――数か月前、東京の各地で得体の知れない化物が現れた。その化物は人間に憑りつき、様々な悪事を引き起こす恐ろしい化物だった。しかも化物にはどんな武器も通じず、警察どころか自衛隊でも手に負えなかった。
だが、そんな化物を倒す力を持つ二人の少女が現れた。その少女は自分達を「魔法少女」と名乗り、警察でも手に負えない化物を一方的に打ちのめせす。しかも二人とも美少女と言っても過言ではないほど容姿も優れており、一般人からの人気も高い。
狩人はまさか魔法少女の正体が自分の通う学園の生徒だと知り、しかも変身する瞬間を撮影してしまった。彼は春香達に気付かれる前に家に戻り、何度もスマホで撮影した動画を確かめる。
「やっぱり夢じゃない。まさか会長と副会長が魔法少女だったなんて……」
狩人は三人が変身する動画を確認し、世間で騒がれている魔法少女と同一人物だと確信した。ネットで魔法少女を検索すると化物を倒す魔法少女達の写真や動画は簡単に見つかり、変身した二人と瓜二つである事を確かめた。
「それにしてもパンチラ写真ばっかりだな。おっ、この角度は中々かも」
魔法少女とネットで検索すると、大半はエロ目的で撮影された画像しか出てこず、呆れながらも狩人は気に入った写真を保存する。
「って、こんな事をしている場合じゃないだろ……どうすればいいかなこれ?」
春香達の正体を知って狩人は困り、もしも動画をネットで晒したら二人の正体が世間に知られてしまう。そうなれば大混乱に陥り、二人とも無事で済まないだろう。
「会長と副会長がまさか弟とあんな事をする間柄なんて……」
春香に好意を抱いていただけに狩人は天使との行為を見てショックを受けるが、不意に変身する前に告げた秋香の言葉が気になった。彼女は変身前に「補給完了」と告げ、あれはどういう意味なのかと考える。
仮に天使と姉二人がただならぬ関係だとしても、生徒会室であのような行為をするのは危険が多すぎる。実際に忘れ物を取りに来た狩人に目撃されており、もしも三人が恋人関係だとしても学校内で行為をするのはリスクが大き過ぎる。
(よし、少し探ってみるか)
三人の関係を暴くため、狩人はスマホを利用して生徒会室に仕掛けを施す事にした――
――学校の登校時間を迎えると、狩人はいつもよりも早い時間帯に家を抜け出し、そしてスマホでネットを検索して昨夜のニュースを確認する。
「魔法少女がまたもや活躍か。時間帯的にはあの二人がいなくなった後だな」
昨日も化物が現れて魔法少女が退治したというニュースで盛り上がり、やはり二人が本物の魔法少女だと狩人は確信した。その上で狩人は生徒会室を調べ上げる。
三人がこの場で行為を行ったのは確かだが、髪の毛一つないほどに綺麗に掃除されていた。どうやら三人は化物退治した後に一度戻ってきたらしく、綺麗に掃除してから戻ったらしい。
(流石に証拠は残してないか。なら、やっぱりこいつの出番か)
証拠がない以上は自力で調べるしかなく、狩人は自宅から持ち出した道具を取り出そうとした。だが、彼が道具を仕掛ける前に生徒会室の扉が開く。
「あれ?狩人先輩?」
「わっ!?て、天使君?」
扉を開いて入ってきたのは天使だった。彼は後輩だが同じ生徒会に所属するため、狩人は普段からよく話をする。
「い、いや、実は昨日忘れ物をしちゃってさ。そういう天使君はどうしてこんな朝早くに来たの?」
「あれ?姉さんたちはまだ来てないんですか?僕より先に外に出たはずなんですけど、実はお母さんから春香姉さんが忘れた弁当を届けてほしいと頼まれて」
「え!?あの二人も学校に来てるの?」
「はい、そうですけど?」
天使の言葉に狩人は驚き、もしも道具を仕掛けている途中で二人と出くわしたら大変な事になっていた。狩人は鞄から取り出そうとした道具を戻し、天使に怪しまれる前に話題を変える事にした。
「そのお弁当は俺から会長に渡しておくよ」
「本当ですか?助かります!!上の学年の人の教室に行くといつも騒がれて困ってたんですよ」
「ははは、天使君はモテるからね……」
天使は年上受けが良いため、上級生からは非常に可愛がられていた。だから彼が上級生の教室に訪れる度に女子に囲まれて困っており、狩人が変わりに弁当箱を渡してくれる事に素直に感謝する。
「じゃあ、姉さんに渡しておいてください」
「うん、任せて」
天使は弁当を狩人に預けると自分の教室へと戻り、残された狩人は困った様子で春香の弁当を見る。二人が既に学校内に来ているのならば早々に道具を仕掛けなければならない。
狩人が鞄から取り出したのは「盗聴器」であり、こちらは母親の私物を拝借したものだった。実は狩人の父親は浮気癖があり、家の中に他の女を連れ込んでいないのか調べるために母親が購入した代物である。
(さてと、どんなのが聞けるかね)
昨日の夕方のように三人だけが集まった時、何らかの情報が得られるのではないかと考え、狩人は盗聴器を仕掛けた――
――盗聴器を仕掛けた後、狩人は教室に戻ると春香の姿があった。彼女は自分の席で鞄を漁っており、困った表情を浮かべた。
「あれ?あれれ?」
「会長、もしかして弁当を忘れたんですか?」
「わあっ!?か、狩人君!?もう来てたの?」
いつもよりも大分早い時間帯に現れた狩人に春香は驚くが、そんな彼女に狩人は天使から渡された弁当を渡す。自分が忘れて来た弁当を持って来た狩人に春香は驚く。
「あれ?このお弁当もしかして私の?どうして狩人君が持ってるの?」
「天使君が持ってきてくれたんですよ。さっき、偶然会った時に会長に渡すように頼まれてたんです」
「そ、そうだったんだ。ごめんね、面倒かけちゃって……」
春香に弁当を渡すと、狩人は天使の正体を探るために他の生徒が来る前に春香に話しかけた。
「会長は本当に姉弟仲がいいんですね。俺は姉弟いないから羨ましいですよ」
「えへへ、そういわれると照れちゃうね」
「……でも、天使君は会長と副会長と似てませんよね」
「え?あ、うん……ほ、ほら!!天使君は男の子だからね!!」
何気なく呟いた感じで狩人は天使が姉二人と似ていない事を告げると、春香は一瞬だけ焦った表情を浮かべた。彼女の反応から隠し事があると察した狩人はもう少し踏み込んだ質問を行う。
「そういえば会長は魔法少女の噂を知ってますか?」
「えっ!?う、噂って!?」
魔法少女の話題を口にした途端、春香はあからさまに慌てふためく。そんな彼女を見て狩人は世間話をするようにスマホに保存しておいた魔法少女の画像を映す。
「ほら、見てください。この二人の女の子が魔法少女なんですよ」
「へ、へえ~この子達が魔法少女なんだ」
「会長も興味ありますか?」
「ど、どうかな……私はあんまりアイドルとか見ないから」
「アイドルとは違うと思いますけど……」
スマホに移された魔法少女を見て春香は平然とした態度を貫こうとするが、明らかに動揺していた。それを見て狩人は春香が変身した魔法少女を指差す。
「俺が一番気になる女の子はこの子ですね。もう一人の子も可愛いけど、やっぱりこっちの子の方が可愛いと思うんです」
「えっ!?そ、そうなんだ。えへへっ……何だか照れちゃうな」
「え?どうして会長が照れるんですか?」
「あ、ううん!!何でもないから!!」
自分が変身した魔法少女を狩人が気になると告げられ、春香は照れくさそうな表情を浮かべる。その反応から狩人はやはり春香が魔法少女だと確信した。
スマホの動画だけでも十分な証拠だったが、春香の反応から魔法少女だと断定し、さらに話を続ける。
「実はこの魔法少女、この学校の男子の間でも人気があるんですよ。でも、あんまり人気がありすぎて休み時間や昼休みにスマホばかり見る生徒が増えたでしょ?」
「あ、そういえば……あれって魔法少女を見てたの!?てっきりアイドルか何かを見てると思ってたけど」
「まあ、男子にとってはアイドルみたいな存在ですけどね」
これらの話は事実であり、男子学生の間では魔法少女は大人気だった。自分達と年齢が近い美少女達が化物を相手に戦い、しかも露出度の高い格好をしているため、際どい姿の画像や動画が流出していた。男子の殆どは少女達の活躍よりも恥ずかしい恰好をみるために夢中になっている。
「男子があんまり魔法少女に夢中になり過ぎて、女子から冷たい視線で見られてるんですよ。どうしたらいいですかね?」
「ど、どうしたらと言われても……」
「あ、すいません。会長にこんな事を話しても困りますよね……忘れてください」
「あ、ううん。教えてくれてありがとうね」
話を打ち切ると狩人は自分の席に戻り、春香の様子を伺う。春香は魔法少女が学園中で話題になっていると知り、自分で調べる気になったのかスマホを取り出す。だが、それを見て狩人は笑みを浮かべる。
(さあ、会長はどう反応するかな?)
魔法少女の話題を口にすれば必ずや春香は反応し、そして他の二人にも報告するはずである。そこで生徒会室に設置しておいた盗聴器が役立つはずだった――