男同士のオリキャラの話になりますので、女っ気がないので少し不安ですね。
ゴールデンウィーク終盤のお供にでもしてもらえたら幸いです。
アスカたちとともに再会した帆波や波瑠加と昼休みを過ごしたあと、教室へ戻る途中に蓮夜はとある人物との予想だにしない再会を経ていた。
ひとまずその場では、蓮夜もそれ以上は何も言わず、教室に戻って午後の授業を受けた。
「──玖珂、少しいいか」
そして、無事に転校初日の授業を終えた蓮夜は、表向きの呼びかたで例の男子生徒を呼び出していた。
「ああ、もちろんいいぜ」
男子生徒──蓮夜に玖珂と呼ばれた彼、颯馬は、気安く応じた。
「アスカ、エルフィは悪いが少し待っていてくれ」
「ええ、わかったわ」
「うん。早く戻ってきてね、レンヤ」
「ああ」
アスカとエルファリアに見送られ、ふたりが帆波や波瑠加と一緒に談笑しているのを一瞥したあと、蓮夜は颯馬とともに教室をあとにするのだった。
§
蓮夜は昼間にアスカたちと昼食を食べた屋上に颯馬とともに移動した。
落下防止用のフェンスを背に立つ颯馬と向かい合い、蓮夜は口を開く。
「──まさか、おまえがこの学園にいるなんてな、颯馬」
口火を切った蓮夜に颯馬は、口元に笑みを浮かべた。
「ああ、言ってなかったからな。知ってんだろ? 俺はオマエの協力者だがメフィストの旦那の眷属だからな。いちいちオマエさんに許可やら何やらを求めたりしねぇってよ」
そう、この男──玖珂颯馬は、あのメフィスト・フェレスの眷属のひとりだ。
もとは出自不明な名もなき孤児の混血悪魔であり、メフィストがたまさか面倒を見た孤児のひとりに過ぎなかったが、その環境に身を置いた颯馬は実力を開花させていった。
混血悪魔出身ながら颯馬は、上級悪魔すら上回る強さを身につけたのだ。
多くの上級悪魔の上役が懸念し嫌う下級悪魔の台頭だ。
まして混血ならば誰かしらの落胤か、断絶した家の子孫ということになる。
当然、良からぬことを企む輩も出てきた。
誰かしらの貴族の落胤だというのならば、醜聞になる前に消そうと考える者。
元七十二柱の子孫だというのならば、人間と交わってまで生き延びた惰弱な末裔など不要と考える者。
そういった者たちが上層部に少なからずいたのだ。
仮にも断絶した御家の子孫ならば保護を指示されているはずなのにだ。
だが、これが実情でもあった。
現魔王政府は、四大魔王の指示で人間界にいるであろう元七十二柱の子孫の保護を掲げているが、保護を受けてもなかなかに厳しい現実が待っている。
それはあの大悪魔メフィスト・フェレスの実子である蓮夜ですらも、命を狙われたことがあるほどに根深いものだ。
さらにすでに断絶したことで継承者がなく、浮いた土地や富などをいまさら混血などには譲りたくないという考えもあった。
そういったもろもろの裏事情があり、颯馬は命を狙われることになったのだ。
しかし、颯馬は強く、差し向けられる刺客をも撃退していたのだが、それが余計におもしろくない貴族悪魔たちによって状況を悪化させていった。
そこでメフィストが眷属にと誘いをかけ、恩義もあった颯馬は自分の周囲を守るためにも眷属悪魔へと転生した。
『番外の悪魔』にして大悪魔たるメフィスト・フェレスの眷属となり、手出しができなくなったことで事態は終息を見た。
現魔王政府と距離を置いているとはいえ、最上級も最上級の悪魔たるメフィストの下僕になったというのも上役たちの体裁が保てたのだろう。
そんな颯馬と蓮夜が知り合いなのは、メフィストからの紹介があったからだった。
歳も同じの同性ということで蓮夜にも颯馬にもいい刺激になると考え、メフィストが引き合わせたのだ。
最初は、お互いに鼻持ちならないと考え、馬が合わなそうだったが、対抗して鍛えたことで実力が引き上げ合ったことは間違いない。
だが、それでもなお認められない輩が放った刺客に颯馬が襲われた際、一緒にいた蓮夜も巻き込まれてしまう。
己独りで戦おうとした颯馬は、蓮夜に言葉で、魔力で威嚇して遠ざけようとしたが蓮夜は聞き入れなかった。
数年前に自分も襲われ、母親を酷い目に遭わせてしまった。
だからここで逃げるのは、そこから何も成長していないということになる。
クー・フーリンに師事したのは、こういった理不尽に今度こそは負けないためだったのだ。
言うことを聞かずに戦いだす蓮夜に颯馬は、悪態をつきながらもともに戦うことにした。
恩義あるメフィストの実の息子を死なせるわけにはいかないのだ。
ともに戦った蓮夜と滝 颯馬は、不思議と息が合った。
一緒に修業することもあったため、お互いの呼吸が把握できていたのだ。
競い合うように戦い、見事に退けることができた蓮夜と颯馬は以来、修羅場をともに超えた者同士の絆のようなものをなんとなく感じるようになった。
それは友情と呼べるようなたしかなものだが、蓮夜も颯馬も決してそれを口にすることはしなかった。
口にしたら陳腐で、なんとなくお互いの性格から逆に縁が遠ざかるか切れるかしそうだとわかるからだ。
「ああ、そうだな。だが、ここにいる理由くらいは教えてもらいたいものだ」
「ああ、そいつはな……ま、これを渡せばなんとなくわかんだろ」
蓮夜の言葉に颯馬は、懐から取り出した何かを投げて寄越した。
指で挟むようにして危なげなく蓮夜が受け取ったのは、一枚のカードだった。
これは『兵士』の特性であるプロモーション、その承認の代理人を担うためのカードだ。
このカードを所持した者は、他の『王』の兵士のプロモーションに代理で認可を与えることが可能になる。
カードに記されたのは、メフィスト・フェレスの代理として『兵士』である颯馬にプロモーションの許可を与えられることを示す魔方陣だ。
「これは……」
「ま、つまりそういうこったな。メフィストの旦那は、息子のオマエが心配なのさ。ああ、別に信じてないとかじゃないぞ? オマエの実力とは関係なくってやつだ。親だからな」
「それはわかっているがな。まったく、父さんは相変わらずだ」
互いに肩を竦める蓮夜と颯馬は、あの妖しい魅力のある大悪魔が意外に手回しが細かいことを知っていた。
「ならあらためて……これからよろしくな、颯馬」
「ああ。日本にいるあいだは、せいぜい面倒を見てやるよ、蓮夜」
颯馬はそう言って皮肉げに笑う。
「ま、『王』としてせいぜい上手い指示をくれよ? あんま腑抜けてっと見限るからな」
「ああ。『王』としても、協力者としても、しっかりと使いこなしてやるさ」
お互いに友人、友情を口にはしないがそう言い合って微笑を浮かべる蓮夜と颯馬は、端から見たら親友そのものだった。
そのことをお互いに感じ、思っているのだがやはり口に出したりはしなかった。
どちらもいまさら気恥ずかしいというのもあるのだ。
「だが、あんま騒ぎ起こしてくれるなよ? 俺がメフィストの旦那や、ウィズに文句言われんだからな。ま、オマエたち眷属に言っても無駄かねぇ」
「別に好きで騒ぎを起こすわけじゃないぞ? ただ、考えなしな輩が俺や大切なものを巻き込むんだ」
遠慮なく気軽に言葉を交わすふたりには、たしかに友情を感じられた。
「怖い怖い。となると目下は、ここを根城にしてる上級悪魔さまかねぇ」
と、颯馬は敬意をまったく感じられない声音でそう言った。
過去のもろもろから颯馬は、蓮夜やメフィストのような一部の上級悪魔を除けば大半の貴族悪魔を好かないのだ。
「実際おまえから見てどうなんだ? 俺たちより先にこの街にいたのなら、わかっていることもあるんだろう?」
「ああ……ありゃあだめだな。典型的な上級悪魔さまってやつだ。自分を正しいと信じきっているからな、間違ってると思いもしないで手を選ぶ」
蓮夜の問いに颯馬は辛辣な評価を下した。
「……そんなにか?」
「ああ。兄の魔王サーゼクスや、実家の父親とかに甘やかされたんだろうが、問題はそれがいまも続いてるってこったな。結果成功を収めちまって、それを自分の力だと思ってんだからどっちも始末が悪い。何事も家族経営ってのは歪なもんだ。ある意味では哀れなもんさ」
颯馬が肩を竦めて皮肉を言う。
颯馬は何かと皮肉めいたところがあるが、ここまでこき下ろすのは相当だ。
「そこまでか……」
「ああ。あれだな、仮にこの街にとんでもない強敵が現れたとすんだろ?」
「ああ」
「当然、曲がりなりにもこの街の領主は対応しないとならないんだが、蓮夜。オマエならどうする?」
「俺が貴族悪魔ならか? そうだな……まずは魔王ないし大公に連絡して指示を仰ぐだろうな」
「それが当たり前だな。だが、この街の領主のリアス・グレモリーなら眷属とともに正面対決を選ぶだろうよ」
「……本気──いや、正気か?」
「本気と書いてマジ、正気と書いてガチだ」
颯馬の話を聞いていた蓮夜は、あんまりな評価に逆に理解が及ばない、というよりは正しく理解できたか逆に不安になる。
「だから蓮夜、いろいろ気をつけろよ? あれと同じ船に乗るヘマはしないだろうが、マジで偶然と奇跡が数百回重ならないと転覆からの沈没コースにまっしぐらだぜ」
颯馬のからかいもない本気の忠告だった。
「そうか……まぁ、初めから帯同する気はないが、もう少し距離感を考えておこう」
「そうしとけそうしとけ。さて、俺はそろそろ帰るとしますかね。また明日な、蓮夜」
話は終わったと颯馬は歩き出す。
「颯馬。ありがとう。おまえがいてくれて心強いよ」
「よせよ気持ち悪い。ま、せっかくだ。俺もいろいろ楽しませてもらうさ」
蓮夜の言葉に颯馬は、遠回しに蓮夜と一緒で楽しいと言っていた。
「颯馬」
「なんだよ」
「今度焼肉でも行こうぜ。奢るよ」
「ああ、そいつは楽しみだ」
最後にすれ違い際に言葉を交わし、颯馬はひらひらと片手を振って去っていった。
「ああ、そうだ。この学園には、メフィストの旦那の知り合いもいるからな。訪ねてみるといいぜ」
蓮夜は、そんなセリフを残して立ち去った颯馬の遠ざかる気配と閉まるドアの音を背にフェンス越しに夕暮れに染まる街並みを見つめた。
(予想とは違う困難が待ってそうだが、望むところだ)
リアスも、ソーナも、上手くあしらってやろうと蓮夜は考えをまとめていった。
To be continued
友情のカタチはいろいろですが、あまりお互いに口に出さない友情、友人関係もいいかなと思いこうなりました。
感想、お気に入り登録、高評価などいただけましたら励みになります。