えるため、こちらからもその身体を抱きしめ返す。
「…………」
そしてそのまま俺たちは、互いを抱き合ったまま、目をつぶった。
――天気のよい秋の日、せっかくの休日の午前中。こうして俺たちは、二人だけの静かな空間で、ただ穏やかに、二度寝をして過ごしたのであった。
『二人だけの空間』
終
えっちなお話でどれか読みたいと思うものはありますか?ちなみにもちろん全て甲レインで、『記憶を失くした俺と、彼女の初体験』(愛と快楽の会議で最後までする話)が一番書けています。一番内容が薄いのは初日にHする話です…。
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愛と快楽の会議で最後までする話
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枕代わりに使ってと言われて甲を眠姦する話
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