【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「あぁマジかよおい!すげえ、すげぇよお前!!まだ立てんのかよ!やっぱり最高だよプリンス!!」
両腕をだらりと垂らし、膝を屈さず立つ緑谷にマスキュラーが歓喜の声を上げる。
「お前と好き勝手やれたらたのしいだろうよ!!なぁ、こっちこいよお前も!!正義なんて掲げず好きに暴れようぜ一緒にさぁ!!来いよ緑谷出久!!」
このままだとお前を殺しちまう!諦めて一緒に仲良くやろうぜ!!殺人鬼からのラブコールに腕をだらりとたらして、緑谷はふざけろと睨みつける。
「よそ、当たって……鬱陶しい……」
そして、足がまた一歩、踏み出そうとして、シャツの袖を引いて洸汰は叫んだ。
「何でだよ!やめろよもう!!死んじゃうよお前!!何で、何で俺なんか……助けに来なくて良かっただろうが!!」
あのまま自分が、殺されていたらこんな事にならなかった!何で放って置いてくれなかったんだ!洸汰の慟哭に、緑谷は答える。
「君の両親は……顔も名前も知らない誰かを守って死んだ……君を残して……ヒーローは……そんな人たちでも、命を賭けて盾になって守るんだ……だから……キミは僕が、命を賭けて守るんだ!」
手を振り払い敵に向かう緑谷に、洸汰は歯を食いしばった。また死ぬ、自分の前で、自分の両親を殺した奴に殺されてしまう!
「交渉決裂だな?残念だ、まぁ死柄木には謝っとくからさ、心置きなく死ねや!緑谷ぁ!!」
再び、右腕に筋繊維の鎧を纏い、力を込めるマスキュラー、その拳が緑谷の肉体を叩き潰しに振るわれ、その光景を見たくないと洸汰は目を閉じた。
振動があたりに響き渡る、剛腕が起こした風が帽子を飛ばす。そして、数秒立って目を開けた洸汰の目の前には……。
「えっーー?」
マスキュラーの背後に、まるで通り抜けたように立つ緑谷の姿があった。避けた?空振りした?あの距離で?困惑した洸汰に、マスキュラーが背後へ振り向き言った。
「おいおい、今更命が惜しくなったかプリンス?死に際をけがーーはうっ!?」
最後くらい潔く死ねと諭すマスキュラー、しかし……突如その筋繊維の鎧を纏った右腕がだらりと下がり、バランスを崩して片膝を付いた。
「な、何だ!?右腕に力がーー」
筋繊維がおかしい、意思通りに動かない!!肥大したまま!!力が入らず痺れて!!
そうして、慌て始めたマスキュラーは見た、自分が叩き折った緑谷の右前腕……そこから飛び出た尺骨に、筋繊維が付着していたのをーー。
マスキュラーは唐突に右腕の自由、そして筋肥大の操作すら受け付けなくなった右腕の異常に驚愕した。
「て、テメェ!?何しやがっーー」
尋ねかけたその時、残った右目の視界で、自らの肩にズタズタに裂かれた切り傷を目視して、自ら理解した。
「一種の賭けだった、もしかしたらと、そこでダメなら僕は死ぬしかなかった」
マスキュラーの個性の筋肉増強、この数分の戦闘の内に見た様相から緑谷は、この力に対して自身の個性やヒーローアーツが通用しないと叩きつけられた。
死に際の最中、ふと思いついた。確かに筋肥大、筋繊維こそ目視出来たが……ある場所は如何にと。
それは『腱』筋肉と骨をつなぐ組織、スジとも呼ばれ、それは筋肉を動かす上で重要な物……ここが切れる、断裂すると筋肉は動かなくなる。
「筋肉からすればその場所は、動かすために必要な組織、断ち切れば操り糸を切られた人形でしかない」
マスキュラーは、歩み寄ってくる緑谷出久の姿に……人生で初めての感覚を味わった。
それは『恐怖』いつもは自分が、その個性で与えて来て相手を染め上げ殺して来た!最後はだれもが同じ顔をして必死に命乞いをした!ヒーローにも!!
「今までずっと命を奪って来た立場だったから、恐怖なんて知らないって顔してるよ……」
こいつは何なんだ!?自分の傷すら武器にして、必ずこっちを殺してやると向けてくる殺意は何なんだ!?なんでこんな奴が、ヒーローの見習いなんて所に収まってやがる!!
「ば、化け物がーー!」
「失礼な、歴としたヒーローの卵だよ」
ほざくな殺人鬼、その言葉一つ一つが、冷たく非情さを感じてしまう。マスキュラーが左腕に、筋繊維を纏わせる。それは『攻撃』の為にではなく!『防御』いや……『命を守るために』初めて個性を使った!!
対して緑谷は、折れて尺骨の飛び出た右腕を構えて深く、飛び掛かるために膝を曲げ、力を込めて叫ぶ!!
「FINISH HIM!!」
「や、やめろぉぉおおーーー!!」
それは、敵へと送る死刑宣告!!脱兎の如く飛び出した緑谷は、両膝の靭帯を横薙ぎ一振りに切り裂き、両股関節の靭帯!左腕の手首!肘!さらに肩へと連続で尺骨の刃を振るい、マスキュラーの身体中の靭帯を断ち切り飛翔した!!
「僕のぉ!!新!!必殺技ぁあああああああああああ!!」
額から、股下まで削り切るが如き尺骨の刃の一撃!!さらにそのまま左に回転し、威力と勢いを込めて緑谷は叫んだ!!
「だぁぁあああい!!せぇつぅッッ!!だぁああああああああんん!!」
大!!
切!!
断!!
叫びと共に放たれた横一文字は、マスキュラーの頸部を通過し、鮮血を吹き出し十字架型の返り血を緑谷へ浴びせながらマスキュラーは、地面に仰向けに倒れた。
出水洸汰は、その戦いの終焉を決して忘れはしなかった。
ヒーローは、顔も知らない名前も知らない誰かの助けを求める声に来て、その命を盾とし守り、悪を討つ。目の前の少年は、出水洸汰にとって正しくヒーローだった。他人が見れば、骨が飛び出る大怪我で、血を浴びながら叫ぶ、なんとも醜い獣にしか見えない。
しかしーー出水洸汰にとって、緑谷出久は確かに今日、ヒーローとなったのである。