黒月家のご令嬢、綾香様は生まれつき体が弱く、足が不自由だった。
私は、一日の殆どを自室で過ごされている綾香様のお手伝いとして、長年勤めてきた。
初めて出会ったとき、私は7歳で、綾香様は5歳だった。
一目見た時は彼女の長い黒髪に目を奪われたけれど、髪の隙間から見えた彼女の憂いを帯びた瞳に、思わず息を飲んでしまったことを思い出す。
私と彼女の間に会話は殆ど存在しない、部屋に響くのは、お互いの静かな呼吸音と、書を捲る小さな物音だけ。
そして、一日に数回、綾香様は机を二回、あるいは三回、トントンと叩く。
それは私達の間だけで通じる、お手洗いの合図だ。
二回叩く時はおしっこ、三回叩く時はうんちがしたくなったことを意味している。
私はそっと書を伏せ、綾香様の机に、尿瓶と紙を数枚置く。
すぐに布が擦れる音がして、限界まで勢いを殺された放尿音が部屋に木霊していく。
「……っ」
ほんの少し乱れた綾香様の吐息が彼女の心境をよく表している。
限界まで我慢を重ねたおしっこを気持ちよく出したい癖に、それを必死に我慢しながらちょろちょろ、だらだらと気持ちの良くない放尿を続ける綾香様。
部屋の中にすっかりおしっこのにおいが充満した頃、ようやく綾香様の長い長いおしっこが終わり、余韻を噛み締めるような小さなため息と、尿瓶を床に安置する音が私の耳をくすぐる。
私は綾香様の尿瓶と局部を清拭された紙を手に取ると、そそくさと部屋を後にする。
一升以上入る筈の尿瓶は七割ぐらいが満たされていて、彼女の我慢の壮絶さがよく分かる。
綾香様はいつも限界まで我慢される、きっと私に排泄の処理をされるのが嫌で嫌で仕方がないのだろう。
水分も極力控えられ、長時間煮詰められたおしっこは濃く、汚い。そんなものを他人の手で処理されるのは苦痛以外の何物でもないだろう。
綾香様の為にも、そして私自身の為にも、廊下を小走りで素早く駆け抜け、綾香様のために設けられた専用の流し台に駆け込む。
誰もいない流し台に安堵しながら、尿瓶の中身を一気にひっくり返す。
黄色い濁流が流し台を襲い、排水能力を超えて注がれたおしっこは一時的に琥珀色の水溜まりを作る。
一気に広がった綾香様のおしっこの臭気を吸い込んでしまった私はむせ込んでしまうが、それにも構わずに着物を捲り、綾香様の尿瓶を自分の局部に差し込む。
じゅごごごごご!!!!
綾香様の放尿とは違い、勢いのあるそれは尿瓶の中の液体を掻きまわし、壁面を濡らしていた綾香様のおしっこを呑み込んでいく。
厚い着物の奥からでも聞こえる、何一つ遠慮のないおしっこの音が流し場に木霊し、それは次第に甲高い音になっていく。
尿瓶が溢れそうになっているのを感じた私は、渾身の力を込めておしっこを止め、着物を汚さないように素早く尿瓶を引き抜いて流し台にぶち撒ける。
綾香様のよりも多い、尿瓶を九割以上満たしていたおしっこは、半分程流れてしまった綾香様のおしっこを呑み込み、混ざり合っていく。
綾香様のおしっこが濃い濃い黄色なら、私のそれは濃い黄色、混ざり合いながらもはっきりと分かる境界線を観察しながら、尿瓶をもう一度突っ込み、残りを出し尽くす。
綾香様と行動を共にする私は、綾香様がおしっこしない限り、おしっこを済ませることができない。
綾香様とほとんど同じ年、同じ性別、同じ生活をしているのに、一人だけおしっこがパンパンで、一人はすっきりしているなんてあり得ない。
綾香様の膀胱が膨らんでいる時は、私の膀胱も膨らんでいるし、破裂しそうな時は、私の膀胱も破裂寸前なのだ。
加えて、綾香様が口にするものはすべて、私が毒見を済ませている。私の方が綾香様よりも遥かに多くの水分を摂っているのだ。
そんな状態で、焦らしに焦らす綾香様のちょろちょろおしっこと、お腹を刺激する、色が幻視できる程の濃い濃い尿の臭い。
身分の違いはあれども、同じ女の子なのだ、我慢なんて出来る筈がなかった。
始めの方は耐えられずに粗相をしてしまう事もあったけれど、いつからか綾香様の尿瓶を使わせていただくことで、粗相をしてしまうこともなくなった。
私は我慢のし過ぎでじんじんと脈を打つ膀胱を撫でながら尿瓶を引き抜く。
そこには琥珀色の液体が三割程溜まっていた、前回した時よりもほんの少しだけ量が多くなっている。
きっと、次にする時にはもっと多くなっているのだろう、綾香様も、私もだ。
私は懐に仕舞っていた綾香様が使われた紙を取り出し、自分の局部に押し当てた。