※この作品はR-18です。

催眠玩具船団・オラクル   作:どろまみれ

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06.虚数機関1

 

 06.

 

 

 アークスシップへ帰投してすぐ。

 早速、やるべきことを消化に向かう。ルーサーの元へ向かって諸々の報告を終えることにしよう。

 

「―― おや。帰ってきたね、ヒース」

 

 奥まった研究室の、そのまた奥。

 今日もルーサーは元気だ。自分の姿を視認しても止まることなく。画面の前で眼球を忙しなく動かし指を運び、タスクを幾つも並行に進めている。

 

「君が合格したのは聞いて(・・・)いるとも。……それで? 成果の程は?」

 

 今度は正面。自分を楽しそうに見つめるルーサーに向き直った。

 楯を勧められたこと。デバフテクニックのこと。ジグとクラリスクレイスに相談をする予定であること。

 

「ほう、ほうほう……ふむ。面白い結果になったね」

 

 指が止まる。タブレットを全て収納し、ルーサーは机に肘を着く。

 

「君の身体を調べていた身である僕としては、クラリスクレイスは余りオススメしないが……縁を作るという意味では有用だ。ただジグは楯、というだけでは彼を動かすのは難しいかも知れないね。……少し、待っていてくれ」

 

 何かを考える素振りの後。ルーサーは虚空からひとつ、不思議な杖を取り出して見せた。

 黒と紫(・・・)を基調とした長杖(ロッド)だ。ただその杖先が、何か不思議な物体でぐるりと覆われている。バラバラなジグソーパズルのピースのような。太陽のような。いずれにせよ人目を引くデザインをしている。

 

「これは僕が試しに作った、疑似創世器というものさ。出力も組成も何もかも、本物の創世器(クラリッサ)には及ばないのだけれども……まぁ、クローンに持たせるには十分かと思ってね。量産していたんだ。その中でもオリジンであるこれを……こう!」

 

 テンション高く。ルーサーは持ち上げた杖を、パリン。指先ひとつで分解してしまった。

 パズルピースは弾けて散らばり。持ち手も石突きも粉々に吹き飛んで。

 残ったのは、杖の先にあった宝珠のようなコア。

 

「それを君にあげよう。ジグの所へ持っていくと良い。それで ―― 君のための長杖を作っておきたまえ」

 

 長杖を……? と思いつつも、差し出された。取りあえず受け取ってみる。

 表面の磨かれた、持っているだけで何かの熱を感じるような……どろどろとしたコアだ。

 

 量子バックパック内に収納する。

 にしても、長杖を? 自分はただでさえ楯とかいう面倒な品の作成をお願いしにゆくのだが、厚かましくはないだろうか。

 

「いや。それがあのキャストの仕事だ。幾ら情熱を失っているとは言え、働くべき時に働いてもらえなければ、困るだろう? 動かすための、レギアスからの指令だ。君が気に病む必要はない」

 

 切って捨てた。ばっさりだ。

 ……まぁそれもそうか。お願いはどうせするのだし。

 

「そもそも君に既存のアークスの武器は適さないだろう。あれらは大衆のために作られたものだ。君がワンオフの術を扱うならば、相応しい武器という物がある」

 

 正論だ。否やはない。

 自分が了解ですと頷くと、彼も満足げに頷き返した。

 

「―― では、と。その前に君も妹と弟……クーナとハドレッドの所へ顔を出していくといい。どうせそのつもりだろうけれどね。帰ってきた君と戦闘訓練などを行うのも、楽しみにしていたようだよ?」

 

 お節介タイプの促しをもらって、ルーサーの研究室を後にする。

 会いにはいくつもりだった。丁度良い。

 

 妹は髪を切ってくれるだろうか。弟は流石に切れないだろうから。

 長くなった銀の髪は、確かに邪魔で仕方がない。

 

 

 

 /

 

 

 

「……構いません。本職ではないので適当にはなりますが、ヒース兄様がそれでいいならば」

 

 妹、快諾である。

 ジョキジョキと切って長さを適当に整えて、すきを入れる。さっぱりした。

 

「お役に立てたのならば、何より」

 

「ガァ」

 

 さっそく解放した自室(マイルーム)の中。お客1号と2号。

 クーナは相変わらず無感情だが、すっかり大きくなってきたハドレッドは見るからにご満悦である。

 

 にしても。クーナは戦闘訓練等、いつの間に終わらせたのだろうか。

 

「……私の場合は、ここへ所属した時点で取得しました。諜報部として動き始める前に、書類上の手続きのみで」

 

 書類上で終わるものなのか。

 

「戦闘部門として顔を出す人であれば、正規の手続きを取った方がよいでしょう。私は関係がありませんから」

 

 そういうものか。そういうものなのだろうな。

 ありがとうなと妹に言って、椅子を立つ。

 

 自分はまだ所属が決まっていない。ルーサーから部隊や派出についての辞令があるやもと身構えては居たが……装備を整えたり扱えるテクニックの相談をしたりと、方針についてしか言及をされなかった。

 

「兄さまはそれで良いでしょう。私もそう思います。良くも悪くも、目立つ(・・・)人というのは組織の中には必要です」

 

 スケープゴートというわけか。

 いや、もうちょっと良い言い方をすると、陽動役というか。

 

「そうなりますね。……ですから普通のアークスとして入隊して、一般的な戦闘・調査部門として活動するのが1番かと」

 

 そうなるな。うん。妹との会話で方針が明るくなったように思える。

 始めからまとまっては居たが、足元がすっきりした感じだ。

 

「……では、話もまとまりましたね。兄さまにひとつだけお願いが」

 

 なんだろう。

 

「手合わせ、お願いします」

 

 承った。

 早速、言葉少なな妹と弟を連れて、シップ内のフリースペースへと向かうことにした。

 

 ……結果は5戦3敗1分け(妹)。

 弟はもっと強く3戦3敗、体力切れで模擬戦闘終了という不甲斐なさ。

 

 とてつもない龍の弟については兎も角。

 明日は妹の双小剣(ダガー)捌きを見切るところから始めよう、と心に誓った。

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

「……へぇ。彼が研究部の秘蔵っ子か。彼、面白そうだね?」

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