催眠玩具船団・オラクル 作:どろまみれ
16.
アムドゥスキア下層での調査を終え、情報屋のふたりと共にアークスシップへ帰投した。
惑星での調査結果を報告することで、討伐したダーカーの数や種類に応じてお上から報酬
今回の調査では、自分はおおよそのものを資金に変換してしまった。
なぜなら武器防具に関しては、虚数機関という組織の中にかなりの量が備蓄されているからだ。
アークスと言う組織が出来てから、結構な時間が経っている。討伐したダーカーも星の数。マイショップや組織間共有倉庫には、新人アークス向けの装備は二束三文で転がっているのである。
パティとティアもどうやら、基本は資金にしたようだ。
「山分け、山分け~!」
「ん。これで等分だね」
代表として受け取って来たティアが、自分とパティに振り分ける。
タブレットウィンドウを浮かべてみると、内部情報欄で確かに、メセタが加算されていた。
調査報酬としては結構な額だ。とはいえ以前にクロトが支払ってくれたような金額には程遠く及ばない。
基本的には直接的な報酬よりも、
「調査にしては結構メセタはいったね~。ねぇティア、やっぱりアークスとしてはアムドゥスキアに注目しているのかな?」
「そうかもね。特需という程ではないけど、
ティアはその研究職、を虚数機関であると
鋭い。間違いではないだろう。ルーサーがアムドゥスキア上層、その中心部に
多少なりとも直接的にルーサーを手伝えていると思えば、悪い気はしなかった。
ティアには残念ながら、これらは話さないでいるものの。
そう考えながら手元のタブレットを閉じると。
ティアも同じタイミングで閉じて、こちらを振り返った。
「それじゃあ、ありがと。ヒースクリフ」
「え~! 他の依頼も一緒に受けようよ~、ティア~!」
「ヒースクリフにも色々と予定はあるでしょ、パティちゃん。……。……あるの?」
ちらり。伺うような視線。
予定としては無いが……やりたいことはある。
「やりたいこと? ……って、言うと……」
首を傾げたパティへ向けて答える。
まずは部隊としての戦闘活動への参加だ。双子のおかげで戦闘経験については提出できる履歴が出来たため、アークスの
同期とは言っても、ただ同年代でアークスに在籍している者というだけではあるが。
様々な
……もっと率直に言おう。
大型のエネミーと戦うのに、今の自分ではひとりでは許可が降りないのである。
「あ~……それはそうだね~……」
「パティちゃんが呆れてる……珍しい。でもその気持ちはわかるかも。ヒースクリフ、大型エネミーとひとりで戦うの?」
そうだ。戦う。
何故なら、
「……!」
ティアが息をのんでいるのが理解できる。
ただ、これは当然の思考である。相手のダーカーが侵食やらクローンやらの機能を持っている限り、アークスの技術と言うものは漏出すると考えた方が良い。
虫型のダーカー。人型のダーカー。大型のダーカー。これらを順に追っているとして。
行き着くものは何か。
答えは単純 ―― アークスシップである。
「それは……そうかも? わたしが覚えている限り最初のアブダクションは、サプライヘリの侵食・誘拐だったはず。他惑星の原生生物のボスエネミーにも侵食例が出始めて……大型のダーカー、ダークラグネの出現報告があって急激に増加したのも、確かにそこからだった……」
「うぇぇ……。ねぇティア。ヒースが言っているのって、アークスシップサイズのダーカーが出てくるかも知れない……ってこと?」
「可能性の話だけどね。……でもヒースクリフの考えが合っていれば、そうなる可能性は高いかも。わたしもそう思う」
ティアも、だいたい似たような感想になったようだ。
そのために自分は、サイズの大きなエネミーと戦闘経験を積んでゆくべきだと考えている。アークス側もそれを求めていることは、上述したメセタ周辺の配分の通り。そのための資格を得ておくことは、重要だ。
「へぇ~。それで、同期の戦闘部。つまりヒースは、アークスたちと固定のパーティを組むことでボスエネミーに挑みたい、っていうわけかぁ」
「そうみたい。……そっか」
すとんと肩を落とし、息を吐き出すティア。
彼女も組みたいと思っていてくれたなら嬉しいが、そういうことだ。予定はない。やりたいことはある。
「なら、応援する。わたしとパティちゃんも、これからまた他惑星の調査と情報収集に行こうかな。ナベリウスとか、ダーカーの出現は確認されていないみたいだし、いいかも」
「ちょっとは休もうよ~」
そういうパティもぶーぶーと文句は垂れるが、案自体には反対しない。
どうやら伝わったようだ。彼女らと同行することそれ自体に嫌悪は無い。自分の行く道が悪路だった、というだけなのだから。
パティエンティアの双子と別れる。
ロビーに残されてひとり。彼女らの背を、ポータルの向こうまで見送って。
まずはクエストカウンターだ。コフィーさんに条件達成の報告と。それに、ジグにも挨拶と使い勝手の進捗を報告しておきたい所である。
課題は山積みだ。やるべきことを指折り数え、ロビーを歩いて行った。
――
――
ショップエリアの中央。噴水の傍。
「……ヒースクリフはああいってたけど。それだと、アークスが各惑星の調査と称してダーカーと戦闘をするのは……超大型のダーカー誕生を助けている、っていうことにも繋がっちゃうような……」
「ティア、考えすぎじゃないかな~」
「そう?」
「そうそう。だってさ、放っといても勝手に生まれるでしょ? どうせ倒さなきゃいけないなら、こっちも経験積んだほうがいいってば」
「ふぅん。……それもそっか。ありがと、パティちゃん」
「―― なるほど、なるほどね」
「えぇっと、どこから……。というか、貴方は?」
「失礼、僕はルーサー。とある研究機関の所長をしている者さ」
「とある、機関……。……どうしてわたし達へ声を?」
「ここがシオンお気に入りの場所だと聞いていたから訪れた。結果として彼女はいつも居ないのだけれど……代わりに、君たちが面白い会話をしていたものでね。思わず聴き耳を立ててしまった」
「そうですか。……公共の場で話をしていたわたし達に非はあるので、すいません」
「いやいや。本当に興味深い話だった。……よければ、もう少し聞かせてはくれないかい?」
「だから、あの。ここでするような話では……」
「ならば僕の研究室へ案内しよう。どうだい?」
「……ティア?」
「……直接入れるなら、チャンスでは、あるかも。……あの、ルーサーさん。夕方までなら」
「ああ、いいとも。では、向こうだ。ついてきてくれたまえ ―― 情報屋、パティエンティア」
・
基本的にはゲーム内のウィークリー報酬、もしくはバル・ロドスを筆頭とした大型エネミーを討伐した報酬が大きい。
プレイヤーの稼ぎ所はおそらくこれらと、ヤーキスさんへのウィークリーギャザリング納品。元手があればマイショで稼いでもいいが、転売はあまり良い行為ではない。
これがアカウント毎ではなくキャラ数毎だったので、まだ温情はあったと言える。
ちなみに現在、PSO2内のマイショップは物価がジンバブエドル状態であり、基本的にウン千万メセタを所持していないと買えるものなどない有り様である。
・超大型のダーカー
未確認(とされている)だし、ナベリウスにおいてダーカー出現は未だ(公には)確認されていない(とされている)。
あの場面が初ですので。
・サプライヘリ
方式的にはオスプレイ。ゲーム序盤の方では物資を直接的に供給してくれることもあった。
今は主にダーカーの巣で侵食されるのと、墜落してアークスに守ってもらうトライアルを発生させるのがお仕事と化している。