公爵が倒れた。そのニュースは瞬く間に王国中を駆け巡り、各地を混乱の渦中へと落とした。
王城も例外ではなく、深夜の早馬で知らせを受けた姫と近衛兵、一人のメイドは素早く荷物を纏めて公爵領へと馬車を進めた。
「神様……」
両脇を近衛兵に囲まれたシャーロット姫は、自身の祖父にあたる公爵の無事を祈り、手を組んでいる。
月明りが照らす無人の街道を、姫の大きな馬車が掛けていく。
月は馬車の中の姫の姿をも、無機質に照らしていた。
対面に座る専属メイドのティアは、知らせを聞いてから一心不乱に祈り続ける姫の姿を心配そうに見つめている。
どうにもならない時、神に祈るのは王族も平民も変わらない、ティアはそっと自身の祈りも姫の祈りに添えた。
会話のない車内にピリピリとした空気が張り詰める中、ティアは姫が小さくゆらゆらと揺れているように感じた。
(馬車の揺れのせい……ではないよね)
姫のことをよく知っているティアは、それが何であるのかすぐに悟ったが、同時にどうしたものかと頭を抱えた。
思えば、姫が最後にお手洗いを済ませたのは夕方の食後であった、それからはティアの知る限り一度も済ませていない筈だ。
就寝前の、用を足すまさにその直前に、伝令兵が知らせを寄こしたのだから。
そう思い返しながらティアは、自身もかなりの長時間、用を足せていなかったことを思い出す。
(たしか……夕方の食器を下げたあとに一回だけ……だったはず)
ニュースの衝撃が大きすぎて尿意を忘れてしまっていたのだろう、やる事がない馬車の中で、忘れていた尿意を思い出した。
いつのまにかパンパンに張った下腹部の存在に気が付いたティアは、つーっと額に汗が流れるのを感じた。
姫も同じなのだろう、祈っていた間はいいが、ふと集中力が切れた途端に、普段なら済ませられていた筈の尿意を思い出したのだろう。
イレギュラーに溜まってしまったおしっこの存在を意識してしまった姫とティアは、同じように背筋を伸ばし、足をきゅっと閉じた。
ゆらゆらと体を揺するティアを見た姫もまた、付き合いの長いメイド少女の尿意を悟った。
姫はもう一度祈ろうとしたが、パンパンに張った膀胱が苦しくて、すぐに公爵のことよりもおしっこのことで頭がいっぱいになってしまった。
姫もまた、額に冷たい汗が流れるのを感じ、恐らく自身の状態を察しているのであろうティアに目配せする。
姫の無言の訴えを正しく受け取ったティアは、地図に目を落とした。
車窓から見える景色と、今までの景色から現在位置にあたりを付けたティアは口を開く。
「今はロード山脈前の森林地帯ですね……姫様、ここは山賊が出る地域です、兵を乗せた王族の馬車が襲われるとは考えにくいですが油断はできません」
ティアの言葉は、言外に馬車を降りて用を足しに行くのは危険過ぎるとの訴えが含まれていた。
それだけでは両脇の近衛兵には伝わらないだろうが、姫には十分伝わった。
当てが外れて少し表情を曇らせた姫は、続きを目線で促す。
「ここを抜けると広い高原に出ます、身を隠す遮蔽物がないので襲われる心配は少ないでしょう」
身を隠す遮蔽物がないという言葉にピクリと眉を顰める姫であったが、自身の腹部にそっと手を当て、もう猶予がないことを悟った。
「そこで一旦休憩にしましょう、馬と兵を休ませるわ、ティアは私に付いてきなさい」
付いていき、何をするのかは明白だ、ティアはほっと安堵して頷いた。
じとりと背に汗が伝うのを感じながら、姫とティアは窓の外を見つめ、木々が続く風景が途切れるのを今か今かと待ち焦がれた。
ゴールが見えたからか、より一層そわそわし出した姫とティアは、自身と相手の様子を見て苦笑いする。
森林を抜け、差し込む月の光がパっと強くなった瞬間、ティアは姫に目配せする。
小さく頷いた姫を見て、ティアは前方に設けられた小窓から御者に話しかける。
馬車はゆっくりと速度を落とし、やがて完全に停車した。
皆がそれぞれ馬車を降り、背筋を伸ばして伸びをする姿を見ながら、ティアは姫に手を差し出した。
「さぁ、私達も降りましょう」
そう話しかけるティアだが、姫の様子がおかしいことに気が付く。
訝しむティアに、姫は外に聞こえないように小声でティアに話しかける。
「ちょっとあっちを向いててちょうだい……」
言われるままに姫から視線を外し、馬車の外を見やるティア。
そこには思い思いに用を足す兵や御者の姿があった、やはり皆催していたようだ。
気持ちよさそうに放尿する姿を見てしまったティアは、ぞわりと体を震わせた。
「しゃ、シャーロット様……」
振り向いて早く出るように懇願するティアは、そこで前をぎゅうぎゅうと押さえながら、足をバタつかせて波に耐える姫の姿を目にした。
「み、見ないでって言ったのに……」
「すみません……でも、そろそろ……」
急かすティアに頷いた姫はよたよたと立ち上がり、扉に手をかける。
「シャーロット様、外は見ない方が良いです……その……」
その言葉に何が起きているか察した姫は、素直に視線を下に向けた。
俯きながらゆっくりと馬車を降りる姫とティアに皆の視線が集まる、見えないながらも視線を感じた姫はきゅっと身を硬くした。
ティアはそんな姫の前に躍り出て、顔を上げて声を張る。
「姫様はお加減が優れないため少し歩かれるそうです、その間、皆は英気を養うようにとのことです」
姫とメイドが何をするのかは皆が察していたが、誰も口にすることはなかった。
最低限の義務を終え、馬車をあとにした姫とティアは、できるだけ急いで馬車から距離を置く。
よたよたと歩きながら、姫は気まずそうにティアに向かって口を開いた。
「その……実は私、しゃがんで用を足したことがないのよ……てぃ、ティア、どうしよう……!」
後半を泣きそうな顔で言い放った姫に、ティアは動揺しながらも外でのやり方をレクチャーした。
「えっと……まずは下着を下してください、そのあとスカートを一纏めにして前に回して、しゃがんで、致すだけです」
言われるままに体を動かし、腰を下した姫であったが、華奢な姫では筋力が足りなかったのか、姿勢を維持できずに尻餅をついてしまう。
両足にひっかけたままの、すじの部分が色濃くなった下着が月明りに照らされる。
「あっ、あっああ……!」
そのまま失禁してしまった姫は、空高く濃い黄色い噴水を上げながら、ぶるぶると体を震わせた。
シュイィィィィィ!!
地面にぶつかる音がないため、純粋な摩擦音と、姫の荒い吐息のみが高原にこだまする。
その姿を見てしまったティアはぶるぶると体を震わせ、前を押さえて姫に嘆願する。
「そ、その、シャーロット様、私も、もう、もうっ……!」
ジタバタしながら姫の許可を待っていたティアだったが、姫が惚けて返事が期待できないことを悟ると、構わずに下着を下しながらしゃがみ込んだ。
ジュイィィィィィ!!!
姫よりも更に濃いティアのおしっこは、姫よりも勢い良く排出され、草をなぎ倒して土を抉る。
土の吸水能力を超えて注がれたティアのおしっこは瞬く間に琥珀色の水溜まりを作り、ぬかるみを広げていく。
ずっと我慢していたおしっこをやっと出せてほっとしたティアは、真横で惚けている姫と同じように口元を緩ませ、深く息を吐いた。
「はぁぁ……姫様、すみません、我慢できずに粗相をしてしまいました……」
横で尻餅をついておしっこを高く噴き上げ、風に乗せて広範囲にまき散らしている姫の横で、膝に手を乗せて上品に排尿しているティアは己の粗相を詫びた。
失敗と快感で頭が真っ白になっている姫と違い、少し余裕のあるティアは、見てはいけないと思いつつも、我慢できずに姫の様子を確認する。
姫の白く細い肢体は月明りに照らされて青白く光り、長時間の我慢によって赤く熟れた局部からは、煮詰められた黄色い尿がしゅるしゅると音を上げて飛び出している。
幼く華奢な少女の身体から発されているとは思えない、背徳的で煽情的な光景に、ティアは同性であるにも関わらず、顔が赤くなるのを感じた。
張っていた腹部が平坦になるまで、たっぷりとおしっこを出し切った姫は、局部からポタポタと雫を垂らしながらぼんやりと放心していた。
まだ半分ほどしか出せていないティアは、焦りながら更に勢いを強め、姫を待たせないように努力した。
呼吸に合わせて強弱を付けながらおしっこを一滴残らず出し切ったティアは、においを残さないようにハンカチで自分の局部を丁寧に拭き取る。
服を整えて立ち上がったティアは、いまだにぼんやりと放心している姫の隣にしゃがみ込み、声を掛ける。
「シャーロット様……シャーロット様!」
ゆさゆさと揺すっても反応のない姫に対し、仕方なく自身が使用したハンカチで姫の濡れた体を拭き取り、下着を履かせて立ち上がらせる。
それからは流石に自分で歩いて馬車に戻った姫であったが、どこかふわふわした雰囲気を漂わせているのは変わらなかった。
(よっぽど気持ち良かったのかな……それとも失敗したのがショックだったとか?)
馬車に座ったティアは少し不安になりながら対面の姫を見つめるが、姫の視線は定まらず、まだぼんやりとしていた。
姫の隣に座り直した近衛兵達は、姫の様子がおかしいことや、ほんのりと漂うおしっこのにおいで、姫が粗相をしたことを悟った。
姫は周りのことなど気にする余裕もなく、ただただ初めての野外放尿の余韻に浸り、目を閉じる。
月明りは、姫達を無機質に照らしていた。