「お帰りなさい、亀山君、どうでした」
「付近の聞き込みですが、を怪しい人物なんですが」
亀山は少し躊躇している様子だ。
「怪しいといえるのか、微妙なんです、水道の管理会社を名乗る人間、点検とかいってメーターの確認をしていたらしいです」
「他には」
「実は犬が吠えたというんです、すぐ近くの家なんですが」
「犬が、ですが」
右京はカップに伸ばしかけていた手を止めた。
「小型犬です、大人しい犬なのに真夜中に突然、窓の外に向かって吠えだしたので家族も驚いたようです」
「それはいつのことでしょうか」
「あの日、妹さんが泊まった日です」
「そうですか、亀山君、帰ってきたばかりですが」
「行きますか、ええ」
頷く亀山だが、出かけましょうと声をかけたのは彼だけではなかった。
「この間の刑事さん、三浦、さん、でしたよね」
ドアを開けた女性は警察ですという言葉に驚いたようだが、三浦の顔を見ると覚えていたのか、ほっとした表情になった。
「実は最近になって、このあたりで空き巣が出たという通報がありまして」
警察官だけでなく刑事の自分たちも駆り出されたんですよ、三浦の言葉に女性は頷いた、すると、その後ろから顔を出した米沢が庭を拝見しても構わないでしょうかと声をかけた。
「塀越しに見えたんですが、オリーブですよね、実は自分も鉢植えで育てているんですよ」
米沢の言葉に女性は頷いた、丸っこい顔と眼鏡、突然の刑事が家を尋ねてくれば普通なら驚くだろう、だが、近所に空き巣が出たというのでおかしいことがなかったか、巡回している、しかも以前、撮影していたときに助けてくれた刑事が来たということで桜川美夜(さくらがわ みや)は、驚きながらも三浦の質問に答えた。
帰り際。
「あの、良かったら、これ」
「オリーブの瓶詰め、手作りですか」
瓶に貼られたラベルを見て米沢は驚いたようだ。
「巡回、仕事中に食べ物といえど」
署に戻った三浦は米沢に少し呆れたような言葉をかけた、植物を育てるのが趣味だったとは知らなかったと。
だが、その言葉を米沢はスルーした。
「警部殿の読みというか、感が当たりましたよ」
「何か、見つかりましたか」
米沢は頷いた。
「窓ガラスと鍵の部分に傷がありました、最近だと思われます、それと窓と塀の高さが気になって調べましたが、庭の植木鉢が引きずった後がいくつかありました、塀が高くないんです」
「目隠しでしょうか、自分の姿が見えないように、すると昼間にも」
右京は三浦に視線を向けた。
「いや、最近、近所でも怪しいことはない、と」
「右京さん、水道メーター、電気の最近は厳しいですよ」
「ええ、ですが、制服などはネットでも手に入れることができます」
右京の言葉に、その場はしんとなった。
店の選択を間違えたと思った、自分の顔を観て逃げ出した男を追いかけたまではよかったが、人混みの中で見失ってしまった。
時計を見ると待ち合わせの時間から三十分も過ぎている、まずい、男を逃がしたこともだが、彼女を待たせすぎたと思って急いで待ち合わせの場所に戻った。
だが、彼女の姿は、がっくりと肩、全身の力が抜けてしまった、仕方ないと思いながら、そうだ、電話だとスマホを取り出そうと胸ポケットからスマホを取り出す、そのとき。
「伊丹さん」
呼ばれて振り返った伊丹は破顔した。
「すみません、そこのコンビニのトイレに行ってたんです、よかった、ところで追いかけていった男の人」
「あっっ、いえ、大丈夫です」
逃げられましたというのはプライドというより情けなさが勝ってしまう、カッコつけるわけではないが、大丈夫です、自分でも変な言い訳だと思いながら伊丹は、ははっと笑いを漏らした。
「あっ、あの、食事に行きましょう、お腹、空いてませんか」
「はい」
にっこりと笑顔で即答され伊丹は歩き出した、だが。
店選びを失敗したと思ったのは中に入り、注文した料理が運ばれ、食べ始めたときだ。
中華、イタリア、無国籍と思ったが、どこも人が多い、入ったのはバーカー店だ、といってもマクドではない、少しお高いバーガー店だ。
食べ始めてしばらくした時、視線を感じたのだ。
「一課の奴じゃないか、あいつ」
「そうだ、確か」
自分を知っている、しかも警察関係者か、声が聞こえ振り返ろうとしたときだ。
「先輩、どうしたんです、こんなところで」
聞き覚えのある明るい、脳天気な声に伊丹がどきりとしたのはいうまでもない。
続きがUP、伊丹さんは初デートです。