昨日の酒によって痛む頭に苛まれつつ、僕は凛ちゃんと歩いていた。ぷるぷると揺れる爆乳、なんとけしからん……ではなく。なんでこの子、僕に対してどこか好意的なのだろうか。お母さんに言い寄られるの、嫌というわけではないのか。
「おかあさんの言う通りですね」
「ん? なにが」
「おっぱいとお尻ばっかり見てきます」
「っ!?」
「大きいの、好きなんですか?」
凛ちゃんが悪戯っぽい笑みを浮かべる。童顔なのに、やたらと似合う。小悪魔的で可愛いというか……ではなく! 年下の女の子に動揺させられるのは、大人の男としてどうなんだ!? なにか言い返さないと!
「あ、あのね。なんてことを言うんだ。大体、僕はこれでも二十九なの。もうすぐ三十路なの。君みたいな年の子は、妹みたいなものだから」
「え。妹、ですか……」
「そうそう」
もちろん、そんなことはないけどね。
「女の子、ではないですか……?」
しゅん、とうつむく凛ちゃん。やばいって。そんな顔しないで。マジでテンション下がるなって。
「ま、まあ、可愛いとは思うけどね」
「本当ですか?」
えへへ、とすぐに機嫌を直す凛ちゃん。なんだか僕は、この子に振り回されているような気がする。
ペースが狂うな……。
凜ちゃんは嫣然とした笑みを浮かべると、小さく囁いてきた。
「……今日、部屋に来てくれませんか?」
「は? あ、え?」
あまりに突然すぎる誘いに、狼狽した。
「いいですよね?」
「あ、いや、な、なんで……?」
「昨日、あんなことをしてくれたんですから……」
「あ、あんなこと?」
「はい」
「それって……?」
「とても、とてもここでは言えないです……」
ぽっ、と顔を赤く染める凜ちゃん。一体なんのこと!?
「ちょっと、凜ちゃん。それってどういう意味――」
「あ、バスが来ましたね」
「いやいや、気になってそれどころじゃないけど!?」
「ふふふ」
「ふふふ、じゃなくて! なんか怖いから!」
「大丈夫ですよ。わたし、ちゃんと十八歳の誕生日迎えましたから」
「あんまり大丈夫な要素じゃないって! たしかにもう成人ってことだから、ギリセーフだけどさ!? え、てか、やっぱそういうことなの?」
昨日の記憶がないだけに、つい連想してしまう。言えないことをしたって――いや、どう考えてもアレなんだけど。マジでなにも覚えてないぞ。もったいない――ではなく。色々と問題だろ。相手は高校生だよ? 僕は三十目前の大人だよ? 茨木さん心配しちゃうよ。
頭の中がグルグルと混乱しながら、僕はその日のスタートを切ることになった。結局、凜ちゃんは面白がって、詳細を教えてくれなかったのである。
★
正直なところ、妄想してしまった。
茨木さんほどではないにしろ、その娘とだけあって、ものすごくグラマラスなボディラインをしている。
あれほどの爆乳。脱がせたら、一体どれほどの絶景が広がることなのか……。
結論から言えば、凜ちゃんもオカズになるってことだね。我ながら単純な奴である。でも、男という節操のない機能の都合上、仕方ないね。というかあんなにエッチな体つきを見せられたら、こうもなる。
というわけで、ものすごく悶々としている。ましてや、あんな思わせぶりな態度をとられたら、意識しちゃうよ。僕だって男だから。単純だから。下半身と脳みそがそれなりに繋がっているから。
そんな男の日(?)に限って、仕事は定時で終わる。
いっそ寄り道でもしようかと思った。だけど、ほとんど強引に連絡先の交換を迫られた僕のスマホは、凜ちゃんからのメッセージを従順に受け取った。
――おにいさん。今日、早く来れそうですか?
仕事という体で、未読スルーにしようとした。だけど、次のメッセージでそうはいかなくなった。
――わたし、待っていますから。
シンプルだけど、やっぱりこういうのでやられてしまう。
正直、急すぎてちょっと警戒していた。彼女が僕に惹かれたきっかけ(なのかは確定ではないが)ならしい、昨日の夜のことをなにも覚えていない。
そんな状態で、うんと年下の女の子の好意に鼻の下を伸ばすのは、誠実じゃない。
……なんて真面目ぶったけど、もうわりとどうでもいいんだ。
ぶっちゃけると、困惑しているっていうのが強いんだよ。だけどそんなの情けないから、言い訳ぐらいは許してほしいものだ。大人の余裕ってやつね。
隣の部屋の呼び鈴を鳴らす。中からはやはり、凜ちゃんが出てきた。
部屋には簡単に上がらないようにしよう。そうしよう。茨木さんに悪いから。
「おにいさん。来てくれた♡」
凜ちゃんは露出の多い、黒のランジェリーを着ていた。胸の谷間がくっきりと出ていて、足が艶めかしく出ている。エロい。
「お邪魔します」
エロに釣られ、僕は秒で上がってしまった。
ではなく!
「なんて恰好しているの!?」
部屋に上がってから言うのはいささか滑稽だが、仕方ない。
「誘っているんですよ?」
「誘い方がストレートすぎる! もっと遠回りすることを覚えて!」
「だってそういうのだと、スルーされそうなので」
そらそうだよ。告白→承諾→君と僕で合体は、エロアニメとかでよく見る展開だけど、現実だと警戒するものだから。段階は踏んでおくれ。尺の都合、とかそういうのもないから。ほいほいついて来ている僕が言うのもアレだけどね。そんな僕でも色々と疑って、思いとどまるんだよ。
「とりあえず。話をしよう、凜ちゃん」
「おにいさん、真面目なんですか?」
「常識なだけ。すれ違ったりはしたけど、ほとんど会ったばかりじゃないか、僕達。なのに、どうして」
「一目惚れです」
「は?」
「元々、おにいさんのこと、ちょっといいなって思っていたんです。タイプなので。そうしたら、昨日はあんな……いやん、いやん」
わざとらしく言って、頬を両手で抑えいやいやする凛ちゃん。
「その昨日の夜っていうやつ、マジで気になるんだけど」
「ふふふ。もちろん、こういうことですよ?」
ぴろん、とランジェリーのヒラヒラ部分をめくり、軽い悩殺ポーズを決める。
……それで惑わせると思っているのか。ちょっと、むかついてきた。
「あんまり、大人を舐めない方がいいよ」
僕はそう言って、その華奢な両肩を抱いて壁際に追い込んだ。だけど凜ちゃんは悪戯な笑みを浮かべて、挑発的に言うだけだった。
「やっと、その気になってくれましたか?」
「……本当に、君は」
「おかあさんの代わりに、わたしがあなたを甘えさせてあげます」
十代とは思えない、妖艶とした声で囁いて、僕の背中に両腕を回す。
わかった。僕も男だ。
凜ちゃんの誘いに答えよう。
ランジェリーを脱がし、すとんと床に落とす。魅惑的な肌色が、目の前に現れる。ぷるん、と大きな爆乳が揺れた。メロンのようにたわわに実った二つの膨らみ。透き通るように綺麗な肌。大きな胸とお尻とは裏腹に、お腹と腰回りは適度に締まっている。そのおかげでただでさえ大きな膨らみが、より煽情的に協調され、アンバランスささえ感じた。
生で見る女の子の裸は、なんでこんなにも魅力的なのだろう。無条件で興奮させられる。つんと尖ったピンク色の乳首に口を当て、両手でおっぱいを揉む。手の中で温かい膨らみがとろけ、舌で舐めた乳首は少し硬くなった。凜ちゃんは「あ、あ♡」と艶めかしい声を上げながら、されるがままにされている。僕は、ふとあることに気がついた。
「……なんか、恥ずかしそうにしてない?」
「そ、そんなことないです」
凜ちゃんは両目をぎゅっと強くつむり、顔を真っ赤にしている。感じている、興奮している、というのは正解じゃないだろう。羞恥を感じている、という印象であった。
「い、いいんですよ、好きにして」
先ほどとは違い、凜ちゃんの声には余裕が無くなっている。
……どうやらこの子、無理をしているようだ。
僕が母親に憧れているから、母親のように色っぽくなろうとしている……ということなのだろうか。
だけど本当は、恥ずかしくてしょうがないんだ。
だって中身はまだ、十代の幼い女の子なのだから。
「……」
なら、優しくてしてあげよう。
いや、むしろここで止めるべきだ……。
――という風には、ならない。
僕はどちらかというと、節操がないタイプだ。そもそも、人妻とわかっていて茨木さんに近寄っている男だよ? 良心なんてあるわけがない。
むしろ、この背伸びしている少女に、嗜虐心すらそそられる。
最初の警戒心はどこへやら。
僕は素直に、この子を滅茶苦茶にしてやりたいと思った。