催眠玩具船団・オラクル 作:どろまみれ
20.
惑星リリーパはその地表の大半を砂漠によって覆われた星である。
大半を占める
機械については別系統の技術だが、先進的なアークスのそれと比べるとかなり原始的。放棄されてから年月も経っているが、少数は稼働を続けているようだ。
アークスがこの星の調査を始めてから、長らく時が過ぎている。
ダーカーの長 ―― DFを封印するための総力戦。封印戦争がアークス側の勝利に終わってから幾星霜。リリーパとアムドゥスキアは、依然としてダーカーが出現し続けているのである。
特にリリーパは近年、ダーカーの出現数が増加しているようだ。アークスとしても調査に力を入れている星、という訳である。
「―― おおおっ! 貫けッ!!」
「オーザ、あんまり目立ちたがるんじゃ……ねぇっての!!」
オーザとレダがコンビを組みながら、エネミーを打ち倒してゆく。
リリーパに住まう、機甲種。未だに稼働を続けている、戦闘用無人機たちだ。
どうやら生産施設が未だに稼働しているようで、倒しても倒しても増えてくる。幸か不幸かリリーパは鉱物資源に富んでおり、その稼働率は低下を見せていないようだった。
もちろんアークスもその恩恵には預かっているため、こうして調査と資源配当を行っている訳なのだが。
「これでッ……最後だ!」
「へいへい、そっちね!」
オーザが槍で近接戦を行い……レダが持つ銃剣は、文字通り剣と銃に形態変更を行える武器。専門の銃器と比べると有効距離は落ちるが、中距離までは対応可能なものだ。それをうまく扱って、援護的に立ち回っているようだった。
そして。
「……」
隣には、無言で映像を見つめているマールー。
自分と共に、アークスシップ内での待機中なのである。
長期任務である以上、時間を分担する必要がある。日中に行う遠征と調査、夜間のシップ防衛。これらをローテーションして回すことになっていた。
例外はモニカ。彼女はエンジニアであるため、シップ内で自分達の装備のメンテナンスや事務作業、本部との連絡。他には報告書の作成を行ってくれているようだ。それはそれでハードだな、と個人的には思う。
さて。待機とはいえ、やることはある。こちらはこちらで事務作業を行う必要があるからだ。
今は戦闘部隊との定期連絡の時間で……ちょうど、オーザ達も戦闘が終わったようだった。
画面の中の映像はやや荒い。マグを通した通信だからだろう。槍をしまったオーザが、空中に待機させていたマグへと近寄ってくる。
「すまない。定期連絡の時間だったが、戦闘が長引いてしまった。とはいえ、おかげでこちらはノルマ分を終了した」
「お、どうよ。ヒースもマールーちゃんも、変わりねぇか~?」
戦闘の直後だというのに飄々と、レダもこちらを気遣ってくれているようだ。
マールーはだんまりのまま頷いた……ため、自分が口を開く。こちらも問題ない。定時交代でよさそうだ。修復材を用意して待っている。
「おお、助かるよヒース」
「サンキューな~! ……にしても。本当に次の時間帯、フォースふたりが担当でいいのかよ?」
レダが軽い調子で聞いてくる。
……
とはいえレダの心配は最もだろう。フォースは大気のフォトンを扱う反面、肉体強化に劣る法術職である。もっと簡潔に言えば「うたれ弱い」のだ。
アークスの統計においても、ハンターなどの別職と組んだほうが生還率は高いと数字で示されてしまっている。
ただ、そこへ自分のスタイルが効いてくる。
「ほーんと、聞くたび思うけどやべぇよな。ソレ。テクニックもデバフと専用属性だけなんだろ?」
「……オレとしてはフォース
感心するレダと、フォローを入れてくれるオーザにありがとうと返しておく。
おかげでどうやら、マールーの表情は悟られずに済んだようだった。
「え、えーと……歓談中すいませぇん……。もう少しで到達する砂嵐にあわせて、通信を終了してもよろしいですかぁ……?」
歓談、に見えたのだろう。
後ろで量子コンソールを操作していたモニカから業務連絡が入れられた。
OKを出す。向こうのオーザ達からもOKが出た。
互いに挨拶を交わして通信を切断する。
どうやら自分の初めてのチームだというのに、人間関係も一筋縄ではいかないようだ。
聞くなら早い内。今日の夜にでも、マールーへ尋ねておくべきだろう。
――
――――
夜間。
ノルマ分の機甲種を掃討してから、マールーと話す時間を設けることが出来ていた。
ハンターなどと比べて、やはりテクニックを扱える分、効率的にエネミーを掃討することが出来るのは利点だろう。属性テクニック、特に雷属性の通りがよいからだ。
特にマールーは炎と光が得意なようだが、雷も幾分か扱えるようで、大変に助かった。
「ううん。それは私も同じ。あなたのテクニック、とても興味深いと思う。土属性……だったかしら?」
マールーの返答に頷くと彼女はぶん、ぶん。自分が土テクニックを扱うのをまねるように、腕を大きく振って見せた。
「私は2世代のアークスだけれど、他属性に適性があるから。いずれはそれも、何かに活かしたいと思ってる。……だから帰ったら、あなたのそれも教えて欲しい」
了解した。ただこれは自分の特異な体質がなせるテクニックだとも聞いている。どうやらクラリスクレイスの解析によると、デバフの方は機械的には再現できるみたいだが。
「……そっか。残念ね」
しかし試すだけならタダだ。帰ったら付き合わせてもらう……どころか、今日のように時間が出来たなら喜んで教えさせてもらいたい。
……まぁ、自分も未だ、クラリスクレイスから教えられた内。基礎の基礎しか扱えていないので偉そうなことは言えない。
「……ふふっ。そうね」
ずっと仏頂面だったが、少しばかり笑顔を見せてくれたようで安心である。
ここで少しだけ間を取ってから話題を変える。自分はマールーの、オーザに対する態度が気になっていると。
「……そう。やっぱり隠せてなかったのね」
まぁ、あまり隠す気もなさそうだなとは思っていた。
「そうね。ハンターが嫌いなの。むさ苦しい、目立ちたがり、前に出すぎて省みない。……レダはちょっと違うけど、やっぱり苦手。もうひとりの彼はキライね。これは私個人の好みの問題」
はっきり言った。
どうやら戦闘スタイルの組み合わせによる好みの問題だったようだ。
「……怒らないの?」
マールーがこちらを見上げながら首を傾げている。
自分に怒る理由はない。むしろ自分も大剣を扱い近接戦が得意なフォースという、むしろオーザより危なっかしい存在であると思うのだが。どうなのだろう。
「……そうかもね。けれどあなたを何故か、危なっかしいと感じないの。だから嫌悪感もない。理由はちょっと私にも判らないけど……」
それにあなたはフォースだし、と付け加えてくれた。
ならば理由は自分も詮索しないでおくとして……しかし、成る程。つまりマールーにとって、危険な行動を率先するタイプのハンターが生理的に苦手だということか。
「……」
理解出来る。フォースという後衛職は、必然、前衛のフォローに回る場面が多い。それはつまり、前衛の調子によって自分の戦況も左右されてしまうと言うことだ。
アークスというのはただでさえ命がけの仕事である。そんな職務に、多少であっても明らかな他責部分が存在しているのは、はらはらしてしまうことだろう。
「……判るの?」
傲慢かもしれないが、理解出来ていると思いたい。
それがマールーのどういう経験・理屈によるものかは知らないが。嫌いなものは嫌いである。仕方あるまい。
自分達が組むことによって業務に影響がないよう取りはからいたいなとは思うが、そこはレダの存在によってうまく回ってくれたようだった。
つまり今現在、問題はないのである。
「そっか。ふふ。そっか」
マールーは体育座りの膝元に顔を埋め、口元を隠してしまった。
返答は十分に伝わった。十分だろう。自分としてもマールーがああいう表情をしていた理由を知れたので、目標は達せられた。
惑星リリーパの砂漠を見つめる。
焚き火が地面を明るく照らして、それ以上に、青い月が煌々と砂の海を波打たせている。
ただでさえ長期の任務である。マールーの理解を進められたことを喜ばしく思いつつ、その日の夜間警備を終えることとなった。
―― が。次の日。
「―― れ、連絡! 惑星リリーパ内を探査中のいずれかのアークス隊員より……き、緊急救難信号ですぅ!」
モニカが叫ぶ。
件の業務の、更なる複雑化を孕んだ連絡だった。
・惑星リリーパ
時系列をとても参考にさせていただいている個人ファンサイトによると、ここでのダーカーは居て良いようだ。アムドゥスキアも同様。
ダーカーが中途まで確認されていなかったというイベントが挟まれる惑星はナベリウス。
・マールー
過去にとあるハンターの少年にかばわれ(命を救われているレベル)、その際に苦手意識を持ってしまっているようだ。
つまり好意に転じる素養は抜群ということである。
・モニカ
ショップエリア、偶数ブロック担当の娘。
PSO2のサービス中途から追加されたキャラクターであるため、ヒースと同期としました。
腹パンしたい。
かつて武器強化が地獄だった時期を経験したアークスに恨まれているという背景がある。
※ちなみに私個人に興味がある方は、1話についったリンクを追加しましたのでどうぞ。何かあったら聞いたり話かけたりしてください。お題箱でもDMでもどぞ。
ただしぷその話はほとんどしないと思います。