「えっ、今、ですか」
突然、自分のスマホの着信に伊丹は周りを見ながら壁に向き合うと声を低くして尋ねた。
クリスマスまで彼女からの連絡はないかもしれないと思っていただけに嬉しい反面、驚きだ、しかも、時間は昼(仕事中)
「今、欲しいものありませんか、クリスマスっっ、ですから」
いきなり、いや、突然すぎると思いながら内心、慌ててしまった。
付き合いが長ければ聞いてはこないだろう。
嬉しいと思いながら、なんと答えればいいのか迷ってしまう、今、欲しいもの、頭の中でシュミレーションする。
なんでもいいですというのは論外だ、恋人からのプレゼントはどんなものでも嬉しいという特集記事を先日、芹沢が読んでいた雑誌でちらりと見たばかりだ。
好みに合わないもの、キャラクターものをプレゼントされ、それが原因でぎくしゃくしたり、喧嘩になったりして破局のきっかけになったりすることもあるという、それだけは避け、いや、回避だ。
品物もだが値段も大事だ、高すぎるものは論外だろう、だが安すぎても。
「靴は、どうです」
伊丹は視線を落とし、思わず足元を見た。
「メーカーとか、ブランド、こだわってますか」
今、自分が履いている靴のブランドは何だった、すぐには思い出せない、バーゲン、いや、偶然、店じまいのセールで買ったやつじゃなかったか。
「く、靴でお願いします」
「よく歩かれるんしょうね」
青年は伊丹の履いていた靴底を見ると尋ねた。
「最初はシンプルな皮をと考えていました、最近は色々と合皮でもいいものがあります、それと靴底、インソールも大事です、よければこちらに任せてもらえませんか」
男性の言葉に伊丹は頷いた。
案内された場所は倉庫かと思ったが、店も兼ねていているようだ。
好みの色は目立たない黒や茶系、男の靴なんてそんなものだ、値段ですが、それはと青年の言葉に蕎麦にいた彼女が、それは、あたしが出す、クリスマスプレゼントでと言葉をかける。
「そうか、だったら遠慮なく、丁度、使いたいと思ってた素材が手に入りそうなんだ」
足の型を取り、ソールやインナーの好み、オーダーメイドの靴というものを買うのは初めてなのだ。
クリスマスは終わってしまうが、自分も何か送るべきかと思ったのは家に帰ってきてからだ。
コンビニで買ったおにぎりと茶を前にして、ふと彼女の欲しいものは。
分からない、アクセサリー、化粧品などは好みがある、服もだ。
欲しいものがあると言われたら、勿論、それをと思うが。
直接、聞くべきかと思ったときスマホが鳴った。
短いですが、大人のクリスマスだから過ぎても良いのだ。