※この作品はR-18です。

催眠玩具船団・オラクル   作:どろまみれ

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32.非番1

 

 32.

 

 

「さあさあ、ヒースクリフ! 本日は私と、街へ繰り出すのだ!」

 

 クラリスクレイスはいつも突然やって来る。

 本日はジグの所で大剣について相談をしていた所へ、彼女は突撃してきたのだった。

 

 ジグが自分とクラリスクレイス三代目の顔を興味深そうに交互に眺めて、言う。

 

「ふむ。用事か? わしからの話は、後はないぞ。整備の進捗なぞ、後からメールで送っても良い内容じゃしな」

 

 気を使ってくれたようだ。

 自分も予定を確認する。本日はゼノとの訓練もないし……ここ最近集中して行っていた、クーナとのアーカイブチェックもない。

 

 つまりは、空いている。

 ただクラリスクレイスにどういうつもりなのか、は聞いておかなくてはならないだろう。

 

「今日はお前から、土テクニックの仔細と進捗を聞こうと思っているのだ! だがな、いつもの通り専用のシップで行うのは……飽きた! 飽きてしまったのだ!」

 

 彼女は胸を張って言う。

 気分転換は確かに重要だろう。

 

「そうだろう、そうだろう! そこでな。知っているか? この間、空席だった六芒均衡最後の席が埋まったのだ! そのおかげでな、私にも自由行動許可……は、でなかったが。だがシップ内の街であれば外出して良いとの許可が出たのだ。それに、お前を付き合わせてやろう!」

 

 成る程。理解した。

 クラリスクレイスには恩がある。テクニックもだが、長杖(ロッド)もだ。丁寧に調整をしてもらっている。

 なにより彼女念願の自由行動……ではなく、外出許可である。軟禁に近い状態だった彼女よりは、まだ自分の方がアークスシップの市街について知識を持っているだろう。

 OKだ。折角なので楽しんでもらうのも悪くはない。

 

「決まりだな! では1時間後。6番船にて待ち合わせだ!!」

 

 そう言って、クラリスクレイスは元気よく駆けて行ってしまった。

 ジグがふぅむと息を吐き出す。

 

「……まあ六芒均衡の最後の枠。ヴォルフとアトッサの後釜が埋まったのは、確かに。わしみたいな年寄りからしてみれば最近じゃがな。……昨年じゃぞ? もう1年が過ぎておる。それを知らないほど、あの子は世間と乖離させられておるんじゃな」

 

 そう。三英雄を除いた六芒均衡の、残る3人。

 通称・偶数番(イーブンナンバー)。超戦闘力を持つキャスト、マリア。空位がひとつ。残るひとつの空席に、ヒューイという青年がついたらしい。

 

 それを知らないほど……というかつい最近知ったと言うほどに、彼女は世間を知らないと言うことだ。

 ジグはジグで、クラリスクレイスの境遇に思うところがあるようだが。

 

「あの子は調整(・・)された娘じゃからな。あの年齢でも、身体は十分に強度を持っておる。キャスト化の必要がないだけ、幸せではあるじゃろう」

 

 ジグの言う通り。

 とはいえ自分としては、クラリスクレイス……つまりは三英雄と呼ばれるだけの実力がある者が、どうして軟禁に近い扱いを受けているのかの方が気になっている。

 

「それは上層部に聞くしかないのう。レギアス……いや。二代目のカスラ辺りであれば、知っているじゃろうが」

 

 そこへ至るための道がない、ということだろう。縁というものは大事にしておいて損はない。

 まずは目先のクラリスクレイスに、楽しんでもらうことに集中しておこうと思う。

 

 ジグに大剣『ザンバ』を預け。自分も私服を取りにゆくことにした。

 

 

 

 /

 

 

 

 1時間後ぴったりに、クラリスクレイスは現われた。

 ふたりで着艦許可をもらったシップに乗り込み、市街地へ向かう。

 

 港を出ると、眩しいほどの日差しと投影された青空。

 高層ビル群に囲まれた、オラクルの民が生活する区画が目の前に広がっていた。

 

「おお~~!! ここが市街地かぁ~!」

 

 いつものフォース然とした格好のクラリスクレイスが、手を(ひさし)にして遠景を見やる。

 中央街のビル群の他、少し離れれば市街区も広がっている。公共交通機関が多層に重なって十字を結び、行路にはフォトンの水色が鮮やかに弧を描き行き交っている。

 

 自分は近場には何度か来たことがあるのだが、こうして遠出をするのは久し振りだった。

 とはいえ折角のお出かけである。レダから情報を収集させてもらい、おおよその知見は得た。

 クラリスクレイスを順番に、楽しそうな場所へと連れて行くことにする。

 

 ―― 青看板にアークス文字を飾った、アミューズメント施設。

 タイミングに合わせて足場を踏んでリズムを取るゲームが、彼女はお気に入りのようだった。

 

 ―― AC(アークスキャッシュ)服装(ウェア)を購入する施設。

 いくらでも試着(プレビュー)可能とのことなので、彼女を着飾って楽しんでもらった。

 

 ―― 遅めの時間に昼食を摂る。

 オラクル民に評判の、テラス席付きのオープンカフェのようだった。ナイフとフォークで食べるタイプの、そば粉で固めたなんたるか。それにふたりでつまめるタイプの肉。

 

「……はっ!? なぁ、私たち、普通にデー……ぇトをしていないかっっ!?」

 

 していないと思う。可愛らしく口に肉を頬張ったままの彼女へ、そう返す。

 少なくとも個人的な話はこれからだ。わざわざテラス席ではなく、個室の方(・・・・)を借りたのはそのためである。

 

「ふむ? それもそうか。この店も領収書を貰えれば、私が経費で落としておこう!」

 

 求められたので、取りあえず半額分。彼女へ現行の支払いを任せることにする。

 

「では本題だな。土テクニック! ……惑星リリーパでの任務で使ってきた、と聞いた。お前の感触を聞かせて欲しい!」

 

 わくわくの表情を隠そうともせず、クラリスクレイスは身を乗り出した。

 彼女のためのメロンソーダを追加注文しておいて。

 

 土テクニック『ディーガ』は、取り回しはイマイチだが打撃力のある術であり、自分に足りない火力部分を補ってくれること。

 フォトンの物質化を主とするため……炎、風、雷、光、闇。氷以外のテクニックと違い、相手を物理的に攻撃・妨害できること。

 これからは接頭詩付きの上級術(・・・)の習得を試みること。

 

 そういうことを、説明した。

 

「ふむふむ……ふむぅ。成る程な。確かに物質化する術という点に着目するのは、悪くない。ダーカーを相手にしても、物理的な足止めになるのは(バータ)系列による凍結(フリーズ)だけだからな」

 

 途端に思案顔になって、顎に手を当て考え始めた。

 どうやら術間の相性(・・)の話のようだ。確か彼女は以前に「複合テクニック」なるものを考えていると話していた。その内容だろうか。

 

「そーうとも! 私はな、新たな術を開発(・・)するという分野に着目しているのだ! これを成せば功績としては第一級! 自由行動許可も降りること間違いなしの、大発明なのだ!」

 

 それはそうだろう。

 複合……というからには、属性の違うテクニックをかけあわせるものらしい。

 

「そうだな。だから扱うアークスには適性が必要になってくる。主に第3世代のアークスに向けたものだが、第2世代の中にも複数の属性の術に適性があるアークスはいるだろう?」

 

 ああ。以前に協働した、マールーなどもそうだった。

 フォースで言えば、エコーも他属性を使えなくはないようだが。

 

「適性がなくとも、扱うだけなら何とかなる。主たる6属性とはそういうものだ。その他にヒースクリフ、お前のような例外はいるのだがな」

 

 人差し指でつんと、こちらの額を指さされてしまった。

 お世話になっております、と頭を下げる。

 

「うむ! ……話を戻そう。第3世代のアークスは、第2世代の中から突然変異(・・・・)で生まれた者達だ。その出生数は、大戦によって減少したアークスの補填を目的とした第2世代と比べると、著しく少ない!」

 

 つまり調整で生み出せなくはないが、量が少ないと。

 

「そういうことだな。……その第3世代だが、フォトン傾向が特に自由(・・・・)になることで知られている。自由というのは言葉通りで、先鋭化していたり、あるいは広範になっていたり。テクニックで言うなら全属性に適性を持つ事も、そう珍しくないと聞く」

 

 成る程。 

 それでわざわざ「世代を分けて表記するほど」の差が出来た、ということなのだろう。

 

「その第3世代が、もう数年も経てば実戦(・・)にあがってくるだろう。そうなればテクニックに複数適性を持つアークスも増え、私の複合テクニックに関する研究も進むというわけだな!」

 

 クラリスクレイスが胸を張る。

 理解した。……それはつまり、あと数年は彼女の軟禁状態が続く可能性が高い、ということでもあるのだが。

 しかし彼女は、あまり気にしてはいないようだった。

 

「まぁもう慣れたものだ。それにこうして時折、外出許可は出る。メセタもACも十分に配当をもらっているしな! 私達アークスの命題 ―― 目的はあくまでダーカーの殲滅だ。それをゆめゆめ忘れてくれるなよ、ヒースクリフ」

 

 よりにもよって1番不自由な彼女が、そう締め括る。

 やはり彼女もそういう教育を受けたアークスなのだな、と感じ入ると同時に。

 『刷り込み(インプリンティング)』で遊ぶのは、今は特に、彼女以外の方がよいだろう……とも思った。

 あまり強いものを試すとどんな反動(カウンター)をくらうか判ったものではないし。そもそもレダの性欲を煽る程度のものしか、現状成功してはいないからだ。

 

 自分の法撃力の伸び具合は、フォースという(クラス)相応にはなっている。

 これからの成長に期待をしたい。

 

 そういうことを考えつつ。

 休暇中の残る半日。シップに帰投したクラリスクレイスと共に、訓練場でテクニックの試運転をしたり。

 彼女が放つ上級テクニックに滅多打ちにされてみたり。長杖『イモータルフェザー』の回路を、より一層自分のフォトンに適応(・・)した形(・・・)にしてもらったり。

 

 結局は戦闘訓練に費やして。

 アークスの一員らしく、過ごしたのだった。

 

 






・ヴォルフとアトッサ
 元・六芒均衡のおふたり。創世器はワイヤードランスとランチャー。
 設定上はこの手前あたりでDF双子にやられているようです。

 偶数番には空位も普通にあるので、ゼノさんがお上りするまではしばし、あのお方のご活躍となります。


・青看板にアークス文字を飾った、アミューズメント施設
 /vo11 くらいに搭載されているヤツ。母体ですので……。


・AC(アークスキャッシュ)
 いわゆるゲーム内マネー。リアルマネーを消費してチャージするやつ。
 自キャラを着飾るためのアイテムは、やはりこれを消費するのが最も手っ取り早い。 
 メセタとACも擬似的に交換できてしまうが、RMTは規約違反。成人向け二次創作しているやつが何を言っている(

 メセタとの交換倍率はかなり悪い(スクラッチの目玉商品が10m~、武器迷彩だと20mほど)。
 NGSにおける現状最高率の単純作業金策が、倍率増加アイテム込みで1h2~3m。
 これをやれるBotも、居る時には居たようだ。


・凍結(フリーズ)
 氷のテクニック、バータ系統による蓄積で発現する状態異常。
 主たるレイドボスで扱うのは、おそらくエリュトロン・ドラゴンくらい……? あとはあまり思い出せません。人型ダランブルにも効きましたっけ。あちらは状態異常になる前に倒せていたイメージしかない。

 レイドボスは別として、防衛戦であれば自爆特効神風ダーカー野郎を足止めできるという唯一無二にして最強の成果はあったりする。

 ネッキーはゆるさん。○ね。
 ……いや私は防衛戦好きなのであれですけど。エクソーダビームが残り1本のタワーにオーバー気味に注がれていたりすると大爆笑します。


・複合テクニック
 フォースの主火力。炎と闇、氷と光、雷と風でそれぞれ必殺技を放てる。
 ストーリー中盤から搭載された機能で、単体火力が乏しいフォースの追い風だった。機能解放のために必要だったNPCが三代目クラリスクレイスである。
 だいたいフォースで良くなった時期もあったが、ブレイバーやガンナーやヒーローが順次暴れていたので(ヒーロー以外は順次ナーフされましたが)、総じて目立ってはいなかったイメージ。

 ちなみに。
 ここで解説したことを忘れ、あとからまた解説するかも知れませんが許してください。複合テクニックとかは何回か、必要分を書くとは思いますが……。
 この部分(語句解説)は更新前にスーパーだらっと書いています。解説が被ったことに気付いたら消すかも知れませんが。



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