【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「じゃあ、八百万さんも……一緒に行く気なんだね」
「ええ、彼らが無茶しないようにストッパーとして、デバイスを今夜渡す時に共に……」
轟と切島が命懸けの救出を決め、それを止められず泣き腫らして昼の事、緑谷はデバイスを渡そうとしている八百万に真意を確かめる為病室に訪ねていた。
今夜受け取りに来るらしい……そして彼女にやめてくれと言おうとしたが、緑谷は怖くなっていた。また、2人みたいに彼女は覚悟を決めてしまうのではなかろうかと。
「緑谷さんは……どうされますか?」
案の定聞かれた。
無論、行きたい……その気持ちは一緒だ。けど今回は耐えるべきだと思ったから、行かないと言ったし、彼らを止めた。今更行けるはずもない……。
「行かないよ……プロの邪魔をして二次災害なんて起こしたら、迷惑かかるから」
「そうですよね……多分ですけど、お二人も、現場を見たら自分達が邪魔でしか無いと理解して諦めるかもしれません……心配しないでください、ちょっと神野までお買い物して帰るだけになりそうですから」
緑谷は、ぽろっと八百万が出した地名に気付いた。彼女もしまった、という顔をした。神奈川県神野区、そこにかっちゃんが居るのかと居場所を知ってしまう。
「危ないなぁ八百万さん、情報吐いちゃって」
「そ、そうですわね……とんだ失態ですわ……」
「うん、じゃあ快気祝いに買い物、楽しんできてね」
あくまで快気祝いに遠出する、という体で話を終わらせた緑谷。病室を出ようとドアを開けて、ふと忘れていたという事に気付いて彼女に振り返った。
「僕は行けないけどさ……これ、代わりに渡しとく」
そして八百万に近づいて、緑谷は彼女にメモの紙片を手渡した。
「これは?」
「僕の兄弟子の電話番号、神奈川でヴィジランテをしてる……話は通してあるから、神野についたら協力を仰ぐといい……彼が助けてくれるから」
そうだけ伝え、緑谷は八百万の病室から出て行った。
緑谷出久は退院のために着替えを終えて、携帯から新幹線のチケットを取っていた。母には『新幹線が取れなかったので、一日帰りが遅くなる』とメッセージを送る。
入院時に持ってきてくれたのだろう、自分の合宿用荷物の鞄を開き……その中からある物を取り出した。
いつも、自分が扱っている『鎖分銅』だ、その片側の分銅を取り外し、また鞄から取り出したのは……。
『苦無』
本物である、銃刀法違反の代物。それを……分銅に取り付ければそれは……本来あるべき形を取り戻した。
これが『鎖苦無』この武器の本来の姿である、そして鞄からまた一つ取り出したそれは……面頬と呼ばれる防具。
「緑谷出久は……大人しくするしか無い」
病室の洗面台の鏡を前にして、緑谷は自分に言い聞かせる様に言う。
「お前は一学生だ、ただの学生だ、ヒーローじゃない、どうしようも無い」
認めろ、どうしようもない、何もできないガキでしかないと。
「だが……蠍ならどうだ、彼なら……自由に動けるだろう」
だから助けを求める、ヒーローに……どうかお願いしますと、彼なら自由に動けると。
「僕の命を、焚べて捧げます、だから……皆を守ってください、かっちゃんを助けてください」
それはもはや自己暗示だった、鏡の前の自分に言い聞かせ、そうあれとかける催眠術。そうして一度目を閉じ、次に目を開けた時……緑谷の目から、情けの色が消え……勢いよく鞄を持って、病室から出て行った。