催眠玩具船団・オラクル 作:どろまみれ
34.
短期の実戦と訓練を繰り返す日々が続く。
ヒューイに体術を。クラリスクレイスにテクニックをそれぞれ教わり続け、その結果。自分としては、かなりの手応えを得ることが出来ていた。
特に
PAではない。ジグが言う所の「武器固有の回路に依存する必殺技」というものである。
アークス自身の回路を使用せず、武器の側に回路を持たせ、それを発動させる。これならば持ち手が行う工程は……思い切りフォトンを流し込んで振るうこと、それだけである。
自分が元から行っていた「
おかげでか、この「フォトンを流し込む」という訓練で使用させてもらった模擬大剣『キャリバー』は刀身が欠け、持ち手は焼け付き、すっかりボロボロの様である。
……いや。流石にヒューイの拳を受け止めた傷も多分に含まれている、とは弁解するが。
長く続いた六芒均衡との訓練だが、最終的にはゼノがシップへ帰還してくるタイミングに合わせて区切りを付ける事にした。
「君との訓練では、オレにも多くの学びがあった。ありがとう! また会おう!! 君と再び出会う日を、オレは楽しみにしているよ!」
最後までこういう男である。
こちらも後腐れなくありがとうを伝え、彼と別れたのが先月のこと。
とはいえ自分には他の
彼女は感覚的な部分も理論的な部分も、おおよそを網羅して説明をしてくれるため、教官としてはこの上ない人物だ。おかげで自分も、上級術の方向性を幾つか見出すことが出来ていた。
目前。手製の教壇に登った彼女……クラリスクレイスが。
相変わらずの赤髪を輝かせて、尊大に笑う。
「―― いよいよ完成したお前の土の中級術だが、名前はお前がつけなくてはならない」
名前。
どういうことだろう。
「例えば火の中級術は、従来のフォイエよりも遠くへ。狙った位置の酸素濃度を高め、直接これを爆破するものだ。減衰がないため範囲や瞬間火力は高い。これを、ラ・フォイエと呼ぶ」
なるほど。
フォイエ、という火の系統の前後を飾ってゆくことで区別する訳か。
「おお、そういうことだな。術名に
彼女らしい豪放さだ。
……ああ。ちなみに。
強さはクラリスクレイスと同等、という訳ではなく。ただ顔が似ていただけのようだった。当然と言えば当然か。
彼女の死(推測だが)については、こちらには連絡が来ただけなので感慨はない……し。そもそも万年ダーカーと戦闘状態にあるアークスにおいて珍しい事態でもない。強いて言えば手管が少なくなったことだけは、やや憂うべきだろうか。そのくらいだ。
クラリスクレイスの授業に意識を戻す。
ちなみに「気にしなくてよい」と言っていたが。理由はなんなのだろう。
「派閥があるのだ、派閥が。無駄にな。……ふむ。一応説明をしておくか。接頭語のうち『ギ』『ラ』『ナ』は等級を。『サ』や『イル』などは術の範囲や特性を示す……範囲、単体、追尾などだな。更に言えば接尾語も存在していて、『バース』などが筆頭だな。これは設置系の術になる」
そうなのか。
なんというか、こうして聞いてみるとかなりきちりと区分けされているような気がするのだが。適当でよいのだろうか。
そう伝えると、彼女は
「そうだ。そうなのだ。……だがな。昨今、テクニックは
知っている。フォトンを熱量に変換し、火の玉を放出するテクニックだ。
「そのフォイエには、扱うアークスによる『個人差』が存在するのだ。私が確認しただけでも、遠くまで届くもの。弾速が速いもの。射程は短くなるがPPが少なくても同量の熱量を放出できるもの……と様々だ。これら全てが、同一の術回路から発現していることが確認されている」
クラリスクレイスは眉間にしわを寄せ、
成る程。つまり、既存のテクニックには「改良の余地」が存在するということか。
「その通りだ! そのせいでな。威力の高いフォイエを中級術扱いするべきだとか、そういう頭でっかちな学者染みた奴らが大勢存在しているのだ! ……全く。ならばまず術の定義から改めるべきだし、そもそも回路構造で決めるのが1番根元で揺るぎないというのに……こほん」
仕切り直すのだろう。
しかし彼女の言いたいことは伝わった。つまり既存の術ですら名称付けの再定義でもめているので……自分しか扱えない術など、一存で決めてしまってよいということだ。
大分助かる提案である。
なにしろ新しい術などは逐一報告をしなくてはならない。取りあえずで決めて良いなら、こちらとしても気が楽だ。
クラリスクレイスの案を採用しよう。
自分が編み出した土属性中級術の名称は「ギ・ディーガ」だ。
「うむ、格好良いではないか! クラシックでありながら、学術的な判りやすさが並んでいる。私は好きだぞ、良い名前だ!」
お気に召したようで何よりである。
〆にクラリスクレイスと法術の撃ち合いを行って。その中で、
その日の訓練も、終了となった。
/
そういう日々が続いていると、遂に自分にも仕事の依頼が舞い込んできた。
量子メールを開く。アークスのヒースクリフを指名した、依頼者。
送信者の名前は久しぶりに見た ―― ルーサー。
どうやら虚数機関としての
回りくどい文面ではあったが、
まずはジグの所へ、新しく
フィッティングを終えて武器としての名前が付いたボウガンも。より集中的に防御を出来るよう、形と素材を工夫された中楯も。ワンオフとして、ジグさんのクラフトを受けた大剣『ザンバ』も。チューニング済みの長杖も。
そうしてから、きちりとフル装備で集合場所へと向かう。
テレポーターを潜り。署員証をかざし。入り口を潜った。
虚数機関の、生命維持装置が置いてあった部屋。
何年も見続け、見飽きていた景色……のはずなのだが。
今は何もない。所長が座るための机と椅子、それだけだ。今となっては全ての器具が片付けられ、殺風景な景色となっていた。
自分が周囲の確認を終えて前を向くと。
名実ともに専用の椅子に座り、いつものポーズを取ったルーサーが言う。
「―― クーナを
明らかにアークスの仕事ではない。
しかし断り辛いお願いを、彼は自分に寄こしたのだった。
こっちでもプロデュースするんかい(しません。
・キャリバー
アンコモン。★4~6の大剣。
三角型の、いわゆる「スイカバー状」をしており、そのフチにフォトン刃が取り付けられている両刃の大剣。
ちなみにザンバは★7で、ここからが赤色……PSOシリーズで言うところの「レアドロップ」に該当する。
・接頭語、接尾語
自分が調べた範囲だと、PSO2辺りはややごっちゃになっている印象。
初級術の特性(定点or範囲or放射or直線etc)によってフリーダムに付く部分がある印象です。
・エクストラアタック
ここで本格的に説明。
旧PSOにおいて、エレメントの付加された武器が行える……やや語弊はあるが「武器固有の必殺技」にあたる技。HPやPBゲージなど様々な数値を参照したり、武器によってはオブジェクトを貫通したり衝撃波を出したりと、アクションの幅を広げていたシステム。
ユニーク武器になると、これが物凄く有用になったりして、攻撃力以上の価値を持っていたりした。
PSO2内にも同音の単語がありますが、別のもの。
主に武器毎に条件を満たすと扱える「非PP消費で繰り出せる、やや強い特殊な通常攻撃」くらいになる。ので、区別のためにも説明をしていたりします。