シオンの朝は早い。
正確には長く眠れない後天的な体質のせいだろうか。
大きく呼吸を乱し、心臓がバクバクと脈動している。
それはシオンが常日頃からの発情を耐えれば耐えるほど高頻度で淫らな夢に苛まれてしまうせいだった。
シオンにとって悪夢でしかないその夢には二人の少女が登場する。
一人はシオン自身。そして、もう一人は妹のユノだった。
二人が淫魔たちに不眠不休で責め嬲られる淫夢。
夢の中で二人は何度となく犯され、何度も絶頂させられていた。
そして、開発され肉体の隅々までほぐされたシオンは、最愛の妹の亡骸を目にすることさえできずに逃げ出す。それが繰り返されるだけの夢。
陰鬱とした気持ちで目を覚ましたシオンはまず寝汗で濡れた服を脱いだ。
「……はぁ」
思わず漏れ出る重い溜息。
悪夢のせいで寝起きに発汗の多い彼女の日課ではあるのだが、この瞬間ばかりは憂鬱だった。
個室に備え付けられている魔石を利用したシャワルームで寝汗を洗い流す。
「ん……っ、く」
シャワーが確かな質量を持ってシオンの肌に触れた瞬間、ぶるりと大きくグラマラスな身体が痙攣した。
全身が跳ね上がり、彼女は媚びを売るような甘ったるい声で呻いてしまう。
水滴が肌を伝うだけで、それら全てが背筋を突き抜けるような強烈な快感へと変換されてしまうからだ。
シャワーを浴びる行為だけで何度も恥知らずな痙攣を繰り返し、口元を抑えていなければ容易くその喉は淫らな喘ぎ声を奏でてしまう。
性器を洗う際は、細心の注意を払わなければ理性が消し飛ぶような快楽が、脳裏を白く染め上げた。
「…………」
彼女は何度か痙攣すると弱い水流の刺激に慣れるまでジッと動くことなく耐え続ける。
少しずつ身体が刺激を受け入れたのを確認すると、シオンはようやく身体を洗い始めた。
しかし、その動きはどこまでも緩慢で、目を閉じ歯を食いしばっている様子から必死に絶頂を堪えているのが見て取れる。
快楽の頂に到達しないことに細心の注意を払いながらようやく汗を流した。
ただ一か所、醜く陥没した乳首を除いてだ。
シオンの強靭な意思の力でもどうにもできない最弱の部位。それが乳首だった。
乳輪まではなんとか洗える。だが彼女のコンプレックスは内側に埋もれてしまっていて顔を出していない。
それはつまりシオン自身の手でこの我儘な性質を持った引き籠り乳首をほじくり返さなければ触れることができないのだ。
思いつく方法は陥没部分へ指先を挿入し乳首を摘まんで引っ張り出す、または刺激を与えて勃起させるかのどちらかだ。
だがそんなことをすればどうなるか?
想像するだけでも恐ろしいこの世の物とは思えないような激悦が彼女を貫くことになるだろう。
そこを念入りに開発され屈伏させられてきたシオンにとって、乳首はある種のトラウマだ。触ることを躊躇うのも無理はない。
そのため彼女は身悶えながらも肉に埋もれたその部位を、上から軽く水で洗い流す程度に留めるしかなかった。
気付けば呼吸は荒く乱れてしまっている。
自らの手で全身を愛撫するというオナニーのような洗体を終えると、続いて歪に変形してしまっているクリトリスにも手を伸ばす。
シオンのクリトリスはよほど念入りに嬲られてきたことを伺わせる屈辱的な形状をしていて、芯はやや長めで小指の先ほどにまで肥大化していた。
まるで真っ赤に熟成した果肉のような見た目。しかもそれを包み込む包皮まで肉厚という有様だった。
おそらく皮を巻き込みながらの被虐的なクリコキを繰り返されてきたのだろう。
先端部分だけ軽く顔を出しているクリトリスの包皮は無様にも弛んでしまっていた。
「んひっ!? くっ……ひぃぃ!」
靴下を脱がせるように軽く指先で剥いた瞬間、シオンは喘ぎ声を抑えることができなかった。
クリ包皮を剥いて甘い被虐感に悶えながら汚れの溜まりやすい敏感な皮の隙間を洗う。クリトリスの芯を決して刺激しないように……恐る恐る繊細なガラス細工に触れるような指使いだ。
包皮が弛みすぎているため上手く剝き上げることができず、もたつけば時折引っ掛かるような甘い疼きがクリトリスから腰奥を貫いた。
腰を浮かせて、ようやく根元までクリ包皮を剥き上げる。
するとそれだけでシオンは女体の奥から白い塊のような愛液をこぽっ、と噴き出した。
色は純白。薄めの白などではなく真っ白に染まった特濃本気汁。
それはシオンが本気で興奮しているという彼女の浅ましさの証でもあった。
足先は完全に癖になっているのか指の先までぴんっと伸ばしきる無様な感じ方。
全身を駆け巡る快感に更なる嬌声を上げそうになるのを必死に抑え込む。
たっぷりと時間をかけて慎重に全身を洗うと、なんとかシオンは息も絶え絶えにバスタオル一枚を巻いて浴室から出るのだった。
「ハァ、ハァ……」
息を乱しながら大きい乳輪と陥没内部の乳首を保護するニップレスを貼り付けた。
これがなければふとした途端に勃起してしまい身動きさえ取れなくなってしまう。
そして、ニップレスを貼り終えると下着に手を伸ばした。
服を着るだけで全身を愛撫されているかのような感覚に陥ってしまう。
のんびりしていればいつまで経っても終わらない。
一思いにと彼女は一気に私服に袖を通した。
「~~~~っ!!」
鋭い電流のような快感。服に愛撫されるという本来あり得ない異常状態。
十秒、二十秒と震えながら絶頂を堪えるシオン。唇を噛みしめ手のひらから血色が抜けるほど力を込めてアクメの波をやり過ごす。
へこへこと揺れ動く腰。疼く乳頭。湿る股座に勃起陰核。
それらを必死に意識から外すのは並大抵のことではなかった。
本来なら淫魔の調教を受けた人間は、そのほどんとが快楽を求めるだけのオナニー廃人になる。
こうして一人で日常を送れているだけで奇跡のようなものなのだ。
しかし、そう自分を納得させても、この毎朝のルーティーンを繰り返すシオンの屈辱が晴れることはない。
シオンが目を覚まして汗を洗い流し着替えるだけで既に1時間以上が経過しているのであった。
◇ ◇ ◇
「おはようございます、シオンさん! 昨晩はよく眠れましたか?」
「マインさん、おはようございます。とてもよく眠れましたよ」
実際には夢見が最悪で浅い眠りだったわけだが、わざわざ心配をかけることでもないだろうと口にはしない。
宿屋の看板娘であるマインにそう返したシオンは、空いている席に着き簡単な朝食を注文した。
「今日も依頼を受けられるんですか?」
「いえ、今日はお休みですね」
武器と魔道具の調整のためだ。
体調は万全なので依頼は連日でも受けたいが、これらの装備品は命綱なので外せない用事だった。
「あ、そうなんですか。よかった~、シオンさんいっつもすぐに依頼を終わらせてるみたいなので、どこかで無理してるんじゃないかって思ってて」
明るく陽だまりのような表情で接客をするマインは人気者だった。
分け隔てなく笑顔を振りまく彼女は、看板娘に恥じない愛くるしさで皆を癒している。
しかし、彼女はシオンには特に懐いてくれていると思われた。
よほど鈍くなければ気付くほどにはマインとシオンの距離感は近い。
彼女がシオンに話しかける頻度は多く、何も知らなければ二人は実の姉妹のようだ。
(ふふっ、嬉しいですね)
シオンはそんなマインの姿に妹との思い出を幻視した。
ユノが生きていれば同い年くらいだっただろうか、と穏やかな表情でマインを見つめる。
「? どうかしました?」
「いえ、マインさんはいい人だなと思って」
「なんですかそれ」
と言いつつマインは憧れのシオンに褒められて満更でもない様子だ。
ふわりとスカートを翻し、慣れた手つきで食事を運んでいる。
(指輪は今日も問題ないみたいですね……)
と、シオンは自身の指に嵌められた魔道具を一瞥した。
シオンがこうして何事もないように振舞えているのは、単に彼女が我慢強いからというだけではなかった。
右の中指に煌めく鈍色の指輪。
これは持ち主の魔力を介して発動する『不感の指輪』だ。
効果は強力で先ほどまで着替えるだけで苦しんでいたシオンの身体の感度を常人の数倍程度にまで抑えることが可能だった。
魔力を消費するため、常に装備し続けることはできない上に、高額な商品を扱う魔道具店でも珍しい代物だが、シオンの需要にはピッタリの装備だ。
これがあるおかげでシオンは多少感じやすい程度に快感を抑えている。
とはいえ日常でも戦闘でもこれが生命線となるため、常用は厳禁だった。いざという時に魔力が足りず役に立たないでは笑い話にもならない。
指輪をつけていて尚、シオンの身体の感度は常人を遥かに上回る。
しかも、発散しなければ欲望が限界を見せることなく膨れ上がっていく。
シオンもこのままでは不味いと思い、いざという時のために可能な限りこれに頼らずに生活を送ろうと苦慮しているが、まだ自身の浅ましい欲望を制御できていないのが現状だった。