「ね、ライザ。わたし達、結婚しよっか?」
今や愛しの人であるクラウディアからの求婚。それはもちろん、心から喜ばしいことだった。
それに、やることをやってしまった手前、断れるはずもない。
しかし、このままクラウディアと結ばれる前に、
――あたしは女だ。女でありたい、とすら思う。
だからこそ、あたしの恥丘に備わったこの肉棒を、そのままにだけはしておけない。
「ごめん。嬉しいけど、すぐには返事できない……かな。その、キノコのことを――」
返事を聞いたクラウディアは、数瞬ばかり目を
「そ、そうだよね! いきなりこんなこと言われても、こ、困っちゃうよねっ……!」
と、空元気っぽく返しながらそそくさと服を着直して、
「ご、ごめんね……!」
と――逃げるようにアトリエから飛び出していった。
そうして背を向けて駆け出したクラウディアが涙を拭ったのを、あたしは見逃さなかった。それなのに何も声をかけられず、追いかけられず――きぃっと軋んだドアの向こうに見えていた華々しい王都とその喧騒が遮られ、ドアの閉ざされるばたんという音だけが、
「……はぁ」
思わず、ため息をついた。
――クラウディアは、ほぼ確実にあたしの子を孕んでいる。
恥丘に備わったこの肉棒は、確かに本物のような精液を吐精していた――あれはきっと、いや、間違いなく本物だった。それを無理やり逆レイプの形で搾精されたとはいえ、クラウディアの中に注ぎ込んでしまった。
――責任は、取らなきゃいけない。
愛し合う時間を、こんな形で終わらせたくなんてなかったのに。
「……あたしのばかっ」
* * * * *
そして、明朝――。
「……むうぅ」
イキたい。
射精したい。
眠りから覚めてみれば、肉棒がまったく言うことを聞かない。
クラウディアに謝らなきゃいけないのに、気落ちしているはずだったのに、それでもあたしの肉棒は固く、大きく、剛直とした姿勢であたしの恥丘に鎮座していた。
なんだか肉棒が勃起すると脳が性欲に支配され、勝手にえっちな気分になってしまう。これが、朝勃ちってやつ――? ただ眠りから覚めただけなのに、こんなに勃起しちゃってるとさすがに恥ずかしい。
それに、なんだか今までよりもずっとずっとえっちな気分になりやすくなっているような気がする。まさか、これが生えたから? おちんちんに振り回されちゃってる? もしそうなら、尚更どうにかしなくちゃいけない。
どうしよう。したい。しちゃいたい。手が勝手に肉棒まで伸びていく。でも――。
「ロミィさん、そろそろ来ちゃうかも……?」
お店を開く前に様子を見にいく、と言っていた。いつも何時からお店を開けているのかわからないけれど、
正直、様子を見に来てほしくなかった。それでも、依頼主のロミィさんにはちゃんと〝例のキノコ〟の正体――あたしの恥丘に備わってしまったこの肉棒のことは、恥ずかしくても伝えなきゃいけない。
そのためにも、どうにかして鎮めておかないと。自分の手でしこしこして、お射精しちゃう――というのは、なんだか恥ずかしい。誰も見ていないはずなのに、そんなことをしたら一線を超えてしまうというか。女の子なのに、あるはずのない肉棒で一人えっちしちゃうなんて――。
* * * * *
あれこれと思慮を巡らせた結果、我慢することに決めた。
幸いか、新たな調合のレシピをいくつか試していたら落ち着いてくれたみたいで、
そのとき、ドアノッカーがこんこんこんと三度叩かれ、アトリエのドアが軋んだ。
「やほ~、ライザ! おはよう。きたよっ!」
「あ、ロミィさん。おはようございます!」
何事もなかったかのように、ただ、にこやかに。
ロミィさんをソファに通し、あたしも向かい合ったソファに腰掛ける。
「それで……あのキノコは、どうだったの?」
単刀直入に訊いてくる。眼下のローテーブルにはぷにを模したぬいぐるみが一つ置かれているだけで、他に何も用意されていない。それを見てロミィさんもなんとなく察しがついているようで、いつもより声のトーンが落ち着いていた。
「えっと。その、調合をしたら……ううん、見てもらった方が早いかも?」
――すごくびっくりさせちゃうと思うけど。
おもむろに立ち上がると、ロミィさんの座るソファのそばに立つ。
「……見る、って?」
ロミィさんはどこか
「あの。お、驚かないでくださいね?」
そう言って、女の子らしくない膨らみを帯びたショートパンツをずり下ろしては下着を見せる――いきなり目の前で脱ぎ始めるだなんてまるで痴女みたいだけれど、それでも見てもらう方がきっと話は早い。
「えっ、ライザ?」
驚くな、なんて無理な話だろうと思っていたけれど、思いのほか落ち着いてくれていて助かった。
「って。うそ……まさか――」
あたしの下着を目にして、両手で口元を覆う――それが女らしくない膨らみを帯びていることに気がついたらしい。それどころか、ロミィさんはその
「そ、そうです。その、恥ずかしいんですけど……ごっ、ごめんなさいっ!」
下着に指をかけて、ショートパンツごと太ももまで落とす。そうして、キノコの正体を――あたしの恥丘に備わってしまった肉棒を露わにする。
「んわっ……! う……や、やっぱりっ! やっぱりライザ、もうふたなりになっちゃってたんだ……!」
ロミィさんは肉棒をいきなり見せられても、それほど大げさには動じなかった。それでも、ロミィさんも女の子。いきなり肉棒を見せられたりなんかすると、どうしてもびっくりしてしまうし、目だって逸らしてしまう。
しかし、次にはあたしを見上げながら、ふたなりと言った――もう、とも。
「えっ? ……ふ、ふたなりっ?」
「ああ、ごめんね! ふたなりっていうのは……その。それが生えてる、女の子のことなんだけど……そっか。骨折り損のくたびれ儲けだったね……」
それ、と目を逸らしながら指で示したのは、もちろんあたしの肉棒だった。
下着とショートパンツを太ももまでずり下ろした変な格好になっているけれど、肉棒を隠すわけにもいかず、そのままロミィさんに見えるように立ったまま晒していた。
「あ、そういう……?」
しかし、もうと言ったのは――ロミィさん、まさか知ってた?
「でも、どうして……あのね。ライザにお願いしてから、ロミィさんの方でもあのキノコについて、いろいろと調べていたのよ」
しかし、ロミィさんはひどく申し訳なさそうにしていた。この状況がどれほどのことか、よくよく理解しているようだった。
その様子を受けて、一度でも彼女を疑ったことを恥じた。ロミィさんはやっぱり、いやもちろん、あたしを騙すような人なんかじゃない。
「それでわかったことがいくつかあって、もし大丈夫だったら、ライザに伝えようと思っていたところだったんだけど……」
「それが……だめだった、と」
「うん。ひとまず、わかったことを教えるね? こほん……まず、そのいち。あのキノコは――」
1・錬金術士がふたなり女性の精液を素材にして調合することで特異な反応を引き起こし、近くの女性をふたなりに変えてしまう、異界でごく稀に見られるという禁忌種のおそろしいキノコ。
2・反応を起こすと女性の股間部に張り付く。神経を受け入れながら、男性器とまったく同一の器官として体内に融合。あたかも男性器のように振る舞う。
3・融合したばかりではまだ完全ではないものの、対象となった女性の遺伝子を持つ本物の精液を射精することができる。
4・細部までの神経が繋がり、肉体と完全に融合してしまった場合、その時点で普通の女の子には戻れないと考えられている。
5・このキノコによってふたなりになった女性は、一般的な男性の数倍にも及ぶほどの強い性欲を覚える。また、男性器を獲得する都合、そのほとんどが女性に向けられる。
「――と、いうことみたいで」
「ふむふむ……」
どこを取っても心当たりしかなかった。今朝のことがあるから性欲は間違いなく強まっているし、クラウディアとえっちなことをするだなんてまったく考えられなかったはずなのに、少しも嫌じゃなかった。それどころか、むしろ望んでしまっていた。
しかしロミィさんの話を受けて、ひとつ気がついたことがある。
「って、あれ? ふたなり女性の、って……まさか」
脳裏を
「あれって……!」
「……ライザ?」
「あの、あたし……ふたなりの精液、調合に使っちゃったかも。たぶん」
「そっか……まぁ、そうだよね。そうじゃないと、ふたなりになんて――でも、それはどこで?」
「あの……知らないオーレン族の、女の子から……」
あたしだって、ばかだったと思う――ロミィさんは、じっとりとした目つきになってあたしを見上げた。かと思えば、三秒近く黙してから、
「あのね、ライザ? 知らない人から物をもらうのは……」
「は、はい。……反省してます」
オーレン族の子が清楚で柔らかな声だったから、悪いことなんてしない子なんだろうと思って。
まさか、あの子もふたなりだったのかな? 渡された精液、あの子のだったりして。
「ということは、あたしは……もう?」
「ううん。まだ、望みはあるよ。キノコが完全に融合してない――つまり、ライザが……ええっと。その、お射精をね? していなければ、なんだけど」
「あ、ああ〜……」
思わず、目が泳いだ。
やっぱりあの感覚――射精するたびに肉棒の感覚が鋭敏になって、確かにあたしのものになっていくような感じは、決して間違いではなかったらしい。
「ら、ライザ。もしかして」
「うっ。ご、ごめんなさい」
「んもう……! な、何回くらい?」
恥じらいながらもときどき肉棒に目をやって、あたしの射精回数を問うロミィさん。
ちらちらと見られて少し勃起しそうになるのを必死に堪えつつ、クラウディアとしたことを順番に思い出して回数を数えていく。手でされて、お口でされて、最後は――。
「えっと……三回、かな? 出るもの出したら、消えてなくなったりしないかな〜なんて……。あはは……」
さすがに、クラウディアに逆レイプされて犯されたなんてことは言えるはずがなかった。
でも、そうなるとあたしが一人でしたことになってしまう。それはそれで恥ずかしいけれど、クラウディアとの関係は知られたくない。
「すっ、すごいねライザ……。でも、そっか。性欲が……」
これは、昨日に始まったことだ。たったの一日で三回も射精してしまっているとは、ロミィさんも思っていなかったらしい。
しかし、そっかと続けて発したところを見るに、ふたなり女性の性欲の強さを改めて理解したようだった。あたしの肉棒も、性欲の強さを示すかのようにして大きくなり始めてしまっている。特にクラウディアとの行為を思い出したせいで、あの快感がまた欲しくなってしまう。
両手の人差し指で自らの頭をつんつんしながら目を閉じ、しばらく「んん〜……」と唸っていたロミィさんだったけれど、
「じゃあもう、だめかなぁ……」
と、しょんぼりして両手を下ろした。ロミィさんでもお手上げらしい。
「そう、ですか……」
「ごめんね、ライザ。元はと言えば、ロミィさんのせいだもんね」
ロミィさんに、いよいよ困り眉で謝られた。
しかしその視線は、まっすぐにあたしの半勃ちになってもさらに勃起しようとしてぴくぴくと跳ねる肉棒に注がれていた。
「あ、いえ! 気にしないでください。もしかしたら、あたしの錬金術でどうにかできるかも、しれません、から……あ、あの。ロミィさん?」
半勃ちだったあたしの肉棒に、細い指が絡みついた。