※この作品はR-18です。

催眠玩具船団・オラクル   作:どろまみれ

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41.市街地戦闘3

 

 41.

 

 

 ルーサーの私室を飛び出して真っ先に、マップと合わせて西方を確認する。

 管制官によって手の入れられたマップが、戦闘情報をリアルタイムに更新してくれている。最前線は北西からやや降って、真西へ傾いているようだった。

 アークス優勢だった戦線をダーカーが押し始めている、ということだろう。忙しい管制官からの口頭での情報は降りてこないが、目視だけでもそのくらいは読み取れた。

 

 自分にとっては初めて見るダーカーとアークスの本格的な市街戦。集団戦である。

 それは単に複数種族のダーカーがごちゃ混ぜに、数に任せて波状に襲いかかってくるというだけのものだが、アークスにとっては十分に驚異。

 では一般的なオラクルの民はというと、フォトンを攻撃用途に扱う術が……ないというか、弱いというか。抵抗できなくもないが、初めから戦闘ありきのダーカーには適わない。武装をしてやっと雑兵を押し返せるか、といった所だ。

 

 そういう意味では、アークスという人種はフォトンを戦闘用途に扱うことに特化している。

 第1世代からずっとだ。こういった争いこそが種族的な本懐だろう。本人達の願望は別として。

 

 脳内で戦況確認を終える。

 すぐに次の場所へと向かう前に、だ。

 

 隣に。

 がぼぉっ、と推進剤を噴きだして着地する ―― 第三者。

 

「……ポルクス1、着任しました。久し振りだね。……が、ぎ。ルーサー、様、より。協力をするよう、命令をもらっています。これよりヒースクリフを臨時隊長とし、旗下に入ります」

 

 裸より恥ずかしいテカテカ全身タイツに、モニター付きのどでかいバイザー。

 手足にだけ補強の具足と手甲をまとった、いつかの惑星リリーパでも帯同した、チーム『!@♯』に所属する、慎ましやか(・・・・・)な女性アークスである。

 

 やはり虚数機関の指示下にあるアークスになった(・・・)か、と思うと同時。

 彼女の背と左脇腹に、いつかにはなかった ―― 人ほどの大きさもある、巨大な武器(・・)(たずさ)えられているのが見えた。

 装備品の数々が視認できる。なるほど。これは機動力にも自信があるはずだ。

 

 そう思いながら、挨拶を交わす。

 

「ふぅ。……その。よろ゛……しく、お願いし、マンコォ」

 

 ポルクスが挨拶を返した。足をがばっと開いて腰を落として、女性器をやたらに強調したポーズ。

 彼女のチーム特有の馬鹿みたいな、自らを(はずかし)めるための卑猥(ひわい)語彙(ごい)もそのままだ。

 そこについては、余り気にしないでおく。チームの方針(めいれい)なのだろうから。むしろ絶頂して噴き出さなかっただけ、以前と比べてましだろう。

 

 それは別としてマップを共有する。

 予測経路をこちらで書き直し、順路を表示した。

 

 目標も伝える。

 西方へ向かう。エネミーマーカーが消えたり増えたりを繰り返しているポイントだ。

 オラクル民&アークスとダーカーが、死んだり殺したりの応酬をしている場所……よりも北に寄った場所で『ひときわ大きく反応を集める赤色』。これを追う。

 

「わかった。あなたの指示に従うよ」

 

 ポルクスは別段疑問を挟むこともなく、すぐに手持ちの『大型複合武器』に火を入れた。

 時間が惜しいタイミングだ。彼女が元から(・・・)持っている、こういう気性が頼もしい。時折馬鹿になったりはするが、変わらず頼りになるアークスである。

 

 ふたりで建物の端から飛び出す。

 自分はフォトンダッシュで。彼女は大型複合武器の尻に付いた噴射機(ロケットノズル)から、水色の推進剤を吐き出して。

 

 西へと向かう。

 ハドレッドのいる所まで。

 

 

 /

 

 

 ビルをふたつほど飛んで北緯を合わせた。

 建物の屋上を走るのは当然で、相変わらず街路は隔壁と瓦礫と死体とで歩けたものではない。走るなどもってのほかだ。

 

 こちらが足裏に集めたフォトンの炸裂で跳んで、空中をフォトン間の反発によって滑ってゆく移動を繰り返しているというのに。

 隣の彼女は、ごうと火を噴く複合武器によって強引に進んでゆく。そのスピードは六芒の末席・ヒューイに一目置かれた機動型アークスである自分に勝るとも劣らず……だ。

 

「いやいやいや。……あたしが全力軌道で飛んでやっとのスピードだよ、これ。ヒースクリフの方がとんでもないよ」

 

 周辺確認のために止まったビルの影で、ポルクスはこちらへ小声で話した。

 通信機器を確認すると、管制官から忙しなく指示がとんでいる。

 

『E‐1縦列対空砲撃を開始します。周辺アークスは再度、位置確認をお願いします』

 

 どうやら戦線近くまでは移動できた。その代わりに集団戦闘に巻き込まれてしまっているが。

 ダーカーの殲滅における主力は自分ではなく彼ら彼女らである。その邪魔をすべきではない。ここは一度、足を止めて機会を待つべきだろう。

 

 ビルの壁に背をもたれる。

 遠方の頭上をエルアーダの軍団が飛んでゆき……それを。赤橙色の弾頭が、次々と撃ち落としてゆく。

 撃ち落とされて尚十分な数が通過したが、そちらは陣形を整えたアークスの銃撃部隊が漏らさず打倒しているようだ。

 

 しばらくはこれが続くだろう。迂回路が出来そうな場所を確認しながら。

 

「―― うん?」

 

 隣を見た。隣からも、見られた。

 

「……えぇと、ヒースクリフはさ。気づいてる……よね?」

 

 場を持たせるためにしてはいきなりな切り出しをされている。

 気づいているか、と問われた。ポルクスの正体に、だろう。

 

 嘘をついていても仕方がない。彼女らに隠すつもりが無いのであれば、こちらも相応にするべきだろう。周囲に他のアークスもいない。丁度良いタイミングといえる。

 

 君は、ティアだろう。そう伝える。

 

「そ、だ、ね。……フツウに喋れた。これは禁足事項に当たらないんだ。どういうつもりなんだろう、あの人」

 

 ため息をつきながら、ポルクス……アークスいちの情報屋(パティエンティア)の双子の片割れ。ティアは指をあごに添わせた。

 考えているようだ。ルーサーのことだろう。戦況を見るが、この話をもう少し伸ばしても問題ないくらいには時間がある様だ。

 

 続ける。

 情報屋の双子は、虚数機関の一員になったのだろうか。

 

「どっちかっていうと虜囚、かな? 色々と身体改造の実験体にされてる、というのが適切だね。それと虚数機関の外に造った技術部のチームの一員……っていうのが名義上は正しいかも」

 

 それはまた。双子の意志だろうか。

 

うん(・・)。その代わりに色々と情報を貰ってるし……こういう、実験的な兵器も優先的にもらってる。おかげで前よりも前線に出れるようになったよ」

 

 ティアはガシャリと、背負っていた大型複合兵装の銃床を壁にあてた。

 

 なんとも人の道に(もと)る契約である。

 が。元々のアークスの倫理観も多色。自分も遺伝子レベルでの改造……デューマン誕生の経緯についてなどを聞いているが、オラクルの市井における人体実験に対する心の持ち方は様々だ。

 ……双子が良いのならば、という以前に。自分にとって、双子がどうあっても問題ではない。

 そう結論付けておく。どちらかというと自分が関心を持っていたのはティア固有の能力に低下がみられないか、だが……中身(・・)()は弄られていない印象を受ける。

 

「……マンコとかチンポとか、突然言い出すのに?」

 

 こちらを見上げるバイザーが、著しく桃色に点滅する。

 それでもだ。アークスが施策によって色狂いの兆候を見せているのは事実。双子もその範疇を出ていない。

 

「結構ヤバい性癖に付き合わされてると思うんだけど……あ、ヒースクリフはそういう動画とか、見なかったり?」

 

 いや。見たことはある。主にレダからオススメされたものだ。

 最近では確かに。ティアとパティの、かなりニッチな性癖の動画が人気を博している事も知っている。

 

「……それで?」

 

 尊厳を奪うものと尻穴ばかりでバリエーションに幅は無いな、と感じた。

 それでも売り上げランキングでは動画の新作が出る度に1位を獲得している。今まで初心(うぶ)に過ぎたアークスにとっては、センセーショナルさがうけるのだろう。

 そういう意味では今は段階を踏んでいる状態であり、これからの開発開拓の余地も十分にあると踏んでいる。メセタの回収は見込めるに違いない。

 

 切り上げた。

 こういう感想では不満だろうか。

 

「……はぁ。良いような、悪いような……」

 

 呆れと安堵の混ざった表情で、バイザーに電光掲示を流すティア。

 そのまま何かを考えたようで。手元で量子媒体をいじる。

 

「あの人の……ルーサーの。あ、ヒースクリフ相手だと言って良いんだ。名前。……えぇと、ルーサーの研究のひとつがこれなんだけど」

 

 何かしらの操作を終えると、ばしゅう。

 複合兵装の体部が開けた。その中には……背負われていた四角い銀の筐体(きょうたい)には。

 

 ―― 器用に四肢を折りたたまれた、パティが入れ込まれている。

 

「アークスを生体部品とした、フォトン回路を組み込んだ兵器の制作。ゆくゆくはアークスを搭乗者として操縦が出来る、機械兵装を作成したいみたい」

 

 それはまたルーサーとは別の技術部にデータの横流しをするみたいだけどね、とティアは言った。

 箱の中を見やる。押し詰めにされたパティに表情は無く、呼吸は浅く。スキンヘッドにされた頭には読み取り用途の配線が無数に生えている。口から入れられたチューブは尻穴まで貫通し。尻穴を根元として、複数のチューブが判れて伸びた。

 四肢は肘と膝までがっちりと固定。大きな乳房は無駄な脂肪だと言わんばかりに、機器の合間でみちみちに潰れてしまっている。

 

 パティを中心とした回路は前方後方上左右方に伸びており、様々な兵装を司る仕組み。

 後方下方に推進器。上左右に誘導弾。爆雷。フォトン・チャフフレア噴出口。前方の砲塔は機銃にもフォトン(キャノン)にも利用できるようで、その下方にはフォトン・ブレードの固定装置が据え付けられていた。

 正しく複合兵装と呼ぶに相応しい重火器の充実ぶりである。

 

「試用型複合兵装 ――『劣等模倣創世器・ディオスクロイ』。それがこの武器の名前。あたしとパティちゃんだと回路の相性が良くって、エーテル体の完全分離が無くても実用化できたみたい」

 

 アークス2人分の回路を贅沢に使用する、双子専用の兵装という訳か。

 だからこそ複雑な移動も、明らかに多機能すぎる演算も、同時にこなしてみせているのだろう。

 

 筐体を閉じ気密ロックを行うと、ティアは『ディオスクロイ』を再び背負う。

 

「おかげでパティエンティアもふたり揃って、今のアナタと一緒に前線で戦えるよ。……そろそろだよね? パティちゃん、教えてくれてる」

 

 こつりと拳で筐体を叩いた。表面に浮かんだピンクの毒々しい回路がほんのりと、ゆるく瞬く。

 マップを見る。アークスとダーカーの戦線がやや南へと移動し、北側を迂回できそうになっていた。

 

 どうやら演算を回すことも出来るらしい。アークスの上級管制官だったなら、この程度の大勢に影響のない移動は見逃すに違いない。

 機を逃さず。ティアと。それにパティを連れて。

 西へと跳んだ。飛んだ。

 






・大型複合兵装
 イメージはNGSのモバイルキャノンに近い。
 ゲームの都合といえばそれまでだが、フォトンの多機能な利用に長けているアークスがこういうものを作らないのは損だと感じる。
 ゲーム内容は単純化の一途をたどっているため、プリミティブであるとはいえる。

 時代的に言えばA.I.Sの前駆ということにしてあります。


・劣等模倣創世器『ディオスクロイ』
 オリジナル。アークスを箱詰めにして人間回路兼エネルギーパックとして利用した、ルーサー謹製の非人道的兵器。
 バックパックとモバイルキャノン部分に分かれており、ティアの尻(穴)から出た2本の転送ケーブルによって繋がれている。

 ルーサーはこれによって得られたデータをA.I.Sの開発部に丸流しした……というオリジナル設定。
 アークス・インターセプション・シルエット……は、どう考えてもアークス側の生体兵器としての利用データが揃っていないと接続できないものだと思いますから。


・筐体
 ささたい。
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