※この作品はR-18です。

催眠玩具船団・オラクル   作:どろまみれ

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23.同期5

 

 23.

 

 

 元から予定していた通り、惑星リリーパには長期の滞在をすることとなった。

 自分たち「オーザ班」は日々の業務をこなしつつ、送られてくる追加人員を受け入れるための土台作り ―― つまりは駐屯地作りに奔走する日々である。

 

 キャンプシップも単体であれば面積は取らない。食事も水も量子転送で幾らでも補給可能。ならば何が重要視されるのかというと「雨風をしのげる場所」だ。

 どちらも技術的に防ぐことは不可能ではない……むしろ容易なものではあるが、それが長期の滞在となるとコスト的に馬鹿にならない。節約するに越したことは無いのである。

 

 ちなみに先日救出した女性キャスト「フーリエ」のパーツは自分たちが保管を行うこととなった。量子転送の質量的に、生体パーツは適していないのだそうだ。

 いずれにせよアークスの救護・救出は自分たちの任務である。そのためにそういった施設を多数備えた、駐在用のキャンプシップを選んであるので問題は無い。

 

 キャンプシップにもたくさんの種類がある。

 自分達が今回利用しているのはその内の「複数人のアークスが長期間利用することを前提とした」もの。新人に渡す船としては最上級の設備が揃っている船である。

 5人全員が個室を利用。トレーニングルーム有り、娯楽室有り、資料室と会議(ブリーフィング)室の別個有。

 その上で武器整備のための本格的な施設やアークス救護のための生命維持装置(バイオポッド)なども稼働可能な、ハイエンドもハイエンド。

 

 そのおかげもあるだろう。

 惑星リリーパと言う砂と風と土の地で長期滞在を行っていても、オーザ班の全員が、精神的にかなりの余裕を保つことが出来ている。

 

「―― よし。ステップ・ジャンプは何とか模倣が出来そうだ。しかしお前の大剣(ソード)の使い方は、たとえハンターであっても、模倣するヤツは居ないだろうな」

 

 オーザには約束の通り空き時間を見繕って、自分が使用している「フォトン体術」とでも呼称すべきものを教えていた。

 代わりに槍の扱い方を……という申し出は、近接武器は足りているので残念ながら断らせてもらったが。

 

 聞いておく。

 楯を扱ったり、大剣を片手で扱うようなアークスは居ないのだろうか?

 ……いやまぁ、そういう直接的なのはおらずとも。何かしらの例外が生まれるだけの下地は出来ているように思うのだが。

 

「うーん……大剣を大剣として扱わない人は居るな。六芒均衡の三英雄、レギアスがそれだ」

 

 なるほど。自分は未だ指令(ぶんめん)でしかやり取りをしたことがないお人だ。

 彼はどういうスタイルなのだろう。

 

「レギアスは巨大な鞘付き(・・・)カタナ(・・・)を質量武器として扱う。創世器・世果(ヨノハテ)。アークス創生の頃から現存する、強大な武器のひとつだと聞いている」

 

 質量武器。字面が強い。カタナなる武器種も初耳だ。

 自分が現在持っている『ザンバ』も似たような側面はあるが、これは内在するフォトンを顕在化させるか否かの違いでしかない。元から質量を求めた武器ではないのだ。

 

「だろうな。というよりも、現存するアークスの殆どは創世器のような武器を渡されても扱う事が出来ないだろう。一般化が進んでいるんだよ。もっと言えばデチューンとも呼べるが」

 

 それは自分も聞いている。

 だからこそアークスはフォトンを扱い、戦闘をこなし、それで内在器官を成長させなければならないのだとも。

 

「だな。……それで言えば、アークス128番艦テミスの襲撃は痛かっただろう。あそこは武器・装備開発の最前線だった。資料と設計はマザー・シップに保管されているとはいえ、人と設備は帰ってこない」

 

 オーザが思い出すように言う。現場に居たのだろうか。

 

「いや、いないな。ただ直近でアークスの救護部隊がテミス艦にかかりきりになったせいで、幾つか事件が合ってな。オレのいた艦でも落盤事故などが相次いだが、救護が遅れていたりした。……とはいえオレはその際にアークス適正を見出されたのだから、数奇な縁だという程度にしておこう」

 

 そう言って、動かし続けていた身体を止めた。

 アイドリング中のオーザに向けて、自分も話題を合わせておく。アークスになるに理由は様々あるだろうが、自分はオーザがもつ矜持も理解できる、と。

 

「そうか? まぁそうしてくれるとありがたいな。……既に分かっているだろうが、オレはフォースという職が苦手でな。どうしても守らなければ、と義憤にかられてしまうんだ。お前にも最初は偏見の目を向けてしまっていたと思う。すまないな」

 

 少し考えて言う。話題の内容は理解できた。

 ポジションとしては間違いではないだろう。自分としてはマールーの言い分も、オーザの言い分も正しいと考えている。あくまでリスクと結果は別のものだ。

 

「だが結果は出る。否応なしにだ。……正直お前の落ち着きようを見ていると、リーダーはそちらの方が適任だったんじゃないかと思う事はある」

 

 どうだろう。

 ……自分は、いざという場合になると独断専行を手段として用いることを厭わない性分である。そもそもアークス自身に愛着が無い。

 リーダーという職務に相応しいとは微塵も思わないが、オーザがこれを知る由もない。ここは適当に返しておくことにしよう。

 自分は重圧のかかる立場は苦手である……し。クラスや戦法の独自性が強すぎるので、そもそも組ませる人員を選ぶだろうと。

 

「……はは! それはそうか。ただ、実質サブリーダーのようなものとして動いて貰っているだろう? その点について礼を言っておく。ありがとう、ヒース」

 

 笑ってオーザが立ち上がる。手元を見ると、いよいよ任務開始の時刻となっている。

 本日は自分とオーザでの防衛任務である。マールーとオーザが組みさえしなければ良いので、自分とレダが交互に受け持つ形だ。

 

「では行こう。今日は艦隊防衛地点(・・・・)として予定されている地区の、ダーカーの殲滅戦だ。16(ヒトロク)00からは補給船の荷下ろしもある。限界まで気を張って行くぞ!」

 

 いつにもまして気合の入ったオーザに続いて任務に就く。

 本日はディーガの拡張展開(エクステンド)を試す予定だ。

 オーザには十分マージンを取ったうえで、ヘイトタンクをこなしてもらった。

 

 

 /

 

 

 リリーパでの長期滞在における問題として。

 マールーとモニカには、特に自分の長杖回りで面倒をかけてしまっている。

 

「……な、なんとお詫びしたらいいかぁ~……」

 

「……はぁ。ねぇ、モニカ。ヒースの長杖は私がやるよ……?」

 

「す、すいませぇん……。ですが、わ、わたしも装備エンジニアの端くれとしては……」

 

「成果は出さないといけないのね。……理解はできる。でも、ヒースの長杖は特殊すぎるのよ」

 

 キャンプシップの整備区画。

 今日も今日とて自分の装備品の整備を受け持ってくれていたモニカが、どうどうとマールーにたしなめられているようだった。

 マールーも呆れてはいるが、どちらかというとモニカの立ち回りについての指摘であって。整備の不十分それ自体は、仕方がないものであると考えているようだ。

 

 これについては彼女が言う通り、自分の長杖『イモータルフェザー』が特殊過ぎるのがよろしくない。自分からもいつも迷惑をかけて申し訳ない、と謝罪を挟んでおくことにする。

 

「い、いえっ。ヒース……さんが、謝ることじゃあ、ないですぅ。……あの、ジグさん謹製の武器を触れるのは、わたしにとっても良い経験ではあるのでぇ……」

 

「そうね。それでいて回路のコードが六芒のクラリスクレイス三代目のものだっていうのが、難しさを助長していると思うのだけれど」

 

 マールーは自分の『イモータルフェザー』を持ちながら、その先端の翼を模したフォトン感応部をぱたぱたとはためかせてみせた。

 水色の羽が舞っていて綺麗ではあるが……今後のためにも一般的なフォースからの見地を得ておきたい。やはり特徴のある杖なのだろうか。

 

「うん。回路が真っ直ぐだけれど吸引力が馬鹿みたいに高くって……そうね。アークス自身が持っている素養を、そのまま汲み上げる。汲み上げて天井突き破るくらいに吹き上げる、みたいな構造をしてる」

 

 なるほど。

 ……それで汲み上げるのがデバフやアークスにない土属性、なのはどうなのだろう。 

 

「私は、いいと思う。多様性は大事よ。教えてもらったにも関わらず、私はジェルンもザルアも土も使えなかったけれど……それ(・・)みたいに。使える人が使える、でしょ?」

 

「はっ、はい! デバフはフォトンの固着化の才覚が重要らしくて、近々レンジャーの突撃銃(アサルトライフル)で使用可能な弾頭『WB(ウィークバレット)』として採用予定だと聞いていますぅ……!」

 

 ふたりしてうんうんと頷いている。どうやらそういう流れであるらしい。

 直接的にはクラリスクレイスの手柄である案件なのだが、どうやら彼女は義理堅く、自分の名前も出してくれているようだった。マールーやモニカも知っていたのはそのためだろう。

 

 事実として、マールーには色々と教えてみたがどのテクニックも発動しないという有様だった。

 自分の身体がどういったものなのか、には興味しかないが……それをテクニックから遡っていくという順路もあるのだろうか。

 

「どうだろう……ううん。無理かも。テクニックはあくまで昔あった(・・・・)特異技能(・・・・) ―― 『マジック』を一般化したツール(・・・)にしか、過ぎないから」

 

 マールーはそう言って首を振る。内容はアークス研修の教科書の隅に書いてある、テクニックの来歴そのものだ。 

 

「ど、どうなんでしょう……? それ、本当なんですぅ……? 現代のアークスに、扱える人(マジックユーザー)なんて居ませんけどぉ」

 

「疑う理由はないでしょう。アーカイブを信じる信じないだなんて論じる意味もないと思うし」

 

 あまり興味はない、とばっさり斬って捨ててしまった。

 モニカはいつものはわわで困惑しながら、自分とマールーを交互に見やる。コミュニケーション(それ)はモニカ自身が注力すべきだろう。正直に言ってモニカの言動はややハラハラするものが多いのだから。

 自分も可能な限りは手伝うために、こうして整備場へきている。やれることをやろう。そう考えて、まずは楯の整備を行うために。ジグから渡されている手順のファイルを、量子端末から開くことにした。

 

 

 /

 

 

 そして。

 オーザ班、残るは最後の1人。

 

「なあなあ、ヒース。相談があるんだけどよ、良いか?」

 

 深夜の外回りにて。

 ひとりでモニタールームからの警邏(けいら)を担当していた所、自室から降りたレダが話しかけて来たようだ。

 

 自分がOKを出すと、ぶしゅう。レダが扉にロックをかけた音がする。

 扉の手元が緑から赤色へ転じてぐるりと回転。これで内密な話が出来るよう、防音装置も作動した形になる。

 

 こうまでして話したい内容とはなんだろう。

 自分は相談をいつでも受け付けている、と彼の調子に合わせた軽い返答をしたところ。

 

 ……こういう内容だったようだ。

 

「―― いきなり聞くことじゃねーとは思うんだけどさ。お前、いつシコってんの?」

 

 右手で輪っかを作って上下に動かしながら、レダが問う。

 いわゆる、猥談である。

 

 






・マジック
 日本語訳的な魔法ではなく、過去作(PSOというよりはPSシリーズ)における、「人物固有の特殊な技能」を指す。
 ……指すのだが、かなり直接的に言えば、古いマジックは「RPGの便利魔法」の類が多いよねという印象。
 これはシリーズを経たが故の弊害でもあると思うので、規模はおそらくもっと大きく出来ると考えています。またオメガが記録上の人物としてアリサらを描写していた辺り、(あれはファンサービスも含まれていたとはいえ)記録もきちんとされているものとして扱います。

 またこういう単語を調べているとどうしても型月さんの単語と被りますが、テクニックとマジックに関してはどちらが上位かというあたりを争う枠ではないと認識しています。少なくとも多様化・先鋭化させているNGS辺りの運用では、テクニックは技術として大いに活用されている模様。
 なので作中マールーさんの解説にはやや偏りがある形です。

 原作作中最新のマジックユーザーは、おそらくアルマ。
 最新……いえ、最古……ゆうてフォトナーは人類として最古という訳でもないし……ううん。でもユーザー目線からみればキャラとしてはぽっと出で……いやいや、レギアスが名前はきちんと出してたやろがい以下略

 この作で後々扱うので説明が長い。


・世果、よのはて
 2000体エネミーを斬ったら解放されない。されるのはコクイントウ。
 23000体でも解放されない。されないったら、されない。それはノダチ君。
 ヨノハテ自体も過去作登場武器です。よく考えたら印じゃなくて封なら2000体解放はあったな……。

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