※この作品はR-18です。

催眠玩具船団・オラクル   作:どろまみれ

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28.砂漠遊撃戦2

 

 28.

 

 

「―― ポルクス1、合流しました」

 

「―― おれも合流したぜ~。現場指示はヒースで良いよな?」

 

「異論無いよ。お願いね、ヒース」

 

 設置していた北東のテレポーターで合流。

 合流してすぐさま現場リーダーを任せれてしまった……が。おかげでどちらも、戦闘スタイルがわかる隊員だ。中衛をこなせる自分が適している。

 ふたりに了解を伝え、中央へ走る。

 

 鋼鉄の通路を、壁を蹴り、空中を蹴り、一息に登り切る。

 すぐさまフォトン・ダッシュに移行して南下。

 

 この時点で自分達と同じ視線の高さに、ビッグヴァーダーの甲板が見えていた。

 とてつもない大きさだ。そして、重火器の装備数が凄まじい。

 

「ひぃ、足はえぇってヒース! ……って、うぉっ、でっか!? あれのどこにサイトビーコン設置すんだ? 外側でもいいもんなのか?」

 

「……外殻はダメ。指令系統があるなら、まずはそこかも」

 

 ポルクスの言うとおり。

 初撃でレーダーまたは指令系統を破壊しておけば、回避行動を取られることなく……追撃の成功率が高まるだろう。

 意識して観察すると、どうやら甲板に搭載されている「アーム付きの人型上半身」らしき部分が、ぐるりと周囲を見回しながら精査を行っているのが見えた。

 

 あれだろう。ただし形状からしておそらく、甲板の上を自由行動出来る。

 決まりだ。サイトビーコンは指令機本体に取り付けなくてはならない。取り付けた上で、指令機の足を奪う必要もあるだろう。

 

「うはー、まじかー! えーと……側面が段々になってて登れるんじゃね?」

 

「了解。どっちから昇る?」

 

 レダがリアクションと観察。ポルクスはいつかのアムドゥスキアを思い出す、冷静な状況確認。

 ……どちらから、か。支援機(マグ)に指示して全域マップを常設ホログラム表示。その内の西と北……大型ダーカーが出現せず、アークスの配置がなくなった方角をフォーカスする。

 

 決定する。西側からだ。

 

「うん」

 

「そんじゃあ向こうだな」

 

 意義も質問も挟まず、全員が一目散に西側へと走り出してくれた。

 

 砂地に降り立ち、ビッグヴァーダーを見上げながら回り込んでいると……来た。

 明確な害意を感じる。陸上艦に搭載されていた火気がこちらを向き。

 

「一斉射、来るよ!」

 

「ひぃ~っ!?」

 

 警告の通り。無数の攻撃が飛び交いだした。

 主は両弦を埋め尽くす短機関銃と、頭上から振り降りてくる誘導弾。ビッグヴァーダーの艦首は南を向いており、後ろから近付く形だったのが幸いしてか、主砲は放たれないようだ。

 

 しかし数が多い。多すぎる。誘導弾の予測着弾地点だけで、足の踏み場がないほどだ。

 回避軌道を取りながら走り続ける。自分はフォトン・ダッシュを駆使した蛇歩。ポルクス1は搭載機に変形した可変ランチャーのブースト。レダはフォトンバリア構成剤(デバンライド)で防御力を上げ、救急剤(メイト)を悲鳴をあげつつガブ飲みしながら走ってくれている。

 

 この3人が機動力を活かせる隊員だからこその突貫だ。

 スピードのある自分とポルクスの他に、レダはタフネスが売りのハンターで携帯武器が銃剣。自分達を守りつつ一撃離脱に適しているという利点がある。

 

 銃撃をなんとか凌ぎきりながら……誘導弾の第三波。

 

「誘導弾、射出されたよ! ……って、え!?」

 

「お、おおっ!? あっち(・・・)狙ってくれんのか!」

 

 これを西側からやってきたダーカー、エルアーダに擦り付けることに成功した。

 

 ダーカーの進軍には速度差がある。砂漠であれば特に、飛行型が抜けているだろう。

 本来ならば足並みを揃えるのは指揮官の役目なのだが、相手はダーカー。ただの全速力で近付いてくるのである。エルアーダが突出してしまうのは、予想の範疇(はんちゅう)

 

 対空ミサイルに降られ、エルアーダが打ち落とされてゆく。なすり付けは成功。

 よくよく見れば陸上艦の艦首がゆっくりをこちらを向こうとしている。本体も旋回を始めているようだ。なんとか速度を振り絞って本体へ最接近。側面へ取り付いた。

 3人揃って駆け上がるように甲板へ登る。

 

 一段、二段、三段。

 

 登ると同時。

 通路状から見えていた艦載機が……その頭頂部のカメラが、しっかりとこちらの姿を捉えていた。

 推進剤をブースターから吐き出して、浮上。アームが伸びて、戦闘態勢。

 

『―― ビッグヴァーダー、循環エネルギー量急上昇! それが指令機で間違いありません! 子機、多数!!』

 

『ヒ、ヒースさん! 他の皆さんの、大型ダーカーの側はぁ……今のところ順調ですぅ! そちらに集中なさって、だいじょぶですからぁ……!』

 

 ブリギッタからの報告と、モニカからの個人的にありがたい報告。しっかりと受け取った。

 艦載機の司令部は、予想の通り動く。どこにサイトビーコンを設置すべきだろう。

 そういうことを考えながら、戦闘を開始する。

 

「打撃、右アーム!」

 

 ポルクスのかけ声に合わせ、飛び退いた。

 相手が巨体であるため、視界の外からの一撃だった。自らの甲板を微塵の容赦もなく、クレーンアームがごぉんと叩く。

 

 地面を転がった先で顔を上げ、観察を続ける。

 艦載機はブースターの他、短機関銃が2カ所。センサーカメラ横に誘導弾発射部位を2カ所、それぞれ搭載しているようだ。

 

 レダの位置を確認する。

 

「正面はおれがもらったぜ~! って、うお~!?」

 

 レダは銃剣のブレードで、指令機の丸い腹部を叩いている。

 ダメージはないだろうが……場況よりもプログラムで動く機甲種には有効だ。機関銃と腕がレダを狙い出してくれた。

 

 残るは子機とミサイル。そちらはポルクスが、定期的に弾丸でヘイトをかってくれている。

 

「……ヒース!」

 

 バイザーがこちらをみる。例えあの格好であっても、頼りになるアークスなのは変わりない。

 了解した。決まりだ。

 

 狙いは艦載指令機の内部(・・)

 衛星軌道上からの砲撃のために、敵の足を止める必要がある。防戦だ。タイミングはこちらで指示しよう。

 

「りょー……かいっ!」

 

「了解!」

 

 指示と同時に、レダとポルクスが位置に付く。

 自分も『ザンバ』を構えて、懐へと飛び込んだ。

 

 ミサイルの雨あられ。子機による突撃、電撃攻撃。

 それらを防ぐことに終始しながら……待つ。

 

 レダが機関銃を一基、破壊した。

 

「こっちはやったぜ!」

 

 ポルクスがミサイル発射台の片方を、破壊した。

 

「右側損壊、次だよ!」

 

 指令機の膝元。

 右手の『ザンバ』で周囲をうろつく球形の子機を甲板から弾き飛ばす。

 

 ごん、と床に落ちたのを契機に。

 装備を半壊させられたビッグヴァーダーは、腹部を左右(・・)展開(・・)した。

 現われた内部には、艦首の主砲と同級の砲身が据え付けられている。

 

 腹部に主砲級の砲身があることは予測できていた。管制官から、指令機だというのに「エネルギーが集中している」旨の報告をもらっていたからだ。

 判りやすい凝集光。必死に廃熱を開始したフィンがごうごうと風を吐き出し始める。

 

 好機。左手の『イモータルフェザー』を振り上げた。

 過剰チャージを終えて巨大化した土塊(ディーガ)を投擲する。

 フォトンによって顕現させられた塊は、吸エネルギー中の砲身へ吸い込まれ……べこん。砲身を詰まらせた。

 

 主砲の発射と同時に、指令機が爆発する。

 爆炎を噴きあげ、傾き、甲板に転がった。

 

 それでも陸上艦としてのビッグヴァーダーは健在だ。動かなくなった指令機にサイトビーコンを設置し、艦首側から滑り落ちるように離脱する。

 

『サイトビーコンの起動を確認。砲撃、来ます! カウントダウン、8、7、6……』

 

 ブリギッタの簡潔な退避勧告。

 全力で地面を蹴る。背後は振り向かない。

 3、2、1。飛び退く。

 

「おわーッ!? 爆発ヤベェ~ッッ!?」

 

「……っ!」

 

 衛星軌道上からの砲撃がやってきた。

 ビッグヴァーダーの巨大な全身を埋め尽くすような、光線と弾頭の滝。

 爆発の余波に煽られて、レダが地面を転がり……ポルクスに受け止められてなどいたが。

 

 作戦は成功したよう。

 余波が立込めた空気の焼けた臭い(オゾン臭)を吹き飛ばし。

 砂煙が晴れた後、ビッグヴァーダーはその残骸を残すのみとなっていた。

 

 続いて遠くで、再び光線と弾頭が降っている様子が見えた。

 おそらく大型ダーカーにも射撃制圧が行われているのだろう。

 

 全ての音が止み。

 再び風の音だけが響いた頃になって、通信が入った。

 

『全ての大型エネミーの討伐を確認。……砂漠遊撃戦、作戦完了です。皆さん、お疲れ様でした! 帰投してください!』

 

 

 /

 

 

 こうして、新型機甲種および大型ダーカーの討伐という緊急クエストは達成された。

 後に上層部からくだされた評価ランクはA。上々と言えるだろう。報酬もそれなりの額が約束される。

 

 現場から引き上げた後。

 衛星軌道上の砲撃機が帰投し周辺の安全確認を行うまでは地上で待機。2日間ほどワープに艦隊移動の影響がないように間を空けてから、順次アークスシップへ帰投を行う予定となっていた。

 

 久し振りに配給ではなく直火で調理した料理が振る舞われ、酒も一段上のものが用意された。

 物資もあるところにはある……というよりは、騒ぐときには騒ぐのがアークスの気質ということなのだろう。自分はまだ経験が無いが、季節毎のイベントなどにも積極的だと聞いている。

 

 今回は大型ダーカーの討伐含め、良い経験を積めた。ありがとう。

 アークス全体の練度が上がってくれば、いずれはダーカーに対して押し返すことも出来るだろうか。

 

 そういう、未来の話をしていた時だった。

 薪に照らされたオーザが、酒を片手に言う。

 

「―― いや。ダークファルスは殲滅(・・)されているんだから、大丈夫なんじゃあないか?」

 

 自分が、情報の把握に時間がかかり無言のままでいると。

 酒精強めの酒を両手で抱え、ちびちびと飲んでいたマールーが言う。

 

「……三英雄、初代クラリスクレイスと初代カスラ。レギアスによって倒された、という話ね。クラリスクレイスとカスラは死亡。レギアスは現存……と、教科書で習っているけれど」

 

 だからこそ六芒均衡の偶数番……その後に追加された役職は、三英雄とは別格で語られてしまうのだと。

 最後に、ショットをあおいだレダが言う。

 

「だからおれ達アークスは、その残党狩りをしてんじゃん? 巣があるから急には減らねーけどさ。そうでもないとやってらんねーだろ~、ダーカーのあの数!」

 

 世間一般的なアークスの声、なのだろう。

 理解した。おそらくは情報のすり合わせが必要だ。

 自分がDFは封印されて(・・・・・)いると聞いたのは……虚数機関。妹と弟からだ。

 

 この場では周囲の皆に合わせ、相槌を打ちつつ。

 帰投してからの予定をひとつ、増やしたのだった。

 

 







・衛星軌道上からの砲撃
 ポータブルシリーズでSUVウェポン(人種:キャスト専用のフォトンブラストのようなもの)などで行われていた攻撃。取り寄せ→システム攻撃の手順が多かった。


・緊急クエスト
 PSO2を良くも悪くも骨子として支えていたシステム。
 要は時間毎に出現するレイドボスクエスト、もしくは季節限定クエストである。

 予告緊急という字面はいつみてもおかしいと個人的には思う。
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