※この作品はR-18です。

ARR-another rain route-   作:のあむ

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 ある夜、甲は日頃の感謝を込めてレインにマッサージの提案をする。しかし、その時の甲はまだ気づいてはいなかった。このマッサージが、甲にとって、とんでもない試練へと変貌してしまう、ということを……。
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第五章『試練のマッサージ』

 ギシリッ。夜のしじまの中に、ネジを巻く音にも似た、マットレスのスプリングによる金属音が響く。……それと。

 

「んぁっ……ふあぁっ……あ、んっ……」

 部屋の中央にある二段ベッドの上段から、夜遅い時間にふさわしくとても控えめで、それでいて艶めかしい嬌声と。くちゅくちゅっ、という淫靡な水音。

 それら二つが繰り返し混ざり合い、闇に包まれ静まり返った部屋へと反響していく。彼女の淫楽により起こされた、そんな淫らなサウンドが鳴り響く中――俺は、というと。

 

「…………」

 下段のベッドの上で横になり布団へ入った状態で、網膜透写した“AV”を、ぼんやりとひとり眺めていた。スウェットパンツの下腹部は、ギンギンになった“それ”で膨れ上がっており。

 しかし、両の手は端(はな)から自慰を放棄し、自身の息子を握ることなく投げ出されている。……まったく、どうしてこんなことになったんだ。この状況に絶望しきった俺の思考は、ただただ、その理由を欲している。

 

「はぁ、う……んんっ……あぁんっ……」

 情欲に蕩(とろ)けきった声が、何度も何度も、二人だけの物静かな部屋へと響いていく。絶えず彼女の喘ぎ声が上から聞こえてくる、こんな異常な環境下においても。

 俺は相変わらずモノをしごかず、視野に表示したAVを、見続けていた。

 

ARR-another rain route-

第五章『試練のマッサージ』

 

 それは夜、風呂を上がった後にすっかり習慣と化したレインによるマッサージが行なわれた頃のこと。

 

「あー、気持ちよかったー。ありがとうな、レイン」

「ふふ、そうおっしゃっていただけて光栄です」

 俺の上から身体を移動させ、隣に座りながら嬉しそうに返事をするレイン。

 

「そうだ。いつもレインにしてもらってばかりだと悪いし、今日は俺もレインをマッサージするよ」

「よろしいのですか?」

「ああ、レインには世話になってるからな。そのお礼だよ」

 返しきれないほどに受けた恩ってやつを、たまには返してやりたいと。常に献身的なルームメイトに日頃のお礼を兼ねて、マッサージを施すことを決めた。

 さすがに、命を救ってもらった恩を返すには安過ぎる礼だと苦笑しながらも。命の恩人(レイン)へと、溜まりに溜まった恩を少しでも返してやることにした。

 ……だが、その時の俺はまだ気づいてはいなかったのだ。このマッサージが、自分にとってとんでもない試練へと変貌してしまう、ということを。

 

 上のベッドでは天井が気になってやりづらそうなので、レインにはこのまま俺のベッドの上でマッサージを受けてもらうことにした。

 

「あ、少し待ってください」

 そう言って、レインはベッドから下りて自分の机へ向かった。引き出しからなにかを取り出すと、俺のベッドへ戻り再び腰を下ろす。

 

「髪が邪魔になってしまいますのでゴムでまとめますね」

「ああ、そうしてもらえると助かる」

 言いながら、レインは寝る時と同じように自分の身体の前方へ髪を運び、持ってきたブラシとヘアゴムを使ってゆるく二つ結びにしてまとめていく。

 サラサラとした金髪が、照明の光を反射してきらきらと光り輝いていた。……こういうのを見てグッとくるやつもいるんだろうな。レインが髪を結う姿を眺めながら、そんなことを考える。

 レインは運動時以外では、髪を下ろしていることが多く。そのおさげ姿は、ここにいる俺しか見ることのできない貴重なヘアスタイルであった。

 

「それではどうぞ」

 そう言って、ベッドでうつ伏せになるレイン。

 

「ああ、一応ネットで基本的なやり方を見てからやるから少し待ってくれな」

「はい、わかりました」

 危ない危ない。レインは女の子だし、さすがになにも調べずにやるのはちょっとな。素人のマッサージで万が一にもレインにケガをさせないために、俺はきちんとやり方をネット検索することにした。

 視野透写した文字列と画像に素早く目を通していく。『全体的に疲れを癒してあげたいのであれば、オイルマッサージが適しています』って書いてあるな。へー。オイルを使うってことは、服を脱いでもらってやるってことだよな。

 ――現代ほどオゾン層が破壊されておらず、紫外線が強力ではなかった時代の映画(ホロ)の作中。ビキニ姿の女性がひもを外した状態で、背中にサンオイルを塗ってもらっているシーンが頭に思い浮かぶ。

 あれは、子ども心にも女優の横乳がデカくてもの凄くエロいって感じてたな……。……って! 女の子のルームメイト相手にそんなことできるか! あとオイルなんか持ってないからそもそも無理だ!

 ……普通に、指圧マッサージにしよう。冷静に判断した俺は、通常の指圧マッサージをレインに行なうことを決定した。

 

「それじゃあ始めるぞ」

「はい……」

 俺にされるのが不安なのだろうか。返事をするレインの声色に、緊張の色が感じられた。そのことを頭の片隅に入れておき、レインの身体の上へ覆いかぶさる姿勢になり、慎重にマッサージを開始する。

 まずは背中を、体重をかけながらほどほどの力で指圧していく。力をゆっくりとかけて、ゆっくりとゆるめる。ネットの情報によると、三秒かけてゆっくり押し、三秒かけて指の力を抜きながら戻す、というのが上手くやるコツらしい。

 

「こんな感じでどう?」

「もう少し強くても大丈夫ですよ。私は日頃から筋肉を鍛えておりますので」

 自信ありげに返事をするレイン。たしかにレインの言うとおり、そのしなやかで鍛え抜かれた背筋はそんなやわなものではなく。男の俺がもう少し力を入れたとしても、充分に受け止められるだけの強度を誇っていた。

 

「それじゃあ徐々に強くしていくから、痛かったりしたら教えてくれ」

「わかりました」

 体重をかけながらゆっくりと、かける力を強くする。

 

「あ、それ……それくらいの強さがいいです……」

「じゃあ、これくらい?」

 言われたとおりの強さで、再び背中を押してみる。

 

「それ、気持ちいいです……」

「これくらいの強さで続けるからな」

「はい、お願いします……」

 レインの心地よさそうな返事に満足した俺は、指圧しながら徐々に手の位置を下げていく。

 

「そ、そこっ……いいです……!」

「…………」

 なんか段々、Hなことをしている気分になってきた……。気持ちがいいからこんな声が出てしまうのだろう。ここへ来てからめっきり聞くことのなくなった甘い喘ぎ声で何度も耳朶を叩かれ、そんな考えが頭に浮かんだ。

 連なるようにして、レインの柔らかな唇と、胸の感触が思い起こされる。乳首を弄ってやると、よく甘えた感じの声を上げてたっけ……。いかんいかん。集中集中。

 息子が起き上がりそうな気配を感じ、俺は邪な考えを消し去ろうと頭を振り、気持ちを切り替えマッサージを続けていく。そして手を徐々に下のほうへとやっていき、腰の辺りに差しかかった頃。

 

「ひゃっ……!」

「――っ! ごめん、痛かったか?」

 突然、小さく声を上げて身じろぎをするレイン。痛みを感じさせてしまったのかと驚いた俺は腰から手を離し、身体をずらして横からレインの顔を覗き込み尋ねた。

 

「い、いえ、その……少し、背筋がゾクっとして……くすぐったかったので……」

「そ、そっか」

 下のほうを向き恥ずかしそうに言うレインの様子に、俺は動揺した。……このままだとまずいことになりそうだから、位置を変えよう。腰をつかむとつい、バックの体位を連想しそうになるこの桃色思考な自分の脳がいやになる。

 よし、腰はゾクゾクするらしいからやめておいて……。視線を下へと移すと、レインのお尻と太ももが自然と眼に入る。次に手を伸ばすべきは、どちらだろうか。

 目の前に放り出されたふくよかな女体の、形のよいふっくらとした臀部か、それとも。そこから伸びた、二本のムッチリとした、太ももか。……悩む。

 

「……甲さん?」

「あ、ああ」

 続きを促す声をかけられ、決断する。俺はレインの豊満なヒップへ、ゆっくりと、手を伸ばしていった。……ああ。両手でわしづかみにして思いきり揉んだら、凄く気持ちがよさそうだ――レインじゃなくて、俺が。

 

「――っ!」

 レインのお尻へ伸ばした手を慌てて引っ込める。俺は頭に浮かんだド直球セクハラ行為をすぐに振り払った。ここはもちろんスルーだ。どう考えてもアウトだからな。まったく、どうかしてるぞ俺。

 でもレインみたいな美人の、こんな綺麗で大きな尻を間近にしたら、だれでも錯乱するだろう。俺は後ろ髪を引かれる思いをしつつ、視線をヒップからさらに下へと移動し、マッサージする部位の選択を継続する。太ももならセーフか?

 今は風呂上がりで、レインはスカートじゃなくてスウェットを穿いているし、直じゃなければ大丈夫だろう。そう思い、俺はレインのムチムチとした腿へと手を伸ばした。

 

「やぁっ! こ、甲さん、そこはちょっと……」

「ご、ごめん」

 びくりと、身体を震わせ制止の声をかけるレイン。どうやらセーフではなかったらしい。謝りながら俺はレインの大腿部から手を離した。だよな。自分でも腿の内側へ触れた時にアウトな気がしてたんだよな。

 だったらやめろよとも思ったが。いつの間にか俺の手は、スウェット越しでもわかるほどにムッチリとしたレインの太ももに吸い寄せられ、おのずとつかんでしまっていたのだから仕方がない。

 さっき見たマッサージのやり方だと膝上から始めるべきなのに、つかんだ部位が限りなく“足の付け根”に近く。つかむ時に人差し指が、レインの“股の間”に軽く触れてしまったのも、きっと俺のせいではない。

 

「ふー」

 ため息をつき、気を取り直してマッサージを続けることにした。お次はふくらはぎか。服の上からだし、ここは間違いなくセーフだろ。絶対の自信を持ちながらレインのふくらはぎに触れ、揉みほぐしていく。

 

「あ、気持ちいい……」

 それは、艶っぽさなどはわずかにも含んでおらず。ごく普通の、ほっとした時に出す声色だった。よかった、これなら俺も変な気分にならないだろう。……しかし、そう思ったのは、大きな間違いだった。

 

「ん……んぅ……あ……ふあぁ……ぅん……」

「…………」

 いかがわしいことは一切していないというのに。夜間の静かな二人きりの部屋に、レインの艶っぽい嬌声が反響していく。

 おいレイン! どうしてふくらはぎを揉まれてるだけなのに、そんなエロい声を出すんだよお前は! 妙な気分になっちゃうだろ!

 

「あっ……んあっ……んぅっ!」

 あとそうやって、たまにビクッってなんのやめろ! なにか変なことやっちゃったのかと思って、つられて俺もビクッってなっちゃうだろ! 喘ぎながら、時折身体をびくつかせるレイン。

 自分からやると言い出したことなので、直接言うことのできない彼女への文句を次々と心の中で叫んでいく俺。揉み始めた頃とは打って変わったレインの悩ましい喘ぎ声を聞き、ムラムラしそうになるのを必死で堪えながら、俺はレインのふくらはぎを揉みほぐしていった。

 

◇ ◇ ◇

 

「ありがとうございました、甲さん。たまには人にマッサージしてもらうのもいいものですね」

「お気に召してもらえたようでよかったよ」

 マッサージを受け終わって身体を起き上がらせると、レインはベッドの上に座った状態で俺に向けて礼を言った。ふー、やっと終わった。思ったより大変だったな。

 ホッとしながらも、視線を下げて自分のズボンの股の部分が盛り上がっていないことを確認する。……よし、俺はなんとか耐えたぞ最後まで! 両手でガッツポーズを取り、自分の成した偉業を心からほめたたえた。

 

「いつも俺ばかりしてもらっていたら悪いし、レインがよければまたやろうか?」

 レインには常日頃たくさん世話になっているため、少しでもお礼をしておきたかった。こうやって、返せる恩はどんどん返していかないとな。

 

「……甲さんが、お嫌でなければ」

 慎み深い彼女らしく、遠慮がちな返事をされる。だが上目づかいで向けられたその視線は、またしてもらいたいという、たしかな意思が含まれたもので。

 

「いやなわけないだろ、普段世話になってるんだしさ」

 それを見た俺は、微笑んでレインの頼みを快諾した。

 

「甲さん……。そうおっしゃっていただけて、嬉しいです……」

 喜んで俺へと笑いかけるレイン。そんなものを向けられると、また借りが増えてしまいそうだな。そう思ってしまうくらい、それはタダでしてもらうにはもったいないほどに麗しく――まぶしい笑顔だった。

 

「……あ、そういえば肩を揉んでなかったな。最後に肩を揉んでフィニッシュといこうじゃないか」

 俺としたことがうっかりしていた。マッサージで肩揉みをしないなんて、そんなのありえないだろう。

 

「お願いできますか? 私も肩だけは少し凝ってしまうので、揉んでいただけると助かります」

「へー、レインでも肩は凝るんだ」

 意外な事実に驚く。全身を鍛え上げていて血流のよさそうなレインでも凝ってしまう部位があるんだな。

 

「はい、その……」

 レインは急に言葉をなくし、黙り込む。

 

「その……? なんだよ、急に黙って」

「えっと、その……人より……む、胸が……少し……大きい、ので……それで凝ってしまうんです……」

 恥じらうあまり太ももの上でぎゅっと握り拳を作り、顔を伏せて赤らめ。レインは途切れ途切れの言葉で理由を説明する。

 

「胸……」

「……っ」

 ぼそっと、口から言葉がこぼれ。ひとりでに視線が、そのあまりにも豊かな双丘に向かう。謙遜して少し、とか言ってるけど。これは少しじゃなくて、かなりだぞ、お前。

 柔らかくゆったりとしたフィット感のスウェットの生地ですら高く押し上げる、とてつもない存在感・立体感を備えた“二つの巨大な球体”を凝視する。数秒の後、俺はレインに背中を向けてもらい、肩を揉んでやることにした。

 

「…………」

 たしかに、レインのおっぱいは、デカい。何度も揉んだことのある俺だからわかる。初めて持ち上げた時の、ずっしりとした重量感は正直、驚いた。おっぱいって、こんなに重くて、柔らかいのかって。

 俺はあの時その感動のまま、ついレインの胸を長時間揉み続けてしまった。あと単純にレインの喘ぎ声がエロ過ぎて、ずっと聞いていたかったのもある。

 気がついた時には視野に表示した時計が数十分も進んでいて、自分の脳内(ブレイン)チップが故障したのかと、ひどく混乱してしまったのを思い出す。

 あんなことは生まれて初めてだったから、本当に驚いたんだよな。実際、レインのおっぱいでおかしくされたのは脳内(ブレイン)チップじゃなくて、俺の脳みそ自体だったという。

 ゆくりなく、入院していた時の甘い記憶が頭に蘇る。……って、妙なことを考えるな! また変な気分になっちゃうだろ! 考え事を頭の中から消し去り、彼女の肩にかけた指へ再び力を籠める。

 

「つ、強いです、甲さんっ」

「ご、ごめん」

 どうやら力が強過ぎたらしい。失敗した。レインの指摘どおり、俺はさっきよりも肩を揉む力を弱め始めた。

 

「あっ……気持ちいい……んっ、あっ……あぁんっ……」

 どうしてこのタイミングでまた妙な声を出すんだレイン!? お前がそうやって色っぽい声を出すから俺もつい影響されちゃうだろ!?

 あと高級なシャンプーを使ってんのか知らんが、いつもすっげえいい匂いさせてんなお前! そう文句を言いたくなるのをぐっと堪え、俺は数分後、レインへの肩もみを終わらせた。

 

「なんだか、身体が軽くなったみたいです。どうやら自分で思っていたよりも全身が凝っていたみたいですね。本当にありがとうございました、甲さんっ」

 軽く肩を回しながら、笑顔で礼を告げるレイン。

 

「そう……それはよかったな……」

 逆にこっちは疲れて身体が重くなったみたいだよ……。性欲と戦い続けた心労がすべて疲労感へと変換され、どっと全身にのしかかっていく。

 またやってやるとか、さっきはつい軽い気持ちであんな安請け合いをしちまったけど、もう絶対にやってやんねえ……。俺はすぐさま前言を撤回し、こんな愚かなことは二度としないと、心の中で決心した。

 そして互いへのマッサージも終え、雑談をしばらくして消灯時間を迎えた俺たちはそれぞれのベッドで眠ることになった。布団に入り目を閉じると、先ほどのレインの身体の柔らかな感触が、今もこの両手に感じられている。

 たびたび耳に入ってきた艶めかしい喘ぎ声が、繰り返し繰り返し頭の中で響いていく。

 

『あ、気持ちいい……』

『そ、そこっ……いいです……!』

『い、いえ、その……少し、背筋がゾクっとして……くすぐったかったので……』

『やぁっ! こ、甲さん、そこは……』

『ん……んぅ……あ……ふあぁ……ぅん……』

『つ、強いです、甲さんっ』

『あっ……気持ちいい……んっ、あっ……あぁんっ……』

 ……ああ、もう無理だ。ベッドの上で三十分ほど戦い続けた俺は、自らの理性の限界を悟り部屋を出てトイレに行き、溜まりきった欲望を思う存分放出した。

 前回の処理から数日分溜まっていたこともあり、その快感は筆舌にしがたいほどに甘美で、心地よいものであった。

 

◇ ◇ ◇

 

「…………」

 とある夜、いつもどおりマッサージを俺に施した後。レインはじっと、ベッドから身体を起こした俺のことを見つめていた。

 

「なんだよ、レイン」

「……いえ、なんでもありません」

 そう言いながらも、豊かな胸の前で握られた両手を軽く握ったり閉じたりを繰り返し、その瞳は求めるような視線を俺に送り続けている。……仕方がない。

 

「お前にもやってやろうか、マッサージ」

 軽く微笑みながら、レインに提案する。俺は観念して、今日はレインの願いを叶えてやることにした。

 

「よろしいのですか?」

「ああ」

「ありがとうございます、甲さんっ」

「……っ!」

 見た瞬間、思わず胸が高鳴るほどにパッと輝く笑顔を向けられる。……これじゃあ、今日も寝不足だな。まあでも、明日は休日だから別にいいか。

 たとえ、この先に深い後悔が待っていたとしても、俺はきっと、この笑顔には勝てないんだろうな。

 

「あの……甲さん……今日は、太ももと腰もやってもらいたいです……」

 背中への指圧をしている最中、レインにそんな声をかけられた。

 

「その二箇所はくすぐったいんじゃなかったのか?」

「あの時は初めてだったので、つい反射的にそう言ってしまったんです。今思うと我慢できるくらい軽いものでしたし、少し大げさでした」

「ふーん。お前がそう言うなら、今日はやってみるか」

「はい、お願いします」

 その言葉は本当だったらしく。今日はあの時のようにくすぐったそうな声を上げることはなく、大人しくレインは俺のマッサージを受けていた。

 ……ただし、ふくらはぎを揉む時と同じくらいの喘ぎ声だけは、絶えずその場に響いている。

 

「あっ……んぁ……ふあぁっ……ぅん……」

 気持ちよさそうな声を上げ、俺のマッサージを受けるレイン。寝そべり横を向いたその表情は、快感により恍惚とした色に染まりきっている。

 

「…………」

 なあレイン。このアングルで見ると、お前のそれは完全に“アレ”なんだよ……。誘うような顔を見せられ、ピクピクと、つい顔がひくついてしまう。

 

「……レイン。できるだけ、声を抑えてくれないか? なんかこう、Hなことをしてるみたいな気になっちゃうからさ」

 さすがに前回ほど精神をすり減らしながらマッサージをする元気は今日の俺にはなく、思っていたことを正直に言うことにした。

 

「あ……はしたない声を上げて、申し訳ありませんでした……。それでは、口を手で塞いでみますね」

「ああ、そうしてくれると助かる」

 謝ると、レインは自分の手を口へと移動する。

 

「むーっ……うぅーっ……!」

「…………」

 腰を強めに指圧するたび、レインの手から漏れ聞こえる甘い喘ぎが俺の耳朶を激しく叩いていく。

 

「うぅんっ……!」

 三秒かけてゆっくり押し。

 

「むぅうーっ……」

 三秒かけて指の力を抜きながら戻す。

 

「…………」

 なんか、口を塞いでもらったせいで、却っていけないことをしている気分になってきた……。

 

「やっぱり、別に口を手で塞がなくていいぞ……。余計にHっぽく聞こえる……」

 ムラムラしそうになるのを堪え、またもや素直に理由を述べる俺。だってしょうがないだろ。もうこの前みたいになるのはごめんだからな……。

 

「は、はい。それでは……こうしてみますね」

 戸惑いながらそう言って、胸の下に置いていた俺の枕を両手で抱きしめ、顔を埋(うず)めるレイン。

 

「…………」

 ……もうさ、そんなの俺から見えるアングルも相まって、完全に喘ぎ声を我慢するバックの体勢じゃねえか。

 あと、さっきから胸の下に敷いていたせいで、既にお前の匂いが枕に移ってるから。その時点で、俺は今夜も寝不足決定だぞ。俺の負け確定だろ、これ。もう、俺の負けでいいよ。

 

「レイン……もう、普通でいいよ。普通で」

「わ、わかりました」

 レインに嬌声を上げさせないことを諦め、性欲に屈した俺は、レインの好きなようにやらせることにした。

 

「はぁ……」

 ため息をつきながら手の位置を下げ、レインのむっちりとした太ももに触れていく。

 

「んぁん……あっ、んんっ……! ふあぁあっ……ぅんっ……!」

 いいと言った途端激しく喘ぐな! やっぱりそんなに声を上げるくらいなら太ももはやらないほうがよくないか!? もう知らないからな!? 触っていいって言うのなら触りまくるぞ!

 引き締まってるのに柔らけぇなぁこの太もも! 結局、ムダな抵抗を放棄した俺は、最後まで彼女に喘がせるだけ喘がせたのであった。

 

◇ ◇ ◇

 

 そして、レインへのマッサージをすべて終え精神的に疲弊しきった俺は、レインが眠ってから“アレ”を行なうことにした。……レイン、まだ起きてそうだな。

 寝る前に済ませていたのに、布団に入って一時間もしない内にまたトイレへ行くのは不自然だろう。ゆえに、俺はこうしてベッドの上で、レインが寝静まるのを待っていた。

 横になって二十分くらい経った頃――突如として“それ”が、起きた。始まりは、静寂の中にもぞもぞと身体を動かし、布団が擦れる音に紛れて聞こえてくるかすかな“衣擦れ”の音で。次に、聞こえてきたのは。

 

「んぅっ……あっ……」

「――っ!?」

 先ほどのマッサージを除くと、情事の際にしか上げることのない、甘い声色のささやき声で。それは、俺がレインの胸を揉んでいた時にしか出していなかったはずの“嬌声そのもの”だった。

 

「ふあぁっ……うっ……ん……はあっ……あっ……んぁっ……」

「…………」

 まさか。レイン、お前。まさか。

 

「あ……ぅん……」

 うんじゃねぇえええぇえぇええぇっ! くっそぉおおぉおおおぉぉおっ! どうやら信じられないことに、レインは俺がこの場にいるにもかかわらず。よりにもよって、同じベッドの上段で、自慰行為を始めたらしい。

 普段清廉潔白でお嬢様なルームメイトが、このような常軌を逸した行動を起こしたことに驚愕するとともに、俺は大変な憤りを感じていた。

 おいおい! よりにもよって、このタイミングでかよ! どうすんだよこれ!? マッサージの時からずっと我慢してたから、もう俺限界だぞ!? 今夜抜かないで寝るとか無理だろ!

 レインが就寝するのを今か今かと待ち続けていた俺の息子は、とっくに臨戦態勢を整え。布団に入った時点からズボンの下腹部を持ち上げて、俺を急かし続けていた。

 

『動物さんたちの触れ合いを見ると、心が癒されます……』

 ふと、以前レインが和やかな表情を浮かべ、動物番組に対してそんなコメントをしていたことを思い出す。――これだ。極まった性欲で狂い、妙に冴えた俺の頭に、とあるひとつの天啓を得た。

 

「んっ……んあっ……う、んぅ……あはあっ……」

 上から強制的に聞かされる嬌声をできるだけ無視する。心を空っぽにするため、前にレインから勧められた動物動画を網膜透写させて眺めることにした。

 動画の再生音量を上げればレインの声をかき消し、なんならこのまま眠れるのだろう。だが俺はどうしても、そんなことをする気が起きなかった。……据え膳食わぬは男の恥、じゃないけどさ。

 せっかく勝手に向こうがあんなに喘いでくれているのだから、できるだけ聞いて脳内のオカズフォルダに保存するのが男ってもんだろ。女の子がオナニーしている時の声を生で聞く機会なんて、そう訪れるものではない。

 ああ、それにしてもたしかに癒されるなこれ……。限界まで屹立した男性自身から意識を背け、レインの喘ぎ声をかすかに耳に入れつつ、AV(アニマルビデオ)を眺める。

 今再生しているのはうさぎが横になり、熟睡する様子が撮影されたほのぼのとしたものだった。なんか鼻の所がぴくぴくしていて可愛いな、こいつ。

 でも、全体的にふっくらしていて、なんか――焼いて食べたら美味そうだな。近頃の食糧事情のせいで肉を食べる機会が少なく、俺は肉というものに、飢えていた。

 うさぎが肉に見えてきたせいで、なんか肉を食いたくなってきた……。この前レインに駅弁を買ってきてもらった時、遠慮しないですき焼き弁当のほうを食ってればよかったな。

 ただ音が鳴るだけの弁当なのに、レインがあまりにも楽しそうにしていてさ。取り上げるのも可哀そうだと思って、つい譲っちまったけど、あれ凄くいい匂いしてたよな……。

 タケノコ弁当もいい匂いがしていて美味かったけど、あっちのほうがもっと美味かったんだろうな……。今思うと、レインと半分に分け合えばよかった……。

 あいつなら絶対に断らないだろうし、また駅弁を買ってくる機会があったら頼んでみようかな……。こんな時間だというのに、以前レインが買ってきた弁当のことを思い出し、口の中に涎が溜まり始める俺。

 ――いつの間にか、最初とは違う目的で動物動画を眺める自分が、そこにいた。そういえば、野生じゃないうさぎって一年中発情期なんだよな。こんな時に見ているせいで、うさぎに関する豆知識が頭に浮かんでしまう。

 そんなことを考えていたせいだろうか。――上から突如として、妙な音が聞こえてきた。くちっ、くちっ。……何の音だ? 聞き慣れない音が、ベッドの上段から、鳴っている。

 こ、これは、まさか……! 謎の音の正体に、俺はすぐに勘づくと同時に、愕然とした。

 

「あっ、あん……んぁっ……あ……あ、はう……んっ、くぅ……!」

 艶めかしい喘ぎ声に合わせて、その淫らな水音が、リズミカルに辺りへと響いていく。お前さあ! 今膣内(なか)に指入れ始めただろ!? ああもうっ!

 俺は意地でも負けないからな! 肉の動画を見て、お前の誘惑に勝ってみせる! 自慰の激しさを増したルームメイトへ対抗するために、俺はひとり固く決意をした。

 こうして、性欲という三大欲求を別の三大欲求(食欲)でごまかそうと肉動画を見ていると、映像の中の二匹の動物がおかしな動きをし始める。なんだ?

 大きい方の個体が小さい個体の腰をつかんで、後ろからなんかやってるな。その動物は見るからに妙な、へこへこと、小刻みに腰を繰り返し動かしていた。

 ……って、おい! これって交尾じゃねえか! いきなりおっ始めるなよ! せっかく意識を逸らそうと思ってAV(アニマルビデオ)見てたのに、これじゃあAV(アダルトビデオ)になっちゃうだろ!

 憤った俺は視聴中の動画の再生をやめて、他の動画を再生することにした。次は馬にするか。……前に食べた馬刺し、美味かったな。以前食べた馬刺しの味を思い出して舌なめずりをしながら、視野透写した動画の検索欄に『馬 動画』と入力していく。

 そういえば、病院でレインが流した動物動画を一緒に見てた時、突然早送りされたことがあったな。動画リストをスクロールしながら、そんなことが頭によぎった。

 よく見てなかったからあの時は気づかなかったけど、今思えばあれって、動物の交尾の映像が流れていたからなんだろうな。映像を操作するレインの顔が、真っ赤になっていたことが記憶に蘇った。

 自分が流した動画で恥ずかしくなるなんて、ホント可愛いやつだよな、お前って。くすりと笑いながら、俺は視野の中で親子の馬がじゃれ合う動画を眺め、馬刺しの味を思い出し続けた。

 

◇ ◇ ◇

 

「甲さぁんっ……!」

 えっ!? 俺っ!? ぼーっと馬動画を視聴して馬刺しの味を思い返していると、突如として自分の名前を呼ばれ、驚きながら口に溜まった涎を飲み込んだ。

 

「んぐっ……!?」

 あっぶね! 自分の涎でむせるかと思ったぞ! おいおい! うそだろ!? あの頃は遠慮して俺の名前を呼んでいたかもしれないけどさ、こういう時くらい好きだったやつの名前を呼んでやれよ!

 ……もしかしてレイン、俺の名前を言うのがクセになってるのか? まあでも、俺も空のことをオカズにできなくなって、最近はレインのことをオカズにしてるし。人のことは言えないな……。

 改めて、俺たちが似た者同士であることを憐れに思う。自分と違って、レインが妄想している相手は、自分ではないというのに。

 

「甲さん……甲さぁん……」

「……っ」

 さすがにあんな風に名前を呼ばれると、自分がオカズにされてるみたいでソワソワするな……。肉動画を見て肉の味を思い出したことにより少し落ち着いてきていたモノが、レインの呼びかけに反応し、再び膨張し始める。

 たしかに俺の名前を呼んでるけど、呼んでるのはお前じゃねえ! そう心の中でツッコむが、そんなことで勃起をやめる俺の息子ではなかった。

 

「あっ……甲さん、そんな所……ダメですっ……!」

 そんな所って、どんな所だよっ!?

 

「ふぁああっ……そ、そこ、好きです……もっと、してください……!」

 お前の妄想の中で俺はいったいなにをしてるんだ!? 畜生、気になる……! ……あ、レインが呼んでるのは俺じゃなくて好きだったやつじゃねえか。もうさあ! 紛らわしいから俺の名前呼ぶなよ!

 

「甲さん……ぅあっ……甲さぁん……ひっ……うぅっ……」

 自慰を行ないつつ、泣きじゃくるような声で、繰り返し俺を呼び続けるレイン。その間も指の抽出は続けているらしく、絶え間なく愛液の鳴らす音が聞こえていく。

 

「あんっ……あっ……甲さぁん……好き……大好き、ですぅ……んぁ……ぅっ……愛して、ます……」

 涙を流す時と同じ、切ない声で何度も愛の言葉をささやかれ、俺の息子はすっかり臨戦態勢(フル勃起)に戻ってしまっていた。くっそぉ……あんな甘えた声で名前を呼ぶとか卑怯だろ……。

 股間を押さえながら耐える俺を、まるで煽るように喘ぎ声を上げ続けるレインに腹が立ってくる。っていうかなっげーな! いつまでやってんだ!? いい加減指がふやけないか!?

 よく知らないけど、女の子のオナニーってこんなに長いのかよ! 視野に表示された時計を確認すると、レインが自慰を始めてから二十分はゆうに超えていた。

 こんなに耐えているのにまだ終わらないのか……。まったく、どうしてこんなことになったんだ……。さっきからモノがはちきれんばかりにギンギンになった状態であるというのに、未だに射精できないことに絶望し、深いため息をつく。

 

『んっ……ぅん……んむぅ……うぅーっ!』

 ――俺のせいか。不意に、病院での記憶が蘇る。あの頃は毎晩、三十分以上かけてレインの胸を揉みしだきキスをし、挙句の果てには絶頂に導いてしまっていたことに気づく。

 俺があんなに長いこと揉んでたから、あんだけ長くやらないとダメな身体になっちまったってことか……。こうして、俺は自分が行なったことの罪深さを、改めて理解したのであった。

 

◇ ◇ ◇

 

「あぁんっ……甲さん……甲さぁん……好きぃっ……!」

 ようやくラストスパートに入ったのだろうか。嬌声の大きさは控えめなままを保ちつつ、その激しさを増していくレイン。水音があまり聞こえなくなったし、指を抜いてクリでも弄ってんのかな。

 ふと、そんな考えに頭を支配され、先ほどからギリギリの状態でバランスを保っていた俺の思考は――堰(せき)を切ったように一気にピンク一色に変化していった。

 陰核を擦りながら気持ちよさそうに自らの胸を揉み乳首をつまむレインの姿が、まるで視野透写したかの如く、ありありと目に浮かんでいく。

 

「……っ!」

 ああくそっ! もう我慢するの無理! ここまで耐えただけでも俺はえらい! よくやった! 悪いのはレインだ! とうとう我慢の限界に達した俺は、レインの挑発に屈してしまったのであった。

 音を立てないよう、枕元に置いておいたボックスティッシュを、布団の中へと静かに引き入れる。声や吐息で、起きていることに気づかれてしまわぬよう、そっと布団を頭まで被った後、スウェットパンツを膝上まで引き下ろす。

 ……随分待たせちまってごめん。今、出してやるからな。そして俺は、長時間耐え続け涙を流す息子を前開きから出し、ようやく慰めてやることにした。

 

「うっ……」

 そっと握っただけだというのに、硬くなったモノは触れただけで暴発してしまいそうなほどに、感度が高まっていた。どうせやるなら、レインと一緒にイってみるか。

 そんなことを考え、ゆっくりと自分の男性自身をしごき始める。

 

「んぁあっ……気持ちいいっ……もっと……してください……!」

「はぁ……はあっ……」

 その独り言に合わせ、バックの体勢でレインを抱く想像をする。マッサージをする時に眺めたあの光景。レインのすらりとした脚線美、豊満な臀部を頭に思い描いていく。

 俺は妄想の中で、レインの柔らかそうなあの大きな尻をつかみ、思いきり後ろから突いていく。

 

「あっ……甲さん……んあぅっ……! そんな、激しい……ですぅ……!」

「……っ……くっ……はあっ……はぁ……」

 それは、偶然の一致だというのに――喘ぎ声のせいで、まるで本当にレインを抱いているかのような錯覚に陥り、興奮でモノを擦る手の動きが速まっていく。ああだめだ。気持ち良過ぎる……!

 

「も、もうだめっ……私、とんで……イっちゃい、ますっ……!」

「あっ……うっ……くはっ……!」

 しごくたびに、今までオナニーで体感したことのない強い快感が走り、次第にモノがドクドクと脈打ち始める。やっと訪れた射精の予感に、俺の男性自身は限界を超えて怒張していく。

 

「あっ……イ、イく……! イくぅ……甲さぁん……愛して、ますぅ……んぁっ……イっちゃ……あぁーっ……!」

「くぅうっ……!」

 左手でティッシュを数枚取りながら、最後に激しく右手で息子を擦る。そしてレインがイくのに合わせ、俺はティッシュの中にありったけの迸りを解き放った。

 数度モノが跳ね、溜まっていた精液がドクドクとティッシュに出され染みわたっていく。

 

「はあっ……はぁ……はあっ……」

 長い時間我慢し続けた俺にとって、ようやくもたらされたそれは。今まで一度も経験したことがないほどの快感を与えてくれていた。

 

「……っ……んっ……はっ……ぁっ……」

 上段のベッドで俺と同様に達したのだろう。絶頂の直後で荒く息をつきながらわずかに喘ぐその声色は、とてつもなく甘く、艶っぽいもので。

 がくがくと、レインが起こした身体の痙攣がベッドに伝わり、かすかな振動に変化してこちらへと伝わってくる。それら二つの事柄が、レインの達した高みというものを、如実に物語っていた。

 

「はぁ……はあっ……きもち……よかったぁ……」

 あまりの深い快感に、つい口から出てしまったのだろう。清楚な彼女が口にしたとは思えない、淫らな色に染まった言の葉が、静かに部屋へと響いていく。

 

「はあ……はぁ……」

 ――まったくもって、同感だ。思わず同じことを言いそうになるのを、ぐっと耐えて。ようやく終えた射精により清々しい気持ちになり、心の中で彼女へとそんなコメントを返す俺なのであった。

 

◇ ◇ ◇

 

「甲さん、起きてください。もう十時です、休みだからって寝過ぎですよ」

 長い夜が明けて朝になり、部屋の外では野鳥の鳴き声が木霊している。俺を起こそうと、レインが声をかけながら布団の上から俺の身体を揺らす。

 暗闇に包まれていた部屋は、開かれたブラインドから差し込む日光と、照明の人工的な強い光で照らされている。それらのまばゆい光は俺の目蓋を貫通し、レインと同様に俺の眠りを妨げていた。

 

「まだ寝かせてくれよ……昨日はあまり寝られなかったんだ……」

 結局俺はレインが寝静まった後に部屋を抜け出してトイレへ行き、一度では飽き足りず、数度に渡り自慰を行なってしまった。寝不足になるからあんなに何度もするつもりはなかったというのに。

 俺は自分の若さと、レインの喘ぎ声が心底恨めしかった。

 

「いったいどうなさったのですか? 昨日は遅い時間に眠られたわけではないというのに」

「…………」

 ベッドの前で両ひざに手をついて前かがみになった状態で、レインは俺を覗き込んでいる。昨晩、あんな淫らなことをしていた娘と同一人物とは到底思うことのできない、色欲というものをまったくといって感じさせることのない、清らかで無垢な表情を向けるお嬢様。

 俺を刺激するように眼前にぶら下げられた豊かな“それ”を、しかめっ面で一瞥してから、レインの顔をじっと見つめる。――お前にマッサージをしたせいで、寝不足になったんだよ。

 昨日はお前、自分でそれを揉みまくってたんだろうな、うらやましい……。などと言うわけにもいかず。

 

「いいだろ。今日は休日なんだから、もう少し寝かせてくれよ……」

 適当にごまかして、俺は二度寝を決め込むことにした。

 

「甲さんっ。だめですよ、いいかげんに起きてください!」

 レインは俺を起こすために布団を軽く引っ張り始め、どうやら強硬手段を取ることにしたらしい。

 

「……っ」

 レインのせいであんなことになったのを思い出し、イラっとする。

 

「……自分だって、寝不足のくせに」

「えっ?」

 布団を引っ張り返し、ボソっとした声で言い返す。

 

「だめですっ! これ以上寝てはいけません! 起きてください!」

「おわっ!」

 完全に力技に出たレインは、両手を使って俺の布団を勢いよく引きはがした。

 

「もう、甲さんったら……きゃっ!」

「んっ?」

 布団を取り上げた途端、甲高い叫び声を上げるレイン。

 

「あ、あの……その……」

 突然しどろもどろになりながら顔を赤らめ、俺の身体の“ある一点”を見つめている。視線の先を追ってみると、その先にあったのは――朝の生理現象により、高く盛り上がった俺の“下腹部”だった。

 ああ、レインって、朝立ちを見るのは初めてなんだっけ? 寝起きのおぼろげな頭で、そんなことを考える。処女ではないというのに、相変わらず初心(ウブ)なレインのことを微笑ましく感じ、自然と口元が緩んでいた。

 

「布団、返してもらうからな」

「あっ……」

 隙だらけのレインから布団を取り返し、再び布団にくるまっていく。

 

「こ、甲さんっ……。だめですっ、起きてください!」

「いやだー! 俺はまだ寝るぞー!」

 

 ――俺にその自覚がないとはいえ、彼女とは既に一線を越えていて。この前まではあんなことをしていた仲であったという事実が、まるでウソみたいに。こうして朝から、頑固な彼女と布団の引っ張り合いなんてマネをして、俺たちは清く健全なルームメイトの関係を続けていくのであった。

 

第五章『試練のマッサージ』

終




●あとがき
「あんなことをしていて健全とは、いったい……?」最後の文を打ち終わった瞬間に、そんなことを思いました……。
「甲さんが健全って言ったら健全なんだよ!」と無理やり自分を納得させてなんとか書き上げることが出来ました……。
 今回は非R18にする予定だったのに、R18にしてしまってすいませんでした……。
 この前まで非R18だったのに、途中からシナリオが狂気に満ちたものに変化し、挙句の果てにはWひとりえっちが追加されてR18になってしまいました……。
 肉動画うんぬんの辺りは本当に狂ってるなと思いながらも、書く手が止まらず結果としてこの前の予定票から約1万2000文字も加算するとは……。
 さすがに次回は本当に短い話でハーメルンに投稿できるギリギリの量なので、こうはならないと思います……。
 次回は今度こそ非R18ARRに投稿するのでよろしくお願いします……。
 今回から始まった性欲三部作一話目がこれです……。
 後の二つは真面目なのでどうかご安心を……。
 あと、一番下にアンケートを載せたので、答えていただけると嬉しいです!

 ●お知らせ
Wavebox▼
https://wavebox.me/wave/3bk8eq759okir5ci/

匿名でメッセージを送れるWaveboxを始めました。
感想を送ってもらえたら凄く嬉しいです。
R18回の感想もバンバン受け付けております!
えっちだって言ってもらえたら喜びます!
私は抜けたと言われたら喜ぶ派です!
まあ、まだ合体する回が無いのに抜けるも何もないんですけど……。
でも傭兵時代編入ったらほぼ毎回合体するんでよろしくお願いいたします!
ただし千夏ルートのプレイ途中(ノーマル以外はクリア済み)なのに小説を書いているので、ネタバレコメントはどうかご遠慮ください…。
早く原作クリアしなくちゃ……。

小説の執筆状況は随時ブルースカイとミスキーにて呟いています。
ブルースカイ▼
https://bsky.app/profile/noamu.bsky.social
ミスキー▼
https://misskey.io/@noamu

以下、今後の連載予定です

⑦【シリアス】『呼び起こされる記憶』
レイン・甲さん視点。シリアスラッキースケベ回
⑧【R18】『彼の匂いと、私の匂い』
レイン視点。シリアスひとりえっち回
⑨【日常】『貴方と過ごす、特別な一日』
レイン視点。デート回
⑩【コメディ】『歴代最高の』
甲さん視点。ラッキースケベ射撃練習回
⑪【コメディ】ミカンとロボの話
レイン・甲さん視点。

とりあえず、11話まではこの順番になりそうです……。

えっちなお話でどれか読みたいと思うものはありますか?ちなみにもちろん全て甲レインで、『記憶を失くした俺と、彼女の初体験』(愛と快楽の会議で最後までする話)が一番書けています。一番内容が薄いのは初日にHする話です…。

  • 愛と快楽の会議で最後までする話
  • 枕代わりに使ってと言われて甲を眠姦する話
  • 嫌がるレインを襲って最後までしちゃう話
  • 愛と快楽の会議でHしないと出られない部屋
  • レインルートの初日でレインとHする話
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