※この作品はR-18です。

催眠玩具船団・オラクル   作:どろまみれ

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07.虚数機関2

 

 07.

 

 

 マイルームからアークスシップロビーへ。

 直近のゲートエリアに出るので、ついでなので受付カウンターへ。先日ルーサーからまとめてもらっておいた、マグ携帯許可の書類や……惑星ナベリウス、惑星リリーパ、惑星アムドゥスキアへの渡航許可書を登録しておくことにする。

 

「承りました。がんばってくださいね」

 

 管理官のコフィーさんから笑顔の返答をいただいた。会釈で返して、業務の邪魔をしないよう、足早にロビーを後にする。本日の目的はまた別の場所にあるのだから。

 

 再びテレポーターを潜って向かったのは……ショップエリア。

 武器防具の強化や、基礎的なユニット。フォトンスフィア周りの交換や、簡易的なスポーツなどを行う事の出来る区画である。

 真ん中にどでかい噴水が設置してあったり、吹き抜け状の3階建て構造だったり。お祭りの季節などはこの場所を利用して歌の披露などが行われる、レジャー的な使い方をされる場所でもある。

 

 そういうショップエリアの端の方。

 拡張途中で、カフェが出来る予定だという通路の前を過ぎ。非戦闘員含めて100万人近くが住んでいる市街区が一望できる窓際を歩き。

 

 緑化エリアの前に、目的の人物は立っていた。

 

「……お主が依頼者か?」

 

 やや年季の入ったボイス。黒色で骨太なパーツで構成されたキャスト。武器工匠のジグさんだ。

 彼はダーカーの襲撃を受け廃棄となったアークスシップ・テミスから来ており、工房なども移設してきたようだ。

 それにしても何故こんなにも、ショップエリアの端っこにいるのだろうか。

 

「本職のアークス向けの武器強化カウンターがあそこにあるのに、ただの刀匠であるわしが近くにおる訳にもいかんじゃろ」

 

 ジグさんはそう言って、噴水周りのショップ列をみやる。

 そうなのだろうか。商売敵……というわけでもないようだが。

 

「うーむ。わしの場合は注文される内容が違うというか……あれじゃな。住み分けというやつじゃよ。注文数が多い所と、辺鄙(へんぴ)で局所的な注文を受け取る場所は、離れていた方が区別が付きやすいじゃろうて」

 

 言われてみればそうか。そもそも今のジグさんの状況的に、「注文をする側」もかなりの少数派閥。

 私自身、特殊なケースであるのは違いない。にしても離れすぎだとは思うが、それについては突っ込まずにいようと思う。機嫌を損ねても良いことはない。

 

 改めて、レギアスからの紹介だと言うこと。自分はアークスとして資格を取ったばかりだが、専用の武器を誂えた方が良いと……ゲッテムハルトとメルフォンシーナから勧められていること。

 そういうことをジグさんへ説明する。

 

「そう、か。……あやつがな」

 

 キャストの赤いバイザーモニター越しに、ジグさんが遠い目をする。

 知り合いなのだろうか。

 

「知り合っては、おらんな。だがテミスを介した不思議な縁には、すこしばかり思うところもある。……ふむ、いいじゃろう。おかげでこの仕事をやる意義は見出せたわ。お主の依頼、この刀匠ジグが請け負おう」

 

 拳をぐっと握って、クラフトの了承ボタンをぽちり。

 どうやらゲッテムハルト達からも案内をされていたことが、ジグさんにとっては意味があったらしい。

 

 いずれにせよ依頼は受けてもらった。まとめてあった要望を伝えておくことにする。

 楯は左手用。長杖は核を用意してあるので、コレを使いたい。

 

「ふむ。アークスとは別機構でのテクニックを行使するための長杖と……楯か。作ったことはあるの。楯のサイズについて、希望は?」

 

 自分は得物が大剣であるので、取り回しに邪魔にならないサイズが良い。

 

「ならば前腕大じゃ。お主の身体データは……うむ。添付済みのものを受け取った。長杖についてはテクニックの簡略化が出来ない……代わりに術式をお主の方で構築できる、自由度が高いものを作ることが可能じゃ」

 

 聞く限りでは何が違うのかよく判らないが……。

 テクニックの使用が難しくなったりするのだろうか。

 

「そうでもないじゃろ。今現在のアークスが使っているフォトン感応杖というものは、プリセットしてある術とスイッチを紐付けしてあるものじゃ。そこを放棄してプレーンな杖を用意するというだけじゃから、お主の側で書き込めば良い。ワンオフにはなるじゃろうが、難しいというほどではない」

 

 そういうのに詳しい知り合いがいなければ別じゃが……と続ける。

 実際、術回りならば頼れる人は沢山居る。そういうことならば自分にも出来そうだ。

 

「楯については作ってから幾らでも調整可能じゃしな。……うむ。では依頼についてはこんなもんかの?」

 

 では次に。ジグさんが続ける。

 一度、視線を切って。自分の後ろ側を指さした。

 

「あっちを見ると良い。あのアーチの上に、今回お主の装備品に出資をくれた輩がいての」

 

 ……あちらも視線に気付いたのだろう。

 小さな人影がこちらへ向けて手を振った。

 

「あやつはクロト。アークスの市民間マーケットを仲介するシステムを管轄しておる輩でな? お主に興味があるらしい。出資者に顔見せと、お茶でもいただいてくるといいじゃろう。これだけ(・・・・)の料金を肩代わりしてくれるんじゃからの」

 

 そう言ってジグさんが中空に広げたタブレットに描かれる、うん百万メセタの文字。

 強化費用などを考慮するとさらに跳ね上がるらしい。おそろしいことだ。

 

 自分にはとても払えない額だ。挨拶と顔見せをしてくることにします。

 ジグさんにもお礼とお願いしますの言葉を残して、自分はショップエリアの3階へ向かった。

 

 

 /

 

 

「やあこんにちは。君が噂の、虚数機関の新人くんだね?」

 

 周囲に人気(ひとけ)はまったくないが、そう言う環境だからこその発言なのだろう。

 だとしても第一声から神経を削られるとは思わなかったが……どうやらくせ者であるらしい。

 

 クロト。

 濃い赤の髪をドレッドにまとめ、テンガロンハット。瞳の見えないスモークのバイザーで前面を覆っているが、こちらをみる表情は明らかに判るほど笑顔である。

 

 挨拶は返す。自己紹介と、出資ありがとうございましたのお礼と。

 ついでにいえば。自分は虚数機関所属ではあるものの、未だ組織には何も貢献を出来ていないのだが。

 

「そうなのかい? けれどルーサーが色々と新機軸の研究結果を出し始めたのは君が機関に収容されてからのことだ、と聞いている。私としては君が属していると言うだけで興味の対象ではあるんだよね」

 

 ……おぉ。なんというか、今まで出会った事のない、組織の上の人だなぁと言う印象を受ける。

 クロトという男はそういう立ち位置なのだろう。興味があると言うだけで自分にあれだけの(メセタ)をぽんと出せるのだから、まぁ、くせ者なのは当然か。

 

 クロトはアーチ状にかけられた橋の上。柵に身体を持たれながら。

 

「聞かないのかい? ルーサーがどういう研究をしているのか、とか。私が何故君の武器新調に出資したのか、とかさ」

 

 興味がないわけではない。

 ただ、そういう興味を満たすこと以外に意味の薄い内容よりも。

 クロトが組織の上の人間ならば。実利をもった内容で、聞いてみたいことがある。

 

「ほう? なんだい」

 

 貴方は自分が収容されたことを知っていた。

 ならばどこから回収されたのか、も知っていて然るべき。

 

 ルーサーにはふらりふらりと避けられていた。

 ダーカーの巣とは、なんなのだろうか。

 

「それを私に聞くのは勿体なくはないのかい」

 

 おどけた様子で、クロトは柵にだらりと寄りかかる。

 聞いてみるだけだ。知らないならばそれで良い。そもそも自分は、ルーサーとは別口の情報源も持っておくべきなのである。そういう意味で、クロトと縁を作れるだけでも好ましい。

 

「へぇ。それは光栄だ。……うーん、じゃあ少しだけ」

 

 身軽い足捌きで柵を離れた。

 彼自身の胸元に、手のひらをあてて。

 

「随分前から……だね。訓練用プログラムを実施中のアークスが乗った船が、いきなり未知の宙域へ引きずり込まれる現象が、繰り返し確認されている。その引きずり込まれる先こそが、ダーカーの巣。君が倒れていた場所だ。この現象をアークスの側ではこれをアブダクション、と呼んでいるね」

 

 アブダクション。

 アークスという組織はそれを許しているのだろうか。

 

「許すも何も。アークス側としてもダーカーの母体を叩く、もしくは調査するチャンスでもある。訓練プログラムの励行に金銭をつけて、推奨しているくらいだよ」

 

 勿論、最低限の実力をつけたアークスにしか紹介していないけれどね。

 クロトは悪びれずにそう続ける。

 

「じゃあダーカーの巣とは何か。残念ながらまだ解明はされていない。けれどもあそこで産まれるダーカーが居るというのは確実になってきた。小型ではなく、巨大な……ね。そしてもうひとつ。これが大事なのだけれど……ダーカーの巣ではアブダクションされたアークスをコピーした、模倣体。クローンが産生されるのが確認されている」

 

 クローン。

 アークスも人口調整、もしくは生成の技術として持っていると聞いたが。

 

「さあね? それが判らない。でもほら、いずれにせよ……技術としてもっているのならば、驚異。情報を奪われているならば、脅威。ただ真似たアークス擬きを産み出すだけだとしても、それがいつか突然変異を起こさないとも限らない」

 

 バイザーの奥からじいっと、視線を感じる。

 どうなのだろう。自分がその突然変異、にあたる可能性はなくもない。

 

「まぁ心配はしなくてもいいと思っているよ。私はね。いずれにせよフォトンに感応している時点で、君はダーカーではありえない。……君の中が何だろうと、私にとっては興味が満たされればそれで良い。アークスにも混沌は必要さ」

 

 言いたいことを言い終えたのだろう。クロトはくるりと踵を返してしまう。

 代金分にはならなくとも、自分は貴方の興味に沿えた(・・・)だろうか。

 

「十分だよ。私は、カフェが完成するまではヤーキス翁の代わりもすることになっている。君とは嫌でもまた会うさ。だから、またね」

 

 






・ジグ
 黒色ののじゃわしキャスト。
 そもそも刀匠という立場がアークスの中でどうなっているのかはよく判らないが、少なくとも創星器は彼でないと弄れないようだ。
 原作前の彼はアークスシップ・テミスのダーカー襲撃により情熱を失っている状態である。

・クロト
 色々と意味深なことを教えてくれる系アークス。
 プレイヤー的にはウィークリーで彼から受注できるクエストによってTAを回すと大量のメセタが稼げたので、守銭奴キャラとなっている。
 運営側も認識しており、彼が使う双機銃(ツインマシンガン)は金ぴかである。
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