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それでは、本編をどうぞ!
颯馬との話し合いを終えた蓮夜は、教室で待っていたアスカ、エルファリア、帆波、波瑠加と合流しある人物たちとの予定していた会談の時間まで学園内を改めて案内してもらっていた。
アスカやエルファリアが帆波と波瑠加と話しており、ひとまず彼女たちの関係にも問題ないことに蓮夜は安心する。
そんななか蓮夜は、気になっていたことを訊ねる。
「そういえばうちは、部活に入部必須なのか?」
「え? ううん、そんなことないよ。うちは、元お嬢さま校だから、お家関係での習い事とかお付き合いがある生徒も多いからね。なになに、部活動とかに興味あるのかな?」
「いや、そういうわけじゃない。まぁ、やってみてもいいかもとは思うが」
帆波の言葉に蓮夜はそう返した。
学内で目立たずに集まれる場所作りを考えると、部活に入るよりも作るほうがいいかとも思う蓮夜だが、時間を考えたら難しいとも思っていた。
「ふぅん……私も帆波も帰宅部だけど、一緒に部活するのも面白いかもねー。うちは、文系も運動系も充実してるから興味あるのがあったら言ってね。見学とかもできるからさ」
「時間はあまりないんだが……まあ、見学するくらいならいいが」
帆波、波瑠加の話に納得する蓮夜は、今後眷属と学校でも違和感なく集まるために部活を作るのもいいな、と考えて訊ねる。
「ちなみに部活とか作れるのか?」
「え? なになに? 黒崎くん、部活作る気なの?」
「転校してきたばかりなのにずいぶん積極的だねー」
「いや、可能かどうかってだけだ」
「なるほど〜……うん、最低三人集めたら同好会ってカタチで作れるよ。部員が五人になれば晴れて部活に昇格できるかなぁ。どっちも生徒会に許可をもらわないとだめだけどね〜」
「なるほどな……」
帆波から部活と同好会の制度を聞き、蓮夜は頭のなかで考えを巡らせる。
(強制入部制じゃないのは助かったな。だが、学校でも自由に違和感なく集まれるよう部を作るっていうのも悪くはない。既存の部活だと裏の話とかしづらいからな。幸い、俺、アスカ、エルファリアと同好会を作る最低人数は居るからな。帆波と波瑠加も巻き込んだカタチにしたら、部活にもできるか)
そう考えると改めてここに来た目的のひとつが果たせるかどうかとが気になる。
(期せずしてエルファリアっていう頼りになる、大切な眷属ができたが……ここでは、どうだろうな)
蓮夜は、周囲を見渡して時折すれ違う生徒や、教室に居残っている生徒を確認していた。
(……こうして見て回ってもうちのクラスにも、見かけた生徒にも神器使いはいないな。まだ覚醒してないだけかもしれないが……でも、文武に秀でた子は多いみたいだ)
今日一日、蓮夜は、クラスメイトとなった者たちや、すれ違った者たちをさりげなく観察してそう結論付けた。
この駒王学園には、異能持ちや悪魔業界の事情などを知っている者が少なくない数在籍している。
蓮夜の日本来日の目的のひとつに優秀な眷属探しというのがあるが、いまのところめぼしい眷属候補者はいない。
(神器は絶対ではないし、なくても強い奴は強いが……あったほうが成長させやすいのも事実なんだよな。まあ、気長にやるさ。見た目も能力も秀でていて、なおかつ俺が気に入って、既に眷属になっているラヴィニアたちと相性悪くない奴となれば限られてくるからな)
求めている条件は高いが、ただ見た目の好みだけで選べば上級悪魔にありがちな十把一絡げのハーレム眷属にしかならない。
それはよろしくない。
それなら普通に金と権力で女を囲ってハーレムを作ればいいだけ。眷属とするからには、容姿など最低条件で、能力の高さや性格的な相性は必須事項だった。
その点なら帆波、波瑠加は容姿、性格などは合格点を優に超えており、授業態度からも一般的な能力も問題ない。
実際、ふたりはその能力を活かして諜報活動的なのをしてくれていた。
もちろん、眷属にすることはできない。
眷属には異能持ちか、異能の才能を秘めていることは最低条件だからだ。
(まあ、ふたりはそれ以外で活躍を期待できるがな)
帆波も波瑠加も将来的には、いくらでも事業に参加して稼ぐだけの力を持っている。
伊達にあの超高層マンションに入ったわけではないのだ。
そうして案内が終わり、帆波と波瑠加がなんだかんだと仲良く一緒に帰ったあと、蓮夜はアスカ、エルファリアとともに向かった先は、校舎の裏手だった。
鬱蒼とした木々に囲まれた場所は旧校舎と呼ばれている、現在は使われていない木造の建物だ。
壊れた箇所がないのは、いまも使っている者たちが居るからだろう。
「ひとつの部活が占領していると考えると、普通はおかしいんだがな」
「普通なら取り壊されてるわよね。この結界の影響かしら?」
「だろうな。誰も近づかず、他の生徒が入部することもなく、顧問すらいないのに部活として成立している。これだけおかしなことがあって違和感を持たれないんだからな」
「なるほど。……ねえ、レンヤ。お出迎えはないの?」
「俺は、上級悪魔だが『番外の悪魔』だからそんな待遇はないんだろう。爵位とかないしな。あまり礼儀なんて期待しないほうがいい」
旧校舎の外観、常人では見えない結界を眺めてそう言い合った蓮夜、アスカ、エルファリアは、やがてさっさと用事を済ませようと、古いがそこまで酷くはない二階建ての木造校舎を進む。
階段を上がっていき、さらに塵ひとつ落ちていない廊下を通って二階の奥まで歩を進めた。
マメに掃除しているからか古い建物にありがちな、蜘蛛の巣やうず高く積もった埃もいまのところ目につかなく、公の場として数歩後ろをついてくるアスカ、隣に寄り添うエルファリアを連れて蓮夜は、目的の場所であるとある教室の前で足を止めた。
三人が扉に目を向けると、そこに掛けられたプレートには、『オカルト研究部』と記されていた。悪魔がオカルトを研究してどうするんだ、と蓮夜は呆れる。
「まさか、本当に本物のオカルトを研究して発表なんてしてるのかな?」
「……さすがにそこまで浅慮じゃないと思いたいな」
エルファリアの疑問に蓮夜は、自分でも信じていないようなことを言って肩を竦める。
迷信の範囲ならばいざ知らず、本物を研究テーマにして学内に発表していないとは、あの妙にプライドだけ高いリアス・グレモリーのことを考えるとあり得ないとは言い切れなかった。
実際、いまの蓮夜たちは知る由もないがリアスたちオカルト研究部は、去年の学園祭の出し物のお化け屋敷で本物の幽霊や妖怪を使っていた。
リアリティ追求どころかリアルを使ったあたり、そのへんの節度はほとんどなく、冥界の感覚で人間界で暮らしているのかもしれない。
蓮夜は、颯馬に聞いたとおりの頭痛の種になりそうな存在についてあまり深く考えないようにしてオカルト研究部の扉をノックする。
「フェレス家のレオンハルト・フェレスだ」
余所行きの名乗りで蓮夜が声をかけると、なかから『ええ、入ってちょうだい』とリアス・グレモリーらしき人物から声が返ってきた。
「むぅ……」
これにエルファリアは、眉を顰める。
仮にも来客、上級悪魔が来たのなら眷属に扉を開けさせて出迎えるのが筋だろう。
同じ上級悪魔なのにまるで自分のほうが上であるかのような振る舞いは、礼儀知らずに感じられた。
そもそも迎えを寄越すのが筋だし、せめて旧校舎前で眷属を待機させて案内させるのが道理だろう。
そんなエルファリアに蓮夜は、気にするなと視線を送って優しく肩を叩いたあと、室内から微かに水音がするのが気になるが、扉やな手をかけて足を踏み入れる。
「ほら、行くわよ、エルファリア?」
「……うん」
アスカにも気遣った声をかけられ、ひとまず不満を呑み込んだエルファリアもそれに続き、後ろ手に扉を閉めたあと、室内の様子に眉を顰めた。
床、壁、天井に至るまで悪魔文字が書き込まれていたのだ。
なかでも一際目につくのは中央の床に描かれた円陣──魔方陣だろう。
オカルト研究部というよりは、悪魔崇拝者の部屋のようだ。
教室の大半を占めるそれら以外には、ソファーがいくつかあり、あとはデスクが何台かあるくらいだ。
どれも品質は、ひと目で高価なものとわかり、部費の範囲を超えているし、そもそも間借りしているだけの場所を好き勝手に改造しているのは、些か以上にやりすぎだ。
蓮夜は、そうして室内を確認しているとソファーに座った黒猫のヘアピンをした白のショートヘアに、幼い顔立ちと体格をした小柄の女の子の存在に目を留めた。
どう見ても小学生に見えるが、この学園の制服を着ているため飛び級の可能性がなければ、高校生なのだろう。
とりあえずグレモリー眷属の高校生というのはわかったが、スタイルなどを見ればとても自分たちと同い年とは思えなかった。
三年生はあり得ないし、一年生だとしても信じられない。
せいぜいが小学校高学年くらいだ。
蓮夜は、それっきり興味を失った。
権力など振りかざすつもりはないが、仮にも上級悪魔が来訪したのに無表情で黙々と羊羹を食べているような相手には、なんの興味もない。
これが普通の上級悪魔なら無礼打ちにしているだろう。
(……主人が主人なら眷属も眷属だな。魔王の妹とその眷属だからと、どいつもこいつも自分たちまで偉くなった気でいるのか?)
そう見限って蓮夜は、少女──塔城小猫を視界や意識から外して壁際に立って頭を下げる金髪と泣きぼくろが印象的な少年──木場祐斗に視線を向けた。
出迎えなかったのは減点だが、小猫に較べたら幾分かマシな対応だ。
唯一マナーができているほうである。
あくまで最低限ではあるが……。
何よりこのふたりよりも特大の無礼な輩が居る。
扉の前から聞こえていたシャワーの音。
その正体は、室内の奥にあるシャワーカーテンの向こうから聞こえている。
カーテンに映った女の陰影からしておそらくリアスだろう。
そのシャワーカーテンの外側には、長い黒髪をポニーテールにした、優しげな笑みを浮かべた女性がバスタオルを手に立っていた。
和風な雰囲気のある佇まいは大和撫子を思わせるが、こちらに一瞥すら寄越さないあたり、礼儀などなっていないがあれが『王』を支える立場にある『女王』にして『雷の巫女』と呼ばれている姫島朱乃か、と思う蓮夜は、グレモリー眷属の底知れなさに表情に出すことなく呆れる。
もちろん予想を下回る酷さという意味でだが……。
(颯馬め。グレモリーどころか眷属も問題じゃないか)
わざと黙っていたなと、蓮夜は内心嘆息した。
部室にシャワーを付けてどこから水を引っ張ってきているのか知らないが、やりたい放題のリアスたちに最低評価を更新し続けていると、水が止まる音が聞こえた。
「部長、これを」
朱乃がそう言ってシャワーカーテンの向こうにバスタオルを差し入れた。
「ありがとう、朱乃」
シャワーカーテンの奥でリアスがバスタオルで体を拭き、着替えているのを理解した蓮夜は、興味のなさといちおうの礼儀から視線を逸らす。
向こうが無礼だからと、こちらまで無礼を働いて同じレベルに落ちる必要はないのだ。
少しするとカーテンが開き、制服に着替え、まだ若干紅色の長髪が濡れているリアスが出てきた。
リアス・グレモリーは蓮夜たちを見ると、柔らかく微笑む。
「あら、もう来ていたのね。座って待っていてくれてもよかったのよ?」
などと呑気に言うが約束の五分前に来るのはおかしいことではないし、座るにしてもそれを勧めるのは眷属の役目で、それをしなかったのはそちらだろうと、蓮夜は口にも表情にも出さない。
謝罪も何もあったものじゃないリアスに、もうそういうものと割り切った蓮夜は、さっさと話を進めようと口を開く。
「今回は、あいさつに来た。それにそちらも話があるそうだが?」
「ええ、そうね。とりあえず座ってちょうだい」
リアスがそう口にしたことで、ようやく小猫も立ち上がって壁際に控えた木場のところに下がった。
そして、リアスがソファーに座り、その背後に朱乃が控える。
蓮夜は、リアスの正面に座り、アスカとエルファリアはそんな彼の背後に控える。
「改めて──『番外の悪魔』であるフェレス家のレオンハルト・フェレスだ。今回は、わけあって日本に留学という形になった」
「グレモリー家の次期当主、リアス・グレモリーよ。あなたのことを歓迎するわ」
蓮夜の悪魔としての名乗りに対し、リアスは自信満々に応じた。
「……って言いたいところだけれど、それはあなたの目的しだいね」
だがリアスは、そう言って探るような視線を向けてくる。
「そちらの話というのはそれか?」
「ええ、そうよ。あなたは、四年前にもこの国でけっこうな騒動に関わっていたそうね? そんなあなたがまたこの国に急にやってきた。何かあると考えるのが普通だと思うけれど?」
そのくらいには、警戒心があるのかリアスがそう言うと朱乃たち眷属も警戒を滲ませる。
どうやら最低限のことは調べていたのか、四年前に『空蟬機関』に端を発した事件に蓮夜が関わっていたことを把握しているようだ。
別に蓮夜も隠していなかったのだから、そのくらい知られていても当然だし、情報操作をしてあるから全容はほぼ把握できていないだろうが……。
何かするならここで、というリアスたちグレモリー眷属の稚拙な戦意と魔力による覚悟を一顧だにせず、蓮夜は言う。
「別に。そちらも知ってのとおり、俺は混血悪魔なんだが……母親の故郷が日本でな。単に日本文化を学びたいってだけだ」
「……本当にそれだけかしら?」
「ああ。今回はいち魔法使いとして来ている感じだ。悪魔としての活動を率先してこの街でする気はないが、巡り合わせしだいで眷属のひとりでも見つかればと考えているよ」
蓮夜の堂々とした語りにリアスは、未熟な探りの視線を向けてくるが言葉以上の裏は見通せない。
それは本当にそれだけなのか、単にリアスが未熟で見抜けていないだけなのか、本質は後者なのだがプライド高い彼女は無意識に前者と結論付ける。
相対した者を見縊る、そういう価値観で生きてきたのだ。
「……そう。なら、この町で何かする気はないというのね?」
「それは時と場合に依るな」
「どういうことかしら?」
安堵した矢先の蓮夜の言葉にリアスは、身構える。
それを稚拙と内心で断じ、蓮夜は表に出すことなく言う。
「たとえばそちらの手に負えないようなこと、こちらに害があるようなことがあれば自衛のために当然手を出す。ああ、そんなこと起きないと言いたいんだろう? 俺が言ってるのは、あくまで最悪なパターンを想定してのことだ。こういうのは、最低の場合も明文化しておくものだろう? 何かあってから言ってたことと違うなんて揉めたくないしな」
蓮夜の言葉に眉を顰めるリアス。
日本の地方都市の、それも自分が治める領地でそんな馬鹿騒ぎするような輩はいないと考えているのだ。
そんなことをすれば緊張状態の三大勢力の均衡が崩れかねない。
しかし、それを見越して釘を刺す蓮夜にリアスは、顎に手を当てて考えながら頷く。
「そうね……そして、そんなことは起きない。だからあなたがこの町で何かすることはない、ってことね?」
「ああ、この町で余計なことをする気はない。はっきり言っておこうか? 自衛のため以外、おまえたちグレモリー眷属が手に負えない、動けないなんてことにならない限り、俺は何もしない。はぐれ悪魔も、はぐれ悪魔祓いや天使、堕天使もそちらで処理すればいいだろう。協力も共闘もしない。この町で悪魔としての契約活動もしないと約束する。ここは、相互不可侵といこう。俺はあくまでいち魔法使いでしかない」
リアスの確認に蓮夜は、理解力がないなと思いながらそんなことはおくびにも出さず、あとから難癖をつけられないように明文化しておく。
蓮夜は、自分たちの身を守るため以外、リアスたちが敗北でもしない限りは手を出さないと断言しているのだ。
「そう……わかったわ。そういうことならかまわないわ。私たちがあなたたちを頼るようなことはないし、あなたたちは自衛目的以外でこの町で何もしないってことでいいのね?」
「正確には、自衛目的とおまえたちグレモリー眷属に手に負えない事態になったとき以外は、だな。この条件に当てはまらない限り、俺は契約活動を始め、この町では悪魔としては何もしない」
自分に都合よく解釈するリアスに対し、蓮夜は言い含めるように補足する。
「だから俺は、あくまで『灰色の魔術師』の魔法使いだよ。そういう立ち位置で許可を得ているんだ。悪魔としても、魔法使いとしても契約は守るさ」
悪魔ではあるがそちらがメインだと蓮夜は言う。
この条件下にある限り、この町の問題はすべてリアスたちの手で解決すればいいし、できるだろうと言っているのだ。
そして、そこまで言われたらプライドを刺激されて思考が一本化されたリアスは、もう蓮夜を疑うことなく頷く。
「……ええ、わかったわ。そういうことならさっきの言葉は取り消すわね。私たちは、あなたたちを歓迎するわ」
そう言ってリアスは、肩の力を抜いた。
蓮夜は、用事は済んだとばかりに立ち上がる。
「なら俺たちは、もう帰らせてもらうぞ」
「あら、もう? このあと、お茶でもと思ったのだけれど」
そういうのは、最初に出すものだと思った蓮夜だが面倒なので何も言わず、踵を返す。
「引っ越してきたばかりでまだやることが色々とあるんでな。せっかくだが辞退させてもらおう」
「そう……ならまたの機会に」
「ああ、機会があったらな」
そう言うと蓮夜は、背後に控えていたアスカ、エルファリアを連れてオカルト研究部の部室をあとにした。
互いに無言のまま旧校舎を出たあと、特に尾行や使い魔の見張りもないことを確認し、蓮夜は言う。
「──やれやれ、まさかあそこまで酷いとはな」
「正直、我慢するのが大変だったよ」
エルファリアも敵愾心を顔に滲ませて頷く。
どうやらリアスたちグレモリー眷属の無礼な振る舞いのオンパレードは、蓮夜に対して大きな好意を持っているエルファリアの怒りに触れたようだった。
もし蓮夜の許可があれば今頃リアスたちグレモリー眷属は、氷像となっていたことだろう。
それだけエルファリアとリアスたちグレモリー眷属の間には、圧倒的なまでの力の差が存在していた。
「そうね。でも、役者が違ったわね。蓮夜の望みどおりになったじゃない」
「……まあ、アスカの言うようにたしかにあの内容をすんなり承諾してくれたんだ。それに免じて大目に見るさ。おかげで協力も共闘もなしだ」
向こうもあれだけプライドを刺激されたのなら、何があってもこちらを頼ってくることはない。
そのうえで自衛は可能だし、それについては明確化してないのでこちらの裁量で決まる。
仮に大事が起きてもリアスたちグレモリー眷属の手に負えない事態、あるいは戦闘不能になってからなら介入できるのだ。
さらにあの契約内容には、明確な穴がある。
それも蓮夜が一方的に有利になるものだが、リアスたちはまったくそれに気づけていない。
すべての主導権を蓮夜に握られてしまい、守れたのは自分のプライドだけということにリアスはまったく気づいていなかった。
この程度の駆け引きを見抜けないようでは、やはりこの対応で間違っていない。
何も蓮夜とて最初からこうすると決めていたわけではない。
場合によっては、リアスたちグレモリー眷属と協力や共闘も構わないと考えていた。
しかし、颯馬に聞いた話の酷さ。
それを別にしても自分の目で確かめたうえでの問題点などもあった。
人間界でも有名な七十二柱であるグレモリーの名前を隠さず堂々と名乗る思慮のなさ、未熟さを誤魔化すための稚拙な結界、目に余る無礼な振る舞いや身勝手な行いに考えを改め、アスカを始めとした己の眷属たちの精神衛生上を考慮し、リアスたちグレモリー眷属を見限る方向で話をまとめることにしたのだ。
「さて、もうリアス・グレモリーとその眷属についてはいいだろう。どうせ相互不可侵になったんだ。お互いに大して関わることはないだろうさ」
「……うん」
「それがいいわよ」
まだ不満そうだが蓮夜がそう言うならとエルファリアは頷き、アスカも気にしてないのか素直に応じた。
(まあ、リアス・グレモリーも悪い奴ではないんだがな)
蓮夜は、口に出さずにそう思う。
環境がああいう存在を育ててしまったのだろうと。
とはいえ、エルファリアにとって蓮夜は、好意の対象だ。
それを無自覚とはいえあそこまで侮辱され、どうしても許しがたいらしい。
「まったく、おまえは……」
仕方ない奴だ、とどこか嬉しげに呟いた蓮夜は、エルファリアの頭を優しく撫でる。
「れ、レンヤ」
「ありがとな、エルフィ。おまえがそうして怒ってくれただけで俺は充分だ。それにいずれやり返す機会はある。それまでは、な?」
「う、うん、わかった、レンヤ。でも、あとちょっとこのままで……」
「あら、エルファリアばかりズルいわ。私も撫でてくれるわよね、蓮夜?」
頬を赤くしてはにかむエルファリア、いたずらげな笑みを浮かべながらも本気の様子のアスカに蓮夜は、その小さくかわいらしいわがままを受け入れ、しばらくふたりの頭を撫でながら過ごすのだった。
To be continued
九割以上リアスに原因があったという話。結果、蓮夜は上手く交渉して有利に話を進めることにしました。これでリアスたちに何を要請されても断れるって感じです。
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それではまた!