「あっ! そうだライザ。ロミィさん、ちょっと扱いに困ってる商品があってね〜? 珍種だから仕入れてみたんだけど……あった、これこれ!」
太陽の花をゴールドコインで交換するためにロミィさんのフォーゲル商店を
それは肌色のような色味をしていて、茎は真ん中で少し太くなっていた。笠はというと、広がりは小さいけれどぷっくりと膨らむような、少しいびつな形。そして、根元のところには小さな袋と、中に玉のようなものが二つ入っている様子だった。
「へぇ〜、こんなキノコが……! 素材になりそうなものはたくさん集めてきましたけど、これは知らなかったですよ! 行商人だからかな? さすがはロミィさん!」
手放しに褒めていると、ロミィさんは親指と人差し指の二本だけで珍種のキノコを掴み、あたしに渡してきた。
「いやぁ、これ、ちょっと変な臭いがするんだよね〜。だからか、まぁ売れなくて……そこで、ライザならこの市を更に発展させる、売れ筋商品にしてくれちゃったりするのかなーって!」
両手を受け皿にしてキノコを受け取ると、その臭いが気になって、顔に近付けてはすんすんと嗅いでみた。すると、たしかに納得できる。干したイカのような、妙な臭いが鼻腔を襲う。
「んっ……うん。これは、ちょっと……あはは」
「ふふ、でしょ? 洗えば臭いも落ちるよ! ちょっぴりだけどね……それで、どうかな? そのキノコを使ってなにか作ってくれたら、それでいいんだけど……?」
うーんと唸り、キノコに目を落とした。摘んでみると、ふにゅふにゅしていて柔らかい。笠のところは特にぷにぷにで触り心地が良く、無性に指先でもみもみしたくなる。根元の袋に入っている玉はこりこりとしていて、指だけで潰せるほどの柔らかさではなさそうだった。
素材の特徴は掴んだ。とはいえ、このキノコを使って市を盛り上げるためには、何よりもこの臭いを落とさないといけない。それさえできれば――毒があるかはさておき——普通のキノコと同じようなものだ。
やっぱりあのロミィさんのお店だとしても、誰も見たことのないキノコは好事家やコレクターくらいにしか売れない。そこで、このキノコの使い方を知ってもらうためになにかわかりやすいものを作ってほしいということだろう。
食べられるなら調理の例を、毒があるなら薬にする——そうして、このキノコの使い方を見せてあげようという算段だ。
「そうですね、できると思います。調合も難しくなさそうですし」
それを聞くと、ロミィさんは小さくぴょんと跳ねながら両手の指を合わせて、
「ほんとっ? それはよかったよ! じゃあ、そのキノコはライザにあげるから、なにか凄いのをお願いね!」
と、あたしに妙なキノコを一つくれた。
どうしよう——どこにしまっても臭いが移りそう。
「はい! じゃあ、すぐに作っちゃいますね!」
「おおー、頼れるね〜! じゃあ明日の朝、お店を開ける前に様子を見にいくよ。お願いね!」
微笑を湛えながら手を振ってロミィさんと別れると、しかしすぐそこの角を曲がった所で、一人の少女に呼び止められた。
「今、あのキノコ……もらった?」
その少女は深くフードを被っていて、顔がよく見えなかった。しかし、肌の色からオーレン族だとわかる。
「えっ? はい、もらいましたけど……?」
「やっぱり。わたし、そのキノコには少し詳しい。精霊も、あなたに祝福が訪うと告げている。だから……えっと。そのキノコに、これを使って」
少女は一つの小瓶を差し出した。中に白い液体が入っている。
なんだかよくわからないけど、瓶に入っているのならとりあえず触れても大丈夫。くれるのなら、と軽い気持ちで受け取った。
「これを? なにか、白いのが入ってるけど……?」
「気にせずに、まずはそれだけを使って。じゃあ……わたしは、これで」
「あっ、待って! ……行っちゃったし」
なんだったんだろうとは思うものの、キノコに詳しいと言っていたので、とりあえずそのレシピで調合してみることにした。
アトリエに帰り着けばすぐに錬金釜の前に立ち、もらった白い液体だけを使って調合する。
釜にキノコをぽいっとして、瓶を開けて白いゼリー状みたいな液体をとろとろーっと注ぐ。大きなマドラーで描き混ぜながら、折を見て瓶を洗っていると——調合を完了したキノコの笠が、ほんのりと赤みを帯びていた。それに、触るとなんだかぷにゅぷにゅとしていて——。
「わぁっ!? って、ええっ!?」
そのとき、キノコがまるであたしの身体を這い回るようにして、手から腕、腕から胸、胸からお腹へとへばりつきながら、衣服の中で独りでに動き回った。それはどこか目的地があるような動きをしている。
お腹ではないようで、更に下半身へと移る折、はたと止まった。しかし、あたしの下腹部で止まったかと思えば、今度はショートパンツの中にまで入ってきて、下着を捲り上げ、ずるずると肌を擦りながら下部を目指すキノコがついにいけない秘裂をくすぐるから、あたしはたまらず大きな声を上げていた。
「え、えっ? ひゃっ、いやっ!? きゃあぁっ……!」
しかし、キノコの動きはそこで止まった。今度こそ完全に止まったようで、驚く余りにぴたっと身動ぐ事なく様子を窺ったところで、動く気配は見られない。
となれば、まさか——ここが目的地? 落ち着く場所だって言うの? ——ちょっと待って、それは困る! どうして、あたしの下着の中に!? そう思って咄嗟にキノコを掴み、引っ張り出そうとした──その時だった。
キノコが光っているのか、あたしのショートパンツの中から仄かな光が溢れた。するとすぐに、あたしは異変に気付く。先までの異物感──下着の中にキノコを入れているような異物感──が、まるで感じられなかった。
あるのは、むしろこの人生で一度も感じ得なかったはずの感覚──あたしは、恐るおそるショートパンツを太ももまでずり下げて、下着を捲ってみた。
「わあっ! うそっ……!」
思わず口元を押さえた──やっぱりそうだ。この感覚を、女の子のあたしが感じるはず──さっきまでキノコだったそれは、ものの見事にあたしの恥丘の部分に同化していた。それはもう、まるで男の人の下半身——肉棒と思しき見てくれをして、あたしの恥丘に備わっていた。
「これって、おちっ……って、ええーっ!!」
今や自分のモノとは言え、今まで自分の身体にはなくて、男の子の身体にしかなかったはずの肉棒が備わったとなれば、興味本位で触ってみたくなるのが本能だった──どきどきしながら、垂れ下がる肉棒にそうっと触れてみる。竿のところを摘んで、丁寧に揉む——すごい、確かな感覚がある。これが、肉棒の感覚——。
しかし、これは由々しき事態だった。ロミィさんにどう説明すればいいかなんてわからないし、それどころか元の身体に戻るのかすらわからない。もしかしたら、あたしはずっとこのままなのかもしれない——それはさすがに困っちゃう。
「そりゃ売れないよ、ロミィさん~!」