【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
疲労とは……あるラインを超えると正常な判断を奪ってしまう。個性強化訓練を終えた一年ヒーロー科2クラスは、ここからさらに、自分たちの夕飯を作って食べなければならなかった……。
「火はつけたかクソヴィラン!」
「もうつけてる、野菜も切り終えたからお米洗ってる!」
「ルー開けとけクソヴィラン!野菜クズ残してるよなぁ!野菜出汁とるぞ!」
「開けといた!そこにあるけど必要か!?拘りもだけど、早さ取るなら肉を一度別に焼いてから入れる!?」
「ちぃい!野菜出汁はあきらめるしかねぇな!じゃあそっちだ!」
「あぁもう、なんで無洗米じゃあないんだ、大概キャンプとかは水を無駄にしない為無洗米だろうに!」
「俺に聞くなクソヴィラン!!」
A組の一区画が、戦場になっていた。緑谷と爆豪、疲労困憊からさらに夕食作りという事態。さらに、飯田が『世界一美味いカレーを作ろう』なんて言うから、変なテンションに突入。2人でどんどん作業をこなしていた。
「なんであそこだけ……かき入れ時の厨房のシェフと見習いみたいになってんの?」
「疲労が限界突破したらしいよ……」
「手、空いてるなら手伝ってくれる?」
「うーっす」
そんな様子を見るしかできない上鳴と、あの2人が共同でカレー作るくらいに疲れている此度の強化合宿の激しさに、耳郎も肩を落とし暇な上鳴に手伝いをするように引っ張って行った。
「で、その結果が……」
「これみたいだ……大丈夫か、二人とも!?」
「爆豪と緑谷のとこのカレーめちゃくちゃ美味ぇ!!これ同じ材料かよ本当に!!」
そして夕食のカレーを作り終えた2人だが、テーブルに爆豪は突っ伏して、緑谷は真っ白になり口から魂が出ていた。常闇がその様子に心配し、引き金を引いてしまった飯田は慌てて2人に呼びかけた。そしてちゃっかり、切島が絶品に出来上がったカレーを頂いていた。
「クソヴィラン……ゼリー飲料あるか……」
「どーぞ……なんとか、持ち直して……お腹に入れよう、明日のために」
「クソムカつくが…‥同じ意見だ……」
互いに同じテンションだからか、距離感がバグり散らかしていた。兎も角この空きっ腹にカレーはキツイとまず胃をならそうと、ゼリー飲料を飲む緑谷、ふとその視界の端に、昨晩温泉で助けた少年が、森の中に行くのを見てしまった。
危ないな、魂を呼び戻して緑谷は立ち上がった。
少年は1人、岩壁の洞窟の前で黄昏ていた。腹を鳴らすが、それを知った事かと眉間に皺を寄せてただ1人出水洸汰は、星空を見上げる。
「こんばんわー爆殺王カレーでーす、爆発カレー出前に来ましたー」
「!?」
その静寂を打ち破るように、1人の少年が湯気立つカレーライス二皿を持って現れた。
「テメェ!?なぜここが……」
「1人森に行くものだから心配してね?カレー持参でついて来た、一緒に食べようよ出水洸汰くん?」
両手のうち、片方のカレーを地面に置いて、岸壁に腰掛けて、自分のカレーにスプーンをさして一口食べた。
「ほら、冷めるよ?」
「いいよ、いらねぇよ……俺はヒーローになりたい奴なんかとつるむ気はねぇ……俺の秘密基地から出てけ!!」
秘密基地、それを聞いた緑谷は洞窟やら岸壁を眺めてから言った。
「へぇ、秘密基地?専用のモービルや飛行機がないけど……まだ建造中?いい立地だね?」
「ねぇよそんなもん!ヒーローのじゃない、俺の秘密基地なんだから……」
「そっかー、残念だな……食べない?」
「いらねぇって!」
「後で食べたいと言ってもーー」
「くどい!」
「ちぇー……なら二杯食べちゃうもんにー」
なら仕方なし、その置いたやつも後で頂こうと星空を灯りにカレーを緑谷は口に運んだ。
「個性を伸ばすとか張り切っちゃってさ……気味悪い……そんなにひけらかしたいのかよ力を」
出てけと吐かした割には、喋り出した洸汰に、やはり寂しがり屋なのだろうかと考えながら、応答する事にした。
「キミ、余程ヒーローが嫌いなんだな……ヴィラン信者って感じじゃあないし……どっちも嫌い?」
「……嫌いだよ、だって……そんなもの持ってるから、パパとママはヒーローになって、僕を置いて行ったんだ……」
成る程そういう事かと、緑谷は自分のカレーを食べ終えて、ポケットの中を弄り、ミントタブレットケースを出して口中に一粒放った。
「当ててあげようか、キミの両親、ウォーターホースだろ?」
「!?まさか……マンダレイか!!」
マンダレイから聞いたのかと、洸汰から詰められた緑谷だったが、顔を横に振った。
「パパとママがって言っただろ、キミ?これでもヒーローマニアでね、夫婦のヒーローで殉職したのって2年前のこの2人しか居ないからさ……」
「気持ち悪いな……オタクかよ」
否定できないなと、タブレットケースを緑谷が差し出したが、いらんと横に首を振った。
「世間では……殉職だとか、立派に戦ったとは言うけどさ……結局メディアは面白がってる、御涙頂戴の見せ物というのは皆好きだからね、来たでしょ、インタビューとか?」
「来たよ……」
「やっぱりね……」
「皆んな……バカだよ、ヒーローだヴィランだって殺しあって、個性がってさ……ひけらかすからこうなるんだよ、頭おかしいんだよ」
そもそも、個性自体を憎む程かこの子はと、タブレットケースをしまってまた空を見上げる。
「まぁいいよ、とことん恨めばいい、自由だしね、人様の主義を違うなんて言えないし……ただそうだな、キミの両親はキミを置いて行ったどうしようもないヒーローだけど……その代わりに知らない誰かを守った、素晴らしいヒーローだって事は頭の片隅にいれといてあげて」
洸汰は、立ち上がりながら去ろうとする緑谷の背を見て、キッと睨みつけた。言うだけ言って去っていきやがったと、食べると吐かしたカレーの皿から湯気は消えている、それを見下ろし、腹を鳴らした洸汰は……一度手に取ろうとしたがそれを崖に蹴り飛ばした。
「ねー、ねーまだ行かないんですかぁ、待ちきれないです!早く、早くいきたいです!わたしのだぁに会いたいです!」
宿舎を見下ろせる崖の上、夏の蒸し暑さもある夜に、くすんだ金髪の女子高生が、まだかまだかと宣った。
「べつに、君の彼氏じゃあないでしょ、ストーカーの心理ってこんな感じなのかな、気持ち悪い」
「うるさいです、もう私は決めたんです!彼は私のだぁにするです」
ガスマスクの詰襟が、興奮気味な女子高生を気持ち悪いと宣うが、関係ないと反論する。
「まぁまぁトガちゃん、彼はこっちに引き込むのだから慌てないの、ゆっくり丁寧に行きましょう」
後ろから、茶髪のロン毛の男がおねえ口調で出てきた、その横には何やら呻く、身体中を黒布に撒かれ歯を剥き出しにした男と、蜥蜴がそのまま人間となった異形の者も一緒に歩いて来る。
「これで7人……」
その最前に、火傷の跡を身体中に残して縫合跡も痛々しい男が呟くと、右に居た仮面を付け顔を隠したマントの男が、手の骨を鳴らして言う。
「納得いかねぇ……あいつにはあっても手を出すなだと?なぁ、少しくらい遊ばせてくれよあいつとよ!!」
「だめだ、死柄木から言われたろ……プリンスは怒らせるなと、会っても本気で戦うなとな……」
「プリンス……いい響きだわ!私たちは彼を迎える従者かしら!」
「気に入らん……ステインを継ぐのは俺だ、あのガキじゃない」
茶髪のロン毛が身悶えして笑い、蜥蜴男はふざけろと吐き捨てる。
「決行は10人全員揃ってからだ、威勢だけのチンピラをいくら集めたところで、リスクが増えるだけだ……やるなら経験豊富な少数精鋭……まずは思い知らせろ、テメェらの平穏は……俺たちの手のひらだって言うことを」
つぎはぎの男がゆらゆら揺れる、踊る前のリズムをとるようにーー。
「そんな窮屈な場所から飛び出して、一緒に踊ろうぜプリンス……お前の居場所はこっちなんだから」